著者
渡辺 勝敏 高橋 洋 北村 晃寿 横山 良太 北川 忠生 武島 弘彦 佐藤 俊平 山本 祥一郎 竹花 佑介 向井 貴彦 大原 健一 井口 恵一朗
出版者
The Ichthyological Society of Japan
雑誌
魚類学雑誌 (ISSN:00215090)
巻号頁・発行日
vol.53, no.1, pp.1-38, 2006-05-25 (Released:2010-06-28)
参考文献数
247
被引用文献数
6

The biogeography of freshwater fishes in Japan was reviewed in terms of achievements and perspectives. In the last three decades, biogeographic studies have changed from earlier descriptions of the freshwater fish fauna, based on the Linnean classification system, to phylogenetic approaches using various molecular markers. Especially, the phylogeographic approach, which explores the formation of geographic distribution patterns of genealogical lineages within species, has become predominant. Analyses of genuine freshwater fishes have disclosed their speciation and dispersal patterns throughout temperate East Asia since the Neogene, along with the formation of the Japanese Archipelago. In particular, molecular clocks of mitochondrial DNA have played an important role in examinations of biogeographic relationships between the Japanese Archipelago and Chinese continent/Korean Peninsula, and vicariance by Fossa Magna in central Honshu Island. Patterns of range expansion through the sea and landlocking in coldtemperature euryhaline fishes have indicated their speciation and distribution dynamics under the fluctuating climatic conditions of the Plio-Pleistocene. Likewise, phylogeographic implications of unusual biological entities arising from interspecific hybridization or gynogenesis have been discussed. Nevertheless, despite the emphases given to some groups, the present knowledge of phylogeographic patterns of Japanese freshwater fishes is for the most part still insufficient for quantitative analyses of the overall history of the freshwater fish fauna and geographic regions of Japan. Improved research techniques and methodologies for the integration of findings from multiple taxa and/or genes are essential. Further, evolutionary formation of distributional ranges should be considered together with ecological biogeography, including the processes of local adaptation, interspecific interaction and extinction. Modern day disturbances of freshwater fish distributions, including fish transportation, are rapidly leading to artificial distribution patterns and extinctions. Exhaustive phylogeographic analyses should be necessary as a primary requirement for conserving freshwater fish biodiversity in Japan.
著者
藤田 朝彦 横山 良太 加藤 康充 井上 修 原田 守啓
出版者
応用生態工学会
雑誌
応用生態工学 (ISSN:13443755)
巻号頁・発行日
pp.21-00021, (Released:2022-03-23)
参考文献数
53
被引用文献数
1

アユ Plecoglossus altivelis は日本の淡水魚として,も っとも重要な水産魚種の 1 つである.河川におけるアユの資源量は,漁業協同組合等の放流による寄与も大きいが,多くの河川では,自然な再生産による資源量維持が主体となっている場合が多い.また,アユは河川内において,河床の付着藻類を摂餌することから,藍藻類やカゲロウ類など特定の生物を増加させる等,河川内の藻類相,底生動物相に強く関わるため,河川生態系において重要な位置を占める種である.アユ産卵場環境や産卵生態についての過去の調査研究の歴史は長く,主に水産試験場や大学等で行われてきた報告が多数存在するが,アユの生態・生活史との関係性も含めた総括的な整理はなされておらず,産卵環境の保全のための指針となる基本的な物理環境条件についての知見の総合化はいまだ不十分であると考える.よって,本研究では,これまでに報告されているアユの産卵環境についての文献を広く収集し,産卵環境の物理環境条件に関するデータを抽出した上で,それらの情報を総括し,豊富な研究事例とアユの生態・生活史の理解に基づく "アユの産卵場" 適地の条件を明らかにすることを目的としたレビューを行った.文献は,アユの産卵に関する記載のある研究についての文献を網羅的に収集し,1895 年~2019 年までに出版された計 339 件の論文から,その産卵環境の物理的条件を整理した.これらの文献は 9 割近くが自然河川の産卵場で得られたデータを使用しているが,人工河川での実験事例や,人工造成箇所のデータも含まれる.物理的条件については,産卵場の流速,水深,河床材,貫入深(河床軟度),卵の埋没深の 5 つの物理的条件を抽出・整理した.今回整理された情報は,過去に一般的な知見として認識されているアユ産卵環境の条件と大きな差異は無かったが,アユの産卵に関わる生理生態情報や土砂水理学的考察を踏まえ,5 つの物理的条件は独立した変数ではなく,浮き石状態の小礫で構成された河床環境を有する早瀬が,アユの産卵場として選好されていることが描き出された.アユの産卵場は,出水による土砂移動によってもたらされた早瀬への土砂の堆積・侵食の過程によって形成され,有限の寿命がある一時的産卵場(temporary spawning habitat) とでもいうべきハビタットであると考えられる.
著者
岩崎 貴也 阪口 翔太 横山 良太 高見 泰興 大澤 剛士 池田 紘士 陶山 佳久
出版者
日本生態学会
雑誌
日本生態学会誌 (ISSN:00215007)
巻号頁・発行日
vol.64, no.3, pp.183-199, 2014-11-30

