著者
金野 亮太 井上 修平 山本 正嘉
出版者
日本トレーニング科学会
雑誌
トレーニング科学 (ISSN:13494414)
巻号頁・発行日
vol.22, no.4, pp.357-365, 2010 (Released:2014-04-03)
参考文献数
27
被引用文献数
2

暑熱環境(気温35 ℃,湿度80%)に設定した人工気象室において,8名の自転車競技選手が長時間の自転車ペダリング運動を行い,その運動の途中で全身に冷水をかけて身体冷却を行った場合に,体温をはじめとする生理応答や,主観的な指標にどのような効果があるかを検討した. 被験者は,レースで使用するロードレーサーを用いて,走行速度を40km/h に固定し,90 分間の運動を行った.この運動強度は乳酸閾値を超えないものであり,実際のレースにおける運動強度からみると,比較的弱い部類に属するものであった.被験者は,運動開始から60 分を経過したところで,全身に5 ℃の水をかぶる条件(以下,水かぶり)と,それを行わない対照条件の 2 通りを,ランダムな順序で行った. その結果,水かぶりを行うことによって体温(直腸温度,平均皮膚温度)の上昇は抑制され,その効果は運動終了までの30 分間持続した.また水かぶり後には心拍数や酸素摂取量も低値を示し,運動効率の改善が窺えた.以上の結果から,暑熱環境下で行う水かぶりは,熱中症を予防したり,運動パフォーマンスを維持する上で,実用的で効果の高い手段であることが示唆された.
著者
大町 達夫 井上 修作 水野 剣一 山田 雅人
出版者
公益社団法人 日本地震工学会
雑誌
日本地震工学会論文集 (ISSN:18846246)
巻号頁・発行日
vol.11, no.1, pp.1_32-1_47, 2011 (Released:2011-12-05)
参考文献数
17
被引用文献数
4 12

2008年岩手・宮城内陸地震の際,KiK-net一関西観測点では上下動の最大加速度が4G(Gは重力加速度)に近い驚異的な強震記録が得られた.この加速度時刻歴には自由地盤表面での強震記録とは思えない特徴が認められることから,強震観測点の現地調査や振動台模型実験,数値解析などによって,この驚異的な上下動加速度の成因を調べた.その結果,この強震記録には強大な地震動入力によって地震観測小屋がロッキング振動で浮き上がり,地面と再接触した際の衝撃力の影響が強く反映している可能性が高いことが見出された.またこの影響がなければ,本震時の4Gに近い上下動最大加速度は1.6G程度であることも導かれた.
著者
大森 崇史 柏木 秀行 井上 修二朗 古川 正一郎 下見 美智子 宮崎 万友子 原田 恵美 廣木 貴子 岡 佳子 堤 一樹 大屋 清文
出版者
日本緩和医療学会
雑誌
Palliative Care Research (ISSN:18805302)
巻号頁・発行日
vol.17, no.4, pp.165-170, 2022 (Released:2022-11-24)
参考文献数
14

心不全患者に対する緩和ケアの必要性が注目されているが,まだ国内では提供体制が十分に整っていない.飯塚病院は福岡県飯塚市に位置する1048床の急性期病院であり,同院において心不全の緩和ケアを提供するためにハートサポートチーム(HST)を創設し,心不全緩和ケア提供体制を構築した.2017年5月にHSTを創設後,2022年3月までに循環器内科から168例の心不全患者の緩和ケア介入依頼があった.介入事例のうち,緩和ケア診療加算の算定基準を満たしたのは25例(14.8%)だった.HSTの創設・運用にあたり,スタッフの確保,育成,持続する仕組みづくりが課題であると考えられた.循環器の専門職だけでなく緩和ケアや精神ケア等を専門とするスタッフと協働したHSTを創設することで,急性期病院で心不全患者に対する緩和ケア提供体制を構築する最初の一歩となった.
著者
浜田 百合 井上 修斗 庄司 裕子
出版者
日本感性工学会
雑誌
日本感性工学会論文誌 (ISSN:18845258)
巻号頁・発行日
pp.TJSKE-D-19-00025, (Released:2019-10-21)
参考文献数
33
被引用文献数
1

