著者
金田 重郎 世古 龍郎
出版者
一般社団法人電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会技術研究報告. KBSE, 知能ソフトウェア工学 (ISSN:09135685)
巻号頁・発行日
vol.111, no.396, pp.61-66, 2012-01-16

要求分析では,母語を用いて仕様を記述する.Object指向分析は要求分析の代表的な手法の一つであるが,ここでも,クラス名等には母語が使われる.本稿では,英語圏で生まれたObject指向を利用するとき,日本語と英語の違いを考慮するべきことを問題提起する.具体的には,認知言語学の立場から,クラス図の構造は英語の5つの基本文型そのものであることを示す.例えば,クラスとは可算名詞,メソッドは動作動詞,関連は状態動詞,Has-s関係は第4文型(S+V+O+O),Is-a関係は第5文型(S+V+O+C),である.これによって,GOFのデザインパタンの理解も容易になる.一方,日本語と英語の構造は大きく異なっている.日本語仕様からクラス図を描くことは,日英翻訳に等しい.上記の問題意識から,本稿では,日英翻訳のプラクティスを取り入れた日本語仕様からのクラス図作成手法を提案する.具体的には,英語のS+V+Oに相当するエネルギーの伝搬を見つけだすため,格助詞「が」「を」「で」「に」を用いて日本語仕様を単文にリライトする.この際,日英翻訳のプラクティスを準用する.提案手法は,初心者がクラス図を学ぶ際の,ひとつの「指南」となる.
著者
池田 定博 金田 重郎 金杉 友子 加藤 恒昭
出版者
一般社団法人電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会技術研究報告. NLC, 言語理解とコミュニケーション (ISSN:09135685)
巻号頁・発行日
vol.99, no.708, pp.113-120, 2000-03-17
参考文献数
6
被引用文献数
2

商品開発やマーケティングでは、効果的なコンセプトの作成が極めて重要である。しかし, 思いついた多数のコンセプトや広告コピー案の中から, 戦略の柱となるキーワード候補を絞り込んでゆく方法は知られていない.本稿では, この問題を解決するため, 「流行ことば予測」手法を提案する.そこでは, まず, 過去・現在・将来における流行語の背景となる社会的要因を、「ことば」として表現する.そして, 今後流行の可能性がある新しい「ことば」と, これら社会的要因との距離を計算し, 「近い」と算出されたことばから, 流行のキーワードを開発する.過去の「ことば」としては, 自由国民社発行の「現代用語の基礎知識」を使用し、距離計算にはベクトル空間法を利用した。1998年度の流行語大賞である「ショムニ」等が, どのような背景により流行したかを実験的に分析する。
著者
金田 重郎
出版者
一般社団法人情報処理学会
雑誌
情報処理学会研究報告情報システムと社会環境(IS) (ISSN:09196072)
巻号頁・発行日
vol.2008, no.52, pp.7-14, 2008-05-26
被引用文献数
1

「情報システムのプロトタイプ開発はジャーナル論文にはならない」と言われる.そして,その原因のひとつとして,情報システムにおける「評価」の困難性が挙げられる.そこで,本稿では,ナイーブな評価例を分析し,情報システムの評価における課題を分析する.評価困難性の大きな原因は,複合的機能をもつ情報システムが複雑な実社会に埋め込まれた時の「価値」について,情報システムの存在以前に仮説生成する「量的研究」アプローチにある.また,実環境における情報システムの価値を,小規模社会的実験だけで評価することも難しい.これら問題を打破するため,「質的研究」アプローチを適用する.具体的には,グラウンデッド・セオリー・アプローチによって評価を行い,これにシステムダイナミクス(SD)を併用する.これは,システムの価値はシステム稼働後にしか評価できないとの立場に立ち,民族誌的アプローチに価値の発見を委ね,規模の限界と定量的評価の弱さを,SD により補完する試みである.It is very hard that a draft concerning an application system is accepted as a journal full paper. Often the referees bring up that the technical originality of the draft is poor and the evaluation is not adequate. To break this situation, some naive evaluation cases are analyzed in this paper. This situation arises from the limitation of conventional quantitative approach to evaluate the "value" of the application system in the real world before the prototype implementation. To resolve the problem, this paper proposes a new approach; the fusion of qualitative approach and system dynamics. The basic stances of the proposed approach are 1) the field research is only feasible after the prototype implementation, 2) the qualitative approach can derive fruitful model/theory, even if the number of the subject persons, 3) the scale limitation of the prototype experiment can be overcome by using system dynamics.
著者
金田 重郎 井田 明男 酒井 孝真
出版者
一般社団法人電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会技術研究報告. KBSE, 知能ソフトウェア工学 (ISSN:09135685)
巻号頁・発行日
vol.112, no.419, pp.13-18, 2013-01-21