生物地理学は、歴史的側面や生態的側面などの観点から、生物の分布パターンや分布形成プロセスの解明を目指す学問であり、進化生態学や群集生態学、保全生物学などの分野とも強い関連をもつ学際的領域である。1990年代以降、遺伝解析技術の恩恵を受けた系統地理学の隆盛によって、生物地理学は大きな発展を遂げてきた。さらに近年では「地理情報システム(GIS)」や、それを利用した「気候シミュレーション」、「生態ニッチモデリング」といった新たな解析ツールが、生物地理学分野に新しい流れを生み出しつつある。その基礎的な活用例として、現在の生物種の分布情報と気候要因から生態ニッチモデルを構築し、気候シミュレーションから得られた異なる時代の気候レイヤに投影するというアプローチが挙げられる。これにより、過去や現在、未来における生物の分布を予測することが可能となり、時間的な分布変化を推定することができる。さらに、GISを活用して、モデル化された生態ニッチや系統地理学的データを複合的に解析することで、近縁種間でのニッチ分化や、分布変遷史を考慮に入れた種分化要因の検証、群集レベルでの分布変遷史の検証なども可能となる。本総説では、最初に基礎的な解析ツールについて解説した後、実際にこれらのツールを活用した生物地理学とその関連分野における研究例を紹介する。最後に、次世代シークエンシングによって得られる膨大な遺伝情報や古DNAデータの有用性について紹介した後、それらの情報を用いた生物地理学や関連分野における今後の展望について議論し、GIS技術がその中で重要な役割を果たしうることを示す。
著者
岩崎 貴也 阪口 翔太 横山 良太 高見 泰興 大澤 剛士 池田 紘士 陶山 佳久
出版者
一般社団法人 日本生態学会
雑誌
日本生態学会誌 (ISSN:00215007)
巻号頁・発行日
vol.64, no.3, pp.183-199, 2014-11-30 (Released:2017-05-20)
参考文献数
97
被引用文献数
1

生物地理学は、歴史的側面や生態的側面などの観点から、生物の分布パターンや分布形成プロセスの解明を目指す学問であり、進化生態学や群集生態学、保全生物学などの分野とも強い関連をもつ学際的領域である。1990年代以降、遺伝解析技術の恩恵を受けた系統地理学の隆盛によって、生物地理学は大きな発展を遂げてきた。さらに近年では「地理情報システム(GIS)」や、それを利用した「気候シミュレーション」、「生態ニッチモデリング」といった新たな解析ツールが、生物地理学分野に新しい流れを生み出しつつある。その基礎的な活用例として、現在の生物種の分布情報と気候要因から生態ニッチモデルを構築し、気候シミュレーションから得られた異なる時代の気候レイヤに投影するというアプローチが挙げられる。これにより、過去や現在、未来における生物の分布を予測することが可能となり、時間的な分布変化を推定することができる。さらに、GISを活用して、モデル化された生態ニッチや系統地理学的データを複合的に解析することで、近縁種間でのニッチ分化や、分布変遷史を考慮に入れた種分化要因の検証、群集レベルでの分布変遷史の検証なども可能となる。本総説では、最初に基礎的な解析ツールについて解説した後、実際にこれらのツールを活用した生物地理学とその関連分野における研究例を紹介する。最後に、次世代シークエンシングによって得られる膨大な遺伝情報や古DNAデータの有用性について紹介した後、それらの情報を用いた生物地理学や関連分野における今後の展望について議論し、GIS技術がその中で重要な役割を果たしうることを示す。
著者
川村 正英 井上 一 花川 志郎 横山 良樹 長島 弘明
出版者
医学書院
巻号頁・発行日
pp.1001-1003, 1990-08-25

抄録:全人工股関節置換術(THR)後抜去のやむなきに至り,Girdlestone関節形成術と同じ状態になった症例について,歩行機能を中心に評価した.1975年以来私たちが扱った.THR抜去症例,8例9関節を対象として,直接検診を行った.原疾患は慢性関節リウマチ(RA)4例5関節,変形性股関節症(OA)2例2関節,大腿骨頭壊死(AN)1例1関節,大腿骨頸部骨折1例1関節である.抜去原因は感染が7例8関節,著明なゆるみと骨折が1例あった.RA以外の4例は杖と補高装具を使用して少なくとも自宅周辺は歩行可能であり,うち3例は就労もしていた.しかしRAの4例は,調査時には全例車椅子生活か寝たきりであった.THR抜去を行った場合,杖が使える上肢機能があって他の関節障害が重篤でない症例では,術後の筋力増強訓練や補助具の使用により実用的な歩行が十分期待できる.
著者
田中 きく代 飯田 収治 阿河 雄二郎 中谷 功治 藤井 和夫 関 隆志 横山 良 田中 きく代 赤阪 俊一 大黒 俊二
出版者
関西学院大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2003

