著者
川端 祐一郎 浅井 健司 宮川 愛由 藤井 聡
出版者
公益社団法人 土木学会
雑誌
土木学会論文集D3(土木計画学) (ISSN:21856540)
巻号頁・発行日
vol.72, no.5, pp.I_213-I_230, 2016 (Released:2016-12-23)
参考文献数
47
被引用文献数
1 1

1970年代以降,心理学及び社会科学諸分野において,物語形式の思考や物語形式をもつ情報の提示によってもたらされる心理的・社会的な効果に関する実証的研究が行われている.本研究では,公共政策に関する合意形成の促進への応用を企図して,公共政策をめぐる情報を「物語性の強いシナリオ」によって与えることの効果と,受け手の認知的傾向としての「物語志向性」がこの効果に与える影響を検証する実験を行った.実験の結果,受け手の物語志向性とシナリオの物語性の組み合わせによって,情報に接触した際の態度の形成・変容に有意な差異が生ずることが明らかになった.また,「物語性」の定義とシナリオ作成方法を明確化したことで,公共政策をめぐるコミュニケーションの実践に物語型情報を応用するための手法に関し,具体性のある示唆が得られた.
著者
藤井 聡
出版者
公益社団法人 土木学会
雑誌
土木学会論文集D (ISSN:18806058)
巻号頁・発行日
vol.62, no.3, pp.334-350, 2006 (Released:2006-07-20)
参考文献数
46

本稿では,土木において風土の問題は極めて重大であろうとの認識の下,風土に関する代表的哲学書である和辻哲郎著「風土:人間学的考察」(1943)を批評することを通じて,土木工学への知見を得ることを目指した.和辻の哲学的存在論の基本的立場を踏まえることで,各種土木事業が地域のあり方のみならず,地域の人々の人間存在そのものに根元的影響を及ぼし得る可能性が浮かび上がることを指摘した.それと共に,和辻風土論には「健全なる風土と不健全なる風土」との別が論理的に指し示され得ないという実践倫理哲学上の問題点が潜んでいることを指摘し,その問題点が土木において和辻風土論を参照するにあたっての重大な障害となることを指摘した.その上で,その問題点を超克するためのアプローチとして,近代保守思想を参照し,援用することの有効性を論証した.
著者
藤井 聡
出版者
科学・技術研究会
雑誌
科学・技術研究 (ISSN:21864942)
巻号頁・発行日
vol.2, no.1, pp.57-64, 2013 (Released:2013-07-04)
参考文献数
22

本研究では、デフレーションに突入した1998年から2010年までのデータを用いて、中央政府の公共事業が日本のマクロ経済に及ぼした事業効果についての分析を行った。分析においては公共事業による内需主導型の経済対策にあわせて外需主導型の経済対策に対応する総輸出額の影響を考慮した。その結果、中央政府の公共事業の1兆円の増加(減少)によって、名目GDPが約5兆円増加(減少)すること、そしてそれを通して、デフレータ、失業率、平均給与、被生活保護者数がいずれも改善(悪化)し、最終的に総税収が1.6兆円、出生数が1.7万人増加(減少)するという分析結果が示された。一方、総輸出額の増加にはそうした広範な効果は検出されなかった。
著者
鈴木 春菜 北川 夏樹 藤井 聡
出版者
公益社団法人 土木学会
雑誌
土木学会論文集D3(土木計画学) (ISSN:21856540)
巻号頁・発行日
vol.68, no.4, pp.228-241, 2012 (Released:2012-10-19)
参考文献数
26
被引用文献数
4

交通政策をはじめとした土木施設の整備・運用に関する意思決定において,社会学的・心理学的に及ぼされる影響を十分に踏まえることは必ずしも容易ではない.そのような影響のなかでも,経済状態などの客観的指標に比して主観的指標については十分な検討がなされていない.本研究では,交通行動が幸福感に及ぼす影響について検討するため,質問紙調査を実施して移動時の主観的幸福感の規定因を探索的に検討した. その結果,交通手段の違いによらない,個々の移動の幸福感の集積値として移動に対する幸福感を表すことができることが示された.また移動時幸福感の規定因として,移動時風景の選好の程度や移動目的,道路/車両の混雑度,移動中の活動が移動時幸福感に影響を及ぼすこと,交通手段によってその影響の有無や程度に差があることが示された.
著者
長谷川 大貴 中野 剛志 藤井 聡
出版者
人間環境学研究会
雑誌
人間環境学研究 (ISSN:13485253)
巻号頁・発行日
vol.11, no.2, pp.75-82, 2013 (Released:2013-12-25)
参考文献数
28

