著者
谷津 栄寿
出版者
The Association of Japanese Geographers
雑誌
地理学評論 (ISSN:00167444)
巻号頁・発行日
vol.38, no.1, pp.43-46, 1965-01-01 (Released:2008-12-24)
被引用文献数
2

誰かがある問題を指摘すると,それを一体どのようにして解決するのか,どのように取りくむべきかなど質問し,自分みずから考えようとしない大学院め学生達があることには驚愕した.ロックコントロールの問題が,等閑にされていないだろうかと発言したため,筆者は返答に多くの時間をさかねばならなかった.思想はみずから育てあげるべきである.本稿では世界的にあまりにも有名な人々に対して反論を試み,彼等の研究方法において到達できるであろう限界を示し,ロックコントロール理論の一つの研究方法を述べた.要は,地形をつくっている地表物質の物性の理解の仕方なのである.多くの読者からの,非難と批判とを覚悟して,筆者の意見をのべることにした.
著者
本間 昭信
出版者
公益社団法人 日本地理学会
雑誌
地理学評論 Ser. A (ISSN:00167444)
巻号頁・発行日
vol.73, no.11, pp.802-816, 2000-11-01 (Released:2008-12-25)
参考文献数
26
被引用文献数
1 1

本研究は,従来,実験室的な空間に限定して考えられることの多かった視覚障害者の空間認知を,日常的な生活空間において考察した.被験者は主に社会福祉法人京.ライトハウスに所属する視覚障害者であり,対象地域は被験者の歩行訓練が行われる東西1,000m,南北600mほどの地区である.視覚障害者の認知距離と認知地点の布置(認知座標)について,全盲者・弱視者・晴眼者を比較考察した. その結果,ルート型の知識を問う認知距離実験,サーヴェイ型の知識を問う認知座標実験のいずれにおいても,視覚障害者の認知地図の歪みは,晴眼者よりも大きいことがわかった.しかし,この歪みの特性には,視覚障害者の障害の度合いのみならず,視覚利用の経験や,.障害の履歴による差がみられた.
著者
吉野 正敏
出版者
公益社団法人 日本地理学会
雑誌
地理学評論 Ser. A (ISSN:00167444)
巻号頁・発行日
vol.65, no.1, pp.1-16, 1992-01-01 (Released:2008-12-25)
参考文献数
62
被引用文献数
4 3

First, a definition is given for Föhn-type and Bora-type local winds. The Fan is a fall wind on the lee side of a mountain range. When it blows, the air temperature becomes higher than before on the leeward slope. The Bora is also a fall wind on the lee side of a mountain range, but when it begins, the air temperature becomes lower than before on the leeward slope. This definition can be applied regardless of the vertical structure along the cross-section, which is not always easy to observe for every case in the field. Second, the local winds caused by the airflows crossing a mountain range are classified according to the above definition. Third, vertical and horizontal models are illustrated, and descriptions of topography, clouds, precipitation and wind phenomena for the 12 parts from the windward regions to the leeward regions along the cross-section are given in a table. In the second part of the present paper, the impacts of local winds caused by the airflow crossing a mountain range are discussed. The effects of strong wind on the roofs of houses, wind breaks and hedges in the fields and surrounding houses, agricultural cultivation and land use, and windrelated names of places and passes are striking in the regions with strong fall winds on the leeward part as well as on the passes. Human response to such geographical conditions is quite sensitive, and we are able to know the local distribution of strong winds through observing these responses of the local people.
著者
小長谷 一之
出版者
公益社団法人 日本地理学会
雑誌
地理学評論 Ser. A (ISSN:00167444)
巻号頁・発行日
vol.68, no.2, pp.93-124, 1995-02-01 (Released:2008-12-25)
参考文献数
54

政治学者や社会学者の多くは,投票行動の集計結果(投票率,得票率)に現われる地域差を,投票性向の異なる社会階層の居住構成が,地域ごとに異なることに帰着させてきた(構成主義的アプローチ).ところが,地理学者が行なってきた諸外国の研究事例では,地域差のなかで,構成主義理論によっては説明できない部分がかなりあることがわかっている.この説明未了の部分の大半は,近隣効果と呼ばれる地域文脈的効果によるものと考えられる.近隣効果の発見は,過去30年の選挙地理学の最大の成果の1つである. 本稿では,京都市における1991年市議選の都市内地域における投票情報を分析し,次の3点を発見した.(1)有権者の階層構成の地域差は,投票率・得票率の地域差を説明できるほど大きくはない.(2)「地域別の投票率・得票率」は,地域ごとに変動し,その地域差パターンは構成主義モデルではほとんど説明できず,強い残差が残る(集計的近隣効果の存在).(3)「地域別かつ階層別の投票率・得票率」は,同じ階層について比較しても,地域ごとに変動し(非集計的近隣効果の存在),その地域差パターンは階層によらず,「地域別の投票率・得票率」の地域差パターンに類似する.この3つの現象は,普遍性をもち,たがいに密接に結びついていることがわかった.
著者
井戸 庄三
出版者
The Association of Japanese Geographers
雑誌
地理学評論 (ISSN:00167444)
巻号頁・発行日
vol.49, no.5, pp.285-299, 1976-05-01 (Released:2008-12-24)
参考文献数
35