This paper describes the trends in the phonemes used in naming by using the attributes of objects. The study used the names of characters in video games and automobiles as the targets of analysis. Through categorizing the objects based on their attributes, the study sought to verify if there existed a difference in the used phonemes between the categories. Resultantly, the study has clarified the phonemes used to illustrate the smallness, lightness, and weakness in addition to the phonemes used to depict the largeness, heaviness, and strength between two objects. In addition, the study had also employed evaluation experiments to verify the trends in the phonemes used in naming, which was derived from the analyses of the objects’ attributes, and to verify whether the phonemes used in the naming process matched with the people’s impressions. Throughout this process, the study has found the objects’ specific naming trends and the characteristics of the phonemes. By conducting the same analysis process for many objects, the study hopes to propose a supporting method for the naming process of specific objects.
著者
大内 政嗣 井上 修平 尾崎 良智 藤田 琢也 上田 桂子 花岡 淳
出版者
特定非営利活動法人 日本呼吸器外科学会
雑誌
日本呼吸器外科学会雑誌 (ISSN:09190945)
巻号頁・発行日
vol.28, no.2, pp.170-176, 2014-03-15 (Released:2014-04-28)
参考文献数
18
被引用文献数
1 4

シカ生肉が感染源と考えられたウエステルマン肺吸虫症の1例を経験したので報告する.症例は49歳,男性.腹部不快感に続く気胸,胸水のため当科紹介となった.発症2週間前にシカ生肉の摂食歴があり,末梢血と胸水の好酸球増多から肺吸虫症を疑った.胸水が高度に混濁しており,膿胸を合併した自然気胸の可能性を否定できず,胸腔鏡下手術を施行した.横隔膜と壁側胸膜に多数の膿苔が認められ,下葉の臓側胸膜にも膿苔が存在していたため,胸膜生検と下葉部分切除術を行った.血清学的診断で肺吸虫症と診断,プラジカンテルにより治療し,好酸球増多は改善した.術後13ヵ月を経過し再発を認めていない.肺吸虫症例を疑う症例では早期に血清学的診断を行い,迅速にドレナージと薬物療法を行うことが重要である.また,肺吸虫症における胸腔内病変の存在部位はメタセルカリアの移動経路に一致しているものと考えられた.
著者
辻 正富 斉藤 宣彦 井上 修二
出版者
公益社団法人 日本薬理学会
雑誌
日本薬理学雑誌 (ISSN:00155691)
巻号頁・発行日
vol.118, no.5, pp.340-346, 2001 (Released:2002-09-27)
参考文献数
28
被引用文献数
5 3

消化吸収阻害系薬物には, 1)脂質吸収阻害薬と2)糖質吸収阻害薬がある. 脂質吸収阻害薬としてはオルリスタットが, 米国, 欧州で実用化されている. 本邦でも治験が開始されている. カワラケウメイ抽出物はその作用成分が同定されれば薬物として開発される可能性があるが, 当面は食品添加による特定保健用食品(機能性食品)としての実用化が考えられる. 脂肪代替食品としては脂肪の味覚を保持し, 消化吸収されないオレストラ, 蔗糖ポリエステルがあるがまだスナック菓子の添加物として使用されている段階である. 糖質消化吸収阻害薬としては主として, 小腸絨毛にある二糖類分解酵素活性を阻害するα-グリコシダーゼ阻害薬が食後高血糖を抑制する作用により糖尿病薬として実用化されている. これが抗肥満薬として開発されるには下痢, 放屁等の消化器系副作用の克服が鍵になる.
著者
藤田 朝彦 横山 良太 加藤 康充 井上 修 原田 守啓
出版者
応用生態工学会
雑誌
応用生態工学 (ISSN:13443755)
巻号頁・発行日
pp.21-00021, (Released:2022-03-23)
参考文献数
53
被引用文献数
1

