著者
岩出 亥之助
出版者
一般社団法人日本森林学会
雑誌
日本林學會誌 (ISSN:0021485X)
巻号頁・発行日
vol.20, no.7, pp.387-391, 1938-07-10
著者
大河内 勇 大川畑 修 倉品 伸子
出版者
THE JAPANESE FORESTRY SOCIETY
雑誌
日本林學會誌 (ISSN:0021485X)
巻号頁・発行日
vol.83, no.2, pp.125-129, 2001

道路側溝への両生類の転落死は両生類減少の一因として問題とされている。それを防止するために, 簡易な後付けスロープ型脱出装置をつけた場合の効果, 脱出装置の改良方法を調べた。スロープ型脱出装置をつけた場合, アズマヒキガエルでは側溝からの脱出数が多くなるという効果がみられたが, ニホンアカガエルでは装置がなくともジャンプによる脱出が可能なため効果はわからなかった。脱出装置は, 一部の種とはいえ効果があるので, 道路側溝につけるべきである。移動力の弱いアズマヒキガエルの幼体を用いた脱出装置の改良実験では壁面の角度が30度以下になると, 壁面が乾燥条件でも全個体脱出できた。これらから, 100%脱出可能な側溝は, 角度が30度より浅いV字溝になることを示した。
著者
北村 博嗣
出版者
一般社団法人日本森林学会
雑誌
日本林學會誌 (ISSN:0021485X)
巻号頁・発行日
vol.38, no.10, pp.400-408, 1956-10-25

福島県喜多方営林署内天然生キリ材について圧縮強さ, 曲げ強さ, 及び比重等を調べた。その結果を前に調べた新潟県産人工植栽林の材と比較しながらまとめると次の如くになる。1)圧縮及び曲げ試片より求められた平均年輪幅をみると福島は平均7.58mm, 新潟19.1mmで新潟は福島の2.5倍に及ぶ。更に辺材部と心材部がどのような年輪幅で構成されているかをみると, 両地方の材共に心材部の方が年輪幅が広い。つまり, 幼令の時に大きな年輪幅を形成し壮老令になるに従い狭い年輪幅を造るが, 新潟県産の場合は生長のよい時に平均18〜19mm以上の年輪を, 福島産の場合は7〜8mm以上の年輪を多く造つている。2)各試片の平均年輪幅とその試片の比重との関係をみると年輪幅の増大と共に比重は低下する。一般環孔材と逆の関係であるが柔細胞が多いための影響と考えられるが今後明らかにしたいまた前報した新潟産のものと合わせてみると平均年輪幅17〜19mm付近に最小の比重を与えるものと推定され, それ以上年輪幅が広くなると比重は逆に上昇する(第5,6図参照)。3)福島産材の気乾比重は0.30,新潟産材のそれは0.25で福島の方が高い。これは福島の年輪幅が狭いことおよび同一年輪幅でも福島の方が比重が高いことに原因がある。辺心材間比重の大小は福島産材と新潟産材とで少しく異なるが両者同一程度か, あるいは心材の方が高い。心材部は年輪幅広いものを多く持つているが(広いものは比重が小さい), 同一年輪幅でも心材の方が辺材より比重が高いために広い年輪を持つ心材が高い比重を示す結果となる(第7図参照)。4)圧縮強さを求めた福島産材は大約250kg/cm^2,新潟産材は200kg/cm^2で福島の方が強い平均年輪幅が大きくなると圧縮強さは減少してくる。これは比重と関係のあることで福島産材のように年輪幅割合狭くその増加と共に単純に比重が減少してくる場合は圧縮強さも単純に減少してくるといえるが, 新潟産材のように年輪幅が極端に広くなり, 比重が年輪幅に対し複雑に変化する場合は, 圧縮強さの変化も複雑となり, 平均年輪幅17mm付近で一旦圧縮強さの谷を出現し, 以後年輪幅の増加と共に強さの上昇をみる(第9図参照)。5)比重と圧縮強さの関係はσ_<12-15>=9・γー25で表現した。ここにσ_<12-15>は含水率12〜15%の時の圧縮強さ(kg/cm^2)γは試験時の比重の1O0倍値である。6)辺材と心材の圧縮強さを比較してみると, 心材は辺材と同程度或いはそれ以上の強さを持つている。心材の年輪幅は広いものが多いが同一年輪幅でも心材の方が比重高く圧縮強さが高いためである(第8図参照)。7)曲げ試験の結果は, 福島産材曲げ破壊係数450kg/cm^2曲げ弾性係数560×10^2kg/cm^2新潟産材曲げ破壊係数370kg/cm^2,曲げ弾性係数530×10^2kg/cm^2であり(第3表参照)福島の方が強い。8)比重と曲げ強さの関係は直線式を適用しσ_<11-17>=20・γ-156とした。ここにσ_<11-17>は含水率11〜17%の曲げ破壊係数kg/cm^2,γはその時の比重の100倍値である。9)年輪幅により曲げ強さが変化するが年輪幅の増加と共に直線的に強さが低下するとみられる(第17図参照)。新潟産材の場合は比重あるいは圧縮強さの時と同様に年輪幅17mm, 付近で一旦曲げ破壊係数の下降をみて以後再び上昇をみる。10)辺材と心材で曲げ強さの差はない。このことは新潟産材についてもいえたことである。比重あるいは圧縮強さと同様に同一年輪幅でも心材の方が曲げ強さが高いことが関係している。11)曲げ弾性係数σ_Bと比重γの関係式は, σ_E=210000γ-7900と与えられた。
著者
堀 高夫
出版者
一般社団法人日本森林学会
雑誌
日本林學會誌 (ISSN:0021485X)
巻号頁・発行日
vol.61, no.7, pp.233-241, 1979-07-25