In human and social science, narrative is regarded as an important theoretical construct associated with human cognition, human vitality, sense of unity and cohesion of organization. In this regards, narrative is also expected to increase vitality and cohesion of planning organizations for public policies, such as governmental section for city planning, transportation planning, national land planning and any other public planning. In this study, we review academic genealogies with respect to narratives including western philosophy, hermeneutics, historical science, historical philosophy, literary criticism, clinical psychology and sociology, narrative psychology and folklore. Then we discuss how narrative can be pragmatically applied for planning organizations.
著者
田中 皓介 長谷川 貴史 宮川 愛由 三村 聡 氏原 岳人 藤井 聡
出版者
公益社団法人 土木学会
雑誌
土木学会論文集D3(土木計画学) (ISSN:21856540)
巻号頁・発行日
vol.74, no.4, pp.356-368, 2018 (Released:2018-11-20)
参考文献数
27
被引用文献数
1 1

近年の日本では大型店舗立地による雇用機会,税収,買い物客の増加が期待されるものの,その根拠は乏しい.それどころか先行研究では,大型店舗での買い物は地元商店での買い物に比べて,地域経済の活性化に繋がらないことが実証的に示されている.本研究は,京都市での先行研究の知見が他都市においても妥当するかを検証するため,岡山市を対象に調査・分析を行った.その結果,買い物支出のうち岡山市に帰着する割合は,地元小型商店,地元中型商店ではそれぞれ67.13%,55.21%であった.一方,天満屋,全国チェーンYではそれぞれ40.00%,28.48%に留まり,地元小型商店や地元中型商店の方がチェーン型大型店舗よりも,買い物支出が岡山市に帰着する割合が高いことが示された.こうした傾向は京都市を対象に行った先行研究の知見を支持する結果である.
著者
古田 勝経 溝神 文博 宮川 哲也 森川 拓 永田 治 永田 実 福澤 悦子 油座 マミ 櫻井 淳二 庄司 理恵 藤井 聡
出版者
一般社団法人 日本医療・病院管理学会
雑誌
日本医療・病院管理学会誌 (ISSN:1882594X)
巻号頁・発行日
vol.50, no.3, pp.199-207, 2013 (Released:2013-09-10)
参考文献数
15

褥瘡は寝たきり高齢者に多い慢性創傷であり,難治であり医療費や患者の生活の質に影響を与える。チーム医療で治療を行うことが治癒促進につながるが薬剤師の積極的な関与が少なく本来のチーム医療の有用性は示されていない。そこで,本研究では,薬剤師の積極的関与のある褥瘡チーム医療治療群と褥瘡ハイリスクケア加算群とで,褥瘡治癒に関する費用対効果を検討した。患者数は(褥瘡チーム医療治療群 / ハイリスクケア加算群) 295名/80名,DESIGN点数の減少を用いた費用対効果の比較では総費用(円/点) 6,709 / 24,549で,褥瘡チーム医療治療群はハイリスクケア加算群に比べ約4分の1におさえられていた(p<0.001)。
著者
鈴木 春菜 藤井 聡
出版者
公益社団法人 土木学会
雑誌
土木学会論文集D (ISSN:18806058)
巻号頁・発行日
vol.64, no.2, pp.179-189, 2008 (Released:2008-04-21)
参考文献数
26
被引用文献数
9 4

