著者
吉岡 邦二
出版者
一般社団法人日本森林学会
雑誌
日本林學會誌 (ISSN:0021485X)
巻号頁・発行日
vol.33, no.11, pp.359-362, 1951-11-25
被引用文献数
2

1) The pine forest established on coastal sandy areas at Hamayoshida, Miyagi Pref. were investigated from the ecological standpoint.2) Within the forest investigated eight communities were found occurring in zonation towards the interior. Pinus Thunbergii ("Kuromatsu") communities with strand plants as undergrowths were found on the seaward parts, while P. densiflora ("Akamatsu") communities with many inland plants on the interior parts. The zonal arrangement of the communities was accompanied by the zonal change of such properties of the soil as moisture, pH, Ca-and Cl-content etc. The maritime character of which weakened inwards. Accordingly, it may be said that these soil properties, as well as meteorological characters, control the structure of communities.3) Some precise examples of water levels influencing greatly upon the structure of pine forests will be given as follows : When the water level is higher than 25-35 cm in summer, the pines are unable to grow, and when lower than 50 cm, the normal types of forests appear. On the intermediate site occurred the forests with such hygrophytic undergrowths as sedges.The inhibiting effect of underground water upon the establishment of pine forests seems to be accelerated by the increasing content of chlorids.
著者
千葉 幸弘
出版者
一般社団法人日本森林学会
雑誌
日本林學會誌 (ISSN:0021485X)
巻号頁・発行日
vol.76, no.6, pp.481-491, 1994-11-01
被引用文献数
3

1991年9月の台風19号によって発生したスギ人工林の激害地を1992年3月に調査して、暴風によって生じる樹幹の折損機構を沢田モデルによって解析した。ほとんどの個体が折損した二つの壊滅的被害地それぞれに20m×20mのプロットを設け、すべての個体のサイズ(樹高、胸高直径など)および折損木の折損高、折損部直径を測定した。樹高曲線に拡張相対成長式を採用し、生枝下高が林分に固有の一定値をとると仮定することによって、風圧力によって樹幹内に生じる応力をシミュレートした。幹形を単テーパービームとみなして推定された折損高は、概して実際の値とよく一致した。樹幹内曲げ応力分布から、風圧力による樹幹の折損位置は材内部の物理的欠点のために予測位置を中心にばらつき、台風を生き残った立木でも樹幹に沿ってモメが発生していると考えられた。いくつかの樹幹形状比に応じた折損位置についても検討したが、このことは被害材の利活用および被害林分のその後の処理を考える上で重要である。
著者
萩原 秋男 鈴木 道代 穂積 和夫
出版者
一般社団法人日本森林学会
雑誌
日本林學會誌 (ISSN:0021485X)
巻号頁・発行日
vol.60, no.11, pp.397-404, 1978-11-25
被引用文献数
1

18年生(1974年現在)ヒノキ人工林における落葉枝量の季節変化を明らかにし, 枯死量・被食量の推定を行なった。落葉のピークは10〜11月と1月にあった。この落葉の季節変動が総落葉枝量のそれを特徴づけていた。落枝量の1〜2月にかけてのピークは, 雪による影響であると考えられた。生殖器官の落下のピークは11月にあったが, 明確な季節変化は観察されなかった。虫遺体の落下量は夏に多かった。また, 虫ふんの落下は7月にピークを示し, 冬から春にかけては, ほとんど認められなかった。植物体の落下と虫遺体・虫ふんのそれとには, 季節変動において明らかな差が認められた。すなわち, 前者は主に秋から冬にかけて, 後者はおもに夏に落下のピークがあった。年総落葉枝量は1.8t(dw)/ha・yrと推定された。そのうち, ヒノキ葉, 枝, 虫ふんの年落下量はそれぞれ1.5t(dw)/ha・yr, 97kg(dw)/ha・yr, 47kg(dw)/ha・yrであった。枯死量は葉で2.0t(dw)/ha・yr, 枝で0.12t(dw)/ha・yrと算出された。また, 食葉性昆虫による葉の被食量は76kg(dw)/ha・yrと推定された。この値はヒノキ落葉量の5.2%, 総光合成生産量の0.15%を占めていた。したがって, 被食量の落葉枝量や総生産量に占める割合は非常に小さいと推定された。
著者
山脇 三平
出版者
一般社団法人日本森林学会
雑誌
日本林學會誌 (ISSN:0021485X)
巻号頁・発行日
vol.40, no.11, pp.481-488, 1958-11-25

