著者
髙清水 康博
出版者
一般社団法人 日本地質学会
雑誌
地質学雑誌 (ISSN:00167630)
巻号頁・発行日
vol.123, no.10, pp.805-817, 2017-10-15 (Released:2018-01-25)
参考文献数
76
被引用文献数
1 3

北海道太平洋側の古津波堆積物研究の現状と課題を,北方四島と北海道太平洋側の断層モデルに焦点を当てて示した.過去7000年間における国後島と色丹島の津波堆積物の層数は色丹島の方が多いことは,色丹島の方が海溝に近いため,規模の小さな津波でも地層中に記録されたためである.一方,国後島には規模の大きな津波のみが到達するため,巨大津波の履歴がよく記録されている.北海道の太平洋側の津波堆積物の分布を説明するために設定された複数の断層モデルの復元からは,北海道西部太平洋岸の波源として東北北部沖断層モデルの重要性が指摘された.北海道胆振海岸と青森県東通の津波堆積物履歴をあわせて考えると,少なくとも過去2500~2800年前以降に北海道西部太平洋岸に来襲した津波堆積物は1層のみであるということが見えてきた.
著者
西谷 陽志 坂井 瑠実 申 曽洙 森上 辰哉 清水 康 稲田 紘
出版者
一般社団法人 日本透析医学会
雑誌
日本透析医学会雑誌 (ISSN:13403451)
巻号頁・発行日
vol.43, no.3, pp.287-295, 2010-03-28 (Released:2010-04-28)
参考文献数
18
被引用文献数
1 6

透析患者に対し,治療を円滑に行うために必要なシャントの日常管理のうちでも,特に狭窄の診断は極めて重要である.シャント音の聴診はシャント狭窄を簡便に診断する方法として日常的に用いられている.臨床経験上,狭窄の進行に伴って高調なシャント音が聴診されることが知られているが,この診断には客観的な基準がなく,聴診者の主観に頼っているのが現状である.そこでわれわれはこの診断基準の確立に向けた基礎的研究として,シャント音を周波数解析し,狭窄度と周波数スペクトルの関係について解明することを試みた.方法としては,まず患者のシャント(動静脈吻合)の吻合部より中枢部に向けて3~6箇所の部位で複数のシャント音を記録し,短時間フーリエ変換により周波数スペクトルを算出した.次にシャント狭窄度とシャント音の周波数スペクトルとの関係をスペクトルの平均値の有意差により解析した.その結果,吻合部(シャント狭窄部より上流域)および狭窄部上では,狭窄の進行に伴い高周波数帯域のスペクトルの割合が有意に大きいことが確認された.一方,中央部(狭窄部より下流域)では基本的に狭窄度と周波数帯域との間に有意差は確認できなかったが,狭窄部直後の部位については中間周波数帯域のスペクトルを中心に有意に大きくなることが確認された.流体力学理論上,特に吻合部,狭窄部,また,狭窄部直後の中央部では狭窄の進行に伴って乱流が発生し,その影響で高周波数帯域のスペクトルが上昇するものと考えられる.以上の結果から,シャント音による客観的な狭窄度診断のアルゴリズムが確立できることが期待された.
著者
石原 与四郎 髙清水 康博 松本 弾 宮田 雄一郎
出版者
一般社団法人 日本地質学会
雑誌
地質学雑誌 (ISSN:00167630)
巻号頁・発行日
vol.120, no.Supplement, pp.S41-S62, 2014-08-31 (Released:2014-12-26)
参考文献数
40
被引用文献数
2 2

