著者
石川 敬史
出版者
日本政治学会
雑誌
年報政治学 (ISSN:05494192)
巻号頁・発行日
vol.70, no.1, pp.1_96-1_116, 2019

<p>一七七六年にイギリス領北アメリカ植民地がヨーロッパ諸国に公表した 「独立宣言」 は、イギリス本国において一六八八年の名誉革命を経て形成された議会主権が植民地にも及ぶという主張に対する異議申し立てであった。</p><p> 一七八三年のパリ条約で独立が承認されたアメリカ合衆国は、条約義務の履行のために統一的な国家を創設する必要に迫られたが、「独立宣言」 に記された革命の原則が、主権を有する国家の設立の足枷となったのである。</p><p> アメリカにおいて主権的国家の設立の最大の障害となったのは、アメリカ入植以来約一六〇年にわたって主権を行使してきた一三諸邦の存在であり、それらを超えて存在する国家主権とは彼らの経験にないものであった。</p><p> 本稿では、ジョン・アダムズ、アレクザンダー・ハミルトン、ジェイムズ・マディソンら、「建国の父たち」 の議論を中心に、初期共和政体における主権国家の創設の試みを検討し、特にアメリカにおいては、司法権力がアメリカ合衆国における主権的機能の担い手となった経緯を明らかにするものである。</p>
著者
安田 進 石川 敬祐 村上 哲 北田 奈緒子 大保 直人 原口 強 永瀬 英生 島田 政信 先名 重樹
出版者
東京電機大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2017-04-01

2016年熊本地震により阿蘇のカルデラ内では地盤が帯状に陥没するグラーベン(帯状の陥没)現象が発生し、家屋、ライフラインなどが甚大な被害を受けた。このメカニズムを知り復旧・対策方法を明らかにするため平成29年度から3年間の計画で研究を始めた。平成29年度は、まず、現地踏査や住民からのヒアリングなどを行って被災状況の把握を行った。その結果、広い範囲で大規模に陥没が発生していること、その範囲はカルデラ内に約9000年前の頃に形成されていた湖の範囲にかなり一致することが分かった。次に広域な地盤変状発生状況を調べるため、熊本地震前後の複数の陸域観測衛星画像(合成開口レーダー画像)を使って干渉SAR画像から地盤変動量(東西・南北・垂直方向の3成分)を求め、それを基に検討を行った結果、陥没被害が甚大だった狩尾、内牧、小里、的石などの地区では数100mから2㎞程度の区域内で最大2~3mもの変位が発生したことが明らかになった。この局所的な変位によって水平方向の引張り力が作用し、帯状の陥没が発生したのではないかと考えられた。次に、既往の地盤調査結果を収集整理し、また、表層地盤状況を連続的に調べるため表面波探査を行った。その結果、陥没区間のS波速度は遅く、水平方向の引張り力で表層が緩んだことが明らかになった。一方、深い地盤構造を調べるために微動アレイ観測を行ったところ、陥没区間では数十mの深さまでS波速度が遅い軟弱層が堆積していると推測された。そこで、より詳細に調べるために4カ所でボーリングを行った結果、陥没区間の直下では17m~50mの深さに湖成層と推定される軟弱粘性土層が堆積していることが判明した。また、湖成層下面はお椀状に傾いていた。したがって、この湖成層が地震動によって急速に軟化してお椀の内側に向かってせん断変形し、その縁の付近で引張り力が働いて陥没が発生した可能性が浮上してきた。
著者
宇野 重規 小田川 大典 森川 輝一 前川 真行 谷澤 正嗣 井上 弘貴 石川 敬史 仁井田 崇
出版者
東京大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2013-04-01

本研究はアメリカ政治思想史を、共和主義と立憲主義という視点から捉え直そうとする試みである。その際に、建国の思想から、19世紀における超越主義とプラグマティズム、20世紀におけるリベラリズム、リバタリアニズム、保守主義へとつながる固有の思想的発展と、マルクス主義やアナーキズムを含む、ヨーロッパからの思想的影響の両側面から検討することが大きな主題であった。3年間の検討をへて、ヨーロッパの王政に対する独特の意識が、アメリカ共和政とそのコモン・センスに対する信頼を生む一方で、政府権力に対し個人の所有権の立場から厳しい制約を課す立憲主義を発展させてきた、アメリカ思想の弁証法的発展が明らかにされた。
著者
石川 敬史 木原 正雄 渡辺 哲成
雑誌
十文字学園女子大学紀要 = Bulletin of Jumonji University (ISSN:24240591)
巻号頁・発行日
vol.46, pp.161-172, 2016-03-28

