著者
鈴木 春菜 中井 周作 藤井 聡
出版者
Japan Society of Civil Engineers
雑誌
土木計画学研究・論文集 (ISSN:09134034)
巻号頁・発行日
vol.27, pp.425-430, 2010 (Released:2017-11-29)
参考文献数
18
被引用文献数
3

都市・交通に関わる各種施策の検討・評価にあたっては,物質的環境や行動の変化に与える影響はもとより,人々の心的状態を顧慮する必要がある.まちの雰囲気や活力等計量化し難い社会的,人文的側面にも繋がりうる重要な要素であると考えられるからである.本研究では,買い物行動における楽しさに着目し,その影響要因について,国内3都市で実施した調査の分析を行い検討した.分析の結果,平日と休日の買い物の楽しさの規定因については差異が存在すること,居住地域への愛着の水準や買い物行動における交通機関の差異,当該買い物行動への同伴の有無が,買い物行動中の「楽しさ」の水準に影響を及ぼす可能性が示唆された.
著者
宮川 愛由 西 広樹 小池 淳司 福田 崚 佐藤 啓輔 藤井 聡
出版者
公益社団法人 土木学会
雑誌
土木学会論文集D3(土木計画学) (ISSN:21856540)
巻号頁・発行日
vol.72, no.5, pp.I_393-I_405, 2016 (Released:2016-12-23)
参考文献数
28
被引用文献数
3

地方創生が叫ばれる現在,大型店舗が地域に与える影響に関する知見が重要となっている.しかし,筆者らが知る限り,消費者の大型店舗での買い物が,地域経済に与える影響に関して,国内においては実証的な知見が見当たらない.そこで,本研究では,消費者の買い物店舗の選択が地域経済に及ぼす影響の検証を目的として,京都市内の様々な経営形態の食料品小売店舗を対象に調査を行い,消費者の買い物支出の帰着先を分析した.分析の結果,買い物支出のうち京都市に帰着する割合が,大型店舗では地場スーパーや地元商店の半分程度であることが示された.本研究成果は,地域活性化に向けた望ましい消費者行動とは如何なるものかについての示唆を与えると同時に,大型店舗の進出による地域活性化への期待に疑義を唱えるものといえよう.
著者
田中 皓介 藤井 聡
出版者
公益社団法人 土木学会
雑誌
土木学会論文集D3(土木計画学) (ISSN:21856540)
巻号頁・発行日
vol.71, no.5, pp.I_143-I_149, 2015 (Released:2015-12-21)
参考文献数
14
被引用文献数
4

先の東日本大震災からの復興や,高い確率でその到来が予測されている首都直下型地震及び東海・東南海地震等に対する防災・減災の観点からしても,公共事業の重要性は近年一層高まっていると考えられる.そうした公共事業の実施に当たっては,国民世論並びに世論形成に影響を及ぼし得るメディアの報道が重要であるといえる.ところがそうしたメディアの主要な一つである新聞の,近年の報道が公共事業に対し批判的な傾向であることが示唆されている.ついては本研究では,既往研究からさらに範囲を広げ,戦後から現代までの日本における大手新聞社の公共事業に対する報道傾向を分析した.その結果,その論調は戦後徐々に批判的なものへと変遷していき,特に2000年代の論調は他の年代のそれに比べても極端に否定的な論調であったことが示唆された.
著者
羽鳥 剛史 藤井 聡 小松 佳弘
出版者
人間環境学研究会
雑誌
人間環境学研究 (ISSN:13485253)
巻号頁・発行日
vol.15, no.1, pp.17-24, 2017 (Released:2017-06-30)

