著者
小野寺 敦子 青木 紀久代 小山 真弓
出版者
一般社団法人日本発達心理学会
雑誌
発達心理学研究 (ISSN:09159029)
巻号頁・発行日
vol.9, no.2, pp.121-130, 1998-07-30
被引用文献数
15

はじめて父親になる男性がどのような心理的過程を経て父親になっていくのか, そして親になる以前からいだいていた「親になる意識」は, 実際, 父親になってからのわが子に対する養育態度とどのように関連しているのかを中心に検討を行った。まず, 父親になる夫に特徴的だったのは, 一家を支えて行くのは自分であるという責任感と自分はよい父親になれるという自信の強さであった。そして父親になる意識として「制約感」「人間的成長・分身感」「生まれてくる子どもの心配・不安」「父親になる実感・心の準備」「父親になる喜び」「父親になる自信」の6因子が明らかになった。親和性と自律性が共に高い男性は, 親になる意識のこれらの側面の内, 「父親になる実感・心の準備」「父親になる自信」が高いが「制約感」が低く, 父親になることに肯定的な傾向がみられた。また, これらの「親になる意識」が実際に父親になってからの養育態度にどのように関違しているかを検討した。その結果, 「制約感」が高かった男性は, 親になってから子どもと一緒に遊ぶのが苦手である, 子どもの気持ちをうまく理解できないと感じており, 父親としての自信も低い傾向がみられた。さらにこれらの男性は, 自分の感情の変化や自己に対する関心が高い傾向が明らかになった。
著者
青木 紀美子 大竹 晶子 小笠原 晶子
出版者
NHK放送文化研究所
雑誌
放送研究と調査 (ISSN:02880008)
巻号頁・発行日
vol.72, no.5, pp.2-28, 2022-05-01 (Released:2022-06-20)

多様性とインクルージョンの推進は、公共サービスとしてのメディアが、情報が氾濫する時代にあって信頼を得て存続するために不可欠な、最も重要な課題のひとつである。 多様性には、ジェンダー、性的指向、人種、障害の有無、居住地域などいろいろな面がある。テレビのオンスクリーン・放送内容の多様性を分析する私たちの最初の調査では、最も基本的な女性・男性のバランスがテレビの登場人物においてどう表れているかに注目した。世界経済フォーラムのジェンダーギャップ報告で2021年、日本は世界156か国中120位という低さにとどまるなど、男女平等の推進が遅れていることを考慮した。 調査では、まずデータにより現状を可視化することをめざした。2021年6月に行ったトライアル調査の結果もふまえ、テレビ番組全体の登場人物については番組メタデータをもとに年代別、職業分野別、番組ジャンル別に女性、男性の数を比較し、ニュース番組についてはコーディング分析により、発言した、もしくは発言が引用された人物について、名前の表記やニュースの中での役割、取り上げた話題を含めたより詳しい比較・分析を行った。 調査の結果、女性の登場はテレビ番組全般で40%以下、ニュース番組では30%にとどかず、男性に比べると半分以下にとどまった。ニュース番組では、キャスターなどレギュラー出演者を除いたニュース項目の登場人物では偏りがさらに大きく、男性が女性のほぼ3倍となり、このうち名前の表記があった人では男性が女性のおよそ4倍に上った。 ニュースの話題別にみると、政治、科学・医療、スポーツニュースでは男性が女性の3倍以上、職業・肩書別にみても偏りは大きく、登場した延べ人数が最も多かった政治家では男性が女性の5倍、最も差が大きかった医師では男性60人に対して女性が1人だった。 年代・年層別の差も大きく、テレビ全般では女性は20代が最も多く、30代以降は年代が上がるほど減り、ニュース番組でも19-39歳の年層が最も多かった。これに対して男性はテレビ全般では30~50代が最も多く、ニュース番組でも40~64歳という年層が過半数を占め、テレビに出ているのは「若い女性と中高年の男性」というこれまでにも指摘されてきた構図が浮き彫りになった。 またテレビの女性、男性の取り上げ方を視聴者がどう見ているかを探ったアンケート調査では10代~30代、その中でも男性より女性に、違和感などを抱いたことがあると回答した人が多かった。違和感などを抱いた番組ジャンルは登場人物の男女比に偏りが大きい番組ジャンルと重なった。
著者
小野寺 敦子 青木 紀久代 小山 真弓
出版者
一般社団法人 日本発達心理学会
雑誌
発達心理学研究 (ISSN:09159029)
巻号頁・発行日
vol.9, no.2, pp.121-130, 1998-07-30 (Released:2017-07-20)
被引用文献数
4