本研究は、「文化的ポーダーランド」と「マージナリティ」という概念を設定し、集団における周辺部に焦点をあて、そこに存在する人・モノ・ことのあり様に、対抗・抗争する諸社会の間にあって融和し共生しようとする要因を見出そうとするものである。「文化的ボーダーランド」は、国家や民族という文化的背景を異にする集団問に存在する中間的空間で、それら複数の集団の周辺部をも含むものである。そこでは、対立的要因をはらみながらも、様々なレベルでお互いに共鳴し和解しあう要因のネットワークが張り巡らされている。一方の「マージナリティ」は、そうした空間で、越境をしたり、もとの集団に戻ったりするハイブリッドな存在のあり様を示している。本研究では、これら中間領域の中間的存在が、歴史の中の媒介項として、歴史の連続性を生み、またダイナミズムを与えてきたのではないか。中間の存在を注視することで、一元的ではない複層的で多様な人間世界の歴史的なメカニズムを理解できるのではないかという問題意識から、世界史を全体として見通すようなフレームワークを模索した。また、このフレームワークに基づいて、参加者を「西洋古代・中世班」、「ヨーロッパ近代・現代班」、「アメリカ史班」の3つの班に編成したが、それぞれの時代や地域の「文化的ボーダーランド」空間で、特に「マージナリティ」に留意しながら、結びあう諸関係、結び合わせる媒体や媒介項の存在を具体化しようとした。これらの研究を、研究者個人の研究に依存するのではなく、班ごとに随時連絡をとりあい、また全体の研究会に持ち寄ることで、研究構成員の共通認識を作り上げた。そして、これに基づき、総合的観点から、世界史における「文化的ボーダーランド」と「マージナリティ」概念の有用性を再確認した。これらの概念と本研究のフレームワークをさらに洗練することで、従来の一元的な世界史の描き方ではない、エリートから一般の人びとまで、諸段階の様々な集団を射程に入れた研究が可能で、複層的で多様な人間世界を解明しうるのではないか。また、集団における周辺の役割やアイデンティティと構造の関係といった世界史の課題にも応えうるのではないかという展望を持つに至った。
著者
横山 良平 伊東 弘一 湯浅 芳郎 陸 暁茜
出版者
一般社団法人日本機械学会
雑誌
日本機械学會論文集. C編 (ISSN:03875024)
巻号頁・発行日
vol.60, no.573, pp.1759-1766, 1994-05-25
被引用文献数
1

An optimal unit sizing method is developed for hybrid power generation systems utilizing photovoltaic and wind energy. Equipment capacities and electric maximum demand are determined so as to minimize the annual total cost and annual energy consumption from the viewpoints of economy and energy conservation, respectively. This optimization problem is considered as a multiobjective one, and a discrete set of Pareto optimal solutions is derived numerically using the weighting method. Two systems interconnected with the electric power grid are inventigated : one has the option of reverse power flow into the grid, and the other, no option. By carrying out some case studies, the trade-off relationships between the two objectives are clarified, and optimal values of equipment capacities are determined. The effect of electricity deficit on unit sizing is also investigated.
著者
田中 きく代 阿河 雄二郎 竹中 興慈 横山 良 金澤 周作 佐保 吉一 田和 正孝 山 泰幸 鈴木 七美 中谷 功治 辻本 庸子 濱口 忠大 笠井 俊和
出版者
関西学院大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2008

本研究は、海域史の視点から18・19世紀に北大西洋に出現するワールドの構造に、文化的次元から切り込み、そこにみられた諸関係を全体として捉えるものである。海洋だけでなく、海と陸の境界の地域に、海からのまなざしを照射することで、そこに国家的な枠組みを超えた新たな共時性を映し出せるのではないか。また、海洋を渡る様々なネットワークや結節点に、境界域の小さな共同体を結びつけていくことも可能ではないか。このような着想で、共同の研究会を持ち、各々が現地調査に出た。また、最終年度に、新たなアトランティック・ヒストリーの可能性を模索する国際海洋シンポジウム「海洋ネットワークから捉える大西洋海域史」を開催した。なお、田中きく代、関西学院大学出版会、日本学術振興会科学研究費補助金基盤研究(B)研究成果報告書『18・19世紀北大西洋海域における文化空間の解体と再生-「境界域」の視点から-』を、報告書として刊行している。