著者
吉崎 浩一 野瀬 弘之 鈴木 優司 近藤 則央 前田 淳一 堀井 修 飯井 サト子 牧村 士郎 寺井 継男 東 弘志
出版者
一般社団法人 日本農村医学会
雑誌
日本農村医学会雑誌 (ISSN:04682513)
巻号頁・発行日
vol.48, no.4, pp.630-637, 1999-11-30 (Released:2011-08-11)
参考文献数
5
被引用文献数
1 1

上部消化管造影検査で高濃度バリウムを使用するにあたっての前調査として, バリウム飲用による副作用及びその服用感がバリウム濃度及びその性状によりどのように変化するかアンケート調査を行い検討した。副作用は, バリウム濃度上昇に伴い増加したが, 何れも一過性のものであり, 医療機関で治療を要した例はなかった。さらに, 便秘群と通常群に分けて検討したが, 便秘群では通常群より低い濃度で副作用の割合が増え, 排泄状況に関しても便の硬化や排泄の遅延などが認められた。バリウム便の排泄は, 基本的には普段の排便状況と一致し, 濃度増加による影響をあまり受けないものと思われた。下剤の有無による排便状況の調査では, 下剤の服用が必ずしも良好な排泄につながっておらず, 今後下剤を服用するタイミングや水分摂取等に関する検討が必要であると思われた。バリウムの飲み易さは, バリウムを選択する際の要素の一つと考えられるため, その服用感に関して調査したが, 濃度の差よりその性状に起因することが明らかになった。これらの結果より高濃度バリウムを使用するに当たり, 副作用出現を抑制するためには特に便秘群において適切な指導をする必要があると思われた。
著者
近藤 皓介 原 賢二 阿部 周司 梶原 一人
出版者
低温生物工学会
雑誌
低温生物工学会誌 (ISSN:13407902)
巻号頁・発行日
vol.65, no.2, pp.71-74, 2019 (Released:2020-01-06)

Hexagonal and cubic phases have been observed under atmospheric pressure as an ice crystalline phase. No study has reported the preparation of a cubic phase by directly freezing bulk water or by directly cooling the hexagonal phase. We hypothesize that the cubic phase is initially formed upon the crystallization of water and that it subsequently transitions to a hexagonal phase at a momentary rate. When pure water was used, it was not possible to capture the process of transferring to the hexagonal phase through the cubic phase at an integration interval of one second. However, when a 40 wt% aqueous glucose solution was used, it was possible to capture the process of transitioning from the supercooled liquid to the hexagonal phase through the cubic phase with an integration time of one second. This result is considered to indicate that the pure water may be instantaneously transferred from the supercooled liquid through the cubic phase to the hexagonal phase.
著者
近藤 隆 河辺 義孝
出版者
耳鼻と臨床会
雑誌
耳鼻と臨床 (ISSN:04477227)
巻号頁・発行日
vol.33, no.5, pp.823-833, 1987-09-20 (Released:2013-05-10)
参考文献数
8

Eighty-one cases of head and neck cancer patients who died within the last five years were analyzed. The sites of primary tumors were as follows: 15 cases in the nasal and paranasal cavity, 13 cases in the tongue, 9 cases in the larynx, 7 cases in the thyroid, and 7 cases epipharynx, and 6 cases in the hypopharyngeal-cervical esophagus. 81.8% of the patients had stage III or IV cancer at the initial diagnosis and suffered from double cancers during the course of the disease. These patients had repeated hospitalizations and were treated surgicaly by tracheostomy, gastrostomy or ligation of carotid artery. In recent years, there has been increased interest in defining what constitutes good quality care for the terminal by ill cancer patient. Our analysis documents the complex problems these patients and their physicians face. These problems challenge the medical facilities caring for such patients to develop programs that provide the highest possible levels of care for head and neck cancer patients. Head and neck surgeon must consider the protocol of informing cancer patients. Cymprehensive care must be given after informing the patients of their condition.
著者
乾 正幸 大和田 進 近藤 裕子 蘇原 直人 乾 純和
出版者
一般社団法人 日本消化器内視鏡学会 関東支部
雑誌
Progress of Digestive Endoscopy (ISSN:13489844)
巻号頁・発行日
vol.78, no.2, pp.57-60, 2011-06-10 (Released:2013-07-19)
参考文献数
5

