著者
秋葉 周 竹林 崇 花田 恵介
出版者
一般社団法人 日本作業療法士協会
雑誌
作業療法 (ISSN:02894920)
巻号頁・発行日
vol.41, no.1, pp.106-112, 2022-02-15 (Released:2022-02-15)
参考文献数
14

本邦における脳卒中急性期の作業療法において,目標設定や介入方法に関するShared Decision Making(以下,SDM)を行った報告はきわめて少ない.今回,我々は,麻痺手の使用頻度が低く,目標設定や介入内容の意思決定に消極的な事例に対して,ガイドラインを用いて作業療法介入に関するSDMを行った.その結果,事例の作業療法への積極的な参加が促され,麻痺手の使用頻度も臨床的意義のある最小変化量を超えて向上した.事例の経過は,脳卒中急性期の作業療法においても,目標設定やガイドラインを用いた介入内容のSDMが有益である可能性を示している.
著者
埴岡 大輝 竹林 崇 竹内 健太 島田 眞一
出版者
一般社団法人 日本作業療法士協会
雑誌
作業療法 (ISSN:02894920)
巻号頁・発行日
vol.39, no.3, pp.333-340, 2020-06-15 (Released:2020-06-15)
参考文献数
25

Mirror Therapy(以下,MT)は,脳卒中後の上肢機能障害に対してエビデンスが示されてきた治療である.今回我々は,脳卒中による重度の上肢機能障害に対して,エビデンスが確立されている電気刺激療法やロボット療法などを複合的に実施したが,手指の随意伸展運動が全く出現しない症例を経験した.その症例に対して,回復期後期にMTを実施した結果,示指の随意伸展運動の改善を認め,麻痺手単独での課題指向型練習が可能となり,生活の一部で麻痺手を補助的に使用することが可能となった.MTの回復メカニズムに未だ不明な点はあるが,重度上肢機能障害に対するMTを併用した複合療法は,上肢機能の改善の一手段となる可能性がある.
著者
池田 奈菜子 竹林 崇 花田 恵介 島田 真一
出版者
一般社団法人 日本作業療法士協会
雑誌
作業療法 (ISSN:02894920)
巻号頁・発行日
vol.40, no.4, pp.466-472, 2021-08-15 (Released:2021-08-15)
参考文献数
17

要旨:【はじめに】慢性腎臓病を併発した脳卒中患者は低栄養状態に陥りやすい.【方法】慢性腎臓病を呈している脳卒中患者にリスク管理や栄養管理に注意しながら入院・外来リハビリにて複合的な上肢機能練習を実施した.【結果】入院期間中は麻痺手の瞬発的な筋出力は改善したが,持久力を伴う生活場面の使用には支障をきたしていた.退院後,新たに栄養状態を改善するために処方された腎不全患者用の配合薬を摂取しながら運動を行った.結果,持久力の向上が得られ,日常生活で右手の使用頻度に改善が得られた.【結論】腎臓病を併発した脳卒中患者に対しても,適切な運動負荷に加え栄養指導を行うことで長期的な上肢機能の改善が得られる可能性がある.
著者
堀本 拓究 徳田 和宏 花田 恵介 安川 嘉一 竹林 崇
出版者
一般社団法人 日本作業療法士協会
雑誌
作業療法 (ISSN:02894920)
巻号頁・発行日
vol.40, no.4, pp.481-487, 2021-08-15 (Released:2021-08-15)
参考文献数
13

要旨:回復期脳卒中後上肢麻痺を呈した5例の対象者に対して,時期をずらした2回のCI療法を実施したので,結果を報告する.上肢機能評価はFugl-Meyer Assessment(以下,FMA),Motor Activity Log(以下,MAL)を1回目と2回目の実施前後に実施した.1回目ではFMA,MALともに有意差を認めたのに対し,2回目ではMAL-AOUのみ有意差を認めた.1回目はShaping課題中心,2回目は重要な家事や職業動作,趣味活動などを取り入れた.ADLが改善し,退院後の生活を意識した時期にCI療法を実施することは,麻痺手の使用と具体的な作業活動獲得に影響する可能性がある.
著者
西村 翔太 梅田 顕 谷村 睦美 延東 浩輝 竹林 崇
出版者
日本作業療法士協会
巻号頁・発行日
pp.96-103, 2018-02-15