この報告では, 集材架線において, 荷上索を操作して荷重を上下する際に, 荷重が軌索・荷上索に及ぼす衝撃作用を理論的に解明することを試みた。ここでは架空索の基礎理論として放物線索理論を採用した。またモデル架線として, タイラー式架線を原型とするものと, ホイスティングキャレッジ式架線を原型とするものとをとりあげ, 理論解析の対象とした。これらのモデル架線を軌索・荷上索(後者のモデルでは巻上索)・搬器・荷重よりなる一つの系と考え, その上下運動のみに着目し, まず系の位置エネルギーおよび運動エネルギーの算定式を与え, ラグランジュの運動方程式を適用することにより, 荷重の動的作用を決定するための微分方程式を誘導した。ついで荷重の動的作用が過大でない場合に対して近似理論を誘導し, 軌索および荷上索または巻上索に対する衝撃係数を直接求めるための近似式を与えた。また数値計算結果から, 衝撃係数について架線の諸条件・荷上げ用ドラム操作上の条件等との関係を検討し, その性格を明らかにした。
著者
八巻 一成 広田 純一 小野 理 土屋 俊幸 山口 和男
出版者
一般社団法人日本森林学会
雑誌
日本林學會誌 (ISSN:0021485X)
巻号頁・発行日
vol.82, no.3, pp.219-226, 2000-08-16
被引用文献数
7

森林レクリエーション計画においては, 利用ニーズに合った多様なレクリエーション体験の提供が重要な課題である。本研究では, このような視点からレクリエーション空間の計画, 管理のあり方を示したROS(Recreation Opportunity Spectrum)を取り上げ, わが国の森林レクリエーション計画における有効性を探った。まず, わが国における森林レクリエーション空間の実態とレクリエーション計画システムの現状を考察し, 課題を明らかにした。つぎに, ROSの成立過程, 基本概念, 計画作成プロセス, 適用事例について解説し, ROSとは何かを明らかにした。最後に, わが国の森林レクリエーション計画における意義および役割を検討した。その結果, ROSの特色であるレクリエーション体験の多様性という視点が非常に有効であると考えられた。
著者
石崎 厚美 高木 哲夫
出版者
THE JAPANESE FORESTRY SOCIETY
雑誌
日本林學會誌 (ISSN:0021485X)
巻号頁・発行日
vol.33, no.9, pp.307-311, 1951