はじめて父親になる男性がどのような心理的過程を経て父親になっていくのか, そして親になる以前からいだいていた「親になる意識」は, 実際, 父親になってからのわが子に対する養育態度とどのように関連しているのかを中心に検討を行った。まず, 父親になる夫に特徴的だったのは, 一家を支えて行くのは自分であるという責任感と自分はよい父親になれるという自信の強さであった。そして父親になる意識として「制約感」「人間的成長・分身感」「生まれてくる子どもの心配・不安」「父親になる実感・心の準備」「父親になる喜び」「父親になる自信」の6因子が明らかになった。親和性と自律性が共に高い男性は, 親になる意識のこれらの側面の内, 「父親になる実感・心の準備」「父親になる自信」が高いが「制約感」が低く, 父親になることに肯定的な傾向がみられた。また, これらの「親になる意識」が実際に父親になってからの養育態度にどのように関違しているかを検討した。その結果, 「制約感」が高かった男性は, 親になってから子どもと一緒に遊ぶのが苦手である, 子どもの気持ちをうまく理解できないと感じており, 父親としての自信も低い傾向がみられた。さらにこれらの男性は, 自分の感情の変化や自己に対する関心が高い傾向が明らかになった。
著者
青木 紀美子 小笠原 晶子 熊谷 百合子 渡辺 誓司
出版者
NHK放送文化研究所
雑誌
放送研究と調査 (ISSN:02880008)
巻号頁・発行日
vol.73, no.10, pp.32-72, 2023-10-01 (Released:2023-10-20)

社会的に多様性、公平性、包摂性の促進が重視される中、メディアも社会の多様性を反映しているかを問われている。放送文化研究所では2022年度、テレビ番組の表象の多様性について2回目の調査を行った。 6月の1週間、番組全般の出演者のジェンダーバランスをメタデータにもとづいて分析し、6月と11月、ウィークデー(月~金)夜の全国向けのニュース報道番組で発言した登場人物について、ジェンダーに加え「障害の有無」、「人種的多様性」、「取材地の分布」などについても、コーディングによる分析を行った。 ジェンダーバランスの分析結果は、前年度とほぼ変わらず、女性と男性の割合が、番組全般では4対6、夜のニュース報道番組では3対7だった。総人口では女性が過半数を占め、特に高齢層で女性が男性より多いという社会の現実に対し、テレビの世界は「若い女性と中高年の男性」に偏った表象であることが前年度に続き、確認された。このうちニュースでは、男性が政治や経済などの分野で権威や肩書がある立場で登場することが多いのに対し、女性は暮らしや福祉などの分野で地位も肩書も名もない立場で登場する割合が高かった。新たに加えた調査項目のうち「人種的多様性」では、「日本人」の次に「ヨーロッパ系」が多く、取材地が日本国内の場合も、在留外国人の大半を占める「アジア系」と「ヨーロッパ系」が、登場人物に占める割合で並ぶという偏りがあった。「障害の有無」の分析では、障害「あり」が全体の0.3%で、「あるかもしれない」0.9%とあわせても約1.2%で、国内の障害者の割合のおよそ9.2%の8分の1程度にとどまった。登場人物が取材を受けた「取材地の分布」は、都道府県別の人口分布に比べて、東京への一極集中がはるかに大きかった。限られた日数のサンプル調査であり、テレビ放送から得られる情報では把握できない多様性もあるが、視聴者から見えるテレビの表象の偏りを示唆する結果となった。
著者
古志 めぐみ 青木 紀久代
出版者
お茶の水女子大学心理臨床相談センター
雑誌
お茶の水女子大学心理臨床相談センター紀要
巻号頁・発行日
no.19, pp.13-23, 2018-03-01

