- 著者
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河合 伸
- 出版者
- 行動経済学会
- 雑誌
- 行動経済学 (ISSN:21853568)
- 巻号頁・発行日
- vol.11, no.Special_issue, pp.S19-S21, 2018 (Released:2019-04-10)
- 参考文献数
- 8
本稿は,ゲーム理論の代表的ゲームである「囚人のジレンマ」について,人間の「利他性」を導入することにより,「非協力」かつ「有限回」のゲームであっても囚人のジレンマ状態が解消されるケースがあることを示すことを主眼としている.囚人のジレンマ状態となる主な条件は,(i)非協力ゲームであること,(ii)自分の利得のみに関心があること,(iii)有限回のゲームであることである.このなかで,(i)および(ii)の条件が成立していても,(iii)の条件が成立していない場合,すなわち,無限回繰り返しゲームによって,囚人のジレンマが解消されることが知られているが,ここでは,(i)と(iii)の条件が成立していても,(ii)の条件を緩和し,自身の行動が自分の利得のみならず,他人の利得に及ぼす影響にも関心がある場合,その関心がある程度高ければ,囚人のジレンマは解消され,「聖人の調和」が達成されることを示す.