宮崎県の日南海岸沿いには,古第三系~新第三系の深海相がよく露出する.このうち日南市の猪崎には,古第三系日南層群がオリストリスとして見られる.その内部はチャネル・レビーシステムのタービダイトサクセッションから構成されるが,ソールマークや生痕化石が顕著に観察できるとともに,様々な液状化・流動化構造がよく発達していることで知られている.日南層群を不整合で覆う宮崎層群は,前孤海盆充填堆積物であり,粗粒な“宮崎相”と砂岩泥岩互層からなる“青島相”からなる.“宮崎相”は河川~浅海および,狭い陸棚をもつ斜面上に形成されたファンデルタシステムで,相対的海水準の変動と対応した堆積相の分布を示す.これらには石灰岩や波浪を特徴付ける堆積相,さらに重力流堆積物が顕著である.一方,“青島相”は海岸沿いによく露出し,全体的に単調な砂岩・泥岩互層からなる“タービダイト”サクセッションをなす.これらの“タービダイト”は,通常とは異なる堆積構造をもち,その重なりは通常のタービダイトサクセッションとは違う層厚分布を示す.そして一部には津波堆積物と考えられる厚層理砂岩層も挟在する.●本巡検では,主に日南海岸沿いに分布するこれらの深海相・タービダイトサクセッションをめぐり,様々な重力流堆積物やそれらが構成する地層を見学する.
著者
稲見 和典 中山 実 西方 敦博 清水 康敬
出版者
日本教育工学会
雑誌
日本教育工学雑誌 (ISSN:03855236)
巻号頁・発行日
vol.21, no.2, pp.107-117, 1997-09-20 (Released:2017-10-20)
参考文献数
7

英単語学習において,英和辞典としてCD-ROM辞書を利用した場合と,印刷英和辞書を用いた場合の学習成績を比較した.その結果,制限時間内に辞書による単語検索回数を自由とした場合の,日本語の意味の記憶試験では1%,英語のスペル試験では5%水準の有意差で,CD-ROM辞書使用時の正答率が高いとの結論を得た.また,制限時間を設けずに辞書の利用回数を各英単語につき1回に制限した場合には,学習成績に差はなく,CD-ROM辞書を用いた方が,1単語ごとの記憶時間が長いことがわかった.次に,アンケートによる主観評価について因子分析を行い,「おぼえやすさ」,「学習のしやすさ」,「操作性」,「持続性」,「見やすさ」の5因子を抽出した.これらの因子評価点と学習成績との関係を調べたところ,「おぼえやすさ」と成績の間に相関関係があることがわかった.
著者
山本 洋雄 中川 英世 中山 実 清水 康敬
出版者
日本教育工学会
雑誌
日本教育工学雑誌 (ISSN:03855236)
巻号頁・発行日
vol.22, no.2, pp.109-118, 1998-09-20 (Released:2017-10-20)
参考文献数
13

入社前に身につけた能力や新人教育での成績,講師からみた性格など,入社時の個人データと,10年後の給与査定(企業内評価に相当)との関連を検討した.入社時試験の「専門」や「数学」「英語」と,新人教育での「情報基礎」が,10年後の給与査定との間で関連が認められ,順位相関係数が5%水準で有意であった.また,給与査定など人間に関する評価は多面的に行われているとの観点から,重回帰分析と,数量化II類による重判別分析を行った.そして,入社時の個人データによって10年後の給与査定を判別した結果,正判別率66.3%の高い値が得られた.判別に関係する項目としては,入社時試験の「専門」と性格の「努力」,「几帳面」,および新人教育での「情報基礎」などであった.入社前に身につけた「専門」知識や,新人教育での「情報基礎」といった,基礎的・基本的な知識が入社10年後にも関連のあることがわかった.
著者
加瀬 善洋 仁科 健二 川上 源太郎 林 圭一 髙清水 康博 廣瀬 亘 嵯峨山 積 高橋 良 渡邊 達也 輿水 健一 田近 淳 大津 直 卜部 厚志 岡崎 紀俊 深見 浩司 石丸 聡
出版者
一般社団法人 日本地質学会
雑誌
地質学雑誌 (ISSN:00167630)
巻号頁・発行日
vol.122, no.11, pp.587-602, 2016-11-15 (Released:2017-02-20)
参考文献数
52
被引用文献数
3 4