アユ Plecoglossus altivelis は日本の淡水魚として,も っとも重要な水産魚種の 1 つである.河川におけるアユの資源量は,漁業協同組合等の放流による寄与も大きいが,多くの河川では,自然な再生産による資源量維持が主体となっている場合が多い.また,アユは河川内において,河床の付着藻類を摂餌することから,藍藻類やカゲロウ類など特定の生物を増加させる等,河川内の藻類相,底生動物相に強く関わるため,河川生態系において重要な位置を占める種である.アユ産卵場環境や産卵生態についての過去の調査研究の歴史は長く,主に水産試験場や大学等で行われてきた報告が多数存在するが,アユの生態・生活史との関係性も含めた総括的な整理はなされておらず,産卵環境の保全のための指針となる基本的な物理環境条件についての知見の総合化はいまだ不十分であると考える.よって,本研究では,これまでに報告されているアユの産卵環境についての文献を広く収集し,産卵環境の物理環境条件に関するデータを抽出した上で,それらの情報を総括し,豊富な研究事例とアユの生態・生活史の理解に基づく "アユの産卵場" 適地の条件を明らかにすることを目的としたレビューを行った.文献は,アユの産卵に関する記載のある研究についての文献を網羅的に収集し,1895 年~2019 年までに出版された計 339 件の論文から,その産卵環境の物理的条件を整理した.これらの文献は 9 割近くが自然河川の産卵場で得られたデータを使用しているが,人工河川での実験事例や,人工造成箇所のデータも含まれる.物理的条件については,産卵場の流速,水深,河床材,貫入深(河床軟度),卵の埋没深の 5 つの物理的条件を抽出・整理した.今回整理された情報は,過去に一般的な知見として認識されているアユ産卵環境の条件と大きな差異は無かったが,アユの産卵に関わる生理生態情報や土砂水理学的考察を踏まえ,5 つの物理的条件は独立した変数ではなく,浮き石状態の小礫で構成された河床環境を有する早瀬が,アユの産卵場として選好されていることが描き出された.アユの産卵場は,出水による土砂移動によってもたらされた早瀬への土砂の堆積・侵食の過程によって形成され,有限の寿命がある一時的産卵場(temporary spawning habitat) とでもいうべきハビタットであると考えられる.
著者
井上 修一
出版者
日経BP社
雑誌
日経レストラン (ISSN:09147845)
巻号頁・発行日
no.275, pp.26-29, 1999-08

■今年5月,日本フードサービス協会(JF)の会長に就任した,ハングリータイガー(横浜市)の井上修一社長は「自分のような小規模企業の社長が,会長にまで押し上げてもらえる。JFは決して大企業の集まりではなく,外食企業の誰もが参加できる団体だ」と強調する。

2 0 0 0 OA 地割の進展

著者
井上 修次
出版者
The Association of Japanese Geographers
雑誌
地理学評論 (ISSN:00167444)
巻号頁・発行日
vol.33, no.2, pp.51-79, 1960-02-01 (Released:2008-12-24)
参考文献数
3
被引用文献数
1

1. 地割の進展を,それと不可分な居住-直接には居宅配置,間接には全生活との連関において眺めた.この揚合まず何よりも,地割・居住両者の進展それ自身の客観的描写,展開を,応分の意義あるものとした. 2. そのため,図面を多用し,資料はなるべくそのなかに織込み,図主文従の形をとり,解説の紙面は最小限にした(地理学における地図の価値・活用は,もつと強調されてよいと思う). 3. 説明に当つては,次の点を考慮した.地割も居宅配置も,あくまで時の函数として進展する.その時は,たとえば両者に,いかなる年齢的行動をとらせているのか?それは,具体的にいつて,どのようなものが,どんな速さで,どのように変つてゆくのか?場所や,時代や,その他多勢は,その際,どんな役割を演ずるのか? 4. 実例としては,次の7つをとつた(括弧内は観察期間). a. 南米PampaのPirovano農場 (1875-1930). b. 北満克山県第172号井 (1913-1935). c. 北海道芽室原野の上伏古 (1910-1955). d. 武蔵野の上富村 (1696-1954). e. その2隣村北永井と藤久保(特定期聞なし). f. 北海道旧美唄兵村 (1892-1954). g. 夜見浜の旧富益村(特定期間なし). 5. これらのうちでは,上富がその資料と価値とから,主動となつているが,他のものもこれを助けて,問題点の客観化による理解に役立てられている.
著者
井上 修一
出版者
中部学院大学
雑誌
中部学院大学・中部学院大学短期大学部研究紀要 (ISSN:1347328X)
巻号頁・発行日
vol.7, pp.113-126, 2006-03