著者らは,(1)クラス図か英語の言語構造に立脚していること,そのため,(2)ヒシネス仕様記述から概念クラス図を作成する際には,認知言語学のコアイメーシの利用か効果的てある,と考えている本稿ては,「を格」,「に格」,「て格」の格助詞から構成される単文パタンて仕様を記述し,これを概念クラス図に変換する手法を示す結果として,ヒシネス仕様記述と概念クラス図の間にトレーサヒリティか確保されるたけてはなく,作成者に依存しない概念クラス図か生成てきる可能性かある実際に,学生による初歩的な実験の結果,作成される概念クラス図のバラエティか減少することを確認した.
著者
永田健 池末拓馬 金田重郎
雑誌
第73回全国大会講演論文集
巻号頁・発行日
vol.2011, no.1, pp.577-578, 2011-03-02

近年,被指導者への一方的な指導が懸念されている.また集団統率現場では,俯瞰的に現場を把握するために立ち位置・視線が重要視されているが,統率者に本技術を効果的に指導することは難しい.<br />本稿では,双方向コミュニケーションを円滑に図れ,集団統率技術の効果的な指導を行えるシステムを提案する.具体的には,指導者・被指導者が合図した部分を動画としてピックアップし,円滑にコミュニケーションを図れるようにする.また,ステレオカメラと顔認証技術を用い,現場の人間の位置・視線情報を俯瞰図として提示し,指導の効率化を図る.<br />幼児教育分野を対象事例とし,2つの幼稚園で社会実験を行った結果,集団統率者の養成支援として有効であることを確認した.
著者
岡田 裕 金田 重郎
雑誌
研究報告情報システムと社会環境(IS)
巻号頁・発行日
vol.2009-IS-108, no.2, pp.1-8, 2009-05-29

オブジェクト指向は,情報システム設計のための強力なツールである.しかし,現実には,業務全体のデータ整合性と組織間の連携関係を見出し,かつ業務専門家からの処理要求をうまく設計に活かすことは,とりわけ初学者にとっては難しい.本稿では,MASP アソシエーションが提案している 「概念データモデリング (CDM)」 を 「責務駆動設計 (RDD)」 と組み合わせることで分析・設計工程をより一貫したものとし,分析結果を設計工程にそのまま生かす手法を提案する.実システム (A 自治体向けの CMS) に適用した結果,ビジネスモデルの本質を見直すことができ,それを生かした責務を持つオブジェクト設定が可能となった.結果的に,将来のビジネス機能の追加に伴う改造が容易なモデル実現が可能となったと考える.
著者
金田 重郎 Shigeo Kaneda
出版者
同志社大学政策学会
雑誌
同志社政策科学研究 = Doshisha University policy & management review (ISSN:18808336)
巻号頁・発行日
vol.13, no.2, pp.21-45, 2012-03-15

要求分析では,母語を用いて仕様を記述する.Object 指向分析は要求分析の代表的な手法の一つであるが,ここでも,クラス名等には母語が使われる.本稿では,英語圏で生まれたObject 指向を利用するとき,日本語と英語の違いを考慮するべきことを問題提起する.具体的には,認知言語学の立場から,クラス図の構造は英語の5 つの基本文型そのものであることを示す.例えば,クラスとは可算名詞,メソッドは動作動詞,関連は状態動詞,Has-s 関係は第4 文型(S+V+O+O),Is-a 関係は第5 文型(S+V+O+C),である.これによって,GOFのデザインパタンの理解も容易になる.一方,日本語と英語の構造は大きく異なっている.日本語仕様からクラス図を描くことは,日英翻訳に等しいことを明らかにしている.更に,本論文では,日本語クラス図における「関連名」について,考察を加えている.そして,手島によって提案された概念データモデリングと関係モデルとの関係を論じている.
著者
仁木 賢治 新谷 公朗 糠野 亜紀 金田 重郎 芳賀 博英
雑誌
情報処理学会論文誌 (ISSN:18827764)
巻号頁・発行日
vol.50, no.2, pp.601-614, 2009-02-15

