著者
谷本 丈夫
出版者
一般社団法人日本森林学会
雑誌
日本林學會誌 (ISSN:0021485X)
巻号頁・発行日
vol.58, no.5, pp.155-160, 1976-05-25

前報に引き続き, アカマツ苗木の庇陰下での生長経過をしらべた。3月7日に処理を開始し6月9日, 7月27日, 9月13日と11月14日に苗を掘り取り幹, 根, 葉の量などを測定した。苗高は生長期の前半は処理による差は少なかった。後半の生長は冬芽の伸長によるものであるが, 弱い庇陰区ほど生長がよかった。地際直径は早い時期から弱い庇陰区ほど生長がよかった。当年の針葉の平均の長さと旧葉も含めた個体あたりの葉の合計の長さはともに庇陰区のほうが対照区よりも大きかった。それぞれが最大となる庇陰の程度を相対照度であらわすと, 針葉の平均の長さは6月9日57.7%, 7月27日56.6%, 9月13日と11月14日は40.0%, 個体あたりの葉の合計の長さはそれぞれ59.7%, 61.1%, 60.4%, 60.4%と計算された。庇陰処理の影響は苗の部分でちがい, 全重量に対する葉の重量比は6月9日に庇陰の程度が強いほど小さかったが, 7月27日, 9月13日には庇陰処理区内で最大となり, 11月14日には庇陰の程度が強いほど大きくなった。幹の重量比はどの時期とも庇陰の程度が強くなるほど増加した。根の重量比は幹と反対にどの時期も庇陰の程度が強くなるほど減少している。平均個体重, 葉重はどの時期も庇陰の程度が弱いほど生長がよかった。
著者
酒井 昭 石川 雅也
出版者
一般社団法人日本森林学会
雑誌
日本林學會誌 (ISSN:0021485X)
巻号頁・発行日
vol.61, no.1, pp.15-20, 1979-01-25

亜高山または亜寒帯性針葉樹の冬芽は-30〜-40℃の温度範囲で枝条原基のみが凍死することが知られている。このことは枝条原基がこの温度範囲まで過冷却後細胞内凍結をおこして死ぬ可能性を示している。このことを確かめるために, 針葉樹の冬の芽の示差熱分析を行なった。亜高山または亜寒帯性モミ属の冬芽は-5〜-8℃で外部芽鱗が凍結したのち, 枝条原基は約-30℃まで過冷却した。また, 芽から枝条原基, その直下にある厚角組織およびそれらの外側をとりまくうすい内部芽鱗をとり出し熱分析したところ, 枝条原基は約-30℃まで過冷却した。しかし, 開舒20日前の春の芽の枝条原基は-15℃までも過冷却しなかった。暖帯性モミ(A.firma)の冬芽の枝条原基は, その凍死温度である-20〜-22℃まで過冷却した。しかし, トウヒ属の冬芽では-5〜-8℃での外部芽鱗の凍結につづき, または少しおくれて枝条原基が凍った。カラマツ属の冬芽の示差熱分析では, 葉原基の凍結に由来すると思われる多数の小さい熱の放出が認められた。温帯性落葉広葉樹と異なり, 針葉樹の枝の木部では-30〜-40℃までの過冷却は認められなかった。
著者
柴草 良悦 木俣 聰彦
出版者
一般社団法人日本森林学会
雑誌
日本林學會誌 (ISSN:0021485X)
巻号頁・発行日
vol.58, no.11, pp.393-397, 1976-11-25

芽の内部構造の変化からトドマツの自発休眠の開始時期を調べ, また1975年11月7日(自発休眠中)と12月22日(他発休眠中)に採取したトドマツの芽の原基体をα-ナフタレン酢酸(NAA)を添加したMS培地で無菌的に培養して, NAAに対する生長反応から休眠の深さを洞察しようと試みた。自発休眠は, 葉原基およびクラウンの完成後, 9月中旬に始まると考えられる。12月22日に採取した芽の原基体の葉原基は, 11月7日に採取したものより盛んに発達し, また11月7日より12月22日においては, より低濃度のNAAで葉原基は発達した。また, 培養した芽の原基体の軸長は, 低濃度のNAAにおいてわずかに大きかった。クラウンの下部の切り口面より発達したカルスは, 11月7日と12月22日の間でその形成において差は認められなかったが, 両区とも高い濃度のNAAにおいてよかった。培養の際, 他発休眠中の芽の原基体は自発休眠中のものより, 軸や葉原基の上部の細胞伸長の点で, NAAに対する反応が著しかった。
著者
猪瀬 光雄
出版者
一般社団法人日本森林学会
雑誌
日本林學會誌 (ISSN:0021485X)
巻号頁・発行日
vol.65, no.6, pp.224-228, 1983-06-25
被引用文献数
1
著者
浅川 澄彦 猪熊 友康
出版者
一般社団法人日本森林学会
雑誌
日本林學會誌 (ISSN:0021485X)
巻号頁・発行日
vol.43, no.10, pp.331-335, 1961-10-25
被引用文献数
1