要旨:回復期リハビリテーション病棟入院中の脳卒中後上肢麻痺を呈した対象者に対し,病棟実施型Constraint-induced movement therapy(以下,CI療法)を看護師と分業して実施したので,結果を報告する.当院の病棟実施型CI療法の適応を満たした6名の亜急性期片麻痺患者に対して,1日40分の病棟実施型CI療法を10週間毎日行った.上肢機能評価は,Fugl-Meyer Assessment(以下,FMA),Motor Activity Log(以下,MAL)を介入前後に採取した.結果,FMAとMALは,介入前後にかけて有意な変化を認めた.病棟実施型CI療法は有用なアプローチである可能性がある.
著者
佐藤 篤史 竹林 崇
出版者
一般社団法人 日本作業療法士協会
雑誌
作業療法 (ISSN:02894920)
巻号頁・発行日
vol.38, no.2, pp.230-237, 2019-04-15 (Released:2019-04-15)
参考文献数
13

脳卒中後手指伸展が出現しない事例に,実生活の麻痺手使用を促す目的で,カペナースプリント改良型を用いたCI療法を行った.方法は,先行研究で報告されたスパイダースプリントを併用し,亜急性期からCI療法を実施した.しかし,事例が日常生活における装具の使用を拒否したため,カペナースプリント改良型を開発し,使用した.介入前後で,Fugl-Meyer Assessment,Wolf Motor Function Test,Motor Activity Logが臨床上意味のある最小変化量を超えて改善した.さらに,福祉用具満足度評価は,スパイダースプリントよりもカペナースプリント改良型が良好であった.カペナースプリント改良型は,CI療法において有用な装具である可能性を認めた.
著者
廣瀬 卓哉 竹林 崇 児玉 三彦 高橋 真須美
出版者
一般社団法人 日本作業療法士協会
雑誌
作業療法 (ISSN:02894920)
巻号頁・発行日
vol.38, no.5, pp.609-616, 2019-10-15 (Released:2019-10-15)
参考文献数
19

急性期脳梗塞患者に,麻痺手の機能改善に合わせた様々な治療法を,段階的に移行および併用した上肢機能訓練を行った.発症初期より,麻痺手の随意性を積極的に引き出すことを目的に,電気刺激を併用した反復促通訓練,電気刺激併用下の促通反復療法,神経筋電気刺激療法を実施した.次に麻痺手の状況に合わせて,電気刺激や装具を併用した修正CI療法へと移行した.結果,麻痺手の機能改善と生活内使用頻度が向上した.加えて,介入終了から2ヵ月後の評価では,麻痺手機能がさらに改善した.本事例報告において,発症早期より行うエビデンスの示された複合的なアプローチは,急性期でも上肢機能を改善する可能性が示された.
著者
横山 広樹 竹林 崇 花田 恵介 鈴川 理沙
出版者
一般社団法人 日本作業療法士協会
雑誌
作業療法 (ISSN:02894920)
巻号頁・発行日
vol.41, no.4, pp.494-501, 2022-08-15 (Released:2022-08-15)
参考文献数
15

通所リハビリテーションを利用する脳卒中慢性期の重度上肢機能障害例に対し,ボツリヌス療法と,Constraint-induced movement therapy(以下,CI療法)に準じた課題指向型練習やTransfer packageを併用して介入した.1回20分の介入を週2回,約1年間継続したところ,麻痺手の運動機能や使用頻度,痙縮の程度がいずれも測定誤差を超えて改善した.加えて,ボツリヌス療法における施注量が減少し,定期であった施注間隔も長くなった.低頻度であっても適切な介入を実施することで,慢性期の重度上肢麻痺を改善できる可能性が示唆された.
著者
唐渡 弘起 徳田 和宏 竹林 崇 佐々木 庸
出版者
一般社団法人 日本作業療法士協会
雑誌
作業療法 (ISSN:02894920)
巻号頁・発行日
vol.39, no.2, pp.162-169, 2020-04-15 (Released:2020-04-15)
参考文献数
23