保育所では,子どもの発達状況を記録する「発達記録」の作成・保存が,厚生労働省の指導によって義務付けられている.発達記録については,作成・保存するための発達記録システムが数社から市販されている.しかし,既存の発達記録システムでは,子ども1人ひとりの発達傾向を表示するグラフ機能は持っているが,クラス全体の保育傾向を示す機能は持っていない.そこで,本論文では,保育者の保育傾向をグラフによって読み取ることのできる,発達記録システムを提案する.具体的には,ヴィゴツキーの発達の最近接領域理論を観察項目スコアの付与方法に適用する.これによって,発達記録を作成する際の項目間のスコア付与基準のバラツキを排除する.次に,発達記録データを主成分分析し,その第1主成分を保育者にフィードバックする.プロトタイプシステムを用いて評価データを取得し,その第1主成分を保育者に提示するとともに,グラウンデッド・セオリ・アプローチで分析した.その結果,第1主成分には保育者の視点が反映されることを確認できた.
著者
金田 重郎
雑誌
研究報告情報システムと社会環境(IS)
巻号頁・発行日
vol.2011-IS-117, no.7, pp.1-8, 2011-08-29

Object 指向は,英語圏で開発された概念であり,英語の認知構造が反映されている.しかし,我が国の学生・SE は,日本語に 「翻訳」 されたテキストを用いて,Object 指向を学んでいる.例えば,「オブジェクト指向は,対象世界の 『もの』 に着目して,ビジネスを分析する手法」 とされる.しかし,認知文法では,英語の Object は,日本語の 「もの」 とは一致せず,可算概念 (名詞) と対応する.Person は,Object であるが,Water は Object ではあり得ない.Event は Object である.一方,Object を 「もの」 と認識してしまうと,「発注」 等の 「イベント」 を Obejct として扱うべきか否かを悩むことになる.日本語によるヒアリング結果・仕様記述をクラス図へ変換する作業は,日英翻訳に等しい.そこに,日本語で Object 指向を学ぶひとつの困難性がある.この問題を解決するためには,Object 指向の学習に認知文法の学習を取り入れ,機械翻訳におけるプリエディットと同等の作業を,クラス図の作成時に,を行う必要がある.認知文法は,この変換作業におけるプラクティスとして利用できる.
著者
金田 重郎 井田 明男 森本 悠介
雑誌
ソフトウェアエンジニアリングシンポジウム2018論文集
巻号頁・発行日
vol.2018, pp.93-102, 2018-08-29

UML 静的モデル ・ クラス図に関するテキストは,数多く出版されており,海外の著名な作者によるテキストの翻訳も販売されている.しかし,これら多くのテキストでは,クラス図のシンタックスの説明はあるが,具体的に 「どうやって,クラス図を描くのか」 が意外に明示されていない.結果的に,市販テキストを用いただけでは,どの様にクラス図を描くのかを初学者が学ぶことは難しい.この問題点を解決するため,著者らは,クラス図が英語の認知構造を反映しており,それが,日本人初学者にクラス図を縁遠いものにしている一因であるとの仮説を示した.しかし,この既存ガイドラインをもってしても,「クラス図をどう描くのか」を具体的に示すガイドラインとしては不十分である.そこで,本稿では,クラス図の描き方のガイドラインを得ることを目的として,「クラス図とは何か」 を明らかにする.具体的には,1対多関連は,時間的前後関係を制約するものであり,結果的に,多対多関連を用いない通常のクラス図は,処理プロセス間の時間的制約を示すハッセ図であることを示す.即ち,クラス図は,人間の頭の中にある概念を取り出すツールというより,対象ビジネスを構成する処理プロセスの時間的制約関係 (材料 - 加工関係) を表現するツールである.クラス図を構成するクラスは,独立型と従属型に分かれるが,独立型では,他インスタンスとは無関係にインスタンスを生成できる.更に,従属型クラスには動作を表現するものが多く,クラス図を,中村善太郎の 「要のもの ・ こと」 モデルで理解できる.本稿では,以上の理解に基づくガイドラインを示し,そのガイドラインによって,実務家の間で知られるモデリング例題 「花束問題」 が分析できることを示す.
著者
金田 重郎 本村 憲史 橋本 誠志
出版者
同志社大学
雑誌
同志社政策科学研究
巻号頁・発行日
vol.1, pp.49-65, 1999-10
被引用文献数
1

