著者
金子 真司 後藤 義明 田淵 隆一 赤間 亮夫 池田 重人 篠宮 佳樹 今村 直広
出版者
国立研究開発法人森林研究・整備機構 森林総合研究所
雑誌
森林総合研究所研究報告 (ISSN:09164405)
巻号頁・発行日
vol.17, no.3, pp.259-264, 2018 (Released:2018-11-15)
参考文献数
18

福島県十万山(浪江町・双葉町)の森林火災(2017年4月29日~ 5月10日)の延焼地において、火災直後に山頂部のアカマツ林と谷部のスギ林で樹木と土壌の試料を採取して放射性セシウム(RCs: 134Cs+137Cs)濃度を測定して火災の影響を調べた。樹木については、同一木の幹の燃焼側と非燃焼側から樹皮を採取した。土壌は燃焼地と隣接する非燃焼地から堆積有機物層と表層土壌を採取した。アカマツでは燃焼樹皮が非燃焼樹皮に比べて現存量とRCs 濃度とRCs 蓄積量が小さかった個体が存在した。また、アカマツ林、スギ林で調査したすべての堆積有機物層のRCs 濃度が燃焼箇所に比べて非燃焼箇所で高かった。
著者
岡本 透 大丸 裕武 池田 重人 吉永 秀一郎
出版者
日本第四紀学会
雑誌
第四紀研究 (ISSN:04182642)
巻号頁・発行日
vol.39, no.3, pp.215-226, 2000-06-01 (Released:2009-08-21)
参考文献数
30
被引用文献数
6 9

下北半島北東部の太平洋岸には,砂丘砂や泥土に覆われたヒバの埋没林が各所に認められる.この埋没林の形成期は,約2,600~2,000年前,約1,000~850年前,約500年前,および現代である.調査地域に分布する砂丘砂中に認められる埋没腐植層の年代は,14C年代値と白頭山苫小牧火山灰の年代から,約5,300年前,約2,700年前,約1,000~900年前,約600~500年前,そして約200年前に区分された.埋没腐植層の年代により,調査地域に分布する砂丘の形成期は,約5,000年前以降,約2,500年前以降,約1,000年前以降,約600年前以降,約100年前以降と推定された.約2,500年前以降は,砂丘の形成期の年代とヒバ埋没林の形成期の年代とがほぼ一致するため,ヒバ埋没林の形成には砂丘砂の移動が大きく関与している.約2,600~2,000年前のヒバ埋没林は,その年代と分布から,約3,000~2,000年前の小海退にともなう砂丘砂の移動によって形成された.約1,000年前以降に形成された砂丘については,人為的影響によって形成された可能性がある.一方,調査地域周辺には,約700~500年前の製鉄遺跡が数多く分布し,江戸時代後期にも南部藩などによって製鉄が試みられている.砂鉄採取のための砂丘の掘り崩しや,製鉄用の木炭を得るための沿岸部における森林伐採といった人為的影響によって,約600年前以降と約100年前以降に砂丘砂の移動があった.それにともなって,約500年前,現代の年代を示すヒバ埋没林が形成された.
著者
池田 重美 中川 致之 岩浅 潔
出版者
Japanese Society of Tea Science and Technology
雑誌
茶業研究報告 (ISSN:03666190)
巻号頁・発行日
vol.1972, no.37, pp.69-78, 1972-06-20 (Released:2009-07-31)
参考文献数
6
被引用文献数
9 5

煎茶の味と成分組成の関係,あるいは,うまい茶の飲み方の基礎資料として茶69に対して180mlの湯量で40,60,80,95℃の温度と,2,4,6,8,10分の時間を組み合わせた条件で浸出した場合,茶成分がどのように溶出するかを調べた。次に茶の粒度を変えた場合の窒素,タンニン溶出度についても同様の実験を試みた。実験結果から1 温度60℃と80℃の間に成分溶出害胎に特に差のあることが判明した。2 窒素,カフェイン,タンニンは上級茶,並級茶ともに共通した傾向が認められたが,高温におけるエピガロカテキンガレート,およびカテキン合計値の溶出割合は上級茶が高かった。3 各種の成分中,全アミノ酸は上級茶,並級茶ともに溶出割合は高かった。4 粒度については窒素,タンニンともに細かいほど容易に溶出したが,タンニンは細かい粒度を除いて高温では大差がなかった。5 窒素に対するタンニンの比率は全体的には並級茶のほうが大きかったが,両者とも浸出温度の上昇とともに増加し上級茶は60℃と80℃の間に,特に差が認められた。以上の結果から高級茶は低温でゆっくり,下級茶は高温で短時間に茶を入れるのが適当と思われた。なお,本研究は著者の1人池田が,農林省茶業試験場に国内留学中に行なったものであり,実施にあたって種々の御指導,御協力をいただいた同場,久保田技官およびその他の方々に深く感謝します。
著者
岡本 透 志知 幸治 池田 重人
出版者
日本森林学会
雑誌
日本森林学会大会発表データベース
巻号頁・発行日
vol.130, 2019

