著者
近藤 滋
出版者
大阪大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2010

インビボ、インビトロの2つの系を使い、動物の模様を人為的に操作(改変)する技術の開発を目指した。インビボ系においては、 CX418遺伝子を変異させてゼブラフィッシュに導入することで、ほぼすべての種類の模様を作ることに成功した。インビトロ系に関しても、培養皿の上で、色素パターンを作るのに重要な細胞間の相互作用を再現することが可能になった。以上に寄り、おおむねこのプロジェクトは成功したと言える
著者
近藤 滋
出版者
大阪大学
雑誌
挑戦的萌芽研究
巻号頁・発行日
2010

以下の新しい知見が得られた。●アドレナリン受容体阻害剤の骨に関する影響に関して1.ゼブラフィッシュでは骨が小さいため、薬剤の影響を細かく調べることができないので、エンゼルフィッシュを使い、特に頭部の骨の形成を調べた。その結果、アドレナリン阻害剤の効果で、頭部の骨が全般的に薄くなっていることが解った。このことは、破骨細胞の活性が亢進していることを示している。2.骨芽細胞特異的に発現するプロモーターでGFPを発現させて、骨芽細胞の分布を調べた。その結果、骨芽細胞の量、分布にはアドレナリン阻害剤は影響しないらしいことが解った。3.トラップ染色により、脊椎周辺での破骨細胞の分布を調べた。その結果、予想通り、破骨細胞の分布に異常が見られた。しかし、その一方で、破骨細胞総量に関しては大きな変化は見られず、そのあたりは頭部骨とのデータが一致していない。●脊椎骨の変形をおこすstp変異のクローニング1.Stp変異(優勢の変異、enuで作られたため、ポイント変異と思われる)とクローニング用の株を交雑して、ポジショナルクローニング法による変異部位の特定を行った。2.22番染色体の一部に、stp変異を持つ個体由来のpcrbandが高い確率(86/88)で出る事が解り、おおよその遺伝子の位置が判明した。3.その領域は染色体の末端にあたるため、候補となる遺伝子は比較的少ない。4.その領域には別の骨形成変異を持つ突然変異の遺伝子(既にクローニング済み)が含まれている。5.Stpの染色体から、その遺伝子をクローニングし、配列を調べた結果、アミノ酸の置換があることが解った。6.今後、さらにF2の個体についてマーカーをスクリーニングすることで領域を絞るとともに、発見された変異遺伝子を含むプラスミドによるトランスジェニックの作成により、変異遺伝子の特定を目指す。
著者
近藤 滋 渡邉 正勝
出版者
大阪大学
雑誌
特定領域研究
巻号頁・発行日
2005

動物における自律的なパターン形成の基本原理がTuring波であるとの仮説を検証するため、ゼブラフィッシュの模様形成機構を分子レベルで解析した。その結果(1)ゼブラフィッシュの模様は、Turing波と一致する動的な性質を持つこと、(2)色素細胞間の相互作用がTuring波形成の条件を満たすこと、(3)Turing波形成にかかわる分子が、ギャップジャンクション、Notch-Delta, Kirチャンネルであることを突き止めた。目標の90%は達成されており、Turing波形成の完全解明も、目前に迫ったといえる。
著者
鍔田 武志 RAJEWSKY Kla LEDERMAN Set CLARK Edward 近藤 滋 上阪 等 仲野 徹
出版者
東京医科歯科大学
雑誌
国際学術研究
巻号頁・発行日
1994