1.本試験は飫肥地方のスギ各品種について実験生態学的見地から屈折率に就て1950年5月より翌年3月に到る1ケ年間の季別変化を見たものである。<br> 2.供試材料は地質,土壤,外囲の気象条件の殆んど同一と認めらるる飫肥営林署大戸野国有林内の18年生造林地より採取し,各個樹共に梢頭部先端2年生幹枝の先端の当年度伸長の枝葉を毎月18日朝10時を期して採取したが, 7月のみは1週間連続雨天のため午前中の雨の晴間を見て採集した。<br> 3.圧搾液は油圧式圧窄器を使用し, 300kg/m<sup>2</sup>にて搾液した。<br> 4.屈折率は島津製作所の加温装置附のAbbe屈折計を用い,温度は18℃と200℃に分つて測定した。<br> 5.屈折率の変化を季別に見るにスギの開舒期に於ては稍低く,生育最盛期に於ては漸次高まり,終止及び休止期に於ては昇騰の傾向を示して, 2月に最高に達し, 3月には急に降下する。<br> 6. 7月に於て総じて低位の屈折率を示すのは採取前日まで数日間連続雨天続きであつて,僅かな雨の晴間を見て採取した結果に基因するものであるが,これは一面同地方に於て同時期が最も旺盛な生長を行いつゝあることを示すものと認むべきである。<br> 7.屈折率が12月より2月の期間に累積的な増大を示すのは,同時期に於ては同地方の雨量は極めて少く,土壤水分減少し,地温も低いため,体内の水分は一層濃縮せられて養料も亦深費少く糖としての貯蔵せられた結果に基因するものと考えた。<br> 8. 品種による屈折率の月別変化の型を次の5種類に分類した。<br> 1. アカ型<br> 2.トサアカ,カラツキ,エダナガ型<br> 3.ガリン,ヒダリマキ型<br> 4.クロ,トサグロ,ハアラ型<br> 5.チリメントサ型<br> 6.メアサ型
著者
奥泉 久人
出版者
一般社団法人日本森林学会
雑誌
日本林學會誌 (ISSN:0021485X)
巻号頁・発行日
vol.75, no.4, pp.293-302, 1993-07-01
被引用文献数
2

九州地方のスギさし木在来品種は, 成立の古さ, 種苗の由来などによって7系統に分けられている。林木の遺伝育種の研究機関に育種母材料として集植されている7系統57品種計323個体の材料を用い, 各品種内の構成クローン数を調べた。アイソザイムは, ポリアクリルアミドゲル垂直平板電気泳動法で9酵素種, 12遺伝子座の分析を行った。3遺伝子座(Gdh, Got-2,Pgm-2)については変異がなく, 9遺伝子座(Shd-1,Shd-2,6Pg-1,6Pg-2,Dia-3,Mnr-1,Got-1,Lap, Aap-1)では, 複数の遺伝子型が検出された。これらのアイソザイムの遺伝子型の違いにより, クローンの識別を行った結果, メアサ系統の品種のうち, 2品種は複数クローン品種であった。また, ホンスギ系統, アヤスギ系統, ヤブクグリ系統, オビスギ系統, 在来実生由来系統, 吉野スギ由来系統に分類されているそれぞれ2,5,1,15,4,9の品種が, 少なくとも2〜8クローンから構成されている複数クローン品種であった。
著者
小出 良吉
出版者
THE JAPANESE FORESTRY SOCIETY
雑誌
日本林學會誌 (ISSN:0021485X)
巻号頁・発行日
vol.24, no.7, pp.356-368, 1942

