著者
服部 律子 武田 順子 名和 文香 布原 佳奈 松山 久美 田中 真理 小森 春佳 澤田 麻衣子
出版者
岐阜県立看護大学
雑誌
岐阜県立看護大学紀要 = Journal of Gifu College of Nursing (ISSN:13462520)
巻号頁・発行日
vol.19, no.1, pp.63-73, 2019-03

A 県の1 次産科医療機関に勤務する経験7 年目以上の助産師を対象に、助産師が日ごろ感じている「気になる母子」とはどのような母子であるか、また一次医療機関と他機関の連携について明らかにするために質問紙調査を行った。調査内容は助産師が「気になる母子」と感じた経験の有無や具体的な場面、また「気になる母子」への対応、組織やチームの対応、他の医療機関との連携の課題、行政との連携の課題などである。勤務助産師180 名に質問紙を郵送し、そのうち返信があったのは68 名であった。「気になる母子」であると認識したことがある助産師は64 名(94%)であり、気になる場面としては【児の接し方や児への愛着に問題があると思われる場合】【母に精神的な問題があると思われる場合】【夫婦関係や家族関係に問題があると思われる場合】などであった。また「気になる母子」への対応は【地域の保健センターへ連絡する】【母の話を聞くようにする】【スタッフ間で状況を共有し対応を検討する】【母の様子を見守る】などであった。これらは日ごろから妊産婦に寄り添ってケアを行っている助産師が気づく視点であり、助産師はまず妊産婦の話を聞くことで状況を把握したり、問題解決に繋げたりする支援を行い、スタッフ間で状況を共有し対応を検討し保健センターへ連絡していた。 行政の保健師との連携における課題として【保健師と直接的な連携が取れていない】【「母と子の健康サポート支援事業」の依頼基準が不明確であり、緊急性が伝わりにくい】【退院後の保健師のケアの現状が分からない】【保健師との情報共有の場があるといい】などであった。行政の保健師とは、顔の見える関係づくりを進め、お互いの支援について理解を深めることが連携を築くことになると示唆された。「気になる母子」への介入は助産師の気づきを医療施設のチームそして地域へ広げていくことで、母子と家族への支援へ繋げることができると考えられる。
著者
永井 智 坂 征拓 田中 真理 設楽 紗英子
出版者
日本パーソナリティ心理学会
雑誌
パーソナリティ研究 (ISSN:13488406)
巻号頁・発行日
vol.19, no.1, pp.72-75, 2010-08-31 (Released:2010-08-18)
参考文献数
14

This study investigated the relationships between four attachment styles and emotional suppression. College students (N=416) completed a questionnaire which assessed attachment style and emotional suppression. The results of the analyses indicated that both dismissing and avoidant people expressed their negative emotions less than secure and preoccupied people. Although avoidant people suppressed emotional expression in social situations, dismissing people did not.
著者
永瀬 開 田中 真理
出版者
一般社団法人 日本発達心理学会
雑誌
発達心理学研究 (ISSN:09159029)
巻号頁・発行日
vol.26, no.1, pp.35-45, 2015 (Released:2017-03-20)
参考文献数
23

本稿では自閉症スペクトラム障害(ASD)児・者におけるユーモア体験の特性について,構造的不適合の評価と刺激の精緻化の視点から,思春期・青年期のASD児・者19名と定型発達児・者46名を対象に検討した。検討の結果,定型発達児・者において概念レベルの構造的不適合とスキーマレベルの構造的不適合との間でユーモア体験の強さに差が見られたのに対して,ASD児・者において概念レベルの構造的不適合とスキーマレベルの構造的不適合との間でユーモア体験の強さに差は見られないことが明らかになった。この結果の背景として,ASD児・者における弱い中枢性統合の特徴による概念レベルの構造的不適合の評価の困難さ,スキーマレベルの構造的不適合における因果関係の自発的な推測,それぞれの構造的不適合における刺激の精緻化のしやすさの影響があることが考えられた。また刺激の精緻化については,ASD児・者は定型発達児・者に比べてスキーマレベルの構造的不適合において非社会的な情報に関する推測を多く行うことが明らかになった。
著者
北 洋輔 田中 真理 菊池 武剋
出版者
日本特殊教育学会
雑誌
特殊教育学研究 (ISSN:03873374)
巻号頁・発行日
vol.46, no.3, pp.163-174, 2008-09

発達障害に対する正しい認識と適切な支援を導くために、広汎性発達障害児と注意欠陥多動性障害児を中心にして、発達障害児の非行行動発生にかかわる要因について研究動向を整理し、問題点と今後の改善点を指摘した。先行研究からは、個体の障害特性に密接にかかわる非行行動の危険因子と障害を取り巻く環境の危険因子が指摘された。だが、危険因子に着目した取り組みは、非行行動にかかわって発達障害児本人と親・関係者に対する支援を進める際の社会的意義を十分に達成できない問題点がある。その改善点として、非行行動の保護因子の導入と発達障害児の内面世界への着目が挙げられた。
著者
坪根 由香里 田中 真理
出版者
社会言語科学会
雑誌
社会言語科学 (ISSN:13443909)
巻号頁・発行日
vol.18, no.1, pp.111-127, 2015