<p>東北地方の日本海側における江戸時代のスギの分布変化を解明するにあたり、秋田県を対象にして絵図の有効性を検討した。江戸時代初期の山地植生を正保国絵図とその郷帳により確認した。郷帳の山林の種別は、由利領は「芝山」「松山」など細分されていたが、秋田領は森林全般を示す「はへ山」のみであった。国絵図の描写を郷帳の記載と比較すると、由利領はおおむね山林種別ごとに描き分けられていた。一方、秋田領は「はへ山」にあたる場所に「杦山」「雑木」と注記があり、針葉樹と広葉樹が描き分けられていた。秋田藩では17世紀後半には森林資源の減少が進み、領内の森林資源の調査が進められた。山絵図が作成された地域では、その注記により当時の植生や林相の推測が可能である。また、同時期に作成数が増加した山論、水論などに関わる裁許絵図の中にも植生や土地利用が詳しく記載されるものがあり、利用することができる。秋田藩は19世紀始めに抜本的な林政改革を行い、山林区分ごとに絵図を数多く作成した。こうした大縮尺の山絵図では、描写による情報だけでなく、樹種や林相が注記されることが多いため、当時の植生の分布や状況を把握することができる。</p>
著者
岡本 透 大丸 裕武 池田 重人 吉永 秀一郎
出版者
Japan Association for Quaternary Research
雑誌
第四紀研究 (ISSN:04182642)
巻号頁・発行日
vol.39, no.3, pp.215-226, 2000-06-01
参考文献数
30
被引用文献数
2 9

下北半島北東部の太平洋岸には,砂丘砂や泥土に覆われたヒバの埋没林が各所に認められる.この埋没林の形成期は,約2,600~2,000年前,約1,000~850年前,約500年前,および現代である.調査地域に分布する砂丘砂中に認められる埋没腐植層の年代は,<sup>14</sup>C年代値と白頭山苫小牧火山灰の年代から,約5,300年前,約2,700年前,約1,000~900年前,約600~500年前,そして約200年前に区分された.埋没腐植層の年代により,調査地域に分布する砂丘の形成期は,約5,000年前以降,約2,500年前以降,約1,000年前以降,約600年前以降,約100年前以降と推定された.約2,500年前以降は,砂丘の形成期の年代とヒバ埋没林の形成期の年代とがほぼ一致するため,ヒバ埋没林の形成には砂丘砂の移動が大きく関与している.約2,600~2,000年前のヒバ埋没林は,その年代と分布から,約3,000~2,000年前の小海退にともなう砂丘砂の移動によって形成された.約1,000年前以降に形成された砂丘については,人為的影響によって形成された可能性がある.<br>一方,調査地域周辺には,約700~500年前の製鉄遺跡が数多く分布し,江戸時代後期にも南部藩などによって製鉄が試みられている.砂鉄採取のための砂丘の掘り崩しや,製鉄用の木炭を得るための沿岸部における森林伐採といった人為的影響によって,約600年前以降と約100年前以降に砂丘砂の移動があった.それにともなって,約500年前,現代の年代を示すヒバ埋没林が形成された.
著者
佐々 朋幸 後藤 和秋 長谷川 浩一 池田 重人
出版者
森林立地学会
雑誌
森林立地 (ISSN:03888673)
巻号頁・発行日
vol.32, no.2, pp.43-58, 1990-12-30 (Released:2017-10-20)
被引用文献数
10

They say, forests are being damaged in many parts of Europe, North America and Scandinavia by acid rain. In Japan also, the decline of adult Sugi tree (Cryptomeria japonica D. Don.) is going in urban areas, which is supposed by acid rain or acid materials from exhaust gases. The authors have an opinion that the influences of acid water will appear firstly on increase of soil acidity. Because, many kind of metals in soil will be exchanged to poisonous ions for tree fine roots or mycorrhizae, under such an acid soil condition. But, as it is extremely rare that rain water reaches forest floor directly without any touches on leaves, twigs, branches and stems, the water supplied to soil will certainly contain much amount of soluble nutrient elements derived from tree body, other than the amount in rain water. The other words, "the rain fall dropped on soil" means the throughfall or the stem flow changed in quality by such nutrient elements. The authors schement out a new method for collecting the stem flow and studied about the differences of acidity among rain fall, through fall and stem flow in relation to those nutrients' concentration. As the results of their study, they listed the following topics. 1) The acidity of stem flow always seems to converge to characteristic pH value in every species, independently of that of rain fall, as followings; Cryptomeria japonica: pH3.5〜pH4.1 Larix leptolepis: pH4.2〜pH4.8 Pinus densiflora: pH4.5〜pH5.2 Thujopsis dolabrata: pH5.0〜pH6.0 Fagus crenata: pH5.9〜pH6.5 2) The pH value of throughfall is always between that of rain fall and that of stem flow. 3) The pH value of stem flow is determined by multiple ionic action, not by single element. 4) The larger istheratio of(Ca+Mg+K+Na)/ organic-C in stem flow, the lower is the acidity. 5) The succeeding stem flow is different from the beginning one in the proportion between alkaline earth metals and alkali metals.
著者
池田 重人 志知 幸治 岡本 透
出版者
日本森林学会
雑誌
日本森林学会大会発表データベース
巻号頁・発行日
vol.129, 2018

