著者
木村 智哉
出版者
美学会
雑誌
美学 (ISSN:05200962)
巻号頁・発行日
vol.61, no.2, pp.49-60, 2010

This paper aims to discuss the meaning of the revolution that happened to animation in Japan from the 1950's to the 60's. There are two features to which I pay attention: the historical peculiarity of the revolution, and the common trend of the animation movies for commerce and those for non-commerce. There are three topics that are the points of the discussion: the trends of domestic production companies, the introduction of overseas animation movies, and the transition of criticisms. This paper clarifies the following: first of all, the revolution of the animation expression at that time invented a new image by the abstraction of form or movement and by the unification with sound; secondly, the revolution supported the attempt of small-scale productions or independent animators who opposed to major movie companies; and thirdly, however, the same revolution contributed to the lowering of the cost of commercial studios. These phenomena can be related to the revolution of the expression of the audiovisual arts that happened widely from the 1950's to the 60's.
著者
木村 智哉
出版者
日本アニメーション学会
雑誌
アニメーション研究 (ISSN:1347300X)
巻号頁・発行日
vol.21, no.1, pp.17-30, 2020-09-30 (Released:2021-05-07)
参考文献数
9

本稿では、東京都労働委員会での審問記録を翻刻し、その意義について解説を加えている。これは東映動画における労使紛争の一側面を示す史料である。この史料には高畑勲や、後に東映動画社長となる登石雋一の思考過程、そして東映動画の労働慣行や職員の意識など、多くのトピックが表れている。こうした史料の分析は、過去の作家や作品の分析に拠ってきたアニメーション史研究の視点と方法論の刷新をもたらすだろう。
著者
木村 智哉
出版者
日本アニメーション学会
雑誌
アニメーション研究 (ISSN:1347300X)
巻号頁・発行日
vol.23, no.1, pp.15-27, 2023-01-31 (Released:2023-02-11)
参考文献数
65

現代のアニメーション産業への関心に比べ、その歴史の研究事例は少ない。これは学術研究上のディシプリンや課題の説明が、アカデミアに不足しているからである。本稿ではその解決を試みる。歴史研究を例にとれば、ポピュラー文化に関する記述は、まず通俗的社会批評により始められた。そして次に、社会史によるメディアの政治性の研究が行われた。しかしこれらの研究は、社会批評や社会史の関心を再確認する過程に留まる傾向があった。人文・社会科学一般の方法論に視点を広げれば、産業や企業の役割よりもユーザーの営みに注目することが主流である。だがこうしたアプローチは、文化産業が組み込まれている資本の論理には関心が薄い。アニメーション産業史の研究は、ポピュラー文化と資本の論理の関係についての議論をもたらし、その構造がいかに歴史的に変化したのかの事例研究を導くことで、人文・社会科学の方法論と視点を更新する大きな可能性を持つ。
著者
松本 悠実 野口 貴文 石橋 亮 高田 遼 高村 正彦 長縄 肇志 木村 智
出版者
日本建築仕上学会
雑誌
日本建築仕上学会 大会学術講演会研究発表論文集 2015年大会学術講演会
巻号頁・発行日
pp.37, 2015 (Released:2016-03-31)

窓サッシへの応用が期待されている塩化ビニル樹脂に促進耐候性試験を行い、紫外線による劣化について検討をした。添加剤条件の異なる4種類の塩ビ樹脂において、色差測定、衝撃試験、引張試験、化学分析を行った。そして、樹脂の劣化に伴う色変化の分析評価、添加する顔料及び耐候助剤の比率と劣化挙動の相関性の評価、またそれぞれの試験と化学分析との関係を評価し、窓サッシ用樹脂の耐久性能の評価と検討をした。性能評価の結果、強度低下よりも色変化の方が著しく、窓サッシとして使用していく際に大きな課題であるといえる。
著者
溝畑 剣城 谷川 英二 竹田 秀信 松尾 耐志 奥野 修一 平瀬 健吾 増田 幸隆 福井 学 木村 智
出版者
藍野大学
雑誌
藍野学院紀要 (ISSN:09186263)
巻号頁・発行日
vol.20, pp.65-77, 2006

