著者
光武 誠吾 石崎 達郎 寺本 千恵 土屋 瑠見子 清水 沙友里 井藤 英喜
出版者
一般社団法人 日本老年医学会
雑誌
日本老年医学会雑誌 (ISSN:03009173)
巻号頁・発行日
vol.55, no.4, pp.612-623, 2018-10-25 (Released:2018-12-11)
参考文献数
30
被引用文献数
6

目的:高齢の在宅医療患者にとって,退院直後の再入院は療養環境の急激な変化を伴うことから心身への負担は大きく,有害事象の発生リスクも高めるため,再入院の予防は重要である.退院直後の再入院の発生と個人要因との関連を検討した研究は多いが,医療施設要因との関連を検討した研究は少ない.本研究は,在宅医療の提供体制の観点から退院直後の再入院予防策を検討するため,東京都後期高齢者医療広域連合から提供を受けたレセプトデータを用いて,在宅医療患者の退院後30日以内の再入院に関連する個人要因及び医療施設要因を明らかにする.方法:分析対象者は,在宅医療患者のうち,平成25年9月~平成26年7月に入院し,退院後に入院前と同じ施設から在宅医療を受けた7,213名(平均年齢87.0±6.0歳,女性:69.5%)である.退院後30日以内の再入院に関連する個人要因及び医療施設要因(入院受入れ施設の病床数,在宅医療提供施設の病診区分及び在宅療養支援診療所/在宅療養支援病院「在支診/在支病」であるか否か等)を一般化推定方程式(応答変数:二項分布,リンク関数:ロジット)で分析した.結果:退院後30日以内に再入院した患者の割合は11.2%であった.一般化推定方程式の結果,退院後30日以内の再入院ありと関連したのは,男性,悪性新生物,緊急入院利用であった.医療施設要因では,在宅医療提供施設が在支診/在支病の場合(調整済オッズ比:0.205,p値<0.001),診療所を基準にすると入院医療施設が200床以上の病院(調整済オッズ比:0.447,p値<0.001)で再入院抑制と関連していた.結論:在支診/在支病のような24時間対応可能な在宅医療の提供体制は,退院直後の再入院を抑制する要因(往診など)を包含している可能性が示唆された.在支診/在支病による訪問診療が再入院抑制に働く機序を明らかにする必要がある.
著者
五味 二郎 光井 庄太郎 工藤 康之 赤坂 喜三郎 小野 康夫 木村 武 川上 保雄 野口 英世 宮本 昭正 牧野 荘平 可部 順三郎 石崎 達 中島 重徳 熊谷 朗 野崎 忠信 富岡 玖夫 伊藤 和彦 斧田 太公望
出版者
一般社団法人 日本アレルギー学会
雑誌
アレルギー (ISSN:00214884)
巻号頁・発行日
vol.22, no.9, pp.599-612,614-61, 1973

気管支拡張剤ST1512(S群)の成人気管支喘息に対する薬効につき, metaproterenol(A群)およびinactive placebo(P群)を対照として, 頓用, 連用効果につき, 9施設による2重盲検試験を行った.open trialの結果から, Fisherの直接確率計算法により, 1群につき36例となり, 並列3群にあてはめれば3倍の108例前後の症例数でよいと考えられたため, 105例に達した時点で中間点検を行った.全例104例であり, S群34例, A群36例, P群34例で, 3群間にはback groundにおいて有意差はなかった.試験方法は, S群1錠(1mg), A群1錠(10mg), placebo1錠を投与し, 前および1時間後の自他覚症状, 肺機能を検した.医師の総合判定につき, H-test, U-testを行い, S群とP群間に危険率0.5%以下の高度の薬物差を認めたが, 危険率5%でS群とA群とP群間には有意差は検出されなかった.ついで薬効差につき, 詳細な3群判別分析を行い検討も行った.
著者
有村 保次 西田 俊彦 南 麻弥 横山 葉子 三品 浩基 山崎 新 石崎 達郎 川上 浩司 中山 健夫 今中 雄一 川村 孝 福原 俊一
出版者
Japan Society for Medical Education
雑誌
医学教育 (ISSN:03869644)
巻号頁・発行日
vol.41, no.4, pp.259-265, 2010