良質な地域風土を志すことは土木事業に課された重要な使命であり,我々はその努力と共に,事業によってもたらされる地域風土の変化が地域愛着をはじめとした人々の「地域への関わり」にどのように影響するかについても常に検討していく必要がある.以上の背景から本研究では,パネル調査で得られた結果を基に,風土への接触量の変化が地域への感情に与える影響についてその醸成期間を考慮して検証した.その結果,地域への感情はその種類によって醸成期間に差があることを示した.さらに地域風土への接触が,長期的には「地域愛着」のような醸成に時間を要する感情にも影響を与える可能性があること,「寺社」や「公園」との「接触」がその醸成を助長する可能性があることを確認した.
著者
川端 祐一郎 藤井 聡
出版者
公益社団法人 土木学会
雑誌
土木学会論文集D3(土木計画学)
巻号頁・発行日
vol.70, no.5, pp.I_123-I_142, 2014
被引用文献数
4

物語(narrative, story)の性質は,人文科学において古くから論じられてきたが,近年,社会学・政治学・社会心理学・経営学などの社会科学諸分野においても,人間のコミュニケーション能力や認知能力の本質を理解するための手がかりとして,物語の概念が注目を集めている.しかし,公共政策の策定及び遂行の場面で,物語の性質を実践的に利用する方法が十分に明らかにされているとは必ずしも言い難い.<br>本研究では,とりわけ公共政策におけるコミュニケーションに応用しうる理論や発見に焦点を当てて,既往の物語研究の成果をレビューするとともに,物語が公共政策における実践活動をどのように改善し得るかについて考察し,今後行われるべき実証的研究の方向性を提案する.
著者
藤井 聡 中野 剛志
出版者
公益社団法人 土木学会
雑誌
土木学会論文集F4(建設マネジメント) (ISSN:21856605)
巻号頁・発行日
vol.67, no.4, pp.I_213-I_222, 2011 (Released:2012-03-30)
参考文献数
21

本稿では,国(政府)の公共事業の財源についての政治的判断を支援することを企図して,マクロ経済動向に及ぼす影響を加味しつつ,公共事業関係費の「水準」と「調達方法」を毎年どのように「調整」していくべきかの基本的な考え方を整理することを試みた.そして,市場における需要が供給を上回っているインフレ状況にある時には,インフレ緩和のために緊縮財政を基本とすることが得策であり,公共事業においては,公債ではなく,必要に応じた増税の可能性も視野に収めながら税収によって財源を調達することが得策であることを指摘した.一方で,逆にデフレ状況にある時には,デフレを緩和するための積極財政を基本とすることが必要であり,そのための財源については,定常的な税収に加えて公債を自国通貨建ての内債として発行することが得策であることを指摘した.
著者
山田 慎太郎 藤井 聡 宮川 愛由
出版者
人間環境学研究会
雑誌
人間環境学研究 (ISSN:13485253)
巻号頁・発行日
vol.14, no.2, pp.155-164, 2016

A referendum in a manner of direct democracy has been occasionally adopted in Japan for a political decision. However, it may not always maximize public interest, and it may thus lead failure. This referendum failure can easily emerge when those who insist a controversial policy, such as politicians who can benefit from the policy, use sophistry to justify the policy. This is because voters can not rationally judge the policy ouing to the sophistry. In this research we focus on politicians' remarks related to the referendum of "Osaka Metropolis Concept" of which voting day was 17th May, 2015 in Osaka City. We quantitatively analyzed remarks by 2 politicians, who are representative debaters in 2 major political parties in Twitter for a month (from 17th, April, 2015 to 17th, May, 2015), and remarks by them in a debate TV program casted in 12th, February, 2015. The result indicates that sophistry accounted for 33.9 % of the Twitter sentences and 48.0 % of the verbal sentences spoken by a politician who insisted the concept, whereas almost no sophistry (only 0.1 %) for the other politician. This result implies that there was risk that voters might not be able not rationally judge based on such frequent sophistry.
著者
北川 夏樹 鈴木 春菜 羽鳥 剛史 藤井 聡
出版者
公益社団法人 土木学会
雑誌
土木学会論文集D3(土木計画学) (ISSN:21856540)
巻号頁・発行日
vol.67, no.5, pp.67_I_327-67_I_332, 2011 (Released:2012-12-28)
参考文献数
21

