著者
山本 敏充 斎藤 成也 徳永 勝士 布施 昇男 (長崎 正朗) 河合 洋介 カラセド アンジェル
出版者
名古屋大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2012-04-01

スペインのコリア・デル・リオ市内及び周辺に住んでいる約800名の「ハポン」姓を名乗る人々のうち、DNA解析希望者男性50名、女性51名から血液試料を採取した。スペインでDNA抽出され、匿名化後、日本で、男性DNA試料について、Y染色体上のSTRsのハプロタイプ解析を行った。また、全てのDNA試料について、ジャポニカ・アレイと呼ばれる日本人に特化された約66万個のゲノムワイドなSNPs解析を行った。その結果、日本人に由来すると考えられるY-STRハプロタイプは観察されず、また、ゲノムワイドなSNP解析からも日本人に由来すると考えられる結果が得られなかった。今後、新しい手法による解析が期待される。
著者
鎌田 真由美 河合 洋介
出版者
特定非営利活動法人 日本バイオインフォマティクス学会
雑誌
JSBi Bioinformatics Review (ISSN:24357022)
巻号頁・発行日
vol.4, no.2, pp.81-90, 2023 (Released:2023-11-01)
参考文献数
39

ゲノムの違いを診断や治療方針決定に活用するゲノム医療が臨床に実装され、身近なものになっている。ゲノム医療では、ゲノム解析で検出されるゲノムの違いに対し、臨床的な解釈を行うことが重要となる。この解釈にはゲノムデータベースが活用されている。一方、これまでに蓄積されているゲノムデータには民族集団の偏りがあることが指摘されており、様々な地域でゲノムデータの多様性を高めるための取り組みが進められている。本稿では、ゲノム医療の背景と解析の流れ、検出されるバリアントをどのように解釈し医療に応用していくのについて概説するとともに、日本におけるゲノム医療促進のための取り組みについて紹介する。
著者
河合 洋尚
出版者
京都大学大学院アジア・アフリカ地域研究研究科
雑誌
アジア・アフリカ地域研究 (ISSN:13462466)
巻号頁・発行日
vol.17, no.2, pp.180-206, 2018-03-31 (Released:2018-05-12)
参考文献数
29

This paper aims to reconsider the ethnic category of the Han in Vietnam, focusing especially on the Ngai people, a Han ethnic group from South China. In 1979, the government of Vietnam officially recognized them as the Dan Toc Ngai, one of the country’s 54 ethnic groups. Therefore, the Ngai people were considered to be the aboriginal ethnic group of the Dan Toc Ngai in previous studies. Based on fieldwork, however, I found that the Ngai people are not completely equivalent to the Dan Toc Ngai, because some Ngai people in Vietnam belong to other ethnic groups, such as the Nung, Hoa, or San Diu. In this paper, I explicate the ethnic category of the Ngai people, clarifying their migration patterns, identity politics, and the formation of a global network since the end of the 1970s. In doing so, I emphasize that the Ngai people are identified as a definite trans-border ethnic group, and that the group’s ethnic categories and identities may vary according to the socio-political situation. I will then highlight the necessity of understanding the Ngai people in the context of studying the Dan Toc Ngai and other Han people in Vietnam.
著者
河合 洋尚 呉 雲霞
出版者
国立大学法人 大阪大学グローバルイニシアティブ機構
雑誌
アジア太平洋論叢 (ISSN:13466224)
巻号頁・発行日
vol.24, no.1, pp.171-184, 2022 (Released:2022-03-26)

Most Chinese in northern Vietnam emigrated overseas, primarily because of the Chinese Exclusion Movement in the late 1970s. This paper is based on fieldwork in northern Vietnam and Overseas Chinese State Farms, investigating six households with a northern Vietnamese background: Four Cantonese Chinese in Haiphong and two Hakka Ngai in overseas Chinese farms. It reports on the migration of Chinese from northern Vietnam and the global networks they formed in the places they migrated to, analyzing why some Chinese chose to remain in northern Vietnam and the motivations of those Chinese who left northern Vietnam to maintain communication with the land they left.
著者
小林 慧人 久本 洋子 福島 慶太郎 鈴木 重雄 河合 洋人 小林 剛
出版者
The Japanese Forest Society
雑誌
日本森林学会大会発表データベース
巻号頁・発行日
pp.461, 2023-05-30 (Released:2023-05-30)