明治22年 (1889) の町村合併で誕生した新町村の名称について,茨城・埼玉など15府県の4,041町村を対象に検討を加えた.新町村名を, A (歴史的広域名称), B (中心地名称), C (合成名称), D (並列名称), E (自然名称), F (社寺名称), G (歴史遺跡名称), H (地形名称), I (狭域名称), J (人為名称)などに類型区分すると, Aが1,277町村で全体の31.6%を占めて第1位であり, Bが1,089町村でこれにっいでいる.以下, J・C・Eの順となり,これら5類型で3,567町村を数え,全体の88.3%に達する.これを府県別にこまかくみると,かなり多彩な特色が認められる.滋賀県は郷・庄名の継承を優先したためAの比率がきわめて高く,福岡県もAおよびBに重点をおいたので,この両県では歴史と伝統に恵まれた新町村名が選定された.これに対して, Cが高率である広島県とJが異常に多い千葉県は,新町村名の選定に関するかぎり,問題の多いケースといえる.
著者
呉羽 正昭
出版者
公益社団法人 日本地理学会
雑誌
地理学評論 Ser. A (ISSN:00167444)
巻号頁・発行日
vol.64, no.12, pp.818-838, 1991-12-01 (Released:2008-12-25)
参考文献数
16
被引用文献数
2

本研究の目的は,群馬県片品村におけるスキー観光地域,とくに1970年代までのスキー観光地域が, 1980年以降どのように変化してきたかに注目して,その形成の諸特徴とそれにかかわる条件を明らかにすることである. 片品村では, 1970年代までに,規模の小さい8つのスキー場が,伝統的利用が行なわれていた共有林野のなかに開設された.スキー場の開設に伴い周辺地域では民宿が開設され,またスキー場の冬季臨時従業員といった雇用機会がうまれた.住民は,スキー場に関連した新しい就業を取り入れ,それに,夏季の農業,林業および建設業を組み合わせるようになった. 1980年代になって,スキー場ではペアリフトなどの新しい施設の建設が進み,入込客,とくに首都圏からの週末の日帰り客が急増した.一方,周辺地域では,スキー場関連産業が重要な位置を占あている.片品村では,高速道路開通による首都圏からの近接性の向上,面積拡大を可能にした林野所有形態といった条件をいかしながら,スキー観光地域は, 1980年以降大きく発展してきた.そこでは,スキー場の入込客許容量が増加し,また多種類の宿泊施設が存在することによって,スキー客の多様な需要に対応してきた.
著者
山崎 孝史
出版者
公益社団法人 日本地理学会
雑誌
地理学評論 Ser. A (ISSN:00167444)
巻号頁・発行日
vol.74, no.9, pp.512-533, 2001-09-01 (Released:2008-12-25)
参考文献数
135
被引用文献数
2

本稿は, 1980年代以降の英語圏の研究動向に即して,グローバル化,国民国家,そしてナショナリズムの関係を理解するための地理学的視角について検討する.グローバル化に伴う昨今の動態的な政治・経済・社会的変化は,一方において国家の基盤である主権,領土,あるいは国民的均質性を問題化し,他方においてナショナリズムに喚起された新国家形成や国家分裂という事態を招いている.本稿はまず,こうした一見矛盾した世界政治の現状を最近の研究を通して把握し,国民国家とナショナリズムの今日的意味を理論的に検討する.次に,ナショナリズムの現代的諸理論を近代主義アプローチを中心に論評する.最後に,ナショナリズムを領域的視点から検討することの有効性を,中心-周辺関係,領域的アイデンティティ,地理的スケールの三つの空間的概念を基に考察する.これらの考察を通して,グローバル化時代における国民国家とナショナリズムに関する政治地理学的研究の方向性を提示する.
著者
成瀬 厚
出版者
公益社団法人 日本地理学会
雑誌
地理学評論 Ser. A (ISSN:00167444)
巻号頁・発行日
vol.70, no.3, pp.156-166, 1997-03-01 (Released:2008-12-25)
参考文献数
41
被引用文献数
2 2