この報告は, わが国の山岳林のうち急傾斜でない山腹で運材につかわれている3 tonクローラ型トラクタ(Table 2参照)の牽引抵抗・燃料消費率・振動について実際測定してえられた2,3の結果について報告している。1. 伐採点からトラクタ道側まで数十mの林地上を, トラクタ後部に装備された小型1胴ウインチで玉切材や全幹材(樹種カラマツ)を集材するときの, 集材索にはたらいた張力, 負荷時・無負荷時の燃料消費率を測定した。この結果は, Table 3,Fig. 3のとおりである。2. 勾配=3〜16%のトラクター道上を, 運行速度=2.5〜6.0 km/hrで, 運材に従事しているトラクタの燃料消費率はFig. 4のとおりである。3. 走行中のトラクタおよびサルキーの集材索と牽引桿の双方に作用している張力については, Fig. 1に示した筆者の設計した測定方法によつて同時測定をすることができた。こういう丸太牽引の機構は, トラクタおよびサルキーによる運材をほかの運材方法とはちがつたものとして特徴づけているわけで, この測定の結果は, Table 4-a, b, Fig. 5のとおりである。4. これらの結果から, 牽引桿に作用する張力は集材索に作用する張力より絶対値は小さいが, より変動のはげしい繰返し応力がはたらいていることが認められる。この試験はさらに継続される必要があるが, これらの結果はこのサルキーの重心が高いために凸凹のひどい地面上ではバランスをうしないやすいことなどとともに, トラクタまたはサルキーの構造および作業方式について改良をくわえる必要があると, 筆者は考えている。5. このトラクタおよびサルキーでやわらかい土砂道上を運材するとき, あるいは林地の伐根をのりこえたりしたときでも, トラクタの運転台の振動には大きな加速度があらわれなかつた。ただしブルドーザ付のトラクタが単車で, 砂利で舗装したかたい林道上を, 2〜6.2 km/hrの速度で走行するばあいには, トラクタの走行速度がはやくなるほど衝撃回数は少なくなるが加速度の絶対値は大きくなり, 三成分別の衝撃回数はどの路面でも最高速走行のときに, 前後>左右>上下の成分の順の大きさになることが認めらる(Table 5参照)。
著者
藤井 英二郎 辰巳 修三 陣内 巌
出版者
一般社団法人日本森林学会
雑誌
日本林學會誌 (ISSN:0021485X)
巻号頁・発行日
vol.61, no.8, pp.273-279, 1979-08-25

常磐線沿線地域のマツ平地林16群落を調査し, 草本層構成種の積算優占度からGLEASONの類似度指数を求め, これをもとに因子分析し, 因子軸上に各群落を因子負荷量によって位置づけた結果, よく下刈りされた群落グループと下刈り放棄後遷移が進んだグループ, それらの中間にあるグループの三つに区分された。そして, 偏向遷移系列と正常遷移系列の2因子が推定された。3グループ間で優占度による生活型組成を比較すると休眠型でMMとM, 生育型でb, 散布型でD_4が遷移の進行につれて増加し, 逆に休眠型でCh, 生育型でt, 散布型でD_1が減少した。また生活型ごとに構成種の相対優占度-順位関係を3グループ間でくらべると, 遷移が進むにつれて生活型の構成種数は減るが優占度は増える建設型(休眠型でM, 生育型でb, 散布型でD_4が該当)と, 構成種数も優占度も減るが種数がより急激に減る衰退型I(生育型でtが該当), 優占度がより急激に減る衰退型II(休眠型でCh, 散布型でD_1が該当)とがみられた。
著者
藤井 英二郎 陣内 巌
出版者
一般社団法人日本森林学会
雑誌
日本林學會誌 (ISSN:0021485X)
巻号頁・発行日
vol.61, no.3, pp.76-82, 1979-03-25
被引用文献数
5