クロマツとアカエゾマツのタネについて, 発芽における光感性をしらべた。いずれのタネも, 赤色光の短時間(30分)照射によつていちじるしく発芽が促進される。このような光の效果は, 0.2%の硝酸カリによつて部分的におきかえられる。クロマツのタネの発芽は, くりかえし照射したほうがよく促進される。いずれのタネの場合にも, 赤色光による效果は赤外光照射によつてうちけされるが, その程度は, タネをまきつけてから赤色光をあてるまでの時間, および赤色光をあててから赤外光をあてるまでの時間によつてことなる。クロマツ・アカエゾマツのタネを冷処理すると, 発芽するのに光を必要としなくなることがしられているが, 冷処理されたタネには赤外光照射による阻害があらわれないから, 光化学反応を中心とした光感経路にかわりうるようなほかの経路が, 冷処理のあいだにすすんだものとかんがえることができる。クロマツとアカエゾマツのタネは, 冷処理をうけると光にたいしてちがった反応をしめすようになるが, そのうちでもっともいちじるしいものは, アカエゾマツの冷処理されたタネの場合で, 赤外光によってかえって発芽が促進されるようになる。
著者
梶原 幹弘
出版者
一般社団法人日本森林学会
雑誌
日本林學會誌 (ISSN:0021485X)
巻号頁・発行日
vol.71, no.2, pp.50-55, 1989-02-01
被引用文献数
4

現実の幹曲線が相似であれば完満度は等しいとみなし、現実の幹曲線を直径方向、樹高方向ともに樹高分の1に縮めた一種の相対幹曲線における直径の減少度を完満度と定義することを提案した。この相対幹曲線は正常相対幹曲線とこれに対応する形状比とに分解でき、前者の後者に対する商として与えられる。多くの伐倒木での測定値を用いて、スギ、ヒノキ、アカマツ、カラマツの同齢林における完満度の変化を調べた結果、次のことがわかった。1)幹の上部では完満度の経年変化は比較的小さかったが、一定の樹齢までは幹の下部で完満度が著しく大きくなった。2)高い度管理状態のものほど完満度が大きかった。3)スギにおける密度管理状態による完満度の差は、樹種間におけるそれよりも大きかった。4)完満度の垂直的変化のパターンには樹種間における差異が認められた。これらの結果からすると、ここに提案した完満度の定義と表現は実用的に有効であるといえる。
著者
櫛田 達矢 中島 敦司 永田 洋
出版者
一般社団法人日本森林学会
雑誌
日本林學會誌 (ISSN:0021485X)
巻号頁・発行日
vol.81, no.1, pp.57-64, 1999-02-16
参考文献数
24
被引用文献数
3

アカマツの冬芽内の葉原基の形成経過と日長反応性の関連から, 土用芽の発生要因を検討した。1年生苗を2月20日, 3月7,22日の各日からガラス室で加温処理した後, 5月22日に野外に搬出し, 主軸の先端に形成された冬芽の土用芽の発生状況を調査した。その結果, 早い時期から加温した個体ほど, より早い時期に冬芽内の節間が伸長し始め, 土用芽の発生率も高く, 二次伸長量も大きくなった。また, 3月6日から6月4日まで加温した処理区(加温区)と無加温区の冬芽を定期的に採取し, 冬芽内に形成された葉原基の数を解剖学的な方法で調べたところ, 加温区では冬芽内の節間で急激な伸長の認められた8月中に, 90以上の葉原基の形成が確認された。一方, 無加温区で90以上の葉原基が確認されたのは9月上旬の短日条件になってからであり, 節間の急激な伸長はみられなかった。以上の結果, アカマツの土用芽とは, 90〜100程度まで葉原基を形成した冬芽において, その内部の節間が野外の14時間以上の長日条件で伸長成長したものと考えられた。
著者
杉本 寿
出版者
一般社団法人日本森林学会
雑誌
日本林學會誌 (ISSN:0021485X)
巻号頁・発行日
vol.36, no.5, pp.140-142, 1954-05-25

