著者
藤井 義晴 古河 衛 早川 嘉彦 菅原 和夫 渋谷 知子
出版者
日本雑草学会
雑誌
雑草研究 (ISSN:0372798X)
巻号頁・発行日
vol.36, no.1, pp.36-42, 1991
被引用文献数
9

薬用植物, および香料植物の一部から, 他感作用候補植物を, レタスに対する発芽・生育試験とフザリウムに対する抗菌性試験 (胞子発芽と菌糸伸長試験) から検索した。その結果, 作物や一般雑草よりも高い頻度で, 活性の強い他感作用候補植物が得られた。<br>植物発芽・生育阻害活性も抗菌性もともに最も強かったのは, キンポウゲ科のオキナグサとセンニンソウであった。これらは著名な毒草としてすでに知られており, とくにセンニンソウは牧草地に侵入する有害雑草として良く知られている。<br>これに次ぐものとして, オオグルマ, フレンチタイム, アンミビスナーガ, ゲッケイジュがあった。ユリ科のニラとニンニクは, 水抽出液の抗菌性が, カンゾウとクスリウコンはメタノール抽出液の抗菌性が強かったが, 植物生育阻害作用は小さかった。逆にヨウシュヤマゴボウ, ニッケイ, ペパーミントは, 抗菌性は小さかったが, 植物の発芽・生育阻害が強かった。
著者
戸谷 智明 鈴木 健 藤井 義晴
出版者
一般社団法人 園芸学会
雑誌
園芸学研究 (ISSN:13472658)
巻号頁・発行日
vol.19, no.4, pp.373-379, 2020 (Released:2020-12-31)
参考文献数
16
被引用文献数
2

ニホンナシでは前作樹の残根がいや地現象の発生要因であるかが明らかになっていない.そこで,本研究ではニホンナシ根を混和した土壌のいや地リスクの経時変化に加え,根を混和した土壌に定植したニホンナシ1年生苗木の樹体生育への影響を調査した.まず,ニホンナシ未植栽土壌にニホンナシの生根もしくは乾燥根を混和した区を設け,土壌をニホンナシのいや地リスクを評価できる根圏土壌アッセイ法を用いて経時的に測定した.その結果,ニホンナシでは根の乾燥条件にかかわらず,土壌の阻害率は根を混和しない区と差がなく,根の分解過程では生育阻害物質が放出されない可能性が高いことが示唆された.次に,ニホンナシ未植栽土壌にニホンナシ乾燥根を混和し,ニホンナシ1年生苗木を定植した区を設け,根を混和していないニホンナシ未植栽土壌やいや地現象が発現する連作土に定植した区と樹体生育を比較した.その結果,連作土区では樹体生育が抑制されたが,根を混和した区の生育は混和していない区と同様に抑制されなかった.以上の結果から,ニホンナシでは,土壌への根の混和は,いや地現象の発生要因ではない可能性が高いことが明らかになった.一方で,ニホンナシ1年生苗木をニホンナシ未植栽土壌に定植後,土壌を根圏土壌アッセイ法で経時的に測定した結果,樹の生育が進むに従い土壌の阻害率が上昇した.これらのことから,ニホンナシでは樹が生育する過程で根から生育阻害物質が分泌され,土壌に蓄積されることでいや地現象が発現する可能性があることが示唆された.
著者
藤井 義晴 渋谷 知子 安田 環
出版者
日本雑草学会
雑誌
雑草研究 (ISSN:0372798X)
巻号頁・発行日
vol.35, no.4, pp.362-370, 1990
被引用文献数
10

1) 発芽・生育試験に, ロジスチック関数をあてはめる生長解析法によるバイオアッセイ手法を用いて, 他感作用候補植物を代表的な雑草や作物から検索した結果, 従来他感作用の報告されているセイタカアワダチソウ, ヨモギ, ヒマワリ, クズ, ライムギ等には活性が見られたが, この他にムクナ, ヨウシュヤマゴボウ, ドクダミ, サトイモ等にも活性を見出した。このようにして検出された他感作用候補植物は, ドクダミ, クズ, ムクナ, ヨウシュヤマゴボウ, ヨモギ等, これまでに薬用植物として知られているものが多かった。<br>2) 今回用いたRICHARDS関数による生長解析の手法を用いれば, 他感作用候補植物が, 発芽のどのレベルに作用しているのか (発芽の開始を遅らせるのか, 最終発芽率を阻害するのか, 発芽の速度=斉一性に影響するのか) が明らかとなる。
著者
藤井 義晴 渋谷 知子 安田 環
出版者
日本雑草学会
雑誌
雑草研究 (ISSN:0372798X)
巻号頁・発行日
vol.35, no.4, pp.362-370, 1990-12-25 (Released:2009-12-17)
参考文献数
19
被引用文献数
6 10