利用者家族による介護経験年数、面会頻度、家族会への参加状況が、家族自身の苦情表明行動に影響することが明らかになった。また、家族は身内を施設にお願いしながらも、現状に迷いを感じていることがわかった。これで良かったのだと本当に安心・確信できる環境・関係づくりが大切であるとともに、それには、家族関係支援や家族と援助者との協力関係構築が必要になってくる。今後、苦情が言いたくても言えない家族の背景を明らかにし、どのようにフォローするかが更に重要になるだろう。
著者
井上 修一 穴田 一
出版者
一般社団法人 人工知能学会
雑誌
人工知能学会第二種研究会資料 (ISSN:24365556)
巻号頁・発行日
vol.2022, no.FIN-028, pp.43, 2022-03-12 (Released:2022-10-21)

In recent years, research on financial transactions using deep reinforcement learning, which is one of machine learning, has been actively conducted. In these studies, various approaches have been taken, such as those that consider the number of financial instruments bought and sold, compound interest calculation, and those that use stock price charts for input, but enough profit has not been made in all periods. It is considered that this is because the opportunity loss cannot be taken into consideration. Therefore, in this study, we build a model to learn the optimal buying and selling timings to make a profit in stock investment by incorporating the opportunity loss for each action into the reward in deep reinforcement learning, and show its effectiveness.
著者
井上 修
出版者
一般社団法人 日本血栓止血学会
雑誌
日本血栓止血学会誌 (ISSN:09157441)
巻号頁・発行日
vol.26, no.1, pp.21-28, 2015 (Released:2015-02-24)
参考文献数
50

要約:Immunoglobulin-superfamily(Ig-SF)は原始的な生物にも存在する膜蛋白である.生命の進化に合わせ機能が継ぎ足され,現在は数千種類の多様性を持つ一大ファミリーとなった.その一部は,血栓止血の中心的な役割を担う血小板でも,膜蛋白として利用されている.傷からの出血を早く止めることが生存競争の重要課題であった哺乳類では,血小板膜上にIg-SF を持つことが迅速な血栓止血に決定的なアドバンテージをもたらし,現在の繁栄の一因になったと想像される.本稿では血小板膜上のIg-SF に焦点をあて,その役割について紹介したい.
著者
尾崎 良智 井上 修平 藤野 昇三 紺谷 桂一 澤井 聡 鈴村 雄治 花岡 淳 藤田 美奈子 鹿島 祥隆 古川 幸穂
出版者
The Japanese Association for Chest Surgery
雑誌
日本呼吸器外科学会雑誌 (ISSN:09190945)
巻号頁・発行日
vol.14, no.6, pp.726-730, 2000-09-15 (Released:2010-06-28)
参考文献数
14
被引用文献数
3 2

入院中に喀毛症 (trichoptysis) を認め, 左上葉気管支と交通のあった縦隔奇形腫の1手術例を経験した.症例は36歳, 女性.1995年6月の検診で左上肺野に異常陰影を指摘され, 血疾が出現したため当科に入院した.入院中に喀毛をきたし, 縦隔成熟型奇形腫の気道内穿破と診断された.同年7月に縦隔腫瘍摘出および左上区切除術を行った.切除標本で腫瘍は左B3気管支に穿破していた.縦隔成熟型奇形腫は比較的高頻度に隣接臓器, 特に肺・気管支への穿孔をきたすが, 画像診断が進歩した現在では, 喀毛症により診断される例は極めてまれである.穿孔する原因としては腫瘍内の膵, 腸管組織による自家消化作用が注目されているが, 本症例では, 膵, 腸管組織は認められず, 腫瘍内容物の増大に伴う嚢胞内圧の上昇と周囲組織との炎症性癒着が穿孔の主たる原因と考えられた.
著者
井上 修平 鈴村 雄治 高橋 憲太郎
出版者
The Japanese Respiratory Society
雑誌
日本胸部疾患学会雑誌 (ISSN:03011542)
巻号頁・発行日
vol.32, no.9, pp.861-866, 1994-09-25 (Released:2010-02-23)
参考文献数
10