北海道南西部奥尻島南端の低地における掘削調査から,泥炭層中に5枚のイベント堆積物を見出した.イベント堆積物の特徴は次の通りである; (1)陸方向および川から離れる方向へ薄層化・細粒化する,(2)級化層理を示す,(3)粒度組成の特徴は河床砂とは異なり,海浜砂に類似する,(4)粒子ファブリックおよび堆積構造から推定される古流向は概ね陸方向を示す,(5)渦鞭毛藻シストおよび底生有孔虫の有機質内膜が産出する,(6)海側前面に標高の高い沿岸砂丘が発達する閉塞した地形において,現海岸線から内陸へ最大450mほど離れた場所まで分布する.以上の地質・地形学的特徴に加え,過去に高潮が調査地域に浸水した記録は認められないことから,イベント堆積物は津波起源である可能性が極めて高い.14C年代測定結果と合わせて考えると,過去3000-4000年の間に1741年および1993年を含めて少なくとも6回の津波が発生しているものと考えられる.
著者
矢川 園子 中山 実 清水 康敬
出版者
日本教育工学会
雑誌
日本教育工学雑誌 (ISSN:03855236)
巻号頁・発行日
vol.24, pp.213-216, 2000
参考文献数
6
被引用文献数
2

本研究では, さまざまな音環境において文章を読ませたときの音読速度について, 音読者の音楽的習慣との関係から検討した.音環境として, 無音, ホワイトノイズ, 日本語の歌詞つきの歌謡曲, クラシック音楽の4条件を設定し, それらの条件下での音読速度を比較した.また, クラシック音楽のテンポを変化させた時の影響も調べた.さらに, 音楽的習慣に関する質問紙の回答結果を因子分析し, "音楽の理解", "日常的音楽習慣", "音楽好き"の3因子を得た.各因子成績と音読速度の関係を調べ, 音楽的習慣による影響を明らかにした.
著者
髙清水 康博 永井 潤 岡村 聡 西村 裕一
出版者
一般社団法人 日本地質学会
雑誌
地質学雑誌 (ISSN:00167630)
巻号頁・発行日
vol.119, no.1, pp.1-16, 2013-01-15 (Released:2013-05-08)
参考文献数
61
被引用文献数
5

北海道太平洋沿岸の胆振海岸東部に分布する古津波の復元を,堆積学的解析によって試みた.この津波堆積物は,現海岸線からの距離に対して,層厚と代表粒径が減少し,淘汰は良くなる強い相関関係を持つことが認められた.この津波堆積物の不攪乱定方位試料の粒度組成と粒子配列の解析からは,少なくとも3回の強い津波の浸入が認められる.特に,今回解析した地点1の津波堆積物の粒子配列のデータは,地点1では東北東への流れを示す遡上流のみからなる可能性を示した.これらの証拠から,砂丘の背後に広がる湿原に浸入した津波堆積物の堆積モデルを呈示した.最初に砂丘を乗り越えた津波は,地表面を侵食し,泥炭偽礫を取り込む.津波によって流入した海水のほとんどは,海側にある標高の高い砂丘のために海へ戻らずに,沿岸低地に静水域を形成する.引き続く津波は,この静水域の水底の堆積物を侵食する強い力は持たない.最終的に,海水は地下浸透と蒸発によって消滅する.
著者
中山 実 清水 康敬
出版者
日本教育工学会
雑誌
日本教育工学雑誌 (ISSN:03855236)
巻号頁・発行日
vol.24, no.1, pp.15-23, 2000-06-20 (Released:2017-10-20)
参考文献数
31
被引用文献数
3

生体情報による学習評価について,その考え方や必要性を述べたうえで,研究事例を紹介した.生体反応情報による学習評価や情意的な学習活動の検討については,研究事例から主観的な評価指標と生体指標との関連や,認知的な評価指標と生体情報の指標との関連について述べた.さらに,認知神経科学的な研究から,ニューロイメージングなどによる脳内活動の観察の研究事例と,今後の生体情報による研究について概観した.
著者
清水 康次
出版者
京都光華女子大学
雑誌
光華女子大学研究紀要 (ISSN:0286178X)
巻号頁・発行日
vol.34, pp.89-155, 1996-12
著者
清水 康敬 堀田 龍也 中川 一史 森本 容介 山本 朋弘
出版者
日本教育工学会
雑誌
日本教育工学会論文誌 (ISSN:13498290)
巻号頁・発行日
vol.34, no.2, pp.115-123, 2010
参考文献数
13
被引用文献数
2