先行研究(Hatori et al., 2016)において、オルテガが『大衆の反逆』の中で論じている人々の大衆性が社会的ジレンマ状況において非協力行動を促進することが指摘されている。この結果を受けて、本研究は、幼少期の家庭や地域コミュニティにおける社会的関係が大衆性の発達を緩和する効果について探索的に検討することを目的とした。この目的の下、全国の一般成人1000名を対象とした調査を実施した。その結果、幼少期における社会的関係と大衆性を構成する自己閉塞性との間に有意な関連性が確認された。具体的には、家庭内のしつけや地域コミュニティの連帯が自己閉塞性の発達を緩和することが示された。さらに、幼少期における社会的関係は、自己閉塞性への影響を介して、大衆性を構成するもう1つの因子である傲慢性の発達を抑制するという間接的な効果を持つ可能性も示唆された。
著者
太田 裕之 藤井 聡
出版者
公益社団法人 土木学会
雑誌
土木学会論文集G (ISSN:18806082)
巻号頁・発行日
vol.63, no.2, pp.159-167, 2007 (Released:2007-06-20)
参考文献数
20
被引用文献数
1 2

現代社会において,CO2排出削減のための環境配慮行動は多様に存在し,そのような中で人々は優先的にいくつかの行動を選択し取り組んでいると考えられる.その行動の選択の際に影響する要因の一つとして考えられる「有効性知覚」は,様々な認知的バイアスの影響により,実際の有効性と必ずしも一致していない可能性があると考えられる.そこで本研究では,CO2排出削減量効果の情報を提供することで,人々の有効性知覚と客観的有効性との間の乖離が減少し,それに伴い行動の効率化がなされるとの仮説を措定し,アンケート調査形式の実験を行った.データ分析を行った結果,事実情報の提供により認知的ひずみは軽減し得るものの,行動意図は十分には効率化されない可能性があるとの結果が示唆された.
著者
藤井 聡 林 成卓 北村 隆一 杉山 守久
出版者
Japan Society of Civil Engineers
雑誌
土木計画学研究・論文集 (ISSN:09134034)
巻号頁・発行日
vol.14, pp.851-860, 1997

本研究では, 交通網異常時における適切な広報活動を検討するために, そして, 交通網異常の交通需要予測を目指して, 個人の対応行動モデルシステムの構築を図った.本研究では, 交通網異常時では交通状態の認知についての異質性が顕著となるものと考え, 交通状況の認知と交通行動の双方を内生化した.モデルシステムの構築にあたっては, 阪神高速道路池田線通行止め規制中の個人の交通行動データを用いた.推定の結果, 個人が認知する交通状況の異質性を考慮することでデータへの適合度が向上すること, チラシ, フリーダイアルが個人の交通状況の認知の向上に貢献することが分かった.また, 京阪神パーソントリップデータを用いて感度分析を行った結果, 本モデルシステムを用いて広報活動政策を集計的な観点から評価できること, ならびに, 複数の情報媒体を組み合わせることが有効であることが分かった.
著者
宮川 愛由 田中 謙士朗 藤井 聡
出版者
公益社団法人 土木学会
雑誌
土木学会論文集D3(土木計画学) (ISSN:21856540)
巻号頁・発行日
vol.72, no.4, pp.344-355, 2016 (Released:2016-12-20)
参考文献数
19

本研究は都市計画,土木計画に抜本的な影響を及ぼす地方政府の統治機構改革を決する政治プロセスの合理化に資する効果的なコミュニケーションについての実証的知見を得る事を目的として,大阪市を廃止して都区制度を導入する,所謂「大阪都構想」を巡る住民投票を事例として,有権者の接触メディアと政策判断との関係性を分析した.その結果,テレビや新聞といった両論併記が原則となる情報媒体を参考にする傾向が高い有権者は,情報の真偽の判断が困難となるが故に従前の意見を変化させない一方で,意見を変化させた人々の内,「反対」に転じた人々は精緻化見込理論でいうところの事実情報に基づく「中心ルート」によって,「賛成」に転じた人々は「周辺ルート」によって態度を変容させたことを示唆する分析結果が示された.
著者
澤崎 貴則 藤井 聡 羽鳥 剛史 長谷川 大貴
出版者
公益社団法人 土木学会
雑誌
土木学会論文集F5(土木技術者実践) (ISSN:21856613)
巻号頁・発行日
vol.68, no.1, pp.1-15, 2012 (Released:2012-05-18)
参考文献数
33