本研究では,「家族」,「学校や会社等の組織」,「地域」,「国家」という4つの共同体を取り上げて,これらの共同体からの疎外意識が主観的幸福感に及ぼす影響について実証的に検討することを目的とした.この目的の下,主観的幸福感を構成する「感情的幸福感」と「認知的幸福感」に関する既存尺度とヘーゲルの理論を基に作成した「人間疎外尺度」を用いて,両者の関連を検討した.その結果,共同体に対する疎外意識と主観的幸福感との間に負の関連性が示され,共同体からの疎外意識を感じている人ほど,その幸福感が低い傾向にある可能性を示唆する結果が得られた.特に,「家族」と「国家」に対する疎外意識は,感情的幸福感と認知的幸福感の双方に対して直接的な負の影響を及ぼし得る可能性が示唆された.
著者
宮川 愛由 田中 謙士朗 藤井 聡
出版者
公益社団法人 土木学会
雑誌
土木学会論文集D3(土木計画学)
巻号頁・発行日
vol.72, no.4, pp.344-355, 2016

本研究は都市計画,土木計画に抜本的な影響を及ぼす地方政府の統治機構改革を決する政治プロセスの合理化に資する効果的なコミュニケーションについての実証的知見を得る事を目的として,大阪市を廃止して都区制度を導入する,所謂「大阪都構想」を巡る住民投票を事例として,有権者の接触メディアと政策判断との関係性を分析した.その結果,テレビや新聞といった両論併記が原則となる情報媒体を参考にする傾向が高い有権者は,情報の真偽の判断が困難となるが故に従前の意見を変化させない一方で,意見を変化させた人々の内,「反対」に転じた人々は精緻化見込理論でいうところの事実情報に基づく「中心ルート」によって,「賛成」に転じた人々は「周辺ルート」によって態度を変容させたことを示唆する分析結果が示された.
著者
田中 皓介 池端 菜摘 宮澤 拓也 宮川 愛由 藤井 聡
出版者
公益社団法人 土木学会
雑誌
土木学会論文集F4(建設マネジメント) (ISSN:21856605)
巻号頁・発行日
vol.72, no.4, pp.I_33-I_42, 2016 (Released:2017-01-31)
参考文献数
21
被引用文献数
1

わが国の経済は,1998年から長いデフレ不況の状態にある.デフレ脱却のために,財政政策による需要創出の有効性が示唆されているにも関わらず,1998年以降の公共事業費は削減され続けてきた.その背景として,経済政策の決定に多大な影響を及ぼすと考えられる内閣府の経済財政モデルが算出する乗数効果の小ささが挙げられる.そこで本稿では,内閣府モデルの妥当性の検証を行った.その結果,内閣府モデルには輸出入均衡値という概念が導入されており,輸出入を通じて均衡への調整が行なわれる構造が存在することを指摘した.その上で、マクロモデルに均衡値概念を導入することによって算出される乗数効果が大きく低下することを実証的に示すとともに,均衡値を導入することの不当性を明らかにした.
著者
萩原 剛 太田 裕之 藤井 聡
出版者
Japan Society of Civil Engineers
雑誌
土木計画学研究・論文集 (ISSN:09134034)
巻号頁・発行日
vol.23, pp.117-123, 2006
被引用文献数
6

人々の自発的な交通行動変容を促すコミュニケーション施策である「モビリティ・マネジメント」を実務的かつ広範に展開していくためには、なるべく多数の人々と、なるべく安価に接触できるようなコミュニケーション技術を検討する必要がある。この認識の下、本研究はアンケート調査の「回収率」に着目し、回収率の向上に影響を及ぼす要因について分析を行った。その結果、配布方法や報酬の提供方法によって、回収率が大きく異なることが示された。また、これらの方策に要するコストを算出することで、より効率的・効果的なアンケート回収率向上方策について検討した。
著者
藤井 聡
出版者
土木學會
雑誌
土木學會誌 (ISSN:0021468X)
巻号頁・発行日
vol.94, no.3, pp.56, 2009
著者
谷口 綾子 香川 太郎 藤井 聡
出版者
公益社団法人 土木学会
雑誌
土木学会論文集D (ISSN:18806058)
巻号頁・発行日
vol.65, no.3, pp.329-335, 2009 (Released:2009-08-20)
参考文献数
11