<p>これまでに演者らが秋田周辺地域でおこなってきた花粉分析の結果から、天然秋田スギの衰退は中世の時代にはすでに始まっていた可能性が示された(第128回大会)。これらの中で、鳥海山北麓の桑ノ木台湿原で採取した堆積物試料を用いて、大型微粒炭(>250μm)の出現傾向から近傍で起きた火事の時代変化を明らかにし、花粉分析による植生変遷過程と合わせて考察した。大型微粒炭は、深度65cm(約1000年前)以深と表層ではほとんどみられず、深度65~30cmにおいてのみ多数検出された。大型微粒炭の増加と連動するようにシダ(単条溝型胞子)が増えた後イネ科が圧倒的な優勢を示し、やや遅れてカヤツリグサ科やマツ属が増加した。一方、スギは約2500年前以降優勢を保っていたが、大型微粒炭の増加とともに減少し、深度40~25cmでは10%台まで落ち込んだ。これらの一連の変化は、火入れや伐採などの人為的な活動の影響を反映したものと考えられた。</p>
著者
小松 雅史 稲垣 善之 三浦 覚 小林 政広 梶本 卓也 池田 重人 金子 真司
出版者
日本森林学会
雑誌
日本森林学会大会発表データベース
巻号頁・発行日
vol.126, 2015

森林に降下した放射性セシウムは樹冠にトラップされたのち、林内雨や葉枝の脱落によって林床に移行していくと考えられる。そこで、森林内の放射性セシウムの動態を明らかにするため、リターフォールによる放射性セシウムの移行について調査を行った。茨城県石岡市のスギ林およびヒノキ林、茨城県城里町のスギ林および広葉樹林において、リタートラップを用いて樹冠より降下するリターフォールを採取した。サンプルは葉や枝などに分別・計重し、放射性セシウム濃度を測定した。そして重量と濃度から、単位面積あたりのセシウム濃度を求めた。スギ林からのリターフォールによる移行は、主に褐色葉によるものであったが、事故から2か月間、雄花による移行が多いことが明らかになった。城里町のスギ林では、褐色葉のセシウム濃度は指数的に減少しているものの、事故から2年経過後もリターフォールによる移行は継続していた。石岡市の調査地では森林内のセシウム蓄積量分布調査を、また城里町の調査地では林内雨のCs濃度の計測を行っている。リターフォールによる放射性セシウムの移行について、樹種やサイトの比較とともに、これらの結果との関係について考察を行う予定である。
著者
池田 重人 志知 幸治 岡本 透 林 竜馬
出版者
日本森林学会
雑誌
日本森林学会大会発表データベース
巻号頁・発行日
vol.128, 2017

<p>秋田ではかつて天然スギが広く分布し、豊富に存在していた「秋田杉」の資源がこの地域の経済基盤を支えてきた。演者らはこうした秋田杉の成立過程を古生態学的手法と歴史資料から調べており、山地帯上部の「桃洞・佐渡のスギ原生林」下方の湿原で行った花粉分析では、全体としてスギは分析試料最下部の約1500年前からブナなどとともに優勢であるものの、約600年前以降の一時期に衰退していたことを示した(第125回大会)。一方、古くからの林政史資料など森林管理を記録した記録によると、江戸時代以降になると全国的に木材資源が急速に枯渇していくことが示されているが、そのことは秋田地方も同様であった。それ以前の時代についての資料は乏しいため山林利用の詳細は不明であるが、これまでは大規模な伐採等の影響があるとは考えられていなかった。しかし、秋田周辺地域で行った複数の花粉分析結果を検討した結果、スギの衰退は江戸時代より以前に遡り、中世には生じ始めていた可能性が示唆された。</p>
著者
金子 真司 後藤 義明 田淵 隆一 赤間 亮夫 池田 重人 篠宮 佳樹 今村 直広
出版者
国立研究開発法人森林研究・整備機構 森林総合研究所
雑誌
森林総合研究所研究報告 (ISSN:09164405)
巻号頁・発行日
vol.17, no.3, pp.259-264, 2018