1) 発芽・生育試験に, ロジスチック関数をあてはめる生長解析法によるバイオアッセイ手法を用いて, 他感作用候補植物を代表的な雑草や作物から検索した結果, 従来他感作用の報告されているセイタカアワダチソウ, ヨモギ, ヒマワリ, クズ, ライムギ等には活性が見られたが, この他にムクナ, ヨウシュヤマゴボウ, ドクダミ, サトイモ等にも活性を見出した。このようにして検出された他感作用候補植物は, ドクダミ, クズ, ムクナ, ヨウシュヤマゴボウ, ヨモギ等, これまでに薬用植物として知られているものが多かった。2) 今回用いたRICHARDS関数による生長解析の手法を用いれば, 他感作用候補植物が, 発芽のどのレベルに作用しているのか (発芽の開始を遅らせるのか, 最終発芽率を阻害するのか, 発芽の速度=斉一性に影響するのか) が明らかとなる。
著者
猪谷 富雄 平井 健一郎 藤井 義晴 神田 博史 玉置 雅彦
出版者
日本雑草学会
雑誌
雑草研究 (ISSN:0372798X)
巻号頁・発行日
vol.43, no.3, pp.258-266, 1998-10-30 (Released:2009-12-17)
参考文献数
13
被引用文献数
3 7

サンドイッチ法は寒天培地中に包埋した供試植物の乾燥葉から浸出する物質のアレロパシー活性を, 寒天培地上に播種した検定植物の種子根等の伸長抑制程度から判定する方法である。この方法によって, 広島県立大学キャンパスおよび広島大学医学部薬用植物園内で採取した雑草・薬用植物計152種のレタスに対するアレロパシー活性を検定した。その結果, カタバミ, ヒメスイバ, イシミカワ, ヤブラン, メギ, ショウジョウバカマがレタス根長の伸長程度 (対照区比) 10~20%と強いアレロパシー活性を示した。上記のような強いアレロパシー活性の認められたもの23種を供試植物とし, 検定植物としてレタスの他にアカクローバー, キュウリおよびイネの4種を用い, サンドイッチ法によって供試植物のアレロパシー活性を検討した。得られたデータの主成分分析の結果, 50%の寄与率を持つ第1主成分は4種の検定植物が共通して示すアレロパシーに対する感受性を表し, かつ検定植物中レタスで最も高い第1主成分の因子負荷量が得られた。これより, サンドイッチ法の検定植物として従来用いられているレタスが適当であることが示唆された。また, 26%の寄与率をもつ第2主成分は, 検定植物のレタス・アカクローバーとキュウリ・イネとで同一物質に対して異なる感受性の方向を示すと考えられた。このことから検定植物間で選択性をもつアレロパシー物質の存在が推定された。
著者
猪谷 富雄 平井 健一郎 藤井 義晴 神田 博史 玉置 雅彦
出版者
日本雑草学会
雑誌
雑草研究 (ISSN:0372798X)
巻号頁・発行日
vol.43, no.3, pp.258-266, 1998-10-30
参考文献数
13
被引用文献数
7

サンドイッチ法は寒天培地中に包埋した供試植物の乾燥葉から浸出する物質のアレロパシー活性を, 寒天培地上に播種した検定植物の種子根等の伸長抑制程度から判定する方法である。この方法によって, 広島県立大学キャンパスおよび広島大学医学部薬用植物園内で採取した雑草・薬用植物計152種のレタスに対するアレロパシー活性を検定した。その結果, カタバミ, ヒメスイバ, イシミカワ, ヤブラン, メギ, ショウジョウパカマがレタス根長の伸長程度(対照区比)10〜20%と強いアレロパシー活性を示した。上記のような強いアレロパシー活性の認められたもの23種を供試植物とし, 検定植物としてレタスの他にアカクローバー, キュウリおよびイネの4種を用い, サンドイッチ法によって供試植物のアレロパシー活性を検討した。得られたデータの主成分分析の結果, 50%の寄与率を持つ第1主成分は4種の検定植物が共通して示すアレロパシーに対する感受性を表し, かつ検定植物中レタスで最も高い第1主成分の因子負荷量が得られた。これより, サンドイッチ法の検定植物として従来用いられているレタスが適当であることが示唆された。また, 26%の寄与率をもつ第2主成分は, 検定植物のレタス・アカクローバーとキュウリ・イネとで同一物質に対して異なる感受性の方向を示すと考えられた。このことから検定植物間で選択性をもつアレロパシー物質の存在が推定された。
著者
草川 知行 平舘 俊太郎 藤井 義晴 高崎 強
出版者
千葉県農業試験場
巻号頁・発行日
no.41, pp.29-34, 2000 (Released:2011-03-05)