論説ネットワーク上に溢れている個人情報は、デジタル化されているが故に、統合され、個人のプライバシーが侵害される恐れがある.情報統合を視野に置くプライバシー保護法制は、欧米には存在する。ドイツ身分証明書法は、個人ID による情報統合を禁止している。民間部門に対するプライバシー保護法制自体が存在しないわが国と比較すれば、このような法律があるだけでも、西欧諸国の状況は大きく異なっている。しかし、これら既存の法律で想定されているのは、キー属性(いわゆる国民背番号等)による統合である。キー属性でなくても、複数属性を併用すれば、結果として、キー属性として利用できる。その結果、データ主体・データ管理者の予知範囲を超えて侵害が発生する恐れがある。情報統合によるプライバシー侵害は、個々のデータ管理者の善良なる管理監督のみでは防ぎ得ない。わが国でも、情報統合を前提とする法制度の確立と、併せて、データ主体が個人情報の存在を常に把握し得る、個人情報流通管理システム/データ監察官の設置が必要と思われる。
著者
金田 重郎
出版者
情報処理学会
雑誌
研究報告情報システムと社会環境(IS) (ISSN:09196072)
巻号頁・発行日
vol.2009, no.2, pp.1-9, 2009-11-24
参考文献数
20
被引用文献数
1

本稿では,MASP アソシエーションが提唱する 「概念データモデリング (CDM)」 を,C.S. パース (Charles Sanders Peirce) を創始者とするプラグラマティズム哲学の視点から分析し,CDM をブラグマティズム実践として再定義する.具体的には,1) CDM が採用している 「オブジェクト指向」 は,プラグマティズムの 「実在物」 の思想を背景に持つと考えるのが自然であり,2) オブジェクト指向を導入しつつ,動的モデルを通じて,データ状態が変化するオブジェクトに焦点を絞る CDM のアプローチは,中村善太郎の 「要 (かなめ) の 『もの』 『こと』」 を自動的に組み込んでいる.但し,パースの論文は 1870 年代に発表されたものである.その後も,クワイン,ローティなどの現代プラグマティズム哲学者によって研究は発展している.これらの理論的進展を CDM に準用することにより,CDM のあるべき姿を明確化できる.This paper analyzes theoretically the Conceptual Data Modeling (CDM) approach, proposed by the MASP association in Japan, from the philosophical view points of C.S.Peirce's Pragmatism. The analysis shows that CDM itself is equal to the investigation process of Peirce's Pragmatism. Also, the necessity of the object-oriented approach is described based on the "Real Thing" concept of Peirce's pragmatism. The object-oriented approach is an essential part of CDM to reveal a "To Be" model in the application domain. However, the major papers of the Peirce's pragmatism were published in 1878 and are not new. The some modern pragmatism philosophers, such as W. V. Quine, and R. Rorty, have already improved the Peirce's theory. Thus, this paper also shows that their theoretical improvements set up new aspects of the CDM approach.
著者
井田 明男 金田 重郎 熊谷 聡志 矢野 寛将
雑誌
情報処理学会論文誌 (ISSN:18827764)
巻号頁・発行日
vol.57, no.5, pp.1399-1410, 2016-05-15