近年,中心市街地の活力低下等が問題となっている中で,町の活気を取り戻すというような事例も見られる.こうした成功事例に着目し,如何にしてその成功が導かれたのかについての一般的知見を得ることは,今後のまちづくりにおいて有益であると考えられる.その知見を得る方法として,これまでは定量的な分析を行う自然科学的な手法が多く用いられてきたが,まちづくりに関わった人々の思いを理解するためには,“物語”を解釈するという解釈学的な方法論を用いることが求められる.本研究では,まちづくりの成功事例として挙げられる埼玉県川越市を対象として,まちづくりの様々な関係者にインタビューを行う.そして,それらを通じて“物語”を構成し,その解釈によって「川越まちづくり」が成功に至った要因を論ずる.
著者
夏山 英樹 神田 佑亮 藤井 聡
出版者
公益社団法人 土木学会
雑誌
土木学会論文集F6(安全問題) (ISSN:21856621)
巻号頁・発行日
vol.70, no.1, pp.14-32, 2014 (Released:2014-10-20)
参考文献数
31

我が国では地域主権改革の名の下,地方出先機関原則廃止の流れや,「コンクリートから人へ」のスローガンにより,公共事業は最近まで著しい縮小傾向が続き,それに伴い地方建設業もまた縮小傾向にさらされた.しかし東日本大震災で復旧活動を主導したのは,まさに廃止が論じられている地方整備局であり,その活動の先頭にいたのは地元建設業者である.本研究では関係資料や関係者の証言に基づき,特に国土交通省の地方支分部局の1つである地方整備局に着目し,発災直後の対応として全国の地方整備局が被災地へ派遣したTEC-FORCEやリエゾンの活動を物語描写し,それに基づき地方整備局を中心とした地方建設業界の防災対応力に関する基礎的な知見,並びに今後の防災対応を踏まえた行政制度設計に資する基礎的な知見を得ることを目的とする.
著者
藤井 聡 長谷川 大貴 中野 剛志 羽鳥 剛史
出版者
公益社団法人 土木学会
雑誌
土木学会論文集F5(土木技術者実践) (ISSN:21856613)
巻号頁・発行日
vol.67, no.1, pp.32-45, 2011 (Released:2011-03-18)
参考文献数
58
被引用文献数
2 18

人文社会科学では,「物語」(narrative)は,人間,あるいは人間が織りなす社会の動態を理解するにあたって重要な役割を担うものと見なされてきている.それ故,人間や社会を対象として,その動態に,公共的な観点からより望ましい方向に向けた影響を及ぼさんと志す“公共政策”全般においても,“物語”は重大な役割を担い得る.ついては,本研究では物語に関する基礎的な人文社会科学研究である,西洋哲学,解釈学,歴史学,歴史哲学,文芸批評,心理学,臨床心理学・社会学,民俗学などの主たる学術系譜のそれぞれをレビューすることを通して,プラグマティックな観点から“物語”がどのように公共政策に援用可能であるのかを論ずる.
著者
田中 皓介 中野 剛志 藤井 聡
出版者
Japan Society of Civil Engineers
雑誌
土木学会論文集D3(土木計画学) (ISSN:21856540)
巻号頁・発行日
vol.69, no.5, pp.I_353-I_361, 2013
被引用文献数
4 4

人文社会科学において,"物語"は,人間,あるいは人間の織り成す社会の動態を理解するにあたって重要な役割を役割を担うものと見なされてきている.それ故,人間や社会を対象として,公共的な観点からより望ましい方向に向けた影響を及ぼさんと志す"公共政策"においても,物語は重大な役割を担い得る.また公共政策の方針や実施においては,マスメディアが少なからぬ影響を及ぼしていることが十二分に考えられる.ついては本研究では,現在の日本において,政策が決定,採用されてきた背景を把握するにあたり,新聞の社説を対象とし,新聞各社に共有されている物語を定量的に分析することとする.
著者
藤井 聡 染谷 祐輔
出版者
Japan Society of Civil Engineers
雑誌
土木計画学研究・論文集 (ISSN:09134034)
巻号頁・発行日
vol.24, pp.481-487, 2007-09-30 (Released:2010-06-04)
参考文献数
17
被引用文献数
1 5 12