常磐線沿線地域のマツ平地林16群落を調査し, 草本層の種組成の類似性をJACCARDの共通係数で判断し, この共通係数行列をもとに直接バリマックス法で因子分析した結果, 下刈りによる偏向遷移系列と正常遷移系列の2因子が推定された。これら2因子軸上に各群落を因子負荷量によって位置づけた結果, よく下刈りされ遷移の退行を起こした群落グループA(このなかには上層のマツが高密な群落も含まれた)と下刈り強度の弱い, あるいは下刈りを放棄して数年を経た群落グループB, さらに下刈りを放棄して10年以上経た群落グループCとに区分された。A, B, Cの間で種数による生活型組成を比較するとA, B, Cの順, すなわち下刈りによって退行遷移した群落から下刈り放棄によって林床植生が発達するにつれて, 休眠型でMとG, 生育型でeと1,散布器官型でD_2が増加し, 逆に休眠型でChとH, 生育型でtとpr, 散布器官型でD_4が減少する傾向がみられた。
著者
橋詰 隼人
出版者
一般社団法人日本森林学会
雑誌
日本林學會誌 (ISSN:0021485X)
巻号頁・発行日
vol.44, no.11, pp.312-319, 1962-11-25
被引用文献数
9

1) 雄花芽は新条の先端部の葉腋に形成されたが, 雌花芽は新条の頂芽に分化した。2) 自然状態における雄花芽の分化期は6月下旬〜9月下旬であった。花芽分化後, 雄花芽は急速に生長して, 短期間で雄しべおよび造胞組織の分化が認められた。そして, 9月中旬〜11月上旬の期間に花粉が形成された。3) 自然状態における雌花芽の分化期は7月中旬〜9月中旬であった。雌花芽では, 花芽分化後短期間で苞鱗の分化が認められ、8月上旬〜10月中旬の期間に胚珠が形成された。胚珠はその後珠皮と珠心に分化した。10月下旬にはすべての雌花で珠皮と珠心の完全に分化した胚珠が認められた。開花期は2月下旬〜3月下旬であった。4) 雌花芽の分化開始期は雄花芽よりも2〜3週間おそかった。また分化期間は雄花芽よりもみじかい傾向がみられた。5) 同一新条における花芽分化あるいは同一花芽における花部器官の分化は求頂的に進行した。6) 花芽分化期および花芽の発育経過には, 年により10〜20日の早晩がみられるようである。7) ジベレリン処理の場合は処理後約30日で花芽分化が開始された。ジベレリン処理によっておこる花芽分化の期間は自然分化に比して約2ヵ月ながいようであった。9月までの処理区では胚珠および花粉は年内に形成され, 開花期は自然分化に比して著しく相違しなかった。しかし, 10月処理区では花芽の発育が抑制され, 花粉は翌春形成された。したがって, 開花期は15〜20日おくれるようである。
著者
吉野 豊
出版者
一般社団法人日本森林学会
雑誌
日本林學會誌 (ISSN:0021485X)
巻号頁・発行日
vol.82, no.1, pp.91-94, 2000-02-16
参考文献数
22
被引用文献数
1

囗長時間がオオバヤシャブシ(Alnus sieboldiana)の伸長成長と花芽分化に及ぼす影響を調査した。野外に定植された8年生の供試木を夏至から12月まで夜間に蛍光灯で補光し, 24時間日長とした(CL区)。一方, 自然の日長条件下のオオバヤシャブシを対照区とし(Cont区), 4月から12月まで両区の伸長成長量と花芽の分化状況を調査した。Cont区では, 枝のシュートの伸長成長は6月下旬に緩慢となって7月に停止したが, 主軸のシュートの伸長は9月まで持続し, 主軸の方が伸長期間が長かった。また, Cont区の枝では7月に伸長成長が停止するとともに雄花芽の形成が認められた。一方, CL区の枝の伸長成長は10月下旬まで持続し, 花芽形成が著しく抑制された。しかし, 10月末になると, CL区でも伸長成長は停止し, 休眠芽が形成された。囗長時間が短くなり始める時期に花芽が分化し, 長日条件下におくと花芽分化が抑制される現象から, オオバヤシャブシの花芽分化は主として光周性により支配されており, 限界日長時間が約15時間で枝の伸長成長が低下し, 花芽を分化する短日植物であると思われる。また, 通常の花芽分化時期ではない10月に少数の雄花芽の形成が認められたことから, 気温も花芽分化に補足的に影響しており, 低温を感知して花芽が形成される場合もあることがわかった。
著者
岸原 信義 石井 正典
出版者
一般社団法人日本森林学会
雑誌
日本林學會誌 (ISSN:0021485X)
巻号頁・発行日
vol.64, no.10, pp.373-381, 1982-10-25
被引用文献数
2