当院では脳卒中後の麻痺手に対し,課題指向型アプローチ(TOA)とTransfer packageおよび機能指向型アプローチ(IOA)とTransfer packageのプロトコルがある.今回,これらの差について報告する.対象はTOA+Transfer package群7名とIOA+Transfer package群6名でそれぞれの上肢機能(FMA)および麻痺手の使用行動(MAL/AOU,QOM)について比較検討した.結果,FMAは有意な変化を認めなかったが(p=0.18),MALはTOA群がIOA群に比べ有意な変化を認めた(MAL AOU:p=0.04,MAL QOM:p<0.01).よって,TOAは同じTransfer packageを実施したとしても,より効率的に練習で獲得した機能を生活に転移できる可能性が示された.
著者
庵本 直矢 竹林 崇 日比野 新
出版者
一般社団法人 日本作業療法士協会
雑誌
作業療法 (ISSN:02894920)
巻号頁・発行日
vol.39, no.5, pp.579-589, 2020-10-15 (Released:2020-10-15)
参考文献数
21

要旨:ロボット療法は,脳卒中後上肢麻痺の改善に有効だが,麻痺手の使用行動の改善が困難である.今回,亜急性期の脳卒中後中等度~重度上肢麻痺患者に対し,ReoGoⓇ-Jを用いた自主練習(Reo練習)と麻痺手の使用行動の改善に有効であるCI療法に準じたアプローチ(以下,修正CI療法)を6週間実施し,麻痺手の使用行動の改善が可能かを先行研究の結果と比較することで検討した.結果,先行研究よりも明らかな上肢機能の改善と実生活における麻痺手の使用行動の改善を認めた.これより,ロボット療法によって獲得された機能を実生活に活かし,さらなる上肢機能の改善といった相乗効果を得るには,修正CI療法の導入が有効であることが示唆された.
著者
横山 広樹 玉置 昌孝 竹林 崇
出版者
一般社団法人 大阪府理学療法士会生涯学習センター
雑誌
総合理学療法学 (ISSN:24363871)
巻号頁・発行日
pp.2021-002, (Released:2021-12-23)
参考文献数
20

【目的】胸椎化膿性椎間板炎に対する脊椎固定術後の脊髄性運動失調を呈した症例に対して,歩行機能の改善を目的とした振動刺激療法を運動療法と併用した結果,改善を認めたため報告する。【方法】運動療法に併用して下肢に対して振動刺激療法を用いる介入期間を設けた。筋力強化練習や動作練習を中心とした運動療法を34日間実施した後に,振動刺激療法を追加して14日間実施した。そして,Walking Index for Spinal Cord Injury II(以下,WISCI II)を用いて歩行機能を評価した。【結果】WISCI IIは13点から16点へと改善し,自宅内移動動作の獲得や屋外歩行手段の獲得につながった。【結論】脊髄障害を伴った歩行障害に対して振動刺激療法を用いた介入が歩行機能の改善の一助となる可能性がある。
著者
野口 貴弘 戸嶋 和也 中西 千江 今井 志保 竹林 崇
出版者
一般社団法人 日本作業療法士協会
雑誌
作業療法 (ISSN:02894920)
巻号頁・発行日
vol.40, no.1, pp.114-119, 2021-02-15 (Released:2021-02-15)
参考文献数
21

要旨:麻痺手の実使用を増やすためにCI療法のTransfer package(以下,TP)を修正し,病棟と協業することを目的とした.修正TPは以下の手順で実施した(①TPの対象となる活動の映像を撮影,②看護師に動画を用いて伝達,③ADLで病棟看護師が動画を参考に実動作を指導).対象者は回復期病棟入院中の4名とした.4症例の変化量の結果を以下に示す.4症例ともにMotor Activity Log(以下,MAL)のQuality of Movement(以下,QOM)が向上した.本研究では,2症例が先行研究のMAL(QOM)の臨床上重要な最小変化量を超えた.病棟での看護師によるTPは,麻痺手の使用行動に良い影響を与える可能性がある.
著者
瀧野 貴裕 竹林 崇 竹内 健太 友利 幸之介 島田 真一
出版者
日本作業療法士協会
巻号頁・発行日
pp.661-668, 2018-12-15

要旨:脳卒中後上肢麻痺への治療戦略として課題指向型練習が挙げられるが,課題指向型練習単独では生活での麻痺手の使用頻度向上にはつながらないとの報告がある.今回,重度上肢麻痺を呈した脳卒中患者に対し,早期から課題指向型練習を実施した.当初から上肢機能は改善したが,生活での麻痺手の使用頻度には全く変化がなかったため,Aid for Decision-making in Occupation Choice for Hand(以下,ADOC-H)を用いてTransfer Package(以下,TP)を実施し,麻痺手の行動変容を試みた結果,生活での麻痺手の使用頻度が向上し,麻痺手使用に肯定的な意見を聞くことができた.回復期でのADOC-Hを用いたTPは,麻痺手の使用頻度を促進する可能性があると考えられた.
著者
大谷 愛 竹林 崇 友利 幸之介 道免 和久
出版者
三輪書店
巻号頁・発行日
pp.1141-1145, 2015-10-15

