著者
村上 健太郎 松井 理恵 森本 幸裕 前中 久行
出版者
日本緑化工学会
雑誌
日本緑化工学会誌 (ISSN:09167439)
巻号頁・発行日
vol.30, no.1, pp.139-144, 2004-08-31
被引用文献数
4 7

1996年に造成後,8年が経過した都市内復元型ビオトープ「いのちの森」において,現段階でのシダ植物の種多様性の評価を試みた。種数一面積曲線を用いて,「いのちの森」の近郊にある孤立林39箇所との比較を行ったところ,「いのちの森」の種数は,高い水準にあることがわかった。また,「いのちの森」の木道下では,シダ植物の種数は他の孤立林比較調査区に比較して多かった。ただし,木道下以外の林床では,種数,対数逆Simpson指数ともに高い程度にあるとは言えなかった。よって,「いのちの森」は,他の孤立林に比べると,種数が多いと言えるが,これは木道下の適度に暗く湿った隙間環境が種数を増加させていると考えられた。
著者
松井 理恵
出版者
The Kantoh Sociological Society
雑誌
年報社会学論集 (ISSN:09194363)
巻号頁・発行日
vol.2008, no.21, pp.119-130, 2008-07-20 (Released:2012-02-29)
参考文献数
18
被引用文献数
1 1

The purpose of this paper is to clarify the logic behind the historic preservation movements in Daegu, Korea. There are many Japanese houses in Daegu that were built in the era of Japanese occupation. This paper describes the logic behind a NGO in Daegu, Korea (CSES: Citizen's Solidarity for Ecological Street) that seeks to preserve these houses. The CSES has organized citizen's fieldwork to uncover "lived urban histories" in Daegu. They have found many Japanese houses. CSES has placed them in context not as part of the Colonial legacy but as part of historic resources. This study takes the historic preservation movement in the context of community formation. The finding is as follows. CSES contextualizes "histories" of the community into life experiences of local residents for community formation.
著者
松井 理恵
出版者
北海道社会学会
雑誌
現代社会学研究 (ISSN:09151214)
巻号頁・発行日
vol.30, pp.27-43, 2017

本稿は,韓国の地方都市,大邱でおこなわれている北城路近代建築物リノベーションを事例として,外部から転入してきた住民を担い手とする景観保全が,「都市の継承」として成立する条件を明らかにした。先行研究において,歴史的環境は地域社会と不可分なものとされてきたが,日本人の植民及び引揚げ,朝鮮戦争の混乱,産業化の進展による人口流入など,近代以降幾度もの断絶を経てきた大邱では,歴史的環境と地域社会のつながりを前提とすることはできなかった。北城路近代建築物リノベーションでは,個々の建築物を都市の経験のなかに再配置する工夫,すなわち他の建築物との関係のなかに位置づける工夫と,歴史的定点のズレを内包させ北城路の来し方を示す工夫がみられた。統一された景観ではなく,あえて異なる時代が混在した景観を生み出し,保全することによって,都市の継承の端緒を開いたのである。郊外化と旧市街地の都市再生が同時に進められている韓国の地方都市では,資本が旧市街地に回帰してジェントリフィケーションが進む可能性も高い。このような状況において,都市の継承を目的とする歴史的環境保全の意義は大きい。
著者
橋本 優実 PANKAJ KAMDAR Radhika 松井 理 橋本 光正 松本 義久 岩淵 邦芳
出版者
Journal of Radiation Research 編集委員会
雑誌
日本放射線影響学会大会講演要旨集
巻号頁・発行日
vol.2011, pp.102, 2011

アポトーシスに陥った細胞において、XRCC4はカスパーゼ3あるいは7で切断され、DNA ligase IV結合領域を含むが核移行シグナルを欠いた35 kDaのN末断片(以下pN35)となることが知られている。本研究では、XRCC4断片化のアポトーシスにおける役割を調べた。<BR> マウスリンパ腫L5178Y細胞由来XRCC4欠損細胞株M10細胞をスタウロスポリン(以下STS)で処理してアポトーシスを誘導した。アポトーシスは、カスパーゼ3の活性化あるいはアポトーシス特異的DNA断片化(TUNEL法)を指標に検出した。<BR> M10細胞に野生型XRCC4を発現させた細胞株(M10-XRCC4)をSTS処理すると、pN35が検出されたが、カスパーゼで切断されない変異型XRCC4(XRCC4 D265A)を発現させた細胞株(M10-D265A)ではこの断片は検出されなかった。このときM10-XRCC4でのみ、アポトーシスの増強と、カスパーゼ3上流に位置するカスパーゼ8および9の活性化体の増加がみられた。STSによるアポトーシスに対する増強効果は、M10細胞にpN35を発現させても認められなかったが、核移行シグナルを付加したpN35を発現させると認められた。M10-XRCC4と M10-D265Aの両細胞において、 XRCC4とDNA ligase IVは、アポトーシスの進行に伴い核から核外へ移行した。<BR> 以上より、カスパーゼによるXRCC4のN末断片化はアポトーシスに必要であることが確かめられた。pN35は核内に存在する時にアポトーシス増強作用を発揮することが明らかとなった。アポトーシス増強の機序としては、pN35によるカスパーゼ8および9の活性化の促進が考えられた。一方、アポトーシスの進行に伴うXRCC4とDNA ligase IVの核外移行には、XRCC4のN末断片化は必要ないことが示された。<BR> なお、M10細胞は文部科学省ナショナルバイオリソースプロジェクトを介して理研BRCから提供された。
著者
松井 理生
出版者
東京大学
雑誌
奨励研究
巻号頁・発行日
2011