本論は日本の山地流域からの流出に関する総合的な研究の第一歩として, 流出地帯区分を主体に流出の地域性に関する検討を行ったものである。解析は全国319流域の月流出量の資料を用いて行われ, その結果夏期流出比率の多少によって2大区分がなされた。表日本型(非積雪型)と裏日本型(積雪型)の流域群ともいえる。ついで時期別(厳寒期, 融雪期, 梅雨期, 台風期, 初冬期)の流出比率と年流出量の多少とによって, 10の流出地帯区が分類された。各流出地帯区の流出特性は, 夏期流出区では流出のピークが梅雨期か台風期かによって, 冬期流出区にあっては融雪流出の開始, 終了と融雪流出のピークの月によって特徴づけられる。日本の山地流域からの平均年流出量は約2,110mmで, これに蒸発散量を加えれば, 山地流域という点を考慮に入れても, 降水量の過少推定が指摘される。
著者
箕口 秀夫 丸山 幸平
出版者
一般社団法人日本森林学会
雑誌
日本林學會誌 (ISSN:0021485X)
巻号頁・発行日
vol.66, no.8, pp.320-327, 1984-08-25
被引用文献数
12

ブナ殻斗果の発達およびその動態を1981年に調査した。外部形態的な大きさは6月に最大に達し, 8月下旬から9月下旬をピークとして内部の充実がみられた。胚の発生は7月上旬に認められ, 落下直前には胚長比で80%, 胚重比で70%に達した。落下は8月から始まったが, 本格的な落下は9月下旬からで, 10月中・下旬に落下量は最大となり, 11月には急減した。堅果の稔性は落下最盛期に最も高かった。落下状況から落下時期を4期に分けた。m^2当りの落下堅果数は739±82個と大豊作で, 健全, シイナ, 虫害, 鳥獣害堅果の割合は, それぞれ71.8%, 13.5%, 13.3%, 1.4%であった。人工散布堅果により調べられた齧歯類の影響は, 落下最盛期に小さくなった。翌春までの落下堅果残存率は約20%で, m^2当り約100個の堅果が発芽可能ということになる。これは不作年と対照的であった。以上のことから, 豊凶差が著しく, その周期も長いブナの再生産様式は, 捕食圧を回避し更新を可能にする適応戦略の一手段とも考えられる。
著者
越智 鬼志夫
出版者
一般社団法人日本森林学会
雑誌
日本林學會誌 (ISSN:0021485X)
巻号頁・発行日
vol.51, no.7, pp.188-192, 1969-07-25
被引用文献数
6

本報告は, マツ類を加害する穿孔性害虫であるMonochamus属2種, すなわち, マツノマダラカミキリ M.alternatus HOPE, カラフトヒゲナガカミキリ M.saltuarius GEBLERについて, 主として飼育によってえられた成虫の羽化脱出から産卵までの生態を比較対照して論じたものである。1.成虫の羽化脱出は, カラフトヒゲナガカミキリが4月中旬〜5月上旬, マツノマダラカミキリは6月上旬〜7月下旬であった。2.後食は両種とも羽化脱出後, マツ類の芽や新条, 古い枝の樹皮などで行なわれるが, マツノマダラカミキリのほうが古い枝などの樹皮を多く食べる。3.後食を行ない, 生殖器官の成熟が完了した成虫は, 羽化脱出後3週間前後で産卵をはじめる。産卵は, 樹皮をかじってかみ傷をつけた白色の内樹皮の間に行なわれる。4.産卵期間は, マツノマダラカミキリが約2カ月, カラフトヒゲナガカミキリが約1カ月である。5.1雌当たりの卵数は, 卵巣小管の数では両種とも平均で21.7であったが, 産卵数はマツノマダラカミキリが59〜184,カラフトヒゲナガカミキリでは44〜122であった。6.卵期間は, 5〜10日であった。
著者
林 暎得 四手井 綱英
出版者
一般社団法人日本森林学会
雑誌
日本林學會誌 (ISSN:0021485X)
巻号頁・発行日
vol.56, no.4, pp.122-127, 1974-04-25
被引用文献数
6