我が国の臨床研究の推進には,臨床と研究手法に精通した臨床研究医(clinical investigator)の養成が必要である.我が国初の臨床研究の系統的な教育を行う臨床研究者養成(MCR)コースが京都大学に開設された.今回,本コースの卒業生が臨床研究を実施する上で直面している問題点を調査し,今後の改善策を検討した.<br>1) MCRコース3期生までの全履修者28名を対象に,履修後の臨床研究実施に関する現状や将来像等について自己記入式質問紙調査を行った.<br>2) 回答者24名中(回収率86%),臨床研究を行う上で,「時間がない」,あるいは,「研究協力者がいない」といった問題を挙げる者は,それぞれ40%程度いた.<br>3) 「臨床研究を進めるために職場や周囲への働きかけ」を行った者は20名(83%)いたが,職場において臨床研究の支援が得られたのは1名のみであった.<br>4) このような状況下,自らの10年後の将来像として「病院で臨床研究を行う臨床医」と回答した者が半数以上いた(54%).また,「臨床研究を行う医師のキャリアパスを想像できる」と回答した者は42%であった.<br>5) MCRコースは改善の余地があるものの人材育成の具体的なモデルを呈示した.臨床研究のさらなる発展のため,医療現場における支援体制や人的・物的インフラ整備の必要性が示唆された.
著者
石岡 良子 石崎 達郎 髙橋 龍太郎 権藤 恭之 増井 幸恵 中川 威 田渕 恵 小川 まどか 神出 計 池邉 一典 新井 康通
出版者
公益社団法人 日本心理学会
雑誌
心理学研究 (ISSN:00215236)
巻号頁・発行日
vol.86, no.3, pp.219-229, 2015
被引用文献数
3

This study examined the associations between the complexity of an individual's primary lifetime occupation and his or her late-life memory and reasoning performance, using data from 824 community-dwelling participants aged 69–72 years. The complexity of work with data, people, and things was evaluated based on the Japanese job complexity score. The associations between occupational complexity and participant's memory and reasoning abilities were examined in multiple regression analyses. An association was found between more complex work with people and higher memory performance, as well as between more complex work with data and higher reasoning performance, after having controlled for gender, school records, and education. Further, an interaction effect was observed between gender and complexity of work with data in relation to reasoning performance: work involving a high degree of complexity with data was associated with high reasoning performance in men. These findings suggest the need to consider late-life cognitive functioning within the context of adulthood experiences, specifically those related to occupation and gender.
著者
権藤 恭之 高橋 龍太郎 増井 幸恵 石崎 達郎 呉田 陽一 高山 緑
出版者
大阪大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2009

本研究は、高齢期におけるサクセスフルエイジングを達成するためのモデルが加齢に伴って、機能維持方略から論理的心理的適応方略、そして非論理的超越方略へと移行するという仮説に基づき実証研究を行ったものである。70 歳、80 歳、90 歳の地域在住の高齢者 2245 名を対象に会場招待調査を実施しそれぞれ関連する指標を収集した。その結果、高い年齢群ほど身体機能、認知機能の低下が顕著である一方で、非論理的適応方略の指標である老年的超越の得点は上昇しており、高い年齢になるほどサクセスフルエイジング達成のために非論理的適応方略が有効であることが示唆された。
著者
石崎 達 牧野 荘平 荒木 英斉 根本 順吉
出版者
一般社団法人 日本アレルギー学会
雑誌
アレルギー (ISSN:00214884)
巻号頁・発行日
vol.23, no.11, pp.753-759,778, 1974
被引用文献数
4

気管支喘息者に与えて記録させた喘息日記を集計して, 満3年間にわたり毎日の喘息発作出現率をもとめ, この出現率の日変動, 気象要因との相関関係を追跡した.気象要因は気象庁のデータからえた.統計処理の基準には移動15日平均値からの偏差をもとめ, 1SD 以上の差を増加または減少と規定した.気象要因曲線と喘息発作曲線の一致度(上昇, 平, 下降)から, 高気圧下で喘息発作数の増加傾向がみとめられた.喘息発作に関連する天候要因としては晴, 曇, 天候不定(前線通過), 雨と分類するのが重要で, 後2者の場合発作が多発する.その理由を追跡したところ, 寒冷刺激とくにその変化(前日との湿度低下)が重要で, 湿度は補助要因と思われた.これは年間の発作多発月が9月であることと一致する現象である.痰は湿度が高く天候不定, 雨の日, および乾燥日(湿度40%以下)に多発しやすいことがわかった.
著者
石崎 達 宮本 昭正 信太 隆夫 村松 行雄 水野 勝之 都丸 昌明 斉藤 恒子
出版者
一般社団法人 日本アレルギー学会
雑誌
アレルギー (ISSN:00214884)
巻号頁・発行日
vol.20, no.7, pp.504-513,550-55, 1971
被引用文献数
1

栃木県鹿沼市の木工業者を対象に米杉喘息の疫学調査を行なった.木工団地組合の米杉喘息発生率は6%で, 患者の4割が米杉材輸入後発病した.米杉喘息の主要症状は鼻炎, 喘息, 眼結膜炎, 皮膚炎で, 発作は午後から夜にかけて起こる.職種からみて, 製材で眼結膜炎, 加工で鼻炎と喘息が起こりやすい.症状発現には米杉作業, アレルギー素質の関与が大きく, 喘息患者の半数近くに慢性気管支炎の合併があった.