○調査目的:オオワシとオジロワシは、その多くが冬季に北海道に南下して越冬する冬鳥であり、主に魚食であるため、ほとんどの越冬個体は海岸沿いに生息している。しかし、近年、両種が北海道の内陸部でもたびたび飛来し越冬していることが確認されるようになった。その理由として1990年代以降エゾシカの個体数が増加し、その死肉を餌資源として利用するワシが増えたことが考えられる。本調査では北海道の中央部に位置する富良野市の東京大学北海道演習林周辺において、その飛来実態をエゾシカの存在とともに明らかにした。○調査方法:調査は観察地を5箇所設定し、各調査地で定点観察を行い、ワシ類を確認したら種を同定し、成長度などの状況を記録した。調査地の2箇所は鳥獣保護区、2箇所は可猟区、1箇所はカモ類などの水鳥が多く越冬する自然沼で行った。それぞれ11月から3月まで、1回の調査で1時間以上の定点観察を各月に1調査地で2回以上行った。また、内陸部との比較のため、沿岸部の大規模越冬地においても1月と3月に同様の調査を行った。沼を除く4調査地においてエゾシカの存在を把握するため、調査地の近くにある林道上に1kmの調査コースを設け、コース上を横断にしたエゾシカの頭数を1~3月までの各月に1回カウントした。○調査結果:5調査地において総観察時間74時間にわたる定点観察の結果、のべ個体数で70羽のワシ類を確認し、1時間当たりの確認個体数は0.95羽であった。そのうちオオワシ25羽、オジロワシ42羽、種を同定できなかった個体3羽だった。飛来したワシの成長度では、オオワシ、オジロワシともに79%が成鳥、21%が若鳥であった。調査地別にワシの確認数とエゾシカの生息数との関係をみると、エゾシカが0頭/1kmと1頭もいなかった鳥獣保護区の調査地でワシの確認個体数が0.15羽/1hと最も低く、エゾシカが93.2頭/1kmと最も多かった可猟区の調査地で1.74羽/1hと最も高い結果となった。このことから、エゾシカの存在がワシの個体数に大きく影響していることがわかった。水鳥の越冬沼の調査地ではオジロワシしか確認されず、オオワシの方がエゾシカにより依存していることが示唆された。沿岸部での大規模越冬地における調査では、オオワシ214羽、オジロワシ194羽を確認した。そのうちオオワシの63%、オジロワシの55%が成鳥であった。これらのことから北海道の内陸部に飛来するワシ類は、オジロワシの方が比較的多く飛来し、成鳥の割合が高い傾向にあり、いずれの種もエゾシカを餌資源として高く依存していることが本調査からわかった。
著者
松井 理恵
出版者
The Kantoh Sociological Society
雑誌
年報社会学論集 (ISSN:09194363)
巻号頁・発行日
vol.2008, no.21, pp.119-130, 2008
被引用文献数
1

The purpose of this paper is to clarify the logic behind the historic preservation movements in Daegu, Korea. There are many Japanese houses in Daegu that were built in the era of Japanese occupation. This paper describes the logic behind a NGO in Daegu, Korea (CSES: Citizen's Solidarity for Ecological Street) that seeks to preserve these houses. The CSES has organized citizen's fieldwork to uncover "lived urban histories" in Daegu. They have found many Japanese houses. CSES has placed them in context not as part of the Colonial legacy but as part of historic resources. This study takes the historic preservation movement in the context of community formation. The finding is as follows. CSES contextualizes "histories" of the community into life experiences of local residents for community formation.
著者
松井 理直
出版者
神戸松蔭女子学院大学
雑誌
Theoretical and applied linguistics at Kobe Shoin : トークス (ISSN:13434535)
巻号頁・発行日
vol.5, pp.53-82, 2002-03-21

情報の構造化は、認知機構の処理する情報のエントロピーの減少として捉えることができる。情報が構造化されるにつれ、エントロピーが減少し、探索に必要な範囲が限定されていく。こうした認知機構の情報構造化過程を形式的に表現する方法の一つに、タイプ継承という手法がある。本研究は、主辞句構造文法 (HPSG) における音韻情報の構造と制約の相互作用を、タイプ継承という点から議論したものである。
著者
春日 速水 井口 和信 松井 理生 富樫 一巳
出版者
樹木医学会
雑誌
樹木医学研究 (ISSN:13440268)
巻号頁・発行日
vol.14, no.4, pp.174-179, 2010-10-31