我々は、濾胞性樹状細胞(FDC)やTリンパ球によるBリンパ球のプログラム死や分化の制御、とりわけ細胞間接触による制御の機構について検索を行った。活性化T細胞とB細胞が接触した際には、活性化T細胞上のCD40L分子がB細胞上のCD40分子と反応する。CD40を介するシグナルがB細胞の活性化や増殖、分化の際に重要な役割を果すことが示されていた。また、FDCがB細胞の生存や分化に何らかの役割を果たすことも示唆されていた。そこで、我々は、細胞株を用いて、T細胞やFDCとB細胞との反応を解析できる細胞系の確立を試みた。まず、我々は、T細胞株JarkatのCD40L陽性の変異株D1.1や可溶化CD40L分子、抗CD40抗体はいずれも、CD40を介してシグナルを伝達し、B細胞株の抗原レセプター架橋によるアポトーシス(プログラム死)を阻害することを明らかにした。また、これらCD40を介するシグナルはIL-4やTGF-βの存在下で、B細胞株CH12.LVのIgMからIgAへのクラススイッチを著明に誘導することを示し、さらに我々は、これらの刺激により非常に効率よくクラススイッチをおこすCH12.LVのサブクローンF3を得た。また、株化FDCと種々の株化B細胞を共培養し、FDCによるB細胞のプログラム死や分化の制御を検索したところ、B細胞株WEHI-231の抗原レセプター架橋によるアポトーシス(プログラム死)がFDCとの共培養により阻害されることを明らかにした。次に、以上の細胞系を用いて、FDCやT細胞によるB細胞のアポトーシスやクラススイッチの制御機構を解析した。まず、FDCによるWEHI-231のアポトーシス阻害の際には、FDCはCD40のリガンドを発現せず、また、LFA-1,ICAM-1,VCAM-1などの抗体ではFDCの作用を阻害できないので、CD40やこれらの接着分子を介さない経路によりWEHI-231のアポトーシスを阻害することが明らかとなった。また、WEHI-231ではCD40シグナルによりbcl-2やbcl-xといったアポトーシス阻害分子の発現が誘導されるが、FDCにはこのような作用はなく、CD40とは異なった機構でアポトーシスを阻害することが強く示唆された。FDCによるB細胞アポトーシス阻害に関与する分子を同定する目的で、WEHI-231やFDCに対するモノクローナル抗体を作成したが、B細胞アポトーシスの制御に関与する分子は同定できなかった。また我々は、CD40シグナルによるB細胞アポトーシス阻害の機構をWEHI-231を用いて検索した。まず、WEHI-231細胞においてCD40シグナルによりその発現が変化する遺伝子をdifferential displayにより同定することを試みた。しかしながら、differential displayの方法上の制約などのため、発現が大きく変化する遺伝子を同定することはできなかった。一方、我々は、WEHI-231の細胞周期回転の制御機構の研究から、CD40シグナルが細胞周期阻害分子p27^<Kip1>の発現を著明に阻害することを明らかにしていたが、p27^<Kip1>のアンチセンスオリゴによりp27^<Kip1>の発現を低下させると、WEHI-231の抗原レセプター架橋によるアポトーシスが阻害されることを明らかにし、p27^<Kip1>がCD40シグナルによるB細胞アポトーシスの制御で重要な標的分子であることを示した。また我々は、F3細胞を用いてCD40シグナルによるクラススイッチ誘導機構の解析を行った。まず、組み換えが起こる免疫グロブリンC領域の胚型転写とそのメチル化について検索したところ、脱メチル化の度合いとスイッチ組換えの起きる比率がきわめてよく相関していたが、胚型転写はスイッチとは相関しなかった。したがって、胚型転写は組換えとはあまり関係がなく、メチル化が組み換えの分子機構に何らかの関係があることが示唆された。さらに、CD40シグナルによる免疫グロブリンクラススイッチに関与する分子を同定する目的で、CD40Lなどで処理したF3細胞由来のcDNAと無処理のF3細胞のmRNAの間でサブトラクション法を行い、CD40Lなどの刺激で誘導される遺伝子を2つ単離した。現在、この遺伝子がクラススイッチに本当に関与しているか解析中である。
著者
松田 文彦 リットマン ギャリー 近藤 滋 LITMAN Gary
出版者
京都大学
雑誌
国際学術研究
巻号頁・発行日
1995

ヒト免疫グロブリンH鎖遺伝子領域の物理地図を作成し全塩基配列を決定することを最終目標に領域の単離、解析を酵母人工染色体(YAC)を用いて試み、約1Mbの領域の全体を単離し詳細な物理地図を作成し、この領域の全貌を明らかにすることに成功した。さらに、得られた物理地図の情報をもとに、全領域の全塩基配列の決定を試み、現在までに2箇所のギャップ(約10kb)を除き、J_H遺伝子群から14qテロメアまでの約1Mbの領域の塩基配列決定に成功し、以下の結果を得た。1)V_H断片の総数得られた塩基配列を用いてコンピューターによる相同性検索を行った結果、V_H断片の総数は82個であることが明らかになった。またこのうち半数以上の42個が何らかの原因で機能を失った偽遺伝子であった。2)V_H断片のpolarityV_HのJ_H断片に対する相対的転写方向はすべてJ_Hに対して順向きで、逆位は存在しないことが明らかになった。3)反復配列の同定領域中に分布するヒトの高頻度反復配列Alu及びL1反復配列の同定を行った。その結果、105個のAlu配列と25個のL1配列が見い出された。それぞれの反復配列の頻度はゲノム全体の平均とはそれほど大きく異なっておらず、またその分布に関しても特定の傾向は見い出されなかった。4)D遺伝子群の構造ヒトD遺伝子群はD_M、D_<LR>、D_<XP>、D_A、D_K、D_Nの6つのファミリーのD断片で構成され、V6-1とJH断片群の間の領域にこれら6つの断片が組になって4回重複したかたちで存在していることが推測されている。塩基配列の詳細な解析より今回合計25個のD断片を同定した。
著者
本庶 佑 近藤 滋
出版者
京都大学
雑誌
基盤研究(A)
巻号頁・発行日
1995