大腸内視鏡検査に送気は不可欠であるが,空気による送気では残留空気による腹満感が出現することがある。そこで,今回スクリーニングを含む大腸内視鏡検査における炭酸ガス送気の有用性と経済性を評価することを目的とし臨床研究を行った。対象は2009年9月10日から2009年12月1日までに乾内科クリニックで施行された大腸内視鏡検査(軽処置を含む)101症例にアンケート調査を行った。この間,全例に炭酸ガス送気を用いた。また,大腸内視鏡検査1件あたりの炭酸ガスのランニングコストを,6.6kg一本の炭酸ガスボンベのコストを総検査数で除して算出した。症例の内訳は,男性49名,女性52名,年代の最頻値は60代であった。検査中及び検査後の腹満感については,楽であったと答えた群が大幅に上回った。空気送気による大腸内視鏡検査歴のある被験者で前回の検査と今回の炭酸ガス送気の検査の腹満感の比較でも楽であったとの回答が大幅に上回った。また検査中及び検査後の腹満感について統計学的検討を行ったが腹部手術歴の有無や大腸内視鏡検査歴の有無によらず腹満感は軽減されたことが示された。今回の検討期間内における大腸内視鏡検査1件あたりの炭酸ガス使用量は0.16kgであった。炭酸ガスボンベ一本6.6kgの単価は9,000円であり,1件あたりのランニングコストは227円であった。
著者
村神 瑠美 倉山 太一 後藤 悠人 谷 康弘 田所 祐介 西井 淳 近藤 国嗣 大高 洋平
出版者
公益社団法人 日本理学療法士協会
雑誌
理学療法学Supplement
巻号頁・発行日
vol.2013, 2014

【はじめに,目的】中枢神経系は複雑な歩行制御を,速度に依らない特定のシナジーを用いて簡易化し,恒常的な制御を行うとされている。Ivanenko(2006)らは健常成人の32個の下肢・体幹・肩の歩行筋活動パターンの90%以上が,わずか5つの因子で説明でき,さらにその因子は一定の速度範囲において不変であると報告した。しかし一方で,極端に遅い速度域で健常者が歩行した場合,歩幅や歩行率などの変動性が増大することから,極低速域では恒常的な歩行制御が成立しない可能性がある。脳卒中患者ではそのような低速度域で歩行している場合も多く,歩行介入を考えた場合,極低速域における歩行制御に関する知見は重要な意味を持つと考えられる。そこで本研究では極低速域における歩行制御を筋活動の側面から明らかにすることを目的に,健常者を対象として通常速度域から極低速域における筋電解析,運動学的解析を行った。【方法】対象は健常成人男性20名(26.8±4.53[歳],体重64±8[kg],身長1.72±4.31[m])とした。計測課題は10,20,40,60,80,100[m/min]の6条件でのトレッドミル歩行を擬ランダムな順序で実施した。表面筋電計(Trigno,DELSYS)にて,歩行中の体幹・下肢16筋(外腹斜筋,腹直筋,大腿直筋,外側広筋,長腓骨筋,前脛骨筋,ヒラメ筋,腓腹筋外側頭,半腱様筋,大腿二頭筋,脊柱起立筋,中殿筋,大殿筋,大腿筋膜張筋,縫工筋,長内転筋)を測定した。運動学的指標として歩幅,歩行率などを三次元動作解析装置(Optotrak,NDI)を用いて計測した。筋電解析は,最初に各速度における各筋の表面筋電図について,1歩行周期で正規化し,20歩行周期分の加算波形を作成した。続いて,被験者ごとに得られた16筋の加算波形に対して速度ごとに主成分分析を行い,固有値0.5以上の主成分波形を抽出した。更に速度60[m/min]の主成分波形と,その他の速度の主成分波形の間で相関係数を算出,正規化(Fisher-Z変換)した数値を各波形の類似度とした。運動学的解析については,歩行比(歩幅/歩行率)を算出した。統計は,主成分波形の類似度,及び歩行比について,速度を因子とした一元配置分散分析を実施し,有意差が得られた場合に下位検定として各速度間での多重比較(paired-t検定)を実施した。有意水準は5%とした。解析および統計にはMatlab 2012aならびにSPSS 19.0を用いた。【倫理的配慮,説明と同意】本研究は当院倫理委員会にて承認され,全対象者に内容を説明後,書面にて同意を得た。【結果】主成分分析の結果,平均で5.1個の主成分が得られた。主成分波形の類似度(相関係数のz値)は,第1主成分では極低速域(10,20[m/min],<i>z</i>=0.8)が他の速度域(<i>z</i>=0.9~1.1)に比べ有意に低下した(<i>p</i><.05)。第2~第4主成分では10[m/min]でそれぞれ<i>z</i>=0.6,<i>z</i>=0.5,<i>z</i>=0.4であり他の速度(<i>z</i>=0.7~1.1,<i>z</i>=0.6~0.9,<i>z</i>=0.5~0.8)と比べ有意に低下した(<i>p</i><.05)。第5主成分においては全速度間で有意差はみられなかった(<i>z</i>=0.3~0.6)。歩行比については,60[m/min]以上ではほぼ一定(0.0051~0.0056[m/steps/min])の値を示したが,低速域では10,20[m/min]でそれぞれ0.0093,0.0066[m/steps/min]と速度が低下するにつれて有意に増加した(<i>p</i><.05)。また極低速域では,歩行比の変動係数が10,20[m/min]でそれぞれ0.38,0.26となり,通常速度(0.15~0.17)と比べて増加傾向であった。【考察】極低速域における筋活動の主成分波形は,通常速度域とは有意に異なった。このことから通常速度でみられる恒常的な筋活動パターンは,極低速域では成立しないことが示唆された。特に20[m/min]以下の速度では,主成分波形の類似度が他の速度よりも有意に低下し,また運動学的な観察においても,歩行比が有意に増大し変動性も増加傾向にあったことから,これ以下の速度では歩行の恒常性が維持されず,通常速度域とは異なる歩行制御がなされていることが推察された。以上の知見より,極低速域にて歩行する患者への歩行介入において,いわゆる正常歩行パターンを適用することが好ましくない可能性を示した。【理学療法学研究としての意義】低速歩行に関して,従来のメカニズムとは異なる可能性があるという示唆が得られ,脳卒中患者など超低速歩行で歩行する病態へのアプローチにおける基礎的な知見を提供した。
著者
近藤 隆二郎
出版者
社団法人日本造園学会
雑誌
ランドスケープ研究 : 日本造園学会誌 : journal of the Japanese Institute of Landscape Architecture (ISSN:13408984)
巻号頁・発行日
vol.58, no.5, pp.161-164, 1995-03-31
参考文献数
15
被引用文献数
2