タケ類(イネ科タケ亜科)の生活史において有性繁殖は極めて稀なイベントであり、開花周期や開花習性や更新様式に関する知見は未だ限られる。一方、2010年代から現在にかけて、およそ120年周期とみなされるマダケ属ハチクの大規模開花が生じており、その実態解明の好機を迎えている。予測困難なタケ類の有性繁殖の機会を広域に把握するためには、研究者のみならず多くの市民の協力を得た記録や情報共有が有効な手段の一つになると考えられる。ハチクだけでなくさまざまなタケ種にかかわる有用な情報を蓄積するため、発表者らは Google MapやGoogle Formなどを活用し、市民参加による情報の収集・共有システムを試行した。研究者による現地観察、メディアの報道、SNSや各種アプリに挙げられた記載などに基づいて開花にかかわる情報を2019年から収集した。その結果、現段階で西日本を主とする日本各地から1400件に及ぶ情報を得た。情報の約9割はハチク類の開花であり、タケ類の有性繁殖の理解の基礎をなす情報も含まれた。本発表では、成果の報告にとどまらず、市民の協力によって得られる情報の学術的な活用のあり方や、今後の展望についても議論する。
著者
河合 洋尚
出版者
京都大学大学院アジア・アフリカ地域研究研究科
雑誌
アジア・アフリカ地域研究 (ISSN:13462466)
巻号頁・発行日
vol.17, no.2, pp.180-206, 2018

<p>This paper aims to reconsider the ethnic category of the Han in Vietnam, focusing especially on the Ngai people, a Han ethnic group from South China. In 1979, the government of Vietnam officially recognized them as the Dan Toc Ngai, one of the country's 54 ethnic groups. Therefore, the Ngai people were considered to be the aboriginal ethnic group of the Dan Toc Ngai in previous studies. Based on fieldwork, however, I found that the Ngai people are not completely equivalent to the Dan Toc Ngai, because some Ngai people in Vietnam belong to other ethnic groups, such as the Nung, Hoa, or San Diu. In this paper, I explicate the ethnic category of the Ngai people, clarifying their migration patterns, identity politics, and the formation of a global network since the end of the 1970s. In doing so, I emphasize that the Ngai people are identified as a definite trans-border ethnic group, and that the group's ethnic categories and identities may vary according to the socio-political situation. I will then highlight the necessity of understanding the Ngai people in the context of studying the Dan Toc Ngai and other Han people in Vietnam. </p>
著者
河合 洋人 西條 好廸 秋山 侃 張 福平
出版者
日本森林学会
雑誌
日本森林学会誌 (ISSN:13498509)
巻号頁・発行日
vol.90, no.3, pp.151-157, 2008 (Released:2008-12-09)
参考文献数
21
被引用文献数
7 7

竹林の拡大機構を解明するため,岐阜県西部においてモウソウチク地下茎を100 m2方形枠で掘り取り,採取した試料から成長様式と年間伸長量,発生後年数を推定した。その結果,節間長の配列には振幅性があり,極端に節間長が短くなる部分を年次の境界と仮定した場合,その節間の狭窄部は7∼29 mmの範囲にあり,1振幅における最長節間長の40%以下であった。地下茎の分岐点と節間長の狭窄部から採取した50本の試料について1年間の伸長量を推定した結果,0.02∼3.63 m,平均1.27±0.90 mであると推定され,西日本における他の事例よりも小さいことが明らかとなった。採取した地下茎が方形枠に侵入し,その枠外へ伸長していくまでの経過年数は4∼12年と推定され,経過年数と各年における平均年間伸長量,合計伸長量,全分枝数,新規分枝数について解析した結果,新規分枝数が3年に一度大きな値をとることが明らかとなった。以上から,節間長の配列によって年間伸長量の推定が可能であると考えられるが,さらなる検討が必要である。また気候や土壌などの立地環境が地下茎の成長に影響を与えている可能性についても同様である。
著者
河合 洋尚 Hironao Kawai
出版者
国立民族学博物館
雑誌
国立民族学博物館研究報告 (ISSN:0385180X)
巻号頁・発行日
vol.37, no.2, pp.199-244, 2013

中国広東省・福建省・江西省の境界部に位置する山岳地帯は,世界中に散住する客家の故郷であり,そこの漢族住民のほとんどが客家で占められていると,一般的に考えられている。ところが,この「客家の故郷」における1980 年代以前のデーターを整理しなおしてみると,この地の漢族住民は必ずしも客家として記述されておらず,また,客家としての自己意識をもたない住民も少なくはなかった。この事実を踏まえ,本稿では,特に1980 年代以降の一連の空間政策により「客家の故郷」をめぐるイメージが形成され,ここの漢族住民が客家とみなされていったプロセスを明らかにする。The border district of Guangdong, Fujian, and Jiangxi province is generallyconsidered to be the "homeland of the Hakka" and the Han inhabitantsof this district are normally considered to be the Hakka. In fact, however,the inhabitants are not always described as Hakka in the documents of 1980sand after and they have recieved their particular identity as the Hakka onlyrecently. This paper aims to make clear the process by which the space policysince the 1980s has fabricated the image of the "homeland of the Hakka" andthe Hakka ethnicity.