in vitroの培養細胞株CH12F3細胞は試験管内でIL-4、TGFβ、CD40Lを加えることによって50%以上の細胞がIgMからIgAにクラススイッチすることを明らかにし、この細胞のクラススイッチによってSμ-Sa組み換えが起こり遺伝子の欠失が起こることを証明した。さらにこの細胞の遺伝子組み換えの部位頻度分布を詳細に検討したところ遺伝子組み換え点はS領域を中心に前後に広く広がっていること、またI領域内には極めて低頻度でしか組み換えが起こらないことを明らかにした。この結果は、S領域の役割が組み換えの引き金としての役割と実際に切断、つなぎ戻しを行われる場であるのと二つの可能性の内、前者の可能性を強く示唆するものである。ついでCH12F3細胞に人工的に作製したSμとSαをもつプラスミドを導入し、染色体外で遺伝子組み換えの発現誘導を試み、低頻度ではあるが実際にクラススイッチ組み換えが行われることを確認した。現在これをさらに高頻度の組み換えが起こるようにプラスミドを改変中である。新しいクラススイッチ制御遺伝子を単離するためにクラススイッチ刺激を加えたものと加えないものとの間でsubtraction hybridization法を行った。このために酵素分解を加味した新しいsubtraction法を確立し、特異的に誘導される2種類の遺伝子を単離し現在この意義を解析中である。また先天的にリンパ節及びジャーミナルセンターの形成不能マウスaly/alyマウスの病態を解析し、このネズミにおいてはクラススイッチが極めて起こりにくいことを明らかにした。すなわちクラススイッチが起こるためにはジャーミナルセンターにおけるT、B細胞の協調的制御が必要であることを明らかにした。
著者
近藤 滋
出版者
徳島大学
雑誌
萌芽的研究
巻号頁・発行日
1996

結果 ゼブラフィッシュにおいてもタテジマキンチャクダイで観察されたものと同様な、成長に伴う模様の変化を観察した。ゼブラフィッシュの体表に分布するメラノサイト移動を経時的に観察することにより、(1)メラノサイトの移動は、ごく初期にのみおき、実際に模様形成がおきるときには移動しない。模様の形成は個々のメラノサイトの濃淡の変化でできる。(2)これは他の魚類でも同じであり、模様形成メカニズムに一般性があることが解った。次にクローニングのターゲットとして今のところ最有力なのはleo遺伝子であるが、これが実際に反応拡散波形成の中核に位置する分子をコードしていることを以下のようにして確認した.leo locusの対立遺伝子 wild,t1,tw28,tq270は、ホモの個体を作ると4通りの模様ができるが、それらはいずれも反応拡散方程式の1つのパラメーターを連続的に変化させることにより、作り出すことができる。2つのホモの個体のパラメーターの中間の値をとったときに計算される模様と、実際のヘテロの個体の模様が一致すれば、この遺伝子が「反応拡散波に影響している」という極めて強い証拠になるが、今までのところ、かなり予測と近い結果を得ている。また、別の突然変異で、ストライプの幅が変化するもの(td15,td271d)との二重変異個体についても、ほぼ計算予測と近い結果を得ている。結論 leo遺伝子は反応拡散波を作る因子に直接関与する遺伝子(おそらくアクチベーターの合成をコントロール)で有ることはほぼ間違いと思われる.この結果は98年分子生物学会のワークショップにて発表済みであり、現在論文を準備中です。
著者
近藤 滋 芳賀 永 秋山 正和 松本 健郎 上野 直人 松野 健治 武田 洋幸 井上 康博 大澤 志津江
出版者
大阪大学
雑誌
新学術領域研究(研究領域提案型)
巻号頁・発行日
2015-06-29

28年度の総括班では、既に、班としてのシステムの構築がほぼ終わっているために、既存の共有装置の維持管理が主なものになる。2機の3Dプリンターは、全班員の研究に有効に使用されている。28年度に、総括班費で購入した機器は、顕微鏡用の共焦点レーザーユニット(北海道大学:999万円)と、ズーム顕微鏡(基礎生物学研究所:299万円、原子間力顕微鏡の一部として購入)である。いずれも、他の資金で購入したパーツと組み合わせることで、購入金額の節約をしている。両装置とも、3D形態の計測に必須であり、共同利用が進んでいる。班会議は北大で、5月23,24日に行った。理論系と実験系の交流を目的とする夏、冬の合宿は、9月4,5,6日と、3月28、29日に、淡路島、琵琶湖で行った。いずれも、学生の旅費の補助を総括班費から支出している。これまで、合宿は主に比較的少人数で行ってきたが、2016年度は、公募班員からの希望が多かったために、冬の合宿では会場を変えた。非常に活発な議論が行われたが、参加者が多くなりすぎたため、プロジェクトごとの議論の時間が逆に短くなり、やや、食いたりない面もあった。この点の解消が、今後の課題として残された。北海道大学の秋山は、定期的に、数学と3Dソフトの講習会を行っており、そのための実費(交通費、宿泊費)の支援を行った。その他、HPの更新に約30万円を支出している。
著者
近藤 滋 後藤 寛貴
出版者
大阪大学
雑誌
新学術領域研究(研究領域提案型)
巻号頁・発行日
2015-06-29