江戸のまちにおける写し霊場 (33ヶ所) を取り上げ, 札所番号・景観類似・巡拝域などについて考察した結果, 本尊が観音である寺社のネットワークであること, 本西国との類似性を意識した演出法の存在, 江戸全域を巡るものと地域的に限られたものに分かれること, 都市像の形成を促す役割を持っていたことなどを示した。江戸西国三十三所 (上野王子駒込辺) の『案内記』を分節化し, 御詠歌が本西国連想の媒介であったこと, 景観的視点が重視されていたことを示すとともに, 現地景観体験と本西国の景観を連想する体験とが重なって成立しており, 江戸における写し霊場の鑑賞構造が, 虚実が交錯する中で部分的全体性を体得するものであったことを示唆した。
著者
腰野 富久 近藤 邦明
出版者
医学書院
雑誌
総合リハビリテーション (ISSN:03869822)
巻号頁・発行日
vol.13, no.3, pp.197-201, 1985-03-10

はじめに 膝内障の定義に関しては,さまざまな意見があるが,一般的な概念としては急激な疼痛,嵌頓症状および膝くずれなどを訴え,単純X線像に病的所見を認めないものをさしている.このように膝内障という呼称は判然としない面があるが,膝関節内の不定の障害に対する総称であり,診断をつけるには便利なものであるため,ごく最近まで広く用いられてきた. 一般的には半月板損傷,陳旧性十字靱帯損傷,膝蓋軟骨軟化症,棚障害,膝蓋下脂肪体障害(Hoffa's disease)などの膝障害をさすことが多い8). しかし最近では,各種診断技術の進歩に加えて,X線学的検査でも膝蓋骨軸射像,関節造影,関節鏡などが広く行われるようになり,これまで膝内障として一括して扱われていた疾患に対しても,病態が明確に把握され個個の疾患に即応した治療が行われるようになった.これら膝内障に属する個々の疾患に対して若干の解説を加えた.
著者
天野 英晴 並木 美太郎 中村 宏 宇佐美 公良 近藤 正章 鯉渕 道紘 黒田 忠広
出版者
慶應義塾大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2018-04-01