福島県十万山(浪江町・双葉町)の森林火災(2017年4月29日~ 5月10日)の延焼地において、火災直後に山頂部のアカマツ林と谷部のスギ林で樹木と土壌の試料を採取して放射性セシウム(RCs: <sup>134</sup>Cs+<sup>137</sup>Cs)濃度を測定して火災の影響を調べた。樹木については、同一木の幹の燃焼側と非燃焼側から樹皮を採取した。土壌は燃焼地と隣接する非燃焼地から堆積有機物層と表層土壌を採取した。アカマツでは燃焼樹皮が非燃焼樹皮に比べて現存量とRCs 濃度とRCs 蓄積量が小さかった個体が存在した。また、アカマツ林、スギ林で調査したすべての堆積有機物層のRCs 濃度が燃焼箇所に比べて非燃焼箇所で高かった。
著者
辰巳 賢司 小川 信明 渡辺 巌 池田 重良
出版者
公益社団法人日本分析化学会
雑誌
分析化学 (ISSN:05251931)
巻号頁・発行日
vol.32, no.3, pp.154-158, 1983-03-05

溶液中の溶存酸素を酸化剤として用いたときの化学溶出クロノポテンショメトリーによる,カドミウム(II)及び銅(II)の定量について検討した. この方法の最大の利点は,実験装置が非常に簡単なことである. カドミウム(II)の場合には,(1O^<-6>〜1O^<-4>)Mの範囲で直線的な検量線が得られたが,銅(II)の場合には,溶液中の銅(II)白身が酸化剤として働き1O^<-5>M以上の高濃度域において検量線が直線からずれる傾向が見られた. 銅(II)が1O^<-4>M共存しても,(lO^<-5>〜2×1O^<-4>)Mの範囲でカドミウム(II)の定量には問題がなかった. しかし,(1O^<-5>〜3×1O^<-4>)Mの範囲における銅(II)の定量時にはlO^<-4>Mカドミウム(II)の共存は妨害となり直線的な検量線は得られず,カドミウム(II)共存下の銅(II)の定量には,析出電位を変え,銅のみを析出させ定量することが必要であった.
著者
正木 隆 森 茂太 梶本 卓也 相澤 州平 池田 重人 八木橋 勉 柴田 銃江 櫃間 岳
出版者
日本森林学会
雑誌
日本森林学会誌 (ISSN:13498509)
巻号頁・発行日
vol.93, no.2, pp.48-57, 2011
被引用文献数
1 3

林冠の閉鎖した94年生アカマツ人工林において, 間伐後8年間の個体の成長経過を同齢の無間伐林, 140年生天然アカマツ林と比較しつつ, 成長が改善されたか否か, 成長変化と相関する因子は何か, この人工林を天然アカマツ林のような大径木を含む林型に誘導できるか否か, を検討した。サイズは天然林 (DBH=68 cm, <I>H</I>=30∼35 m) の方が人工林 (DBH=41 cm, <I>H</I>=25∼30 m) よりも高い値を示した。形状比は人工林で50∼80, 天然林で40∼70だった。樹冠長率は人工林0.2∼0.4に対し, 天然林では0.25∼0.5だった。間伐により人工林の約4割の個体の成長が0.1 cm yr<SUP>−1</SUP>改善されたが, 無間伐林では逆に8割の個体の成長が低下した。個体の成長の改善度は, 隣接個体との競合環境の変化や, 樹冠長率など個体の着葉量の指標と連関していなかった。この人工林が140年生時に天然林のような大径木を含む林型に達するには, 今回観測された成長の改善では不十分である可能性が高いと考えられた。
著者
高山 透 村田 勝夫 池田 重良
出版者
公益社団法人日本分析化学会
雑誌
分析化学 (ISSN:05251931)
巻号頁・発行日
vol.34, no.12, pp.781-785, 1985-12-05
被引用文献数
2 2

減圧下誘電放電による窒素アフターグロー生成法を用いた発光分析装置を試作した.タンタル板製の加熱型アトマイザー上で減圧乾燥した溶液試料を加熱によって5Torrの気相に放出し,誘電放電路を流れてきた窒素と混合する.このとき,試料は三重項準安定励起窒素分子N_2(A^3Σ^+_u)からエネルギーを受け取り発光する.この装置を用いて,亜鉛,カドミウム,水銀の各溶液についてそれぞれの元素の中性原子線の発光を観測したが,その検出限界はそれぞれ5ng (472.2 nm), 0.1ng (326.1 nm), 0.03ng (253.7nm)であった.陰イオンの影響を調べるために,塩化物,硝酸塩,硫酸塩の各溶液について検量線を比較し,又,酸の濃度変化による金属の発光強度変化についても検討した.