本稿の目的は,第二言語としての日本語小論文の「内容」「構成」の評価が,評価者によって異なるのか,もしそうならどのように異なるのかを検討し,その上で「いい内容」「いい構成」がどのようなものかを探ることである.調査では,「比較・対照」と「論証」が主要モードの,上級レベルの書き手による6編の小論文を日本語教師10名に評価してもらった.その結果を統計的手法を用いて分析したところ,「内容」「構成」ともに,異なる評価傾向を持つ評価者グループのあることが分かった.そこで,上位4編の評価時のプロトコルから「内容」「構成」に関する部分を抜き出し,それを実際の小論文と照合しながら,各評価者グループの評価観の共通点・相違点について分析した.その結果から,「いい内容」の要因は,1)主張の明確さ,2)説得力のある根拠を分かりやすく示すこと,3)全体理解の助けになる書き出し,4)一般論への反論であることが分かった.視点の面白さと例示に関しては評価が分かれた.「いい構成」は,1)メタ言語の使用,2)適切な段落分けをし,段落内の内容が完結していること,3)反対の立場のメリットを挙げた上で反論するという展開,4)支持する立場,支持しない立場に関する記述量のバランスが要因として認められた.本研究で得られた知見は,第二言語としての日本語に限らず,第一言語としての日本語小論文の評価にも共有できるであろう.
著者
坪根 由香里 田中 真理
出版者
社会言語科学会
雑誌
社会言語科学 (ISSN:13443909)
巻号頁・発行日
vol.18, no.1, pp.111-127, 2015-09-30

本稿の目的は,第二言語としての日本語小論文の「内容」「構成」の評価が,評価者によって異なるのか,もしそうならどのように異なるのかを検討し,その上で「いい内容」「いい構成」がどのようなものかを探ることである.調査では,「比較・対照」と「論証」が主要モードの,上級レベルの書き手による6編の小論文を日本語教師10名に評価してもらった.その結果を統計的手法を用いて分析したところ,「内容」「構成」ともに,異なる評価傾向を持つ評価者グループのあることが分かった.そこで,上位4編の評価時のプロトコルから「内容」「構成」に関する部分を抜き出し,それを実際の小論文と照合しながら,各評価者グループの評価観の共通点・相違点について分析した.その結果から,「いい内容」の要因は,1)主張の明確さ,2)説得力のある根拠を分かりやすく示すこと,3)全体理解の助けになる書き出し,4)一般論への反論であることが分かった.視点の面白さと例示に関しては評価が分かれた.「いい構成」は,1)メタ言語の使用,2)適切な段落分けをし,段落内の内容が完結していること,3)反対の立場のメリットを挙げた上で反論するという展開,4)支持する立場,支持しない立場に関する記述量のバランスが要因として認められた.本研究で得られた知見は,第二言語としての日本語に限らず,第一言語としての日本語小論文の評価にも共有できるであろう.
著者
伊藤 恵子 田中 真理
出版者
一般社団法人日本発達心理学会
雑誌
発達心理学研究 (ISSN:09159029)
巻号頁・発行日
vol.17, no.1, pp.73-83, 2006-04-20
被引用文献数
2 3

指示詞コ・ソ・アの理解という点から,自閉症児の語用論的機能の特徴を検討した。具体的には,指示詞「こっち・そっち・あっち」に対して言語教示のみによる理解実験を行い,(1)一般的な指示詞使い分けとの一致率,(2)反応パターンの分析,(3)行動観察の三つの視点から分析を行った。その結果,以下の点が見出された。(1)定型発達児では,実験者(話者)と対象児(聞き手)が同じ側に並ぶ同側条件と,両者が向かい合う逆側条件で,指示詞コ・ソ・アの理解の標準反応一致数に差がなかった。しかし,自閉症児では逆側条件で,この標準反応一致数が同側条件に比べても,定型発達児の逆側条件に比べても有意に少なかった。(2)逆側条件の「そっち」に関しては,従来から他者視点の取得を特に要すると言われているが,逆側条件の「そっち」に関する自閉症児の成績は「こっち」と「あっち」の指示詞理解の成績と差がなかった。(3)逆側条件における自閉症児の反応は,視点固定型が定型発達児に比べ有意に多かった。この視点固定型とは,話者の視点変換を行わず,先に実施した条件での話者視点からの反応を繰り返す反応型である。(4)言語のみで指示対象を特定するといった状況で,曖昧情報を補うために実験者(話者)の顔の向きや視線を手がかりにすることも,指示対象特定に迷うことも,自閉症児は定型発達児に比べ少なかった。
著者
岸本 正実 幣 憲一郎 田中 真理子 和田 啓子 福田 美由紀 姫野 雅子 桑原 晶子 小川 蓉子 木戸 詔子 稲垣 暢也 田中 清
出版者
公益社団法人 日本栄養・食糧学会
雑誌
日本栄養・食糧学会誌 (ISSN:02873516)
巻号頁・発行日
vol.62, no.5, pp.253-258, 2009 (Released:2009-10-29)
参考文献数
13
被引用文献数
4