本研究では, 交通行動が居住地選択行動に影響を及ぼし, かつ, 居住地選択行動がさらに交通行動に影響を及ぼす, という形で, 交通行動と居住地選択行動に相互依存関係が存在するという仮説を措定した. それに加えて, 交通行動は, 転居を経てもなお, 習慣の効果により, その形態が持続されるであろうという仮説を措定した. 本研究では, これらの仮説より演繹される転居前後の交通行動, ならびに, 居住地選択行動との間の構造的因果関係を, 転居者を対象としたアンケート調査より得られたデータに基づいて検証したところ, その因果関係を支持する結果が得られた. 本稿では最後に, こうした結果の含意を議論することを通じて, 交通施策, 土地利用施策と行動変容施策の三者を一体的に展開することが, 望ましい都市と交通を期するためには重要であることを指摘した.
著者
羽鳥 剛史 藤井 聡 住永 哲史
出版者
The Behaviormetric Society of Japan
雑誌
行動計量学 (ISSN:03855481)
巻号頁・発行日
vol.40, no.1, pp.43-61, 2013-03-28
被引用文献数
1

As suggested in the case of "the 100 charismas of tourism", local communities can be improved if at least one ultra-altruistic person engages in cooperative behavior for the benefit of the community. This paper investigated determinants of such pro-social behavior toward a local community by "regional charismas." For the purpose, a questionnaire survey was conducted based on determinant factors of altruistic behavior proposed by previous research. The respondents were 1) "the 100 charisma of tourism" (<i>n</i> = 95), 2) "residents living in the same region as the charismas" (<i>n</i>= 400), and 3) residents living in other regions (<i>n</i> = 500). By comparing different groups, individual and regional factors of pro-social behavior by "charismas" were examined. The results suggested that Schwartz's "norm activating factor" and "perceived benefits" regarding pro-social behavior directly related to individual factors of charismas' behavior, and "sympathy" among residents directly related to regional factors.
著者
羽鳥 剛史 藤井 聡 住永 哲史
出版者
日本行動計量学会
雑誌
行動計量学 (ISSN:03855481)
巻号頁・発行日
vol.40, no.1, pp.43-61, 2013-03-28
参考文献数
50
被引用文献数
1

As suggested in the case of &ldquo;the 100 charismas of tourism&rdquo;, local communities can be improved if at least one ultra-altruistic person engages in cooperative behavior for the benefit of the community. This paper investigated determinants of such pro-social behavior toward a local community by &ldquo;regional charismas.&rdquo; For the purpose, a questionnaire survey was conducted based on determinant factors of altruistic behavior proposed by previous research. The respondents were 1) &ldquo;the 100 charisma of tourism&rdquo; (<i>n</i> = 95), 2) &ldquo;residents living in the same region as the charismas&rdquo; (<i>n</i>= 400), and 3) residents living in other regions (<i>n</i> = 500). By comparing different groups, individual and regional factors of pro-social behavior by &ldquo;charismas&rdquo; were examined. The results suggested that Schwartz&rsquo;s &ldquo;norm activating factor&rdquo; and &ldquo;perceived benefits&rdquo; regarding pro-social behavior directly related to individual factors of charismas&rsquo; behavior, and &ldquo;sympathy&rdquo; among residents directly related to regional factors.
著者
久保田 尚 松本 正生 藤井 聡 羽鳥 剛史 高橋 勝美
出版者
埼玉大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2009

本研究では、交通計画に関わるサイレント層に着目し、計画論の分野では、地区レベルの合意形成において社会実験がサイレント層に及ぼす影響を明らかにするとともに、ナラティブアプローチによりアンケートでは把握しきれない物語の抽出を測り、それに基づく政策提言を行った。さらに調査論の面から、複数の調査手法を組合わせることによる交通調査の回収率向上や調査コスト削減、データ信頼性向上が期待される結果を得た。