Abstract:今回われわれは,慢性期の脳卒中患者2名にCI療法を実施する際,日常生活における麻痺手の使用を促すためのディスカッション時に,従来法の言語のみによる対話に加え,麻痺手に対する訓練における意思決定補助ツールであるAid for Decision-making in Occupational Choice for Hand(ADOC-H)を開発し,用いた.結果,介入前後でFugl-Meyer AssessmentとMotor Activity Logの向上を認めた.加えて,ADOC-Hを用いた議論に関する感想として,2名からは「文字や言語だけよりもイメージが湧きやすい」等のポジティブな感想も聞かれた.しかし,上肢機能が比較的保たれ,介入前から生活で麻痺手を積極的に使用していた患者には,「すでに麻痺手で行っている」といった選択肢の少なさに対する問題提起も聞かれた.今後は,ADOC-Hが従来法に比べ有用であるかどうかを,対象者の選定とともに,調べていく必要があると思われた.
著者
髙橋 佑弥 竹林 崇 石垣 賢和
出版者
一般社団法人 日本作業療法士協会
雑誌
作業療法 (ISSN:02894920)
巻号頁・発行日
vol.39, no.4, pp.486-494, 2020-08-15 (Released:2020-08-15)
参考文献数
13

要旨:Hybrid Assistive Neuromuscular Dynamic Stimulation therapy(以下,HANDS療法)は,脳卒中後上肢麻痺の末梢部の機能改善に効果が示されている.一方で,日常生活における麻痺手の使用行動および中枢部の機能改善は課題であった.今回,回復期の1症例に具体的な課題のスキル向上を目的とした課題指向型訓練,麻痺手の使用行動に有効とされている簡略化したTransfer Package,中枢部の機能改善に有効とされているロボット療法を,HANDS療法と複合して実施した.結果,Fugl-Meyer AssessmentとMotor Active Logが臨床上意味のある最小変化量を超える改善を示し,希望していた食事動作が獲得されたため後方視的に検証し,考察を合わせて報告する.
著者
花田 恵介 竹林 崇 河野 正志 市村 幸盛 平山 和美
出版者
一般社団法人 日本作業療法士協会
雑誌
作業療法 (ISSN:02894920)
巻号頁・発行日
vol.38, no.5, pp.550-558, 2019-10-15 (Released:2019-10-15)
参考文献数
29

脳卒中片麻痺患者を対象に加速度計(ActiGraph Link GT9X)を用いた上肢活動量計測を行い,本邦においてもこの評価が妥当であるか否か,および2点計測法と3点計測法のどちらが,より妥当な手法であるかを検証した.本研究は単一施設の横断研究で,37名を対象とした.3点計測法は,各手の測定値を体幹部の測定値で減じた上で,左右手の活動量比や活動時間比を算出した.その結果,2点計測法と3点計測法のどちらであっても,麻痺側上肢の活動量と上肢機能評価の間に中程度から強い相関関係が示された.3点計測法の優位性は示されなかった.脳卒中患者の上肢活動量評価において,どのような計測方法や分析方法がより適切であるかは,引き続き検討を重ねる必要がある.
著者
河野 真太朗 花田 恵介 竹林 崇
出版者
一般社団法人 日本作業療法士協会
雑誌
作業療法 (ISSN:02894920)
巻号頁・発行日
vol.41, no.6, pp.725-732, 2022-12-15 (Released:2022-12-15)
参考文献数
26

脳卒中後に麻痺側上肢の肩関節痛を呈した対象者に,肩関節の疼痛や心理状況に合わせて上肢機能練習を行った.特に,Transfer Packageでは麻痺手の活動によって生じた痛みの程度や使用感も記録するよう依頼し,痛みへの対処法や環境調整を含めた指導を行った.その結果,麻痺側肩の疼痛が軽減し,日常生活における麻痺手の使用頻度も改善した.肩関節痛のある上肢麻痺例では,それらに配慮してTransfer Packageを行うことが有用であるように思われた.