誘導結合チップ間無線インタフェース(Through Chip Interface:TCI)を用いて小規模なチップを多数結合し、多様な大規模システムを構築する「ビルディングブロック型計算システム」のチップブリッジを用いたシステム統合方式について研究する。既に開発された複数のLSIチップを、チップ自体をブリッジとすることにより組み合わせ、様々な機能、性能、エネルギー要求を満足するシステム構成の構築法を確立することを目的とする。具体的には、安価なボンディングを用いて多数のチップを組み合わせる積層手法、ソフトウェアからアナログ技術までを駆使して性能、電力をチューニングする手法、チップ内のスイッチとアクセラレータを統合する機構について研究する。2018年度は、TCIを用いたIP(Intellectual Property)の動作検証と、実チップテストを行うためのTCITesterチップを開発した。このチップは、ルネサスエレクトロニクス社65nmプロセスを利用して、3mm X 3mmのサイズで実装した。TCIを装備する様々なチップの上に装着し、その電気的特性を計測し、連続運転試験を行うことができる。他のチップ上に積層するのに先立ち、開発したTCI Tester同士を積層し、TCI IPの転送可能周波数、電源ドロップを計測し、TCI IPを組み込む場合の指針を得た。また、TCI IPを装備したKVSチップ、SNACCチップ、CCSOTBチップそれぞれの単体性能を実チップで計測した。また、積層を行った場合の発熱の時間経過を計測するTHERMO2の積層を行った。様々なチップ積層の可能性を探るため、熱解析ツールの改良を行った。
著者
徐 弘毅 兼松 祥央 茂木 龍太 鶴田 直也 三上 浩司 近藤 邦雄
出版者
Japan Society for Graphic Science
雑誌
図学研究 (ISSN:03875512)
巻号頁・発行日
vol.52, no.4, pp.11, 2019 (Released:2019-12-01)
参考文献数
7
被引用文献数
1

日本のロボットアニメは長い歴史を持ち,多くの傑作が制作されている.また,戦闘シーンはロボットアニメにとって重要なシーンの1つである.本研究では,ロボットアニメにおける戦闘シーン制作のための構図設計支援システムを提案する.そのため,既存のロボットアニメ10作品から,2531の戦闘シーンを抽出し,ロボットの行動,カメラの動き,ショットサイズなどを分類した.また,これらの分類を用いてカメラワークや構図に関するデータのライブラリを開発した.このライブラリを用いることで,ユーザーは戦闘シーンを制作する際に,演出意図に合わせたカメラワークを検索可能である.開発したライブラリを用いた実験の結果,このライブラリは特に映像経験のないユーザーにとって有用であることが分かった.このことから,ディレクターなど映像制作ツールの取り扱いを専門としないユーザーでも容易に戦闘シーンの構図設計が可能である.
著者
五十嵐 美紅 鶴田 直也 茂木 龍太 兼松 祥央 三上 浩司 近藤 邦雄
出版者
一般社団法人 映像情報メディア学会
雑誌
映像情報メディア学会技術報告 (ISSN:13426893)
巻号頁・発行日
vol.40, pp.245-248, 2016

アニメーションには複数のキャラクターが存在し、集団を構成している。集団内では各キャラクターの配色に一貫性がある、あるいは、バランスよく異なっていることが望ましいが、手動で個々の配色設定を行うことは容易ではない。そこで本研究では集団キャラクターの配色について着目し、配色シミュレーションシステムの構築を行った。既存作品26作品に登場するキャラクターについて、1体あたり11色の主要な色を抽出し、集団単位でまとめた。ユーザはまず、シミュレーションを行いたい集団キャラクターの線画を読み込み、髪や顔、衣服などの範囲を指定する。次に人数や作品キーワードから集団を検索し、その集団に使用されている配色情報を一括で適用することができる。これにより、塗り直しの手間を軽減し、配色設定に要する時間を削減することを可能とした。
著者
峯 克也 明樂 重夫 近藤 幸尋 竹下 俊行
出版者
日本医科大学医学会
雑誌
日本医科大学医学会雑誌 (ISSN:13498975)
巻号頁・発行日
vol.6, no.3, pp.147-151, 2010 (Released:2010-06-28)
参考文献数
5