これは,3歳のMr.Rが両親の離婚で「父親」に見捨てられ,19年後,自ら求めて再会した抑圧的な父親に思いの丈を突きつけた,直面化と長引いたエディプス・コンプレックスの自覚,克服の物語である。5歳以後,母は再婚し「義父」と彼の連れ子の義兄,母が産んだ異父弟との生活で,Rは居場所を失った。7歳時,交通事故はそんな状況で起こった。現場に急行した警官に「理想の父」を見てRは救われた。そして24歳で結婚,26歳の12月長男誕生の予定である。しかし口唇裂の長男を堕胎するか否かでRは苦悩する。「妻の父」への報告も躊躇した。通常業務に,通信大学履修,論文作成,三種の仕事と第一子堕胎の決断を迫る,苦悶の極みに,父親を殺したいと思うまでにRはなった。だが「論文指導教授」が精神分析医Dr.Jで,RはJに精神療法を希求した。僅か9回,4ヶ月の面接での回復は,基本的信頼感がほぼ達成されたことを暗示している。
著者
坂井 優美 木村 智博 福田 誠 橋本 治 岡田 勝也 伊藤 真理 川原 潮子 岩波 基
出版者
社会技術研究会
雑誌
社会技術研究論文集 (ISSN:13490184)
巻号頁・発行日
vol.7, pp.31-44, 2010 (Released:2011-09-14)
参考文献数
23
被引用文献数
2 2 1

兵庫県南部地震以降,廃棄物学会を中心に,地盤工学領域では応用地質学会や日本粘土学会等が災害廃棄物の調査を行うようになった.本研究では2007年新潟県中越沖地震を例に,廃棄物行政の実態を俯瞰し,住民に求められる危機管理の方向性を現地調査やアンケート等で明らかにした.また,東京都等の震災廃棄物対策を参照しつつ,地盤材としての有効性を検討した.この一連の流れで,徹底した分別回収がなされたこと,家族や住民間の協力で非常時の自主防災の成否につながったこと,膨大な廃棄物でも適正処理により環境影響を低減出来る可能性が筆者らの調査で示唆された.さらに廃棄物に内在する重金属にも言及し,新潟県内海岸部での調査結果や処理技術の現状も参考のために概観した.
著者
高橋 浩一郎 土田 健一 木村 智 居相 直彦 森山 繁樹 岡信 大和 中島 光男 岡田 隆宏 松宮 功 池田 康成
出版者
一般社団法人映像情報メディア学会
雑誌
映像情報メディア学会技術報告 (ISSN:13426893)
巻号頁・発行日
vol.26, no.53, pp.29-32, 2002-07-26
参考文献数
4
被引用文献数
2

地上デジタル放送の移動体向けサービスの対象のひとつに電車がある.今回,JR総武線の電車内で,3種類の試作受信アンテナを用いて受信実験を行い,走行する電車内での地上デジタル放送の直接受信の正受信時関市を測定した.ヘリカルおよびロッドアンテナは直接受信が可能であったが,ループアンテナは利得が小さく受信が困難であった.また,駅などでは人工雑音の急峻なピークが見られ,正受信時間半を劣化させていた.
著者
浦嶋 優夢 小俣 杏侑実 八田 友楽 平田 真実 木村 智子
出版者
日本ヘルスプロモーション理学療法学会
雑誌
ヘルスプロモーション理学療法研究 (ISSN:21863741)
巻号頁・発行日
vol.12, no.1, pp.19-24, 2022-06-30 (Released:2022-08-03)
参考文献数
34

本研究の目的は,出生時期に低体重であった者(Low birth weight infant:LBWI)と正常体重であった者(normal birth weight infant:NBWI)が成人期を迎えた際の骨量ならびに骨の発育に与える因子に違いが認められるかを確認し,将来の骨関節疾患発症リスクについて検討することである。対象は,本邦でLBWI 急増時期に生まれ,現在成人期にある女子大生を母集団とし,LBWI 群(6名)とNBWI 群(6名)を抽出した。骨量面積率や骨塩量,下腿身長比や体重などの計測とともに,学齢期と思春期の運動時間を聴取し,両群間で比較した。その結果,両群間で骨量面積率などに有意差は認められなかったが,下腿身長比はLBWI 群が有意に低値を示した(p<0.05)。従って,出生時体重の違いは成人期の骨密度には影響を及ぼさないが,LBWI は下腿身長比の短縮という形で骨の発育不全を引き起こす可能性が示唆された。今後,この骨発育不全が引き起こされるメカニズムの解明とともに,LBWI が老年期の骨に与える影響についても追跡調査する必要性があることが示唆された。
著者
田口 誠 竹内 知明 蔀 拓也 濱住 啓之 渋谷 一彦 木村 智
出版者
一般社団法人 映像情報メディア学会
雑誌
映像情報メディア学会年次大会講演予稿集 2010 (ISSN:13431846)
巻号頁・発行日
pp.15-5-1-_15-5-2_, 2010-08-31 (Released:2017-05-24)