肥満は通常body mass index (BMI) によって判定されるが, 本来肥満は脂肪細胞過多である。そこで本研究では生活習慣病患者166名を対象に, BMIとbioimpedance analysis (BIA) 法による体組成の関係を検討した。BMIは体脂肪量と, 相関係数0.914と強く相関したが, 除脂肪量とは相関係数0.434と中等度にとどまり, BMIと除脂肪量の相関係数は, BMI≧25 kg/m2群ではBMI<25 kg/m2群より低かった。BMIによる肥満 (≧25 kg/m2) と, 体脂肪率による肥満 (男性≧20%, 女性≧30%) の関係は, 後者の判定に対して前者の特異度は高いが, 感度は低く, BMI25 kg/m2以上では, ほぼ確実に体脂肪率による肥満が存在するが, 25 kg/m2未満でもその存在を否定できない。栄養アセスメントにおいて, BMIに加えて体組成評価の併用が必要であり, また感度・特異度などによる解析を考慮すべきである。
著者
廣澤 満之 田中 真理
出版者
日本特殊教育学会
雑誌
特殊教育学研究 (ISSN:03873374)
巻号頁・発行日
vol.45, no.5, pp.243-254, 2008-01-31

即時性エコラリアや遅延性エコラリアといった、子どもによって独自の意味が込められ、伝達意図が伝わりにくい発語を非慣用的言語行動という。本研究では、非慣用的言語行動を多用する自閉性障害児に対して、対象児からの応答率が高いかかわり手の発語を明らかにすること、かかわり手の非慣用的言語行動に対する理解の変容過程を明らかにすることを目的とした。1名のかかわり手を対象として、かかわり手の発語と対象児との自由遊び場面に対するプロトコルを分析した。その結果、かかわり手の発語のうち、言葉遊びのように会話ターンの充足自体を目的とした発語・モニタリングへの応答率が高かった。また、かかわり手の非慣用的言語行動への理解は、"意味の付与""有用なコミュニケーション手段としての理解""非慣用的言語行動の積極的利用"という段階があると考えられた。非慣用的言語行動のコミュニケーション手段としての有用性についての議論が行われた。
著者
李 熙馥 田中 真理
出版者
Japan Society of Developmental Psychology
雑誌
発達心理学研究 (ISSN:09159029)
巻号頁・発行日
vol.24, no.4, pp.527-538, 2013

ナラティブ(Narrative,語り)には,ある出来事をどのように組織化し,意味づけるのかに関する構成の側面と,聞き手となる他者にどう伝えるのかに関する行為の側面がある。本研究は,空想のストーリーであるフィクショナルナラティブ(Fictional Narrative:以下FN)に注目し,自閉症スペクトラム障害(Autism Spectrum Disorder:以下ASD)児の構成と行為の側面における特性について検討を行った。その結果,ASD児のFNは典型発達児と比べて,FNの組織化において登場する人や場所,時間,行動的状況に関する言及である「セッティング」や,ストーリーの結末を明確にする「結果」に関する言及が少ない,登場人物の言動と心的・情動的状態との因果関係に関する言及が少ない,言動の主体を明確にし,主人公の一貫した観点からFNを構成することが少ないことが示された。一方,行為の側面においては,参照的工夫の言及においては典型発達児との間に有意な差はなく,参照的工夫の行動においては小学生のASD児の方が小学生の典型発達児よりFNを行う際に聞き手をみる行動が多かったことが示され,ASD児は聞き手に伝えようとする意識を有していた可能性が考えられた。今後は,聞き手の状態や働きかけに対し,どのようにナラティブを調整するのかに関する検討が必要であると考えられる。
著者
大井 恭子 田中 真理 成田 真澄 阿部 真理子 保田 幸子 板津 木綿子 ホーン ベバリー 小林 雄一郎
出版者
清泉女子大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2012-04-01

本研究は日本、韓国、台湾、香港という東アジアに位置する4か国がする英語ライティング教育に関して、アンケート調査によって実態を浮き彫りにし、そして互いが一堂に会することで実態を比較しあい、問題点などを共有し、今後の展望などに関して国際シンポジウムとして意見交換ができたことが一番の成果と言える。さらに、学習者コーパスを精査することにより、4か国・地域の学生の書く英語の諸相が明らかにされた。最終成果物として『EFL Writing in East Asia: Practice, Perception and Perspectives』を刊行し、多くの方と共有できたことで、この分野の進展につながった。