この研究はROKUROSHI SYSTEMおよびROKUROSHI SETTLEMENTSを基礎とする, わが国山村の経済構造の研究である。ここにおいてはその結論と, 調査方法論を示すために近畿地方のTableを掲げることにした。ROKUROSHI SYSTEMを通じて, 全一てきに標記課題の研究調査を試みることについて, 学問てきには若干の疑問が観られ, 且つ論争が見られるであろう。しかしこの特異な山村民族の集団が, 全日本の地理てき領域に散在し, 優良な山村聚落を構成して居ることは, 日本山村の地域てき性格構造を正確に象徴する, 東北型とか九州型とも云うべき, 地方林業てき区域を最も端てきに指摘し得る, 都合の良いDataを現わして居るのである。著者は30年らい, この研究を通じて, わが国の山村経済構造の究明が, これ以外のDataによつては困難であることを科学てきに経験した。すなわちそれと云うのは, 学問てきに純粋な山村とは, 果して何れの村落をピツクアツプす可きであるか。同一種族ないしは尠くとも学問てきに比較検討し得べき, 同一基盤にたつ研究資料には, この資料以外には存在しないからである。しかしこれには以下の如き資材Dataの若干の欠陥が存在している。それは経済てきに恵まれ過ぎた山村の調査聚落数が欠けている事である。しかしそれは一面, 日本全国の平均値と云う意味においては, 若干の役割を果しても居るものである。また更に地方性, なかんづく北海道においては, 開拓事業を通じて資料が霧散〔すべての農業資料における共通性であるが〕し, 東北・関東・九州地方には資料の濃淡があり, そのfrequencyが相当大である事である。しかしこれらの事は, これらのFactが, この研究の為に存在するもので無い以上, やむを得ない事であらねばならない。Tableとしては, 日本全国のうち最も小さい単位領域である, 近畿地方だけを挙げる事にした。また印刷の制約により, 更に簡約にしたものが, このTableである。このTableにては簡易に過ぎ理解困難, または更に原表を必要とする方は, 中国地方のB原表が福井大学紀要に発表されるので, 著者あて申込まれたい。因みにA原表は, 江戸時代前後における, 山村の歴史地理てき統計実態表である。全国のB原表のみ近く某官庁より出版せられる予定である。
著者
大庭 喜八郎 村井 正文
出版者
一般社団法人日本森林学会
雑誌
日本林學會誌 (ISSN:0021485X)
巻号頁・発行日
vol.53, no.6, pp.177-180, 1971-06-25
被引用文献数
2

1962年に放射線育種場のガンマー線照射ほ場に定植された市販のスギ苗の中から劣性の白子遺伝子についてヘテロ接合型, 4個体, 淡緑色または黄緑色苗を生ずる劣性遺伝子についてヘテロ接合型, 2個体および両遺伝子について二重へテロ接合型, 1個体を発見した。この劣性遺伝子のホモ接合体は, 自然条件のもとでは発芽後間もなく枯死する。これらの劣性遺伝子はガンマー線照射によって生じたものとは考えられず, ヘテロ接合型の母樹から採種されたために, 劣性遺伝子が後代に伝達されたのであろう。ジベレリン処理により誘起した花を用い, 自殖を含む2カ年の交配試験により, 単一ヘテロ接合型苗は, 正常苗 : 白子苗または淡緑色苗を3 : 1の割合で分離した。一方, 白子は淡緑色に対し上位性があるため, 二重ヘテロ接合型苗は, 正常苗 : 白子苗 : 淡緑色苗が9 : 4 : 3の分離比をしめした。この劣性遺伝子とスギの1個体および2品種, すなわち, G-5,クモトオシならびにクマスギにおいて淡緑色苗を生ずる劣性遺伝子とは, いずれも相同ではなかった。
著者
本間 環 山口 五十磨 中嶋 正敏 室伏 旭 右田 一雄
出版者
一般社団法人日本森林学会
雑誌
日本林學會誌 (ISSN:0021485X)
巻号頁・発行日
vol.77, no.4, pp.358-365, 1995-07-01
被引用文献数
1

スギ(Cryptomeria japonica D. DON)の伸長成長および花芽形成は、他の針葉樹と同様にジベレリン(GAs)の投与によって促進される。このことは、これらの生理現象が内生GAsによって調節されている可能性をも示している。しかし、針葉樹の内生GAsに関する知見は少ない。これまでに、針葉樹の内生GAsの報告はマツ科の4種に限られている。一方、スギのジベレリン様物質は矮性イネ「短銀坊主」によるバイオアッセイにより確認されているものの、その同定は末だ報告されていない。本研究では、内生GAsとスギの生理学的および形態学的変化との関連を解明する研究の第一段階として、花粉に含まれる内生GAsの分析を行った。その結果、高速液体クロマトグラフィーにより精製した試料を「短銀坊主」によるバイオアッセイおよびエンザイムイムノアッセイ(ELISAs)を用いて分析し、GA_1および/またはGA_3、GA_4、GA_9、GA_<12>、GA_<15>の存在を推測した。それらのうちGA_9、GA_<12>およびGA_<15>をガスクロマトグラフィー質量分析(GC/MS)により同定した。しかしながら、ELISAによりその存在が示唆されたGA_1および/またはGA_3とGA_4については、含有量が少ないためにGC/MSあるいはGC/SIMのいずれにおいても同定することはできなかった。これらの結果から、スギの花粉にはearly-non-hydroxylation pathwayが主要な生合成経路として機能している可能性が示された。
著者
柴草 良悦
出版者
一般社団法人日本森林学会
雑誌
日本林學會誌 (ISSN:0021485X)
巻号頁・発行日
vol.54, no.6, pp.199-206, 1972-06-25