近年では,スコープを細分化して,小さなリリースを繰り返す開発スタイルが広がりをみせているため,見積りの頻度も高くなる傾向にある.ソフトウェアの機能規模の測定方法として国際規格のCOSMIC法がある.この方法は,認知された測定手法であるが,正確な測定のためには,すべての機能プロセスにおけるデータの移動を計測しなければならないため,利用者機能要求が機能プロセスを取り出せるほど詳細でない場合には適用が難しい.それに対して,業務アプリケーションの要求記述は,機能に関する記述の網羅性は概して高くない.なぜならば,要求記述は,何を管理したいかに主眼が置かれ,どのように管理するかについては,あえて捨象されるからである.そうであるなら,要求記述から直接的に機能プロセスを網羅的に抽出することはできないと考えるのが妥当であろう.そこで,本稿では,COSMIC法をベースに,業務で扱うエンティティの存在従属性に着目した機能規模の測定法を提案する.要求記述から先にエンティティの存在従属グラフを作成し,そこから機能プロセスを抽出して測定を実施する.そのため,利用者機能要件の取りこぼしが少なく,正確な機能規模の測定が行えると期待される.確認のため,宿泊予約サイトの要求記述について,提案手法による測定結果とCOSMIC法による測定結果を比較した結果,それらの間には高い一致性が得られたため,提案手法は有効であると判断する.In late years the frequency of the estimation tends to rise because we subdivide a development scope, and agile development-style to repeat small release. Method for measurement of the functional size of the software includes the COSMIC method of the international standard. This method is superior measurement technique, however, an application is difficult because we must measure the movement of the data in all functional processes for the accurate measurement when it is not detailed so that a user functional requirement can extract a functional process. In contrast, generally the demand description of the business application is not high in the inclusion characteristics of the description about the function. Therefore, it will be proper to think that we cannot extract a function process from a requirement description directly. Therefore, in this paper, we propose the measurement of the functional size that based on the existence dependency of entities and the COSMIC method. We construct the existence dependency graph of the entities from a requirements description earlier and we extract the functional processes from there and carry out the measurement. Therefore there is little defeat of the user functional requirement and is expected when it is possible for the measurement of an exact functional size. Because as a result of having compared the result of a measurement by the COSMIC method with the result of a measurement by the proposed technique about the requirement description of the room reservation site for inspection, high agreement characteristics were provided between them, we judge the proposed technique is effective.
著者
酒井 孝真 長村 篤記 井田 明男 金田 重郎
出版者
一般社団法人電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会技術研究報告. KBSE, 知能ソフトウェア工学 (ISSN:09135685)
巻号頁・発行日
vol.112, no.64, pp.7-12, 2012-05-18

本稿では, SSM,システムシンキング,概念データモデリングなどの問題領域モデリングにおいて利用されるモデリング手法(概念活動モデル,因果ループ図,組織間連携モデル)をメタレベルで比較する.比較手法としてはUMLクラス図の他,英語の品詞を利用する.それにより,それぞれのモデリング手法が,問題領域を表現する概念(加算名詞,非可算名詞,動作動詞,状態動詞)のサブセットを利用して,対象のある側面のみを強調していることを示す.また,同様にして,手島による概念データモデリングの「静的モデル」が概念クラス図に一致しないことを示す.
著者
世古龍郎 金田重郎
雑誌
第74回全国大会講演論文集
巻号頁・発行日
vol.2012, no.1, pp.403-404, 2012-03-06

本稿では,認知文法の基本的な考え方を準用して,オブジェクト指向理解の背後に,日本語と英語の言語差が存在し,クラス図を作成は日英翻訳と同じであることを主張する.具体的には,クラス図は,英語の第1文型~第5文型にそのまま対応している.従って,動詞中心であり,「格」を自由に助詞によって指定できる日本語を,そのままクラス図にあてはめるのは,容易ではない.その問題に対し,認知言語のコアイメージによるクラス図生成を試みる.日本語による仕様書記述中に含まれる因果関係を取り出す作業が必要と思われる.言葉の持つ「意味」を日本語と英語で一致させる事で,オブジェクト指向の本質の理解を高める事を述べる.
著者
柏原 大輝 金田 重郎
出版者
一般社団法人情報処理学会
雑誌
情報処理学会研究報告ソフトウェア工学(SE) (ISSN:09196072)
巻号頁・発行日
vol.2001, no.31, pp.31-38, 2001-03-22
被引用文献数
1

いわゆる「ビジネス方式特許(Bisiness Method Patents)」については1?2年前に大きな話題となったものの、最近では世間の興味は沈静化した感がある。しかし、インターネットの世界で、新事業を展開する際、特許は、事業を守る唯一と言ってよい法的手段であり、その重要性が変化したわけではない。本稿では、コミュニティ型ポータルサイトの特許を例にとり、ビジネス方式特許の強さについて分析する。分析の結果、ビジネス方式特許には、防衛的な意義は認められるとしても、「特許ひとつでボロ儲け」的イメージからは遠い事を明らかにする。大きな理由は、インターネットにおけるサービスの代替手段の実現容易性にある。この事は、既存の業務のなかから「何かビジネスモデル特許になりそうなものは出しておけ」と言った企業政策が不十分である事を示す。営業とSE・技術者とを組ませて、商売の方法を特許化する事には防衛的意味しかない。SE・技術者が追究しなければならないのは、営業等の情報を駆使しつつ、将来の本質的なビジネスの変革を予知し、事業に価値を与える、パイオニア的な特許を出してゆく事である。この結論自体については、「新味」はないかもしれない。しかし、少なくとも、ポータルサイト特許の分析は、特許法の側から、これを傍証する。Business method patent was once the big talk in the Internet business. But now, the interest in it settles down. However, patent is the only way to protect our business legally (especially at the early stage of the business incubation), o it is still important. In this study, we take portal servers for example, analyze the competence of business method patent and make it clear that business method patent has only defensive meanings. Even if get one business method patented, the patent itself doesn't make competence. The reason why the patent doesn't make competence is that on the Internet almost all of business methods can substitute another way easily. Therefore, it is inadequate that the corporate patent policy without strategic purpose. There is only defensive meaning to get business method patented simply. Therefore, system engineer has to predict future innovation of business styles and pursue pioneer invention that make competence to our business with full use of the information from another department just like sales and planning. After that get the business style patented. This may not be new conclusion. However, the analysis of business method patent and portal servers provide some supports for the conclusion from the viewpoint of patent law.
著者
今城 和宏 上坂 和也 柴田 征宏 芳賀 博英 金田 重郎
出版者
情報処理学会
雑誌
研究報告ユビキタスコンピューティングシステム(UBI) (ISSN:09196072)
巻号頁・発行日
vol.2009, no.4, pp.1-8, 2009-05-08
被引用文献数
1 3