研究はカブトムシとツノゼミの2つを対象にして、原基折り畳みと成虫の3D形態との関係の解明を目指している。カブトムシ:28年度の主な進展は、角原基の折り畳み構造が、蛹角の完全な3Dを内包していることを証明できたことである。実験は3通りの方法で行った。まず、終齢幼虫の頭の殻を取り除き、腹に圧力を与えることで、原基が膨らみ、蛹角の形状になることを証明した。次に、その変形に細胞シートの伸展が関与していないことを証明するため、原基を切り出し、ホルマリンで固定したのちシリコンチューブに固定し、空気を送り込んで膨らますことで、正確な蛹角ができることを示した。最後に、連続切片から取得した原基の折り畳み形状を、計算機の中で膨らませることでも、同じ変形が起きた。この結果から、蛹角の完全な3D構造は、角原基の折り畳みにコードされていることが完全に証明された。(論文審査中)ツノゼミ:コスタリカに研究員を派遣し、最も注目しているヨツコブツノゼミの採集に成功している。また、羽化直前の幼虫も少数ながら確保しX線CTにより、折り畳み形状のデータを取得できた。まだ、解析は十分ではないが、多種多様の形状を見せるツノゼミのツノが、基本的には似た折り畳み様式を持っていることが示唆され、今後の研究の指針が得られた。技術的な進展:カブトムシ、ツノゼミともに、原基の3D形状のデータ取得方法の試行錯誤に多くの時間を費やしたが、その成果は十分にあり、今後の研究の加速が期待できる。
著者
近藤 滋 船山 典子
出版者
大阪大学
雑誌
基盤研究(A)
巻号頁・発行日
2019-04-01

本研究では、「細胞の積み上げでなく、剛性の高い材料の組み立てで形ができる」という新しい概念を形態形成学の分野に確立することを目的とする。カワカイメンと魚のヒレ骨形成は、それを示唆する最初の、そして極めて典型的な例である。いずれの実験系でも、それぞれの役割を果たす細胞が、どのように建築資材(骨片・AC)と相互作用するのか、を明らかにすることが目的である。棒状構造の動態を記録できる3Dイメージングの装置と、細胞との物理的な相互作用を計算するシミュレータにより、細胞による体の「建築」原理を解明したい。
著者
近藤 滋 武田 洋幸 上野 直人 松野 健治 松本 健郎 芳賀 永 井上 康博 秋山 正和 大澤 志津江
出版者
大阪大学
雑誌
新学術領域研究(研究領域提案型)
巻号頁・発行日
2015-11-06

主な活動は以下の4点である。1:7月10,11日にアメリカ合衆国カリフォルニア大学アーバイン校と合同で、3D形態形成に関するシンポジウムを開催し、同時に、今後の技術協力体制の拡大に関して話し合いを行った。アメリカ側の主催者であるKen Cho博士は分子発生学の世界的な権威であり、今後も、交流を続けることを確認した。2018年の本研究班の班会議にKen cho博士を招き特別講演をお願いすることが決まっている。また、上野研究室との共同研究も現在進行中である。2:河西通博士をHarvard Medical School のSean Megason研究室へ派遣し、ゼブラフィッシュ胚における組織の3次元構造の発生機構の研究を共同研究で行っている。これは前年度からの継続である。昨年度より、細胞レベルでの挙動を定量的に解析しており、特に、In toto imagingなどの観測技術を武田研究室に移植している。河西通博士の派遣は、2018年度で終了する予定。3:近藤班の3名が、前年に引き続き、コスタリカでツノゼミサンプルの採取を行った。今年度は、プロジェクトの目的がはっきりしており、特にヨツコブツノゼミの幼虫、ヨコツノツノゼミの幼虫、の2種に絞り、採集を行った。結果として、それぞれ70匹、200匹のサンプル採集に成功し、エタノール固定ののち、コスタリカ大学ポールハンソン教授の仲介で、日本に送付していただいている。今後の近藤班の研究は、このサンプルの解析が中心となる。4:近藤研究室の学生、松田佳祐を3D形態の計算で世界的に有名なプルシェミック研究室に約2か月滞在させ、原基の折り畳みソフトの高速化技術を学び、昨年作った展開ソフトを改良した。