十文字学園女子大学司書課程では,各学科の専門的学びを活かしながら,図書館の現場とのつながりを重視した学科横断的な教育プログラムを構築している。こうした教育プログラムを司書課程単独で実践することは難しく,図書館関係企業や,地域に位置する書店,公共図書館などと連携を図ることにより可能になる。図書館現場が生きた教材として位置されることにより,学生の学びの成果が図書館の現場に還元され,同時に図書館関係者(図書館員,図書館関係企業社員等)の現場力の向上と,地域における図書館種をこえた図書館関係者同士の関係性構築につながる。こうした視点に立脚し,本稿では2013年度より進めている産学連携による2つの教育実践を報告する。第一は,利用者参画型の「図書館システムづくり」概念の構築を視野に入れ,日本事務器株式会社と連携した図書館システムを活用する教育実践である。第二は,図書館という「館(やかた)」を越えた「移動」する「図書館活動」の現代的意義の分析を視野に入れ,キハラ株式会社と連携したオリジナルブックトラックの制作である。これら企業との産学連携による教育実践を通して,学生と企業社員の学びを考察する。
著者
岩月 宏泰 室賀 辰夫 木山 喬博 金井 章 石川 敬 篠田 規公雄
出版者
公益社団法人日本理学療法士協会
雑誌
理学療法学 (ISSN:02893770)
巻号頁・発行日
vol.18, no.1, pp.41-44, 1991-01-10
被引用文献数
2

骨格筋を強制振動すると緊張性振動反射(TVR)により拮抗筋の筋活動が低下する。そこで健常者を対象として, TVR用の加振器を用いて5種類の周波数(40, 60, 80, 100, 120Hz)で振動した際と停止後の拮抗筋の運動ニューロンの興奮性(H反射)を経時的にとらえ, 振動周波数の変動による拮抗筋の筋緊張抑制の影響について検討した。結果:(1)H反射振幅の抑制は振動周波数により振動開始5秒後で約55〜69%, 30秒後で約80〜90%と異なったが, その後2分まで最初の抑制と殆ど変化を認めなかった。(2)振動停止直後からH反射振幅は振動前の約50〜80%まで回復し, 約1分で40Hzは約83%まで回復し, 他の周波数では振動前に戻った。以上のことから, 振動刺激を拮抗筋の筋緊張の抑制として利用する際には, 40Hz近傍の周波数が有効であることが認められた。
著者
北居 明 山田 幸三 伊藤 博之 河合 篤男 吉村 典久 井上 達彦 石川 敬之
出版者
大阪府立大学
雑誌
挑戦的萌芽研究
巻号頁・発行日
2009

前年度の研究成果を踏まえ、中部地方を中心に蔵元へのヒアリング調査を行った。また、丹波杜氏記念館へのヒアリング調査も併せて行った。研究者グループが全員集合した研究会を、神戸大学と大阪府立大学中之島キャンパスで計2回行った。中之島キャンパスの研究会では、静岡県立大学の尹大栄准教授を研究会に招聘し、静岡県における酒造りについて研究発表をお願いした。このような研究活動の結果、まず杜氏と蔵元の関係の地域ごとの違いが明らかになった。桶買いが主な製造方法となった灘においては、主な杜氏供給元であった丹波は徐々に杜氏の数を減らして行き、平均年齢も高くなっていることがわかった。また、蔵元へのヒアリング調査からは、桶売り依存度が高い蔵元は、衰退する傾向があることも明らかになった。一方、蔵元の地域にこだわらない杜氏供給によって、南部杜氏は杜氏の数をあまり減らしておらず、若い杜氏も育ちつつあることがわかった。また、杜氏も、複数の蔵元を経験しつつ、ある蔵元での在籍期間が長い方が品評会で高い評価を受けることが明らかになった。その一方で、独自の酵母や発酵技術の開発により、杜氏を用いない蔵元も出現しつつあることが明らかになった。前述の尹准教授による静岡における酒造産業の研究からは、近年独自の酒造りによって品評会で高い評価を受けたり、国内での売上を伸ばしつつある蔵元には、このような蔵元が多いことも示唆された。このように、日本酒産業全体の衰退の中で、伝統的な事業システムである杜氏と蔵元の関係は、近年変貌を遂げつつあり、このような変化が次世代の酒造りに対しても、杜氏への依存度が低い事業システムへの圧力となりうることが予想される。
著者
小田川 大典 太田 義器 安武 真隆 犬塚 元 石川 敬史 遠藤 泰弘
出版者
岡山大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2012-04-01