アカムツの種子におよぼす動物の影響に関する調査を上賀茂の京大演習林, 滋賀県の日野町有林と田上国有林および京都府立大の大枝演習林で1972年7月から1973年6月まで行った。林外・林縁および林内で発芽率の差は見られなかったが, 林外では稚樹の発生は林縁や林内にくらべてはやかった。天然更新稚樹の本数密度は林縁から林内に入るにしたがって減少していた。林内の動物の影響は種子の密度と関係なく常に高い被食率(90〜100%)が詔められた。一方, 林外や林孔の場合には密度の増加にしたがって被害も大きくなった。林縁から林内に入るにしたがって動物による被害は大きくなった。そしてこのことが林内で稚樹が少ない一つの原因ではないかと思われる。調査地において林内の動物の影響は林縁・林外・林孔にくらべて常に多かった。そして動物による被害の内訳をみると鳥によるものが一番多く, 次にノネズミ, そして土壌昆虫の順であった。昆虫の影響はわずかであった。現在まで帯状皆伐はアカマツの天然更新の作業法として推奨されてきたが, 動物による被害のあらわれ方からみても有利であろうと考えられる。すなわち帯状伐採地は光条件を良くすること以外に種子に対する動物の影響を緩和することによってアカマツの更新を容易にしていると思われる。
著者
沼田 邦彦
出版者
一般社団法人日本森林学会
雑誌
日本林學會誌 (ISSN:0021485X)
巻号頁・発行日
vol.55, no.12, pp.368-378, 1973-12-25
被引用文献数
1

2本の軌道索の間に1本の架空索をかけ, アルファベットの文字Hのように架線の索張りをしたものをH型架線という。H型架線は面状集材の一つの架線形式であるが, この面状集材架線は森林を立体的構成体として利用するための樹下植栽や, 単木抜き切り伐木集材作業を可能にし, 森林造成や森林作業に新たな道を開くであろう。このような意味でH型架線の実用の可能性を確かめることは必要なことである。ここでは索曲線の関係式を用いてH型索張りの釣合状態の条件式と変数の関係を負荷時と無負荷時に対して求め, おのおのの場合の収束計算と計算結果の一例を示した。
著者
佐藤 姚子 浅輪 和孝
出版者
一般社団法人日本森林学会
雑誌
日本林學會誌 (ISSN:0021485X)
巻号頁・発行日
vol.77, no.3, pp.220-223, 1995-05-01
参考文献数
11
被引用文献数
3

シイタケの原木栽培において、ほだ木に処理した殺虫剤フェニトロチオンの子実体への吸収・残留について調査した。ほだ化したシイタケの原木を、フェニトロチオン50%乳剤希釈液に浸漬し、あるいは噴霧処理を行った。薬剤処理を行ったほだ木より発生したシイタケ子実体およびほだ木樹皮について、経時的にガスクロマトグラフィーによる残留分析を行った。その結果、薬剤処理区においては、いずれの試料からもフェニトロチオンが検出され、子実体による吸収が認められた。しかし、その検出量は薬剤処理方法により差がみられ、食品中の残留農薬に関する厚生省告示による、シイタケの基準値を試験期間中満たしたのは噴霧処理を行った区のみであった。また、ほだ木樹皮での検出値は子実体に比べ著しく高く、減衰は緩慢だった。
著者
山中 高史 岡部 宏秋
出版者
一般社団法人日本森林学会
雑誌
日本林學會誌 (ISSN:0021485X)
巻号頁・発行日
vol.77, no.3, pp.269-271, 1995-05-01
参考文献数
8
被引用文献数
2
著者
清野 嘉之 奥田 史郎 竹内 郁雄 石田 清 野田 厳 近藤 洋史
出版者
一般社団法人日本森林学会
雑誌
日本林學會誌 (ISSN:0021485X)
巻号頁・発行日
vol.85, no.3, pp.237-240, 2003-08-16
被引用文献数
3