Discussions about “geopolitics” have flourished within the field of geography in recent years. In Japan, where geopolitics (chiseigaku) had been associated with empire expansion as well as German Geopolitik, the critical issues in geopolitics were not for their own features, but how they reveal ambivalent aspects of geography in general. In particular, two critical issues in geopolitics, political intentions and subjective interpretations of the world, make us realize that geographical descriptions may inevitably be political. Today, the term “geopolitics” is not used to designate a branch of study, but has a variety of contents at the general level. In this paper, by referring to the definition of “orientalism” by Said (1978), I suggest the necessity of analyzing geopolitical texts from the standpoint of criticism. An author of a geopolitical text is not an individual subject. Whether (s)he is a politician or an editor of mass media, (s)he represents the government or nation under a wider umbrella of ideology. From such a viewpoint, we could establish a research agenda that critically examines various geographical descriptions under the term “geopolitics.”
著者
阿部 一
出版者
公益社団法人 日本地理学会
雑誌
地理学評論 Ser. A (ISSN:00167444)
巻号頁・発行日
vol.63, no.7, pp.453-465, 1990-07-01 (Released:2008-12-25)
参考文献数
32
被引用文献数
2 5

Landscape can be considered as place in terms of phenomenological geography. In this paper, the author examines the concept of landscape with reference to that of place, and proposes a con-cept of “story” in order to prepare a framework for the study of landscape change synchronous with our consciousness change. The results are as follows: 1) Landscape is the life-world on which our belief in objective reality is founded, and is a repository of meaning. Therefore, the concept of landscape coincides with that of place as a space with value and meaning. 2) Place is not only an object of intentionality but also a process of intentionality. According to Nishida Kitaro's (1926) theory of place, place is the field of consciousness, which means that place is also the process of recognition. We call this aspect of place a “meaning matrix”, the implicit knowledge required for understanding meaning, such as a standard for judgment or a view of value. 3) It is “story” that represents the meaning of landscape. A story is a discourse on objects-a legend, an article, or a picture and indicates the trend of history. The subject and landscape are changing together, influencing each other in parallel with a “story” (see Fig. 4). 4) The task ahead for landscape study is to understand the self-understanding of a social group by analyzing its “story”, and to clarify the structure of the meaning matrix.
著者
平井 松午
出版者
公益社団法人 日本地理学会
雑誌
地理学評論 Ser. A (ISSN:00167444)
巻号頁・発行日
vol.61, no.10, pp.727-746, 1988-10-01 (Released:2008-12-25)
参考文献数
42
被引用文献数
3 3

近年の移民研究では,移住者の特性や移住意志決定プロセス,さらには移動流の方向などを明らかにするため,移民研究を人口移動研究の一環として捉え,移民の輩出過程と定着過程とにおける一連の移住過程が検討されてきている。本稿もかかる観点から,山形県出身者の多い美唄市西美唄町山形地区を例に,北海道農業移民の輩出・定着過程について報告しようとするものである. 山形地区の開拓は,明治27(1894)年,山形県村山地方の零細農民が組織した山形団体という農民移住団体の入植によって始まった.その後,自作入植者の単独移住によって開拓地の外延的拡大が行なわれるとともに,山形地区では畑作農業期に農民層分解がみられ,一部上層農の出現をみた.大正10(1921)年に山形地区が水田化されると,上層農はその労働力の担い手として小作人や奉公人を入植させた.こうした後続入植者の多くは,地縁的・血縁的なネットワークを通じての連鎖移住による同郷移住者に求められ,このことが山形地区において「同郷性」を維持してきた理由と考えられる.
著者
福田 珠己
出版者
学術雑誌目次速報データベース由来
雑誌
地理学評論. Ser. A (ISSN:00167444)
巻号頁・発行日
vol.69, no.9, pp.727-743, 1996-09-01
参考文献数
49
被引用文献数
15

本稿では,沖縄県竹富島において島を代表する存在である「赤瓦の町並み」が,どのように保存され今のような姿に至ったか,また,「赤瓦の町並み」が町並み保存運動の中で,伝統的建造物群保存地区という文化財としてどのように再生されていったか,伝統文化の創造という観点から考察する.町並み保存のプロセスを検討していくことによって,「伝統的」であると見なされている町並みが本来はいかなるものであるのか,さらに,「伝統的」であるとはいかなることなのかが,明らかになるのである.<br> 本研究の視点は,文化と真正性,伝統文化の創造,観光と伝統をめぐる諸研究と共通するものであり,本研究で取り上げた文化財として位置づけられている伝統的町並みは,研究者・行政・住民の三者の思惑が絡み合ったところに生じたもので,近年注目されっっある「ふるさと」の文化,地域の伝統文化を考える上で,格好の素材でもある.
著者
戸所 隆
出版者
The Association of Japanese Geographers
雑誌
地理学評論 (ISSN:00167444)
巻号頁・発行日
vol.48, no.12, pp.831-846, 1975-12-01 (Released:2008-12-24)
参考文献数
15
被引用文献数
9 2