研究成果の概要(和文):オットー・フォン・ギールケ、ジョン・スチュアート・ミル、ジョン・アダムズ、デイヴィッド・ヒューム、フーゴー・グロティウスの著作の解読を中心に、近代政治思想史における制度論の諸相について思想史的、理論的な研究を行い、社会思想史学会(2012、2013、2014)、日本政治学会(2013、2014)で関連するセッションを開催した。また関連する研究報告を政治思想学会(2013)で行った。
著者
石川 敬史
出版者
日本教育情報学会
雑誌
年会論文集
巻号頁・発行日
no.28, pp.90-93, 2012-08-25

十文字学園女子大学司書課程(以下,十文字司書課程とする)におけるビジョンの構築を視野に入れ,司書資格取得希望学生の動機や意欲,これまでの図書館利用経験等の特徴を明確にすることを目的に意識調査を実施し,先行研究のLIPER調査等との比較分析を行なった。その結果,高校生の頃に司書資格取得を考え,小中高での読み聞かせの経験が高く,学校図書館職員へやや強い印象を持つが,将来の職業との関連には消極的な姿勢がある等の特徴が明らかになった。これらを踏まえ,十文字司書課程のビジョンと教育プログラムの再構築に向けた課題を検討した。
著者
石川 敬史
出版者
北海道大学
雑誌
特別研究員奨励費
巻号頁・発行日
2002

平成15年度科学研究費補助金(特別研究員奨励費)によって行った研究活動は以下である。1.本年度の研究を経て、以下の知見を得た。(1)18世紀の政府理論形成は、この時期英国で発達していたモラル・フィロソフィーを知的背景としていた。すなわち、教会秩序にたいする、世俗秩序を確立するという観点から、政府理論が発達し、アメリカ諸邦政府および連邦政府もこの流れの中に属していた。(2)アメリカの単独主義外交の起源は、第二代大統領ジョン・アダムズ政権期になされた、米仏同盟解消交渉にあった。この時期に、ヨーロッパ諸国の政治情勢に関与しながら、相互の国益を調整するアレクザンダー・ハミルトンの路線が、アダムズの単独主義外交の方針に破れたことが後のモンロー・ドクトリンにつながるアメリカ外交の基礎となった。(3)アメリカ政党制は、米仏同盟解消交渉の過程で明らかになった、外交方針の違いがきっかけとなって、構成されるようになった。すなわち、内政上の争点は政党分裂の根本要因ではなかった。2.調査旅行(1)神戸大学国際文化学部の図書館にて資料収集を行った。(平成15年5月29日〜平成15年6月2日)(2)東京大学大学院総合文化研究科附属アメリカ太平洋地域研究センターにて、資料の収集および、資料批判作業に従事した。(平成16年2月8日〜平成16年2月11日)3.関係資料の購入(1)18世紀英国における、財政軍事国家への変容過程を知るために、英国史関連の書籍を購入した。(2)アダムズ政権が対応したフランス総裁政府の政治史を理解するため、同時代のフランス政治史に関する文献をそろえた。4.博士論文の執筆平成15年度の研究活動は、博士論文の執筆を中心に進められた。公刊論文が無いのはこのためである。博士論文は、ほぼ完成に至り、教官の許可を得しだい提出予定である。