幼児は集団生活を通して社会性を身につけるため,保育者や友達との交友関係が成長に大きく影響を及ぼしていると考えられる.そのため,保育者がそれぞれの幼児に応じた保育を行うには,幼児一人ひとりの交友関係を把握しておかなければならない.しかし,1クラスに何十人もいる幼児一人ひとりの交友関係を日々観察するには,知識・技術だけでなく,豊富な経験が必要であり,経験の浅い保育者には困難である.そこで,著者らは保育者への支援として,幼児に活動量を記録する歩数計を装着し,そこから得られる活動量のクラスタリング結果から,幼児の交友関係を分析する手法を提案してきた.しかし,従来手法では,加速度情報のみであったため,位置情報を無視して分析していた.そのため,子ども同士が離れた場所で遊んでいても,同じ遊びをしていた場合に交友があると誤認識していた.そこで本稿では,RFID及び加速度センサを用いて,子どもの位置及び活動量を測定し,それらを基に子どもの交友関係を分析した.そして,幼稚園で実験をした結果,従来手法と比較して,精度向上が得られ有効性を検証できた.Children learn to fit into society through living in a group, and their sociability is greatly influenced by their friendship relations. Although preschool teachers need to observe them to assist in the growth of children's social progress and support the development of each child's personality, only experienced teachers can watch over children while providing high quality guidance. Therefore, the authors have been proposing the method that analyzes the children's friendship relation from accelerometer sensors. But, previous method has no location information because we use only accelerometer sensors. So if two groups do the same play in different locations, members of these groups have a friendship relation. In this paper, we get area information by active-RFID. So we propose an extraction method of children's friendship relation by acceleration data and located information. The result of experimentation by a kindergarten, we could inspect the validity of our method.
著者
井田 明男 金田 重郎 熊谷 聡志 矢野 寛将
雑誌
情報処理学会論文誌 (ISSN:18827764)
巻号頁・発行日
vol.57, no.5, pp.1399-1410, 2016-05-15

近年では,スコープを細分化して,小さなリリースを繰り返す開発スタイルが広がりをみせているため,見積りの頻度も高くなる傾向にある.ソフトウェアの機能規模の測定方法として国際規格のCOSMIC法がある.この方法は,認知された測定手法であるが,正確な測定のためには,すべての機能プロセスにおけるデータの移動を計測しなければならないため,利用者機能要求が機能プロセスを取り出せるほど詳細でない場合には適用が難しい.それに対して,業務アプリケーションの要求記述は,機能に関する記述の網羅性は概して高くない.なぜならば,要求記述は,何を管理したいかに主眼が置かれ,どのように管理するかについては,あえて捨象されるからである.そうであるなら,要求記述から直接的に機能プロセスを網羅的に抽出することはできないと考えるのが妥当であろう.そこで,本稿では,COSMIC法をベースに,業務で扱うエンティティの存在従属性に着目した機能規模の測定法を提案する.要求記述から先にエンティティの存在従属グラフを作成し,そこから機能プロセスを抽出して測定を実施する.そのため,利用者機能要件の取りこぼしが少なく,正確な機能規模の測定が行えると期待される.確認のため,宿泊予約サイトの要求記述について,提案手法による測定結果とCOSMIC法による測定結果を比較した結果,それらの間には高い一致性が得られたため,提案手法は有効であると判断する.