A 33-year-old woman was referred to us by the department of urology because of cyclic bladder pain during menstruation. Cystoscopy showed a 3.5-cm-diameter tumor in the bladder mucosa, and a biopsy showed chronic cystitis. Transvaginal ultrasound and pelvic magnetic resonance imaging revealed a left endometrial ovarian cyst. Although a biopsy did not prove bladder endometriosis, we diagnosed bladder endometriosis on the basis of the characteristic clinical findings. Laparoscopic partial cystectomy for bladder endometriosis and left ovarian endometrial cyst resection were performed. The bladder was closed in one layer using Z sutures with #3-0 polyglactin 910. Indigo carmine dye was then used to check for any leakage. The procedure lasted 4 hours, and the estimated blood loss was 10mL. There were no technique problems or complications. The Foley catheter was removed after 7 days. The symptoms had resolved by 4 weeks after surgery, and the patient was released to routine follow-up. The patient had complete resolution of bladder symptoms and cyclic pelvic pain and was delighted with the absence of pain and the cosmetic result.
著者
森田 とわ 山口 智史 小宅 一彰 井上 靖悟 菅澤 昌史 藤本 修平 飯倉 大貴 田辺 茂雄 横山 明正 近藤 国嗣 大高 洋平
出版者
公益社団法人 日本理学療法士協会
雑誌
理学療法学Supplement Vol.39 Suppl. No.2 (第47回日本理学療法学術大会 抄録集)
巻号頁・発行日
pp.Ea0348, 2012 (Released:2012-08-10)

【はじめに、目的】 膝蓋骨骨折や膝蓋腱断裂,大腿四頭筋断裂などでは,膝伸展筋の機能不全によって歩行時に膝折れを呈し,膝伸展位保持が困難になる.この膝折れを防止するために,膝伸展位保持装具(以下,膝装具)が使用されることがある.支持性の良い膝装具は膝伸展筋力を代償するだけでなく,他の関節周囲筋の筋活動を変化させる可能性がある.しかしながら,膝装具使用時の歩行時筋活動量について言及された報告はない.本研究では,膝装具が歩行時の下肢筋活動量へ及ぼす影響を検討した.【方法】 対象は健常成人9名(年齢:24.4±2.8歳,身長:1.73±0.04m,体重61.2±6.3kg)とした.課題は20m/minに設定したトレッドミル上での膝装具装着および非装着の2条件の歩行とした。膝装具は,両側支柱付きのニーブレース(アルケア株式会社)を使用し,十分な練習後に装着非装着での歩行,装具装着での歩行の順番で課題を行った. 表面筋電図の測定には,筋電図記録用システム(Delsys社)を使用した.記録筋は,両側下肢の大殿筋(GM),内側ハムストリングス(MH),大腿直筋(RF),ヒラメ筋(SOL),前脛骨筋(TA)とした.電極は,筋腹上に能動筋電を貼付し,サンプリング周波数は1kHzで記録した.また,両側の母趾球部と踵部にフットスイッチを貼付し,歩行周期の特定および時間距離因子(重複歩幅,歩行率,立脚期割合)の算出をした.得られた筋電図波形は、全波整流後30歩行周期分を加算平均して平滑化した後,フットスイッチの情報から,立脚相と遊脚相に分け,それぞれの積分値(μVs)を算出した.また歩行時の重心動揺を計測するため,小型加速度計(ワイヤレステクノロジー社)を使用した.加速度計は,第三腰椎棘突起部に伸縮ベルトで固定し,サンプリング周波数60Hzで記録した.加速度データは,10歩行周期分のデータを加算平均し平滑化した後,時間で2回積分し変位を算出した.その変位から1歩行周期における左右移動幅を算出した.統計解析は,装具の有無による各筋活動量と時間距離因子,重心動揺の違いを検討するため,対応のあるt検定を用いた.有意水準は5%とした.【倫理的配慮、説明と同意】 所属機関の倫理審査会により認可され,事前に全ての対象者に研究内容を説明し,同意を得た.【結果】 装具着用により,装着下肢の立脚相においてGM,MH,RF,TAの筋活動量が有意に減少した.装具着用側の立脚相における各筋の平均積分値は(装具あり条件、装具なし条件)で,GM(6.33μVs,7.98μVs),MH(4.22μVs,5.39μVs),RF(1.43μVs,1.80μVs),TA(2.71μVs,3.53μVs)であった.一方,SOLについては,装具あり条件7.79μVs,装具なし条件7.88μVsで統計的有意な差を認めなかった(p=0.783).遊脚相においては,いずれの筋でも筋活動量に有意な差を認めなかった.また,装具非装着側の立脚相および遊脚相においては,いずれの筋でも装具着用の有無による有意な筋活動量の差を認めなかった.時間距離因子については,装具着用の有無による有意な差を認めなかった.重心の左右移動幅は,裸足歩行17.7cm,装具歩行23.8cmで装具装着により有意に増加した.【考察】 膝装具は,膝伸展筋以外の筋活動量も減少させることが示された.GM,MH,RFの筋活動量の減少は,膝装具によって体重支持に必要な筋活動が代償されたためだと考えられる.重心の左右移動幅が増大したが,これは膝関節を伸展位に保持したことにより,下肢を振り出すために生じた体幹側屈や分回し歩行などの代償動作が影響していると推察される.分回し歩行では,初期接地において通常より底屈位での接地になり,このことが,荷重応答期におけるTAの筋活動量が減少につながった可能性がある.また,立脚相のSOLにおいては,有意な変化を認めなかったことから,SOLの役割である下腿が前方へ倒れていく速度の制御に必要な筋活動は,膝装具によって影響をうけないと考えられた.しかしながら,本研究においては各関節の関節運動に言及することはできないため,今後,三次元動作解析装置などを用い検討する必要があると考えられた.【理学療法学研究としての意義】 膝装具を使用することにより,膝関節周囲筋だけでなく股関節や足関節の筋活動量も減少することが示唆された.膝装具を適用する際には,他の下肢筋の負荷をも軽減できる一方で,筋力低下の誘引にもなると考えられ,十分な配慮が必要である.
著者
岡田 真幸 鵜山 淳 岡村 有祐 三宅 茂 寺薗 貴浩 山本 一宏 髙石 吉將 近藤 威
出版者
医学書院
雑誌
Neurological Surgery 脳神経外科 (ISSN:03012603)
巻号頁・発行日
vol.47, no.7, pp.799-804, 2019-07-10