カラシナから発生するAITCを利用して雑草防除を行うため,レタスおよび雑草種子の発芽抑制効果を明らかにした。1. 土壌50mLあたり濃度50mg/LのAITC水溶液20mL添加でレタスの発芽が抑制された。2. 土壌50mLあたりカラシナ生葉1g以上の混和量でレタスの発芽が抑制された。このときのAITC濃度は摩砕した生葉1gで24時間後に0.65mg/Lでピークとなった。40℃ではこれよりピークが早く現れ,高濃度が長時間維持された。3. アオビユでは,レタスと同程度の発芽抑制効果が認められたが,イヌビエでは十分な効果が得られなかった。
著者
猪谷 富雄 藤田 琢也 玉置 雅彦 黒柳 正典 藤井 義晴
出版者
日本雑草学会
雑誌
雑草研究 (ISSN:0372798X)
巻号頁・発行日
vol.44, no.4, pp.316-323, 1999-12-28 (Released:2009-12-17)
参考文献数
8
被引用文献数
2 2 2

タデ科, カタバミ科, アカザ科, シュウカイドウ科, バショウ科の体内に比較的高濃度のシュウ酸塩を含むことが知られている植物種 (以後, 本論文ではシュウ酸植物と記す) 計53種を供試し, それらの乾燥葉から滲出する物質のレタス初期生育に対するアレロパシー活性をサンドイッチ (SW) 法によって検定した。SW法では供試植物乾燥葉を0.5%寒天中に包埋後, 検定植物の種子をその上に播種し,20℃で3日後の幼根長と下胚軸長を測定し, その伸長程度 (対照区比) によって供試植物のアレロパシー活性を評価した。その結果, ショウ酸植物にはアレロパシー活性に関して大きな種間差異がみられ, 特にカタバミ科とシュウカイドウ科 Begonia 属において最も活性が強く, ほとんどの種で乾燥葉からの滲出物がレタスの幼根伸長を90%以上抑制した。次に, アレロパシー検定に供試したシュウ酸植物のうち18種の総シュウ酸含量 (水溶性および不溶性を含む) を測定し, 上記SW法における幼根長の対照区比との関係を検討した。その結果, シュウ酸植物の総シュウ酸含量には大きな種間差異が存在し, かつほとんどの植物種については総シュウ酸含量とそのレタスの幼根伸長の対照区比との間には有意な負の相関が認められた。従ってシュウ酸植物の示すアレロパシー活性の一因は体内のシュウ酸であることが示唆された。一方, 数種のシュウ酸植物については上記の相関関係から逸脱するものも存在したので, これら植物のアレコパシー活性には, 植物体中の総シュウ酸の化学的形態の違いや他の抑制物質が関与している可能性が推察された。
著者
藤井 義晴 木村 園子ドロテア 及川 洋征 岡崎 伸 新藤 充 吉田 昌裕 荒谷 博 和佐野 直也 マニナン ジョン・ソロモン サポン アピア・クワメ アドクウエイ アモアテイ・クリスティアナ アジジ マジード マルダニ ホサイン ミシナ マリア カザンツエバ エレナ オニプチェンコ ウラジミル パリサ タヘリ ホセイン アロウイ オシバンド アスマ 宝 龍 白 梅栄 阿 都沁夫 康 高娃 李 振豪 阿仁也 曾 任森 曾 英子 ルオ シンミン ウンダム ロレンス・モナ ミイ アフィ・アティアス イスミル ライハン ベイカー バキ 田村 尚幸 唐内 里緒 小林 賢太朗
出版者
東京農工大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2014-04-01

ガーナ、ケニヤ、スーダン、カメルーン、カンボジア、マレーシア、ベトナム、トルコ、イラン、ロシア、中国の雲南省、内モンゴル自治区などに出張したり現地研究者と連絡研究を行い、アレロパシー活性の強い植物を検索した。選抜した植物を重力屈性阻害活性、蔓の巻き付き防止活性を検定する系で検定した。アメリカネナシカズラを用いるつるの巻き付きを防止する検定法を開発した。これらの系によりクズ、シラゲクサフジ、アメリカネナシカズラ等のつる植物のつるの巻き付きを阻害する物質を数種見出した。これらの物質が実際にクズのつるの巻き付きを阻害する検定試験を実施し、現地においても蔓の巻き付きを阻害する活性のある成分を得た。
著者
中島 江理 平舘 俊太郎 加茂 綱嗣 藤井 義晴
出版者
日本雑草学会
雑誌
雑草研究. 別号, 講演会講演要旨 (ISSN:0372798X)
巻号頁・発行日
no.43, pp.178-179, 2004-04-16

