- 著者
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井崎 義治
- 出版者
- The Association of Japanese Geographers
- 雑誌
- 地理学評論 (ISSN:00167444)
- 巻号頁・発行日
- vol.54, no.3, pp.115-126, 1981-03-01 (Released:2008-12-24)
- 参考文献数
- 14
- 被引用文献数
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都市内部のある特定の社会的人口集団,すなわち,少数民族や宗教的人口集団等の空間的分布形態を取り扱った研究が,英語圏の国々の都市地理学や社会地理学の分野で,相当の蓄積を見るようになって久しい.一方,各種の人口集団を総合的に取り扱った研究,たとえば,各民族間における空間的分布パターンの相応関係についての研究などは,現在のところ,著しく少ない.また,ある特定の少数民族について,あるいは,少数民族と多数民族など2, 3の人口集団の比較について検討したものは多いが,調査地域におけるほぼ全人口の空間的パターンを考慮した調査はほぼ皆無である,これは,資料の入手が困難であることと,対象の複雑性に起因すると推察される. そこで筆者は,アメリカ合衆国本土で,最も長い歴史を持つ日本人街の形成をみ,多くの民族集団が居住し,さらに,それらの民族について比較的詳細な資料の整っているサンフランシスコ市を調査対象地域とし,本稿の前半で,各民族集団の居住に関する集中度の測定とその比較,後半で,スペアマン(Spearman)の順位相関係数を用いて,各民族集団間の居住相応関係の解明を試みた. 居住に関する集中度の測定については,立地係数(Location Quotient),ローレンツ曲線比較,および集中指数(Index of Concentration)を用いた.最初の2指標は,各民族集団の居住パターンの概観的な情報を提供するが,民族間の厳密な比較において困難があった.そこで,集中指数を用いて,日系人を含めた7民族について,居住の集中性を判定した,緒果として,黒人,中国系アメリカ人が最も集中した分布パターンを示していること,市内の最大人口集団である白人のそれは,当然のことながら,市人口全体の分布パターンに最も近似していること,その他の少数民族は,この両グループの中間に位置しているが,日系人,アメリカン・インディアン,ラテン系,フィリピン系アメリカ人の順に,居住の集中度が高いことなどが判明した. この研究の主要目的である居住パターンの相応関係については,次のような,三つの関係が指摘される. 1) 日系と中国系アメリカ人の居住パターンは,他の民族の居住パターンの影響を比較的受けていないのに対し,白人,黒人,ラテン系,フィリピン系アメリカ人,およびアメリカン・インディアンの居住パターンは,他の民族の居住パターンに強く影響されている. 2) アメリカン・インディアン,ラテン系,フィリピン系アメリカ人の居往パターンは,相互に非常に強い正の相関関係を示し,これに黒人を含めて,正の居住相応関係を相互に示すグループを形成している.一方,日系人と白人,日系人と中国系アメリカ人の間にも正の相関関係が見られ,結果として,日系,中国系アメリカ人,白人の3民族が,もう一つの正の居住相応関係を示すグループを形成している.なお,白人と正の居住相応関係を示すのは,日系人だけである. 3) 上記の二つのグループの間には,強い負の居住相応関係が存在している.すなわち,アメリカン・インディアン,ラテン系,フィリピン系アメリカ人および黒人は,白人,中国系アメリカ人とは,一緒に居住しない傾向が認められる.ただし,日系人の居住パターンは,他めどのグループとも,統計的に有意な水準での負の相応関係を示さない.