シラフヨツボシヒゲナガカミキリ成虫の日周性を明らかにするために,北海道で7月下旬と8月下旬に日中約1時間ごとにトドマツとエゾマツの切株上の成虫数と行動を観察した.晴れた日と薄曇りの日には,成虫は午前中に切株に出現しはじめ,個体数は午後に最大となり,その後減少した.このことから,成虫は昼行性であることが示された.性比は雄に偏っていた.多くの成虫は単独またはマウントをしながら静止していた.雨天時に成虫は出現しなかった.25℃,16時間明期8時間暗期の条件下では,成虫の行動に明期と暗期の間で有意な差は見られなかった.これまでに研究されたヒゲナガカミキリ属3種の比較から,ある種が野外条件下で昼行性であるか夜行性であるかは光条件ではなく,活動に適した体温によって決まることが示唆された.
著者
松井 理直
出版者
神戸松蔭女子学院大学学術研究i委員会
雑誌
Theoretical and applied linguistics at Kobe Shoin : トークス (ISSN:13434535)
巻号頁・発行日
vol.18, pp.53-83, 2015-03-05

日本語の東京方言では、無声子音に挟まれた狭母音や語末にある狭母音がほぼ義務的に無声化を起こす。この無声化母音については、母音が残存しているかそれとも脱落しているのかという点で多くの議論がなされてきた。本稿では、日本語の母音無声化は音声学の観点からも母音脱落ではないことを主張する。また、この音声過程が素性指定やC/D モデルなどによって適切に説明できることを見る。
著者
松井 理直
出版者
大阪保健医療大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2010-04-01

関連性理論の中心的な概念である関連性の認知原理および関連性の伝達原理のうち、認知的関連性の数学的性質について研究を行った。その結果、回帰係数の特性を持った多値論理の枠組みが適切であり、情報の既定性と関連性が日常推論や日本語の様々な条件文の理解過程に重要な影響を与えていること、また各種認知バイアスが特に否定情報のフレームの大きさに強く影響されていることを明らかにした。また、この主観的確率の生成過程に関する数学的性質から、先入観や固定観念といった誤りの信念形成や、事実であっても信じられない現象について、その事実を排除してしまう数学的な性質の一部も解明できた。
著者
田窪 行則 有田 節子 今仁 生美 郡司 隆男 松井 理直 坂原 茂 三藤 博 山 祐嗣 金水 敏 宝島 格
出版者
京都大学
雑誌
基盤研究(A)
巻号頁・発行日
2007

日本語共通語、韓国語、英語、琉球語宮古方言のデータにもとづいて、日常言語の推論にかかわるモデルを構築し、証拠推論の性質、アブダクションによる推論と証拠推論との関係を明らかにした。時制、空間表現、擬似用法と推論の関係を明らかにした。関連性理論を用いた推論モデルの構築に関して推論の確率的な性質について研究を行い、一般的な条件文と反事実条件文の信念強度を共通の計算によって扱える計算装置を提案した。
著者
松浦 年男 松井 理直
出版者
北星学園大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2013-04-01

本研究課題では日本語の諸方言における有声阻害重子音の音響音声学的実現ならびに形態音韻論的分布について明らかにしてきた。特に天草市の諸方言における実態を詳しく調査し,同じ形態論的環境でも地域によって有声阻害重子音で実現するか否かが異なることを明らかにした。また,山形市周辺部についても調査を行い,声帯振動の実現が九州(天草)と異なることを明らかにした。さらに,九州地方の複数の地点において語根複合(助数詞,二字漢語)で有声阻害重子音が見られるかを調査し,一部の地域において生産性が高いことを指摘した。
著者
西垣内 泰介 郡司 隆男 松井 理直 松田 謙次郎
出版者
神戸松蔭女子学院大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2009

本研究は、「焦点」とスコープに関わる言語現象を取り上げ,形式化の整った統語論・意味論・音韻論の方法で理論的に分析するとともに,音声実験や言語コーパス調査などによって理論的考察を実証することを目的とする。具体的には,主題文,(指定的)分裂文など,様々な構文にあらわれる,いわゆるWH(疑問)要素,量化表現,否定対極表現などスコープに関連する統語・意味的要素と,イントネーションなど「焦点」に関する多様な音韻的要因の間の相互関係を分析し,統語論・意味論と音韻論との密接な関係を明らかにする。また,理論的背景の下にデザインされた音声実験を用いて,その結果を文法的分析の中に組み込んでいく。関連する言語事象の方言などによる言語変異について考察する。
著者
西垣内 泰介 郡司 隆男 松井 理直 シュペルティ フィリップ 松田 謙次郎 EMONDS Joseph
出版者
神戸松蔭女子学院大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2005

レキシコンと文法の制約について、文法論、形態論、意味論、音声音韻の各分野で理論的研究を行い、国会議事録などの発話コーパスを用いて実証的な研究を行った。具合的には述語の語彙的特性と再帰表現の単文内での束縛関係といわゆる長距離束縛の関わり、…を示した。平成20 年度の最後にあたってレキシコン、文法の制約が同一指示の現象に関与する諸相についての国際ワークショップを行った。