一般に樹冠大なれば,大なる程,林木の直徑生長は大なるも,此の當然と思はるゝ法則にも相當數の例外ありて例外を例外として放置し得ず,樹冠小にして特に樹冠長小にして生長良好なる林木の天然に併も相當數存在する事は無節用材育成上看過し得ざるも,數的に樹冠と生長との間の關係を示めす概論的の數値も之れ無き今日,本報に於ては先づ樹冠と生長との一般關係を數的に示めすべく上賀茂試驗地ヒノキ枝打試驗區(植栽當初hr當り3,000本程度現在(調査當時)立木本數1,000本程度)に於て1939年(皇紀2599年調査當時林齡26年生)及び1942年(皇紀2602年調査當時林齡29年生)の毎木調査結果より,生長不良林木並生長良好林木の樹冠状態の差異及び林木生育經過中に於ける樹冠の變遷に就き2cmのAbrundungcmによる直徑級別平均數値より概論的に,樹冠の大きさを構成する樹冠長,樹冠半徑,樹冠占領面積並に樹冠容量と胸高直徑生長との一般的關係を示めしたるものである。<br> (1) 上賀茂試驗地一齊同齡林ヒノキ26年生時及び29年生時の調査結果よりすれば,2cmのAbrundungによる直徑級を一級上昇せしむる即ち胸高直徑2cmを増大せしめるに必要なる樹冠構成要素及び樹冠容量の差,次の如く85cmの總樹冠長 (Gesamtkronenlänge), (林内木の總樹冠長の差は98cm~107cmにして85cmなる數値は林内木,林縁木を通じての數値なり)23cmの樹冠半徑 (Radien bei der grötfton Kronen-breite), 2.8m<sup>2</sup>の樹冠占領面積 (Schirmfläche), 即ち12.7m<sup>3</sup>の總樹冠容量 (Gesamtkronenraum) の差にて胸高直徑2cmの差を生ずる事となる。<br> (2) 上賀茂試驗地一齊同齡林林内木の樹高,胸高直徑並に樹冠状態の標準木たるnr. 77(調査當時樹高9.80m,胸高直徑9.7cm,總樹冠長7.08m)の過去幼齡時より現在までの樹冠長の増大經過は,大約一年間に24.3cm程度にて又胸高直徑生長經過は大約4年間にて2cmを増大し居るを以て,胸高2cmを増大するに必要なる總樹冠長の増大數値は24.3cm×4=97.2cmとなり,此の數値は上述 (1) よりの一齊林林内木に於ける胸高直徑2cmを増大せしむるに必要なる樹冠長の差98cm~107cmと非常に近似す。<br> (3) 以上よりして上賀茂試驗地ヒノキ枝打試驗區に於ては幼齡時(7年生)より現在(29年生)までの間に於ては,2cmの胸高直徑を増大せしむるには大約1m程度の總樹冠長の増大の必要なるを示めす。<br> 以上之等の數値は,筆者の枝打に關する研究に參考となる諸種の意味を含む爲此處に枝打に關する研究第五報として載げたのである。
著者
高橋 邦秀
出版者
一般社団法人日本森林学会
雑誌
日本林學會誌 (ISSN:0021485X)
巻号頁・発行日
vol.85, no.1, 2003-02-16

北海道で編集をお引き受けして早くも3年がたってしまいました。編集委員会では当初,表紙デザイン,審査の促進,短報審査方法の改善などいくつかの課題を扱ってまいりました。これらの課題については会員,論文審査をお願いした方々,編集委員諸氏のご協力によってなんとかハードルを越えることができました。最後まで残っていたのが「特集」企画でした。この特集については,その目的,内容,他誌(とくに森林科学)との仕分け等について論議してまいりましたが,編集委員会としてはまだ明確な方針を示せるほど議論が煮詰まっておりません。しかし,特集の中身としては,1.境界領域研究,時代を先取りするような課題,既存分野についての問題提起などに関するレビューや論文数編からなるものとする,2.コーディネーターから企画書を提出していただき,編渠委員会で承認後,コーディネーターと担当編集委員に論文等の取りまとめや調整をお願いする,3.論文等については投稿規定に従い審査を行う,4.特集企画は年2回を目標とすることなどが,編集委員会で了承されています。当面はコーディネーターを編集委員からお願いし,掲載内容について会員諸氏のご意見をいただきながら,よりよいものにするように編集委員会として検討していきたいと考えています。第1回目の特集は「森林レクリエーション研究の展開」です。森林レクリエーションが多くの人々の意識には刷り込まれつつあると思いますが,研究としてどのような切り込みをしていくのか,本特集がこれからの研究展開の起爆剤となることを期待しております。2回目の85巻3号では「天然林施業に貢献する生態学」を予定しています。今後,特集内容を充実させ,会員拡大へも波及させることができるようテーマや内容を検討していきたいと思いますので,会員各位の積極的なご提案を編集委員にお寄せいただくようお願い致します。
著者
福田 健二 宝月 岱造 鈴木 和夫
出版者
日本林學會
雑誌
日本林学会誌 (ISSN:0021485X)
巻号頁・発行日
vol.74, no.4, pp.p289-299, 1992-07
被引用文献数
14