1990 年代よりひきこもりが日本の若者の問題として取り上げられてきた。これまで,精神科医などの専門家の見解からひきこもり状態にある本人が捉えられてきたが,昨今,本人を対象とした調査研究がなされ始めている。本研究では,ひきこもり本人がどのように自分を捉えているかを明らかにすることを目的に,本人を対象とした調査研究を整理した。その結果,以下の二点が示された。第一に,自己否定感の高さはひきこもりの親和性が高い者の心理的特徴とも共通するが,他者とのコミュニケーション場面への困難感は本人の方がより抱いていることである。第二に,ひきこもり状態から抜け出すプロセスには,本人がひきこもり状態にあることを受け止め,意味を見出していく経過をたどるということである。一方で,ひきこもりへの社会や文化の影響が指摘されているにも関わらず,本人たちがどのように社会や他者を認知しているか,主観的体験にどう表れているか捉えられておらず,今後の課題として見出された。
著者
税所 玲子 広塚 洋子 小笠原 晶子 塩﨑 隆敏 杉内 有介 吉村 寿郎 佐々木 英基 青木 紀美子
出版者
NHK放送文化研究所
雑誌
放送研究と調査 (ISSN:02880008)
巻号頁・発行日
vol.71, no.3, pp.22-39, 2021 (Released:2021-04-20)

2021年、世界各国で新型コロナウイルスの予防接種が始まったが、感染力が強い変異ウイルスの出現もあり、感染の拡大は止まっていない。WHOによると感染者の数は1月末までに1億人に近づき、死者は200万人を超えた。世界のメディアは新型コロナやその感染予防策についてどのような発信をしたのか。報道を継続するために組織としてどのような対応をとったのか。浮かび上がった課題は何か。 2月号に続き、コロナ禍に対する海外のメディアの対応を報告する。ヨーロッパ、中東、アフリカの国ごとの動きに加え、メディアが直面した問題をテーマ別にまとめる。
著者
青木 紀久代
出版者
公益社団法人 日本心理学会
雑誌
心理学研究 (ISSN:00215236)
巻号頁・発行日
vol.62, no.2, pp.102-105, 1991-06-25 (Released:2010-07-16)
参考文献数
11
被引用文献数
2 1

The present study was to explore the molding of sexual identity in early-adolescent females. First, a questionnaire was administered to 168 9th grade girls. Out of all the respondents, 12 who did not have conflicts with sexual identity as an accepting group and 10 who had them as a non-accepting group were selected for the interview. Analyses of the results revealed that the contents of their conflicts cover various phases of femininity, which are concerned with body, character, and sex role etc. Moreover, it was found that not only their good images of parents, but also those of males were important when they achieve their sexual identity.
著者
青木 紀
出版者
東北大学農学研究所
巻号頁・発行日
vol.36, no.2, pp.119-137, 1985 (Released:2011-03-05)
著者
青木 紀子
出版者
日本看護技術学会
雑誌
日本看護技術学会誌 (ISSN:13495429)
巻号頁・発行日
vol.12, no.3, pp.50-57, 2014-01-20 (Released:2016-07-08)
参考文献数
20