本研究では,都市の中心市街地の商店街において,自動車との接触が歩行者の心理状態に否定的な影響を与えているであろうとの仮説を措定し,その仮説を検証するため,東京都目黒区自由ヶ丘商店街を対象に,歩行者の街路歩行に対する主観的評価と自動車からの物理的干渉を測定する調査を行った.歩行者の主観的評価の指標として「歩きやすさ」「雰囲気のよさ」「楽しさ」の3指標を用い,これらを自動車流入規制のある時間帯と無い時間帯で比較を行うとともに,共分散構造分析による因果構造分析を行った結果,歩行者が自動車から何らかの干渉を受けると,上記3指標が有意に低下することが統計的に示された.これらより,歩行空間への自動車の流入は,歩行者の意識に否定的な影響を及ぼすことが示唆された.
著者
小林 快斗 川端 祐一郎 藤井 聡
出版者
公益社団法人 土木学会
雑誌
土木学会論文集 (ISSN:24366021)
巻号頁・発行日
vol.79, no.8, pp.22-00061, 2023 (Released:2023-08-20)
参考文献数
18

近年,地元に根付いた生活を重んじる「サムウェアズ」と,地域や国境を越えた自由な生き方を重んじる「エニウェアズ」の間の価値観対立が先鋭化しているとする理論が,土木計画に関わる議論を含めた総合的な社会評論に活用されている.しかしこれらの価値観の定量分析は不十分であり,その規定要因や他の心理的傾向との関連性の実証的分析も行われていない.本研究ではサムウェア性/エニウェア性を計測する尺度を使用し,それらに影響を与える個人属性や,「大衆性」「利他性」といった道徳心に関わる心理尺度との関連性を分析した.その結果,現居住地に長く住んでいるほどサムウェア的になる一方で,所得,学歴,職業,居住地域等の影響は小さいことが明らかになった.また,サムウェアズはエニウェアズと比べて道徳的である可能性が示唆された.
著者
柳川 篤志 川端 祐一郎 藤井 聡
出版者
公益社団法人 土木学会
雑誌
土木学会論文集D3(土木計画学) (ISSN:21856540)
巻号頁・発行日
vol.75, no.6, pp.I_351-I_368, 2020 (Released:2020-04-08)
参考文献数
37

現在わが国の人口は東京へ一極集中しており,世界の先進諸国と比較しても東京への集中度合いは非常に高い.人口の一極集中には地方の衰退,首都における災害等への脆弱性という弊害が存在しており,東京一極集中は是正されるべきであると考えられる.一極集中の是正へ向けてはその要因を検証していくことがまずもって必要である.国内外の既往研究においては,一極集中の要因を巡る研究がなされてきたが,定量的な分析に基づく実証研究は十分になされていない.そこで本研究では,鉄道整備が人口の一極集中に与える影響を明らかにすることを目的とし,国内外のデータを利用し実証的な分析を行った.その結果,鉄道インフラの偏在が人口移動に影響をもたらし,鉄道整備の東京圏への一極集中が,人口の東京圏への 一極集中をもたらす可能性が示唆された.
著者
加藤 真人 川端 祐一郎 藤井 聡
出版者
公益社団法人 土木学会
雑誌
土木学会論文集D3(土木計画学) (ISSN:21856540)
巻号頁・発行日
vol.78, no.6, pp.II_285-II_301, 2022 (Released:2022-04-20)
参考文献数
37

土木計画や公共政策には,言論の自由が保障された条件の下で弁証法的議論が繰り返される必要があるが,これらを侵害する恐れのある社会心理現象を指す概念に「ポリティカル・コレクトネス(PC)」が挙げられる.本研究ではPCを「“原則的には必ずしも正しくはないが,時世上は正当である”と社会的に認識されている,他人に押し付けることを前提として用いられる価値規準」と定義し,その基本的特徴を把握するためのアンケート調査を実施した.分析の結果,「自分の価値規準を持ちつつも抽象的な論理や理屈に固執せず,謙虚であるような態度」を持つことがPC度の低減につながる可能性が示唆され,その方策として事実情報提供法やコミュニケーション法といった心理的方略が有効であることが示唆された.