茨城県と京都府,熊本県の若いスギ林に強度を変えた間伐試験区を設け,間伐後最初の夏に分化した雄花の落下量をトラップ法で測定した。熊本では雄花が殆ど生産されなかったが,茨城と京都では土地面積当りの雄花生産量が無処理や通常間伐区で少なく,強度や超強度間伐区で多かった。強度や超強度間伐区では雄花着生個体数の比が高く,雄花着生個体当り雄花生産量が多かった。また,林分雄花生産量はRyがある値(茨城では0.6未満,京都では0.4未満)のときに最大値をもつと推定される。これらのことから閉鎖林に行われる通常強度の間伐には,間伐で雄花が直接除去されることを除いては,雄花生産抑制の効果は認められないと考えられる。
著者
橋本 良二 玉泉 幸一郎
出版者
一般社団法人日本森林学会
雑誌
日本林學會誌 (ISSN:0021485X)
巻号頁・発行日
vol.77, no.2, pp.153-162, 1995-03-01
被引用文献数
2

22年生スギ林分の20個体について、樹冠下の幹の枝節解析を行うことにより、樹冠底高や樹冠長のほか、地上部各器官の重量、成長量、枯死・脱落量の経年変化を調べ、林冠の発達過程や器官成長様式の推移を議論した。個体の純生産率は、樹冠葉量の増減や樹冠構造の転換により変化し、「減少-安定-上昇-安定」の経過をたどる。このことから、林冠発達過程は、純生産率の変化を根拠として明確に4期に区分される。個体の幹成長への物質配分率は、純生産率と樹冠新葉率の関数として表され、前者が大きく後者が小さいほど高い値をとる。幹配分率は、林冠発達過程の第1期では新葉來の低下により上昇する。第2期以降では、幹配分率は純生産率の影響を強く受けそれと同様の変化パターンを示し、第2期で安定、第3期で上昇、第4期で安定の傾向を示す。第4期における幹配分率は、0.40〜0.65の範囲にあり、個体間差は純生産率の変動にほぼ支配され、上、中、下層木間のちがいは極端な被圧木を除けば明らかではない。
著者
熊田 淳 川名 明 片岡 寛純
出版者
一般社団法人日本森林学会
雑誌
日本林學會誌 (ISSN:0021485X)
巻号頁・発行日
vol.70, no.11, pp.465-471, 1988-11-01

クヌギ(Quercus acutissima CARR.)の樹体内における元素の消長について13元素を対象に葉の展開期から落葉に至るまで生育相別に葉と当年生枝の元素含有率の測定を行った。葉中のFe, Si, Sr, Ca, Znの含有率は, 展開期の6月, 7月からほぼ直線的に増加し, 葉落期の12月になっても減少しなかった。B, Clの含有率は, 一度増加するが, Bが9月, Clが11月の黄葉期から落葉期にかけて減少した。Cu, S, N, K, Mg, Pの含有率は, 葉の展開期に高く落葉期まで減少の傾向を続けた。クヌギは当年生枝の伸長にともなって一年間に2回, または3回にわたって新葉を展開するが, どの時期に展開した葉であっても, 各元素の増減のパターンはほぼ同じであった。また, 当年枝と葉の元素含有率の関係をみると, Cu, S, N, Mg, P, Bは黄葉・落葉期になると葉から枝へ一部移動することが考えられ, Fe, Si, Ca, Sr, Znは落葉期になっても葉中の含有率がそのままであることから, 大部分が落葉中に残り林地に還元されると考えた。KとClの移動については, 降雨時の溶出と樹体内に移動する部分についてさらに検討を要する。
著者
古川 成治 吉丸 博志 河原 孝行
出版者
一般社団法人日本森林学会
雑誌
日本林學會誌 (ISSN:0021485X)
巻号頁・発行日
vol.81, no.4, pp.341-345, 1999-11-16

ニホンギリ・チョウセンギリの混在する会津地方のキリを材料に, DNA分子マーカーにより分類を試みた。花の形態に基づき各種24個体, 計48個体を選抜し実験に供した。RAPD分析による多型的バンドデータをもとに分類した結果, 14タイプに分類された。また, 遺伝距離を算出しクラスター分析を行ったところ, 花の形態と一致しない二つのクラスターに分かれることが判明した。次に葉緑体DNAの一部のシークエンス決定を行った結果, matK遺伝子上に2カ所の塩基置換があり, この2カ所の塩基置換は制限酵素で切ることにより識別できることが判明した。48個体の識別を試みた結果, これも花の形態とは一致しない二つのタイプに分類された。この葉緑体DNAの制限酵素断片長多型で識別できる二つのタイプのキリは, RAPD分析の結果と一致したが, 花の形態による分類とは一致しなかった。