マツ材線虫病における病原性発現のメカニズムを明らかにするため, 病原性の異なる2系統のマツノザイセンチュウ(Bursaphelenchus xylophilus)と, ニセマツノザイセンチュウ(B. mucronatus)をクロマツ苗に接種し, 木部柔細胞の細胞学的変化と通導阻害(キャビテーション)とを時間的, 空間的に比較した。強病原性のS6-1系統を接種した場合, 木部放射組織柔細胞および軸方向柔細胞の脂質の消失, 細胞質の変性, およびそれらに続いて木部通導阻害が広範囲に生じ, 形成層が壊死して苗は枯死した。弱病原性のC14-5系統接種および非病原性のニセマツノザイセンチュウ接種では, 細胞生理の変化と通導阻害は形成層近傍を除く限られた範囲にのみ生じ, 葉の水分生理状態に変化はなかった。一方, キャビテーションを誘導するとされる蓚酸水溶液で処理した苗は, 広範囲に木部柔細胞の変性と通導阻害を生じ, 旧葉の変色, 当年枝の萎凋という, 材線虫病特有の病徴を現した。以上のことから, マツ材線虫病では木部柔細胞の変性, 通導阻害の順に病徴が進展し, 形成層の壊死と通導阻害が広く生じた場合に枯死にいたることが明らかにされた。
著者
沢田 満喜
出版者
日本森林学会
雑誌
日本林學會誌 (ISSN:0021485X)
巻号頁・発行日
vol.34, no.4, pp.110-113, 1952-04-25 (Released:2011-09-02)
参考文献数
2

Thelephoric acid was obtained from the fruitbodies of four species of Hydnum (H. aspratum BERK., H. graveolens FR., H. imbricatum (L.) Fr. and H. scabrosum FR.) and newly found from the fruit-bodies of two other genera, Polystictus and Cantharellus (Polystictus versicolor (L.) FR. and Cantharellus multiplex UNDERW.).
著者
清野 要
出版者
一般社団法人日本森林学会
雑誌
日本林學會誌 (ISSN:0021485X)
巻号頁・発行日
vol.20, no.2, pp.73-75, 1938-02-10
著者
市河 三英 小見山 章
出版者
一般社団法人日本森林学会
雑誌
日本林學會誌 (ISSN:0021485X)
巻号頁・発行日
vol.70, no.8, pp.337-343, 1988-08-01

御岳山の亜高山帯常緑針葉樹林で, 林内と形成後21年を経た林冠ギャップにおける稚樹の発生と死亡の過程を6年間追跡調査した。広葉樹は林内でも林冠ギャップでも毎年発生がみられた。シラベ(Abies veitchii LINDL), アオモリトドマツ(A.mariesii MASTERS), コメツガ(Tsuga diversifolia(MAXIM.)MASTERS), トウヒ(Picea jezoensis var.hondoensis(MAYR)REHDER)の各針葉樹の稚樹の発生年は同調していたが, 各々の種の発生数は大きな年次変動を示した。稚樹の死亡率は当年生から2年生にかけてが高かった。全齢個体群密度はこのため稚樹の発生年をピークに大きく変動した。稚樹の発生と死亡の過程は同じ種でも林内と林冠ギャップで異なっていた。林内のシラベ類とコメツガの個体群は個体の入れ替えを行いながら密度を平衡に保っていた。林冠ギャップのシラベ類とコメツガの個体群密度は6年間で増加の傾向を示した。今後, 林冠ギャップの林床の環境変化とともに, 各種稚樹の個体群密度や年齢構成も林内型へと変化していくものと考えられた。
著者
伊藤 優子 三浦 覚 加藤 正樹 吉永 秀一郎
出版者
一般社団法人日本森林学会
雑誌
日本林學會誌 (ISSN:0021485X)
巻号頁・発行日
vol.86, no.3, pp.275-278, 2004-08-16
被引用文献数
12

関東(一部東北を含む)・中部地方の1都12県において80地域,270地点の森林流域における渓流水のNO_3^-濃度を測定した。これらの調査地点におけるNO_3^-濃度は0.00〜8.45mg L^<-1>の範囲で,中央値は1.06mg L^<-1>であった。渓流水中のNO_3^-濃度は,関東平野周辺部において濃度の高い地点が分布する地理的な偏りが認められた。このような分布傾向は,従来から関東地方のいくつかの小流域でNO_3^-濃度が高いことが指摘されていることと調和的である。また,関東平野周辺部以外の愛知県でも局所的にNO_3^-濃度の高い地点が認められた。これらの地点は幹線道路や都市域周辺近傍に位置する。これらの結果から気候要因,地形的要因などの非人為的要因に加えて,大都市圏から排出される汚染大気の移流による森林流域への窒素の高負荷という人為的要因により,森林からのNO_3^-流出が増大していると考えられる。