48歳, 男性に発症した間質性肺炎を経験した. 給湯用の銅管溶接作業に従事し, 約7時間の作業終了前頃より悪寒, 発熱がみられ, 呼吸困難となり紹介入院となった. 胸部X線写真で両肺野のスリガラス様陰影があり, 動脈血ガスは PO2 34.5Torr, PCO2 29.4Torr と著明な低酸素血症を示していた. 経気管支肺生検では胞隔へのリンパ球浸潤や線維化がみられ, 肉芽腫性肺臓炎の所見を呈した. 症状および胸部X線異常陰影はステロイド剤の投与で軽快した. この間質性肺炎の原因として銅管溶接時に使用した銀ろうに含まれるカドミウムフュームが考えられた. 本論文で自験例を掲示し, 若干の文献的考察を加えて報告した.
著者
井上 修一
出版者
JAPANISCHE GESELLSCHAFT FUER GERMANISTIK
雑誌
ドイツ文学 (ISSN:03872831)
巻号頁・発行日
vol.46, pp.64-72, 1971-03-31 (Released:2008-03-28)

IIn "ad me ipsum“ bezeichnet Hofmannsthal seine Jugendzeit als glorreiche und gefährliche Praeexistenz, in der sich kein Ich befindet. Dazu sagt er noch im imaginären Brief an C. B. "Ich staune, wie man es (=Hofmannsthals Jugendoeuvre) hat ein Zeugnis des l'art pour l'art nennen können-wie man hat den Bekenntnischarakter, das furchtbar Autobiographische daran übersehen können“. Dies Autobiographische, wie es in "ad me ipsum“ steht, bedeutet seine Selbstentwicklung von Praeexistenz zu Existenz, vom schönen ästhetischen Leben zum wirklichen Leben, also der Weg zum Sozialen als Weg zum höheren Selbst. Auf "ad me ipsum“ gegründet, interpretiert R. Alewyn in "Über Hugo von Hofmannsthal“ die Jugendwerke Hofmannsthals und kommt zu einem berühmten schematischen Schluß "vom Tempel auf die Straße“. Heute scheint diese Formulierung als unwiderlegbar zu gelten, aber nach meiner Meinung, entspricht seine Behauptung nicht dem eigentlichen Inhalt der Werke von Hofmannsthal. Vor allem ist diese Formulierung, die das Ich oder das bewußte Verhalten für wichtig hält, allzu rationalistisch, während die Werke Hofmannsthals sinnlich sind.IIHofmannsthals "Märchen der 672. Nacht“ beschreibt die sinnlich drohende, verschlungene Welt. Der Kaufmannssohn ist ein Ästhet, der in schöner Praeexistenz lebt, aber er hat keine Sehnsucht nach dem wirklichen Leben, wie sie Claudio in "Der Tor und der Tod“ hat. Er liebt Kunstwerke, aber er fühlt keinen Neid auf Künstler, der in "Der Tod des Tizian“ an Desiderio frißt, sondern er bleibt ein Liebhaber. Er betätigt sich weder am Leben noch an der Kunst. In "ad me ipsum“ ist ihm vorzuwerfen, daß er kein aktives Ich hat. Aber deswegen schärft sich seine Sinnlichkeit, und er kann die seltsame Zauberkraft der verschlungenen Welt empfinden und sich der Anziehungskraft überlassen. Der Diener, die drei Dienerinnen, das furchtbare Kind an der Scheibe des Glashauses und die Edelsteine im Märchen sind alle nichts anderes als die Personifikationen der seltsamen, unwiderstehlichen Anziehungskraft des Schicksals. Diese Anziehungskraft beherrscht die Welt hinter den Erscheinungen. Der Rationalist, der sich immer auf sein Ich gegründet verhält, sieht nur Tatsachen. Aber der Kaufmannssohn, nämlich der passive Ästhet, beschäftigt sich mit der geheimen Welt, die in einem Sinne noch wirklicher ist als die sachlichen Erscheinungen. Also kann man seine Passivität, seinen Mangel an Ich und sein Sich-tragenlassen auch eine Art von Fähigkeit nennen.