ベッド上で便器や尿器を用いたときの排泄時の姿勢は,腹圧がかけやすくなるなどの理由から上半身を挙上するとされている.適切な挙上角度は身体的な安楽なども考慮され60°くらいとされている.しかし,看護技術書にはさまざまな挙上角度の記載があり,明確にはされていない.そこで,ベッド上で便器を挿入し上半身の挙上角度を変化させたときの腹圧のかかり方について,自覚的な腹圧のかけやすさと腹部表面筋電図から検討していくことを目的とした.18~22歳の健康な若年成人女性14名 (平均BMI,21±3.08) を対象に,ベッドの上半身の角度を0°,15°,30°,45°,60°,75°に変化させたときの安静呼吸時と最大腹圧を3秒かけたときの腹部表面筋電図を連続的に測定した.その結果,腹部表面筋電図は自覚的に腹圧がかけやすい拳上角度の順位別でも挙上角度別でも有意差はみられなかった.つまり,自覚的な腹圧のかけやすさと腹部表面筋電図との関連はみられず,腹圧のかかりやすい挙上角度は特定されず個別的である可能性が示された.
著者
井梅 由美子 平井 洋子 青木 紀久代 馬場 禮子
出版者
日本パーソナリティ心理学会
雑誌
パーソナリティ研究 (ISSN:13488406)
巻号頁・発行日
vol.14, no.2, pp.181-193, 2006 (Released:2006-03-31)
参考文献数
40
被引用文献数
4 2

本研究では,青年期における対象関係を評価する尺度を作成した.分析1では,単純構造の尺度を目指して,各尺度の内容が重複しないよう測定内容の整理を行い,5つの測定内容を設定した.因子分析の結果 (N=566),「(1) 親和不全」「(2) 希薄な対人関係」「(3) 自己中心的な他者操作」「(4) 一体性の過剰希求」「(5) 見捨てられ不安」の5因子で単純構造を示す尺度構成が確認された.分析2-1では,異なるサンプル (N=1041) を用いて交差妥当性を確認した.その結果,分析1とほぼ同様の因子構成が見られ,5つの測定領域を設定することの交差妥当性が示された.分析2-2では,性差・年齢差の検討を行い,予想された箇所で予想された方向に性差と年齢差が得られた.分析2-3では,NEO-FFI (NEO Five Factor Inventory) を用いてパーソナリティ特性との関連を検討し,概ね仮説を支持する内容の相関が見られた.これらの結果から,作成された尺度の構成概念妥当性が確認された.
著者
松本 真理子 森田 美弥子 栗本 英和 青木 紀久代 松本 英夫 灰田 宗孝 坪井 裕子 鈴木 伸子
出版者
名古屋大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2006

子どものロールシャッハ法に関する多角的視点からの研究を包括することによって、現代に生きる日本人一般児童のパーソナリティの特徴が解明され、また日本における被虐待児の心理的特徴も明らかにされた。さらに脳画像と眼球運動という生理学的視点からも子どものロールシャッハ反応の意味するものについてアプローチした結果、国内外において初の知見が得られ、さらに発達障害児との比較などについて、現在、研究を継続中である(平成21年度~25年度科学研究費基盤研究(B)(課題番号21330159)にて継続)。これまでに得た知見は国内外の学会および論文として既に発表している。平成21年度中には図書として成果の一部を刊行する予定である(2009年9月刊行予定)。
著者
伊藤 亜矢子 青木 紀久代
出版者
お茶の水女子大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2008

本研究ではスクールカウンセラーの学校全体への支援を可能にするツールづくりを国際比較によって行うことを目的とした.米国,スコットランド,香港などの研究者・実践者との協議や現地調査,共同研究を行った結果,(1)学級を切り口に学校全体への支援を行うための学級風土質問紙小学校版の公開と,中学校版も含めた自動分析システムの構築,(2)子どもの肯定的資質をアセスメントする質問紙の作成試行,(3)SCと教師の協働を促進する教師向けパンフレット,テキスト作成,(4)支援サイト試行などを行えた(一部継続中).