教員のICT活用指導力を向上させる教員研修Web統合システム(TRAIN)を開発した.このTRAINでは,教員のICT活用指導力の向上や校内でのICT活用の普及促進に役立つことを意図した短時間のビデオ・モジュール218本をストリーミング視聴ができるようにした.また,全ビデオ・モジュールのタイトルと内容説明,画面の一部,説明者名をA4版半ページ程度で分類整理したハンドブックを作成し,これを参考に視聴することができるようにした.さらに,TRAINを利用した自己研修,校内研修,神合研修への支援を強化するために,ビデオ・モジュールの中から50の実践事例を選んで,アドバイス付き事例を作成した.これらと関連した指導場面,実践事例とともにTRAINから提供した.教員のICT活用指導力に関する234件のFAQを提供し,このFAQを利用した学習も可能とした.このTRAINに関する教育委員会対象の評価を実施した.
著者
森田 裕介 中山 実 清水 康敬
出版者
日本教育工学会
雑誌
日本教育工学雑誌 (ISSN:03855236)
巻号頁・発行日
vol.23, no.3, pp.167-175, 1999-12-20
被引用文献数
8

本研究では,図的表現のひとつであるコンセプトマップの効果的な表現形式を実験的に検証した.学習内容は,キーワードに包含関係または順序関係があるものを用いた.まず,コンピュータディスプレイを用いて,コンセプトマップ表現と文章表現を比較する提示実験を行った.次に,実際の授業を想定し,講義室でOHPを用いた提示を行い,コンセプトマップ表現と文章表現を比較した.そして,コンセプトマップ表現は,記憶学習に有効であることを示した.ただし,キーワードの上位・下位関係を表示画面の上下方向に一致させないものは,効果がないことを併せて示した.コンセプトマップは,キーワードの上位・下位関係を表示画面の上下方向に一致させて表現することによって,学習内容の全体構造を把握することが容易になる.そのため,学習内容の提示における有効利用が期待できる.
著者
高清水 康博
出版者
新潟大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2012-04-01

平成23年(2011年)東北地方太平洋沖地震による津波は,沿岸低地を数km に渡って遡上する巨大なものであった.この研究では,宮城県仙台市,岩手県陸前高田市,および北海道日高町で採取した砂丘を越えて沿岸低地を遡上する津波堆積物の定方位不撹乱試料の層相,粒度分布,磁気ファブリックから津波挙動の復元を試みた.その結果,仙台市と陸前高田市の津波堆積物の解析からは詳細な津波の流れ変化を読み取ることができた.すなわち,津波堆積物の詳細な堆積学的解析から過去の津波挙動の復元が有効であることを示すことができた.
著者
高清水 康博
出版者
歴史地震研究会
雑誌
歴史地震 (ISSN:13499890)
巻号頁・発行日
no.20, pp.183-199, 2005
被引用文献数
1
著者
瀧下 謙一 米田 篤彦 清水 康夫
出版者
一般社団法人 日本機械学会
雑誌
日本機械学会論文集 (ISSN:21879761)
巻号頁・発行日
vol.81, no.827, pp.15-00101-15-00101, 2015 (Released:2015-07-25)
参考文献数
4

In this paper, we focused on the fact that the ease of driving changed according to torsional rigidity of the electric power steering system for the purpose of the improvement in control performance of vehicle. First, the influence on transfer characteristics from a steering angle(steering wheel) to front wheel angle(front tires) by torsional rigidity was considered theoretically. As a result, it turned out that a front wheel angle was determined by not only a steering angle but also the influence of the dynamic state of vehicle, and it was shown that the influence of the dynamic state of vehicle can be shut by making steering torsional rigidity into high torsional rigidity. Next, the validity of a theoretical verification was confirmed through numerical simulation of steering correction at the time of a disturbance input. Finally, the lower limit value of torsional rigidity for practical use of a high torsional rigidity steering was determined.