マメ科牧草であるヘアリーベッチ(Vicia villosa Roth)は、強いアレロパシー作用をもつことが知られており、また、窒素固定による緑肥効果があることから、耕作放棄地や果樹園などの雑草防除に利用されている.このヘアリーベッチに含まれる植物成長阻害物質として、加茂らによりシアナミド(Fig.l)が単離・同定された.シアナミドは窒素肥料である石灰窒素の主成分であり、一方で果樹の休眠打破剤として古くから利用され、また、殺菌、防虫、除草効果を持つことが報告されている.これまでシアナミドは化学的に合成されており、自然界には存在しないと考えられていたが、ヘアリーベッチの体内成分として天然に存在していることが明らかとなり、加えてヘアリーベッチの他感物質として重要な役割を果たしている可能性が示唆された.そこで本研究では、植物界におけるシアナミドの役割について解明することを目的とし、まず、シアナミドの各種植物に対する生育阻害活性について調べた.また、これまでの研究により、ヘアリーベッチ各品種の葉においてそのシアナミド含量には違いが見られたことから、ヘアリーベッチ各品種のシアナミドに対する感受性について検討した.
著者
藤澤 正視 稲村 哲也 渡部 森哉 福山 洋 菊池 健児 高橋 浩 五十嵐 浩也 山本 紀夫 川本 芳 大山 修一 大貫 良夫 阪根 博 ワルテル トソ セノン アギュラール カルロス サバラ 鶴見 英成 藤井 義晴 阿部 秋男
出版者
筑波技術大学
雑誌
基盤研究(A)
巻号頁・発行日
2007

ラス・シクラス遺跡の発掘を実施し、同遺跡の中核的遺構の北マウンドの様態を解明した。マウンド上部の建築群は形成期早期(紀元前2900~1800年)の神殿建築であり、少なくとも8回の神殿更新が認められた。その過程で多量のシクラが使用されたのがこの遺跡の特徴である。シクラ構造を模擬した試験体で振動台実験を行った。その結果、一定の制振効果をもつことが確認される一方で、ある条件のもとでは、その効果がなくなるという特徴が示唆され、シクラを持つ神殿の地震動に対する挙動と被害軽減効果を確認した。
著者
藤井 義晴 渋谷 知子 安田 環
出版者
日本雑草学会
雑誌
雑草研究 (ISSN:0372798X)
巻号頁・発行日
vol.35, no.4, pp.362-370, 1990-12-25
被引用文献数
12

We tested 70 plant species collected in the central part of Japan for the presence of water extractable allelochemicals using a screening method based on Richards' function, fitted to lettuce seed germination and growth test. The parameters for the germination tests included, final germination percentage(A), germination rate(R), and the onset of germination(Ts). The plants with allelolopathic activities included, Solidago altissima. Artemisia princeps, Helianthus anuus. Pueraria lobata, Secale cereale, which were reported previously, in addition to, Mucuna prurience, Phytolacca americana, Houttuynia cordata. Colocasia esculenta known as oriental medicinal plants. The analysis based on RICHARDS' function revealed some of the mechanisms of action of these plant extracts, and the method was considered to be useful for the screening of plants with allelopathic properties.
著者
浦口 晋平 渡邉 泉 久野 勝治 星野 義延 藤井 義晴
出版者
日本雑草学会
雑誌
雑草研究 (ISSN:0372798X)
巻号頁・発行日
vol.48, no.3, pp.117-129, 2003-10-10
被引用文献数
3 11

外来種の侵入,河原固有の在来種の衰退が顕著な多摩川中流域の河川敷から,56種の葉部を採取し,サンドイッチ法により他感作用活性を検定した。ハリエンジュ,アレチウリ,オオブタクサのように大きな群落を形成する外来種や,クズ,ススキ,イヌコリヤナギなど安定的な植生を形成する在来植物がレタスの幼根伸長を強く阻害した。また,絶滅が危惧されるカワラノギクとその周辺に多く生育する植物10種を砂耕栽培し,サンドイッチ法,プラントボックス法により他感作用活性を検定した。オニウシノケグサなどカワラノギク周辺の外来種は葉部,根部ともにレタスの幼根伸長を著しく阻害し,強い他感作用活性が示唆された。これらの結果は,多くの外来種の侵入と優占に他感作用が関与している可能性を示唆した。また,カワラノギクの葉部,根部にも強い他感作用活性が示唆され,成立から10年ほどで衰退・消失するというカワラノギク個体群の特性の原因として,他感作用の自家中毒的作用の関与が示唆された。カワラヨモギなど,他の河原固有種は強い活性を示さなかった。また,河川敷植生構成種の他感作用は,生育段階および,環境条件により変動する可能性が推察された。