Ⅰ.はじめに 頚部の外傷が原因で動脈解離や動脈瘤形成などの血管損傷を来すことはよく知られている5,14,22,27).内頚動脈系・椎骨動脈系の損傷は脳虚血症状を引き起こすため,脳神経外科医が治療を担うことが多い.外頚動脈の動脈瘤形成の多くは仮性動脈瘤であり,脳への血行動態に影響を及ぼさず,有痛性(ときには無痛性)の腫瘤で発症し,出血破綻の程度によっては出血性ショックや気道閉塞に至る15,24,25).過去には,原因不明の頚部腫瘤としてドレナージや生検を試みて大出血を来したことが報告されている20,21).一方で,特発性とされるものの中に出血のない真性の動脈瘤も含まれているようで,長期間経過観察のみで何ら病状の進行がなかったとの報告2,11)も散見され,症状が進行性であるかどうかを見極める必要がある. 形成外科,耳鼻科,血管外科などで治療されることが多いが,アテローム性頚部頚動脈疾患を治療する機会の多い脳神経外科医にとっては日常よく経験している手術領域であり,直達術あるいは血管内治療のどちらの治療法にも熟達していることにより,症例ごとに適切な治療の選択が可能である.今回われわれは,脳神経外科医にとっては遭遇する機会の少ない,頚部外頚動脈仮性動脈瘤を直達術にて治療したので,文献的考察を加えて報告する.
著者
近藤 鯛貴 竹田 大将 佐藤 裕幸
雑誌
研究報告ハイパフォーマンスコンピューティング(HPC) (ISSN:21888841)
巻号頁・発行日
vol.2019-HPC-172, no.15, pp.1-6, 2019-12-11