本稿は,都心部の形成過程を通じ,最近の日本の都市で急速に進んでいる立体化について,とくに中高層建造物を中心に考察したものである.その結果,都市の機能分化は,従来の平面的機能分化以外に,その内部において立体的な機能分化を内包していることが判明した.すなわち,都心部では,物品販売・社交娯楽機能は地下1階~地上2階を中心に立地し,地下街とも有機的に結合している.地下2階以下は,主に駐車場や倉庫にあてられ,高層部分は業務・居住厚生機能の利用が多い.また,地下鉄など交通機関の立体化は,高層建造物の増加と関連が深く,さらに地下街も地下鉄や高層建造物の地下階の建設にともなって誕生した場合が多い.都心部の立体化は,これらのコンプレックスとして把握されねぽならないと考えるが,ここではとくに重点を中高層建造物において考察し,都心研究における立体的視点の重要性を示した.

8 0 0 0 OA 文献等

出版者
公益社団法人 日本地理学会
雑誌
地理学評論 Ser. A (ISSN:00167444)
巻号頁・発行日
vol.73, no.4, pp.327-330,391_7, 2000-04-01 (Released:2008-12-25)
著者
東木 龍七
出版者
The Association of Japanese Geographers
雑誌
地理学評論 (ISSN:00167444)
巻号頁・発行日
vol.2, no.8, pp.659-678, 1926-08-01 (Released:2008-12-24)
被引用文献数
1 5

之を綜合して簡單に示せば次の二項になる。 1.貝塚分布線を伴ふ溪谷の存在する陸地の一部は極めて近い過去に於て沈降し、其溪谷には海水が侵入しだ。 2.其溺れ谷の灣頭は一度は必ず貝塚分布極限線附近の溪谷底に存在した。 III 奮海岸線決定の方法近い過去に於ける陸地の沈降に因つて生じだ溺れ谷の海岸線即ち舊海岸線は次の順序によつて定むることを得る。 1.貝塚分布線を件ふ溪谷は陸地の沈降に因る奮溺れ谷と決定する。 2.其灣頭海岸線の位置は貝塚分布極限附近の溪谷底とし、其形状は其處の谷底を横斷する直線で示す。 3.灣側海岸線は溪谷底側線で示す(地形的現象によう)。 IV 陸地沈降の地質的證跡既に記載した陸地沈降の證跡に加うるに最近地質的證跡が發見せられた。即ち大下正十三年十月に發表せられた地質調査の結果に據れば(復興局地質調査東京地質調査第一囘報告)、東京群の貝塚分布域の溪谷に、陸地の沈降に因つて海水の侵入したことが地質的に立證せられた。其詳細は辻村助教授によつて論ぜられて居る(本誌第一巻第二號一九三頁-一九五頁)から記載は省く。
著者
田中 耕市
出版者
公益社団法人 日本地理学会
雑誌
地理学評論 Ser. A (ISSN:00167444)
巻号頁・発行日
vol.74, no.5, pp.264-286, 2001-05-01 (Released:2008-12-25)
参考文献数
31
被引用文献数
1 4

本研究は,福島県いわき市を対象地域として,個人属性で秀類した住民グループからみた生活関連施設に関する利便性をGISによって測定した.そして,グループ間における生活利便性の差異,および都市中心部と周辺部の生活利便性の格差を定量的に明らかにした.生活利便性を測定する際には,客観的なアクセシビリティ評価に加えて,住民からの主観的な評価を考慮に入れた生活利便性評価モデルを構築した.その結果,以下の点が明らかになった. 多数の生活関連施設が都市中心部に分布しているため,都市中心部ではすべてのグループからみた生活利便性が最良であり,グループ間における利便性の差異も小さかった.また,都市中心部から遠ざかるにっれて,生活利便性は徐々に悪くなる傾向にあった.都市中心部からの距離の増加に伴って生活利便性が悪化する割合は,各グループによって大きな差異がみられた.自家用車の所持率が高い就業者や男性高齢者では,生活利便性が悪化する割合は比較的小さかった.その一方で,自家用車の所持率が低い学生や女性高齢者は,都市中心部から遠ざかるにっれて生活利便性の悪化する割合が大きく,都市中心部と周辺部における生活利便性の格差が著しかった.