Along with the installation of a large number of relay stations for digital terrestrial broadcasting, co-channel interference occur in part of service area. As a countermeasure against co-channel interference, we have developed an interference canceller using adaptive array technology and have experimental omparisons of a Pre-FFT type canceller and a Post-FFT type one in a real field.
著者
笠羽 康正 三澤 浩昭 土屋 史紀 笠原 禎也 井町 智彦 木村 智樹 加藤 雄人 熊本 篤志 小嶋 浩嗣 八木谷 聡 尾崎 光紀 石坂 圭吾 垰 千尋 三好 由純 阿部 琢美 Cecconi Baptiste 諸岡 倫子 Wahlund Jan-Erik JUICE-RPWI日本チーム
出版者
日本惑星科学会
雑誌
日本惑星科学会誌遊星人
巻号頁・発行日
vol.25, no.3, pp.96-107, 2016

<p>欧州宇宙機関(ESA)木星探査機JUICEに搭載される電波・プラズマ波動観測器RPWI(Radio Plasma Wave Instruments)は,欧州チームにとり米土星探査機カッシーニ搭載のRPWS,日本チームにとり月探査機かぐや・ジオスペース探査衛星ERG・日欧水星探査機BepiColombo搭載の電波・プラズマ波動・レーダー観測器群からの発展展開となる.木星・衛星周回軌道への初投入となる低温電子・イオンおよびDC電場観測機能,電磁場三成分のプラズマ波動観測機能,電波の方向探知・偏波観測機能,および高度オンボード処理によるパッシブ表層・地下探査レーダー機能や波動-粒子相互作用検出機能の実現により,木星磁気圏の構造・ダイナミクスおよびガリレオ衛星群との相互作用,氷衛星の大気・電離圏および氷地殻・地下海へのアクセスを狙う.2016年7月に仙台で行なった「RPWIチーム会合」での最新状況を踏まえ,1970年代に遡る本チームの経緯・目標・展望を述べる.</p>
著者
木村 智哉
出版者
国立歴史民俗博物館
雑誌
特別研究員奨励費
巻号頁・発行日
2013-04-01

本年の研究計画は、国産テレビアニメ草創期の諸動向の中から、商業映像メディアの転換が、アニメーションの制作現場と、その映像表現にあたえた変化や影響を実証的に検討することにあった。この計画は、かなりの程度達成された。平成27年7月に公刊された論文では、国産テレビアニメが放映開始された1963年に、その事業に参入した制作会社およびテレビ局、スポンサーの動向を追跡し、その中でも従来、劇場用映画制作を行っていた東映動画株式会社においては、スポンサーの都合によって番組枠の維持が流動的で不安定かつ、支払われる製作費が低廉なテレビアニメ事業を継続するにあたり、正社員ではなく個人に業務委託を行う契約者制度が重視されるようになったことを論じた。この内容は、12月に公刊された他の論文の内容と合わせ、10月にヴァッサー大学で行われたアジア研究学会でも発表した。さらに平成28年1月に公刊された査読付論文では、先の論文の内容を、東映動画に関してより専門的に深め、テレビアニメ制作事業を継続する過程で、同社の労務管理は時間によるものから作業量によるものへと転換し、そこに作業量を技術力の一端として捉える作画職の一部スタッフが呼応していったことなどを実証的に論じた。また、10月には美学会全国大会にて、テレビアニメ制作事業の開始が、劇場用映画制作の時代に行われていた、アニメーター中心の合議制による作品の質的管理を揺るがし、むしろ演出家による管理へと移行して、それが製作事業における量的管理(スケジュールや予算の厳守)にも寄与したこと、さらにこの「演出中心主義」の成立が、アニメーションの演出において、カメラアングルの多様化など映像表現上の変化をももたらしたことを論じた。ほか2本の論文を含め、計5本の論文と3回の学会発表を行い、最終年度の業績発表としても単著を構成する内容としても、重要な業績が蓄積できた。