Intel HD Graphics (IHD) とは Intel 社の開発する CPU 統合 GPU である.高いグラフィック性能を必要としない安価なコンピュータ向けに作られていることから低コストかつ低消費電力である.しかし,近年ではその性能もあがり理論性能で約 1TFlops の製品も登場し,計算資源として非常に有用である.また,2018 年に Intel が公式に IHD 用 GPGPU 言語である C for Metal (CM) を公開したことにより IHD の計算資源を GPGPU 用途で活用できるようになった.そこで本研究では CM の言語仕様を調査し,いくつかの GPGPU プログラムを実装した.Flops による理論性能と実測性能の評価を行ったところ,サンプルの行列積プログラムにて 81.60 %の性能率を確認し,同 SoC 内の CPU と計算時間で比較したところ約 57 倍高速に動作し,IHD および CM の GPGPU 用途における有用性を示した.
著者
近藤 純正
出版者
THE JAPAN SOCIETY OF HYDROLOGY AND WATER RESOURCES
雑誌
水文・水資源学会誌 (ISSN:09151389)
巻号頁・発行日
vol.8, no.2, pp.184-196, 1995-03-05 (Released:2009-10-22)
参考文献数
11
被引用文献数
9 11

河川の水温を予測する計算モデルを示した.このモデルでは,水面・大気間の熱交換および河床の地中伝導熱が考慮されている.計算に必要な気象データは入力放射量,最高・最低気温,日平均比湿,日平均風速である.河川のパラメータは水深,流速,源流からの距離である. 日平均水温は,水温のレスポンス時間τ0と源流からの経過時間τを用いた指数関数で表される.τ0は水深に比例する.十分な経過時間後,日平均水温は平衡水温T*に漸近する.日変化の振幅は源流からの距離と共に増加し,平衡時の振幅δT*に漸近する.
著者
早田 保義 田部 敏子 近藤 悟 井上 興一
出版者
THE JAPANESE SOCIETY FOR HORTICULTURAL SCIENCE
雑誌
園芸学会雑誌 (ISSN:00137626)
巻号頁・発行日
vol.67, no.5, pp.759-766, 1998-09-15 (Released:2008-01-31)
参考文献数
19
被引用文献数
7 13

土壌水分の異なる処理区を設け, 土壌水分の違いがミニトマトの生育, 特に果実の糖集積に及ぼす影響と糖集積の要因について調査した.灌水量を強く控えた強乾燥区(pF2.9)では, 葉や果実の水分含量が低下するとともに, 1株当たりの全乾物重が減少した.1株当たりの器官別乾物重の割合は, 強乾燥区で, 葉や根の割合が低下し, 果実の割合が高まる傾向がみられた.果実の糖含量は, 土壌水分を低下させるに従い増加した.組成別では, 全処理区でブドウ糖および果糖の割合が高く, ショ糖の割合が低かった.果実の水分含量は強乾燥区で低下するものの, その割合は小さく, 果実糖度上昇における濃縮効果の影響は, ミニトマトでは少ないと判断された.果実の全窒素および水溶性タンパク態窒素含量は多湿区が高く, 強乾燥区では低い値であり, 糖含量とは逆のパターンとなった.果実のデンプン含量は強乾燥区と多湿区で蓄積量に差はなく, 果実糖度の上昇との関連性が薄いと判断された.果実の食味を示す糖/酸比は, 土壌水分の抑制が強まるに従い, 高くなる傾向を示した.
著者
近藤 直樹 日浅 芳一 岸 宏一 藤永 裕之 大石 佳史 大谷 龍治 和田 達也 相原 令
出版者
医学書院
雑誌
呼吸と循環 (ISSN:04523458)
巻号頁・発行日
vol.41, no.11, pp.1117-1120, 1993-11-15

フェノチアジン系向精神薬により誘発された致死的心室性不整脈の1例を報告する.症例は55歳,男性.二度の大動脈弁置換術の既往がある.1991年暮れ頃より,弁不全のため再度置換術の予定となった.同年頃よりうつ状態のためフェノチアジン系向精神薬やスルピリドを内服していた.1992年3月,失神発作があり,モニター心電図上,心室頻拍,Tor-sade de Pointes(Tdp)などの致死的不整脈を認めた.薬剤の中止にて不整脈は消失した.その後これらの向精神薬を再開後,再び同様の不整脈が発生したため,薬剤の中止と永久ペースメーカーの植え込みを行った.術前の不安感のため少量のフェノチアジン系向精神薬を再開した.術後10日目失神発作があり心室頻拍,Tdpの頻発を認めた.これら不整脈発作時には電解質は正常であった.術12日後,多臓器不全で死亡した.致死的不整脈の発生に,心血管系に作用が弱いフェノチアジン系向精神薬の関与が疑われたため報告した.