生長休止期の22〜23年生トドマツの葉を1970年1月19日と1971年3月5日の2回採取し, その中にある生長抑制物質を調べた。1.1970年1月19日のトドマツの葉においては, 酸性区分と中性区分にサリチル酸と推定される物質が存在する。また, 不確実ではあるが, 酸性区分に, p-オキシ安息香酸, バニリン酸, 中性区分にp-オキシ安息香酸と推定される物質が存在する。2.アベナ伸長試験において, 合成のサリチル酸は, 濃度1〜500ppmで抑制作用を示すが, 合成のp-オキシ安息香酸とバニリン酸は, 約1〜100ppmで促進作用を示す。生長抑制物質の種類によっては, 低濃度で生長促進作用を有することは注目される。3.1971年3月5日の葉においては, 酸性区分, 中性区分に多量の生長抑制物質が認められるが, 前実験で見られたフェノール化合物はなかった。生長休止期の生長抑制物質は, 質的にも変化していることが予想される。本実験の酸性区分の生長抑制物質について幾つかの実験を行ない, 以下のことがわかった。1)Rf0.50〜1.00の生長抑制物質(inhibitor-β)は, アベナ伸長試験において, 濃度を増すにつれて直線的に抑制作用が強くなる。しかし, Rf0.10〜0.50の生長抑制物質は, 低濃度では生長促進作用を示し, 高濃度では生長抑制作用を示す。2)inhibitor-βは, トドマツ苗木の秋伸びを抑制する作用がある。また, Rf0.10〜1.00の生長抑制物質も, エゾマツ種子の発芽を抑制する作用を有している。3)inhibitor-βと合成IAAの相互作用をアベナ伸長試験で調べた。IAAがinhibitor-βの強い抑制作用を弱めることはあまりできない。この事実から, 植物の休眠を破ったり生長を開始することは, IAAの増加より生長抑制物質の減少が関係するように考えられる。
著者
只木 良也 香川 照雄
出版者
一般社団法人日本森林学会
雑誌
日本林學會誌 (ISSN:0021485X)
巻号頁・発行日
vol.50, no.1, pp.7-13, 1968-01-25
被引用文献数
3

落葉枝量の季節変化を, 密生した若いコジイ林で3年間, ヒノキ壮齢林およびテーダマツの若い造林地で2年間調べた。受け取り面積0.5m^2のリタートラップを林内に設置して, その中に落ち込む落葉枝を, コジイ林の1年目は半月ごとに, その他では1月ごとに集め, 絶乾重を測定した。コジイ林では年間落葉量の1/3以上が4〜5月に落ちるのに対して, ヒノキ林やテーダマツ林での落葉のピークは秋である。しかし, 落葉量は台風時にはかなり多くなる。枝や球果の落下は, 年間を通じて不規則に起こるが, 台風や強風の時に大量に落下し, 落葉よりもこれらの影響をうけやすい。年間落葉量は, 台風が襲った年に平年より多くなり, その翌年には逆に少なくなる。コジイ林の年間落葉量と立木密度との間には年ごとにY-D効果が認められた。年間落葉量を冬期の林分葉量と比較すると, コジイ林では年間落葉量は林分葉量の40〜50%にあたり, ヒノキ林では30%, テーダマツ林では100%となる。これらから, 林分葉量の季節変化と, 葉の年齢構成を模式的に表わしてみた。
著者
陶山 佳久 中村 徹
出版者
一般社団法人日本森林学会
雑誌
日本林學會誌 (ISSN:0021485X)
巻号頁・発行日
vol.70, no.12, pp.510-517, 1988-12-01
被引用文献数
6

アカマツ林の遷移に関する基礎的情報を得ることを目的として, 林内相対照度の違う3林分内(7,15,27%)に発生したアカマツ当年生実生の発生, 発育, 死亡過程を調査した。発生は4月下旬に始まり, 2〜3週間後には発生頻度がピークに達し, 7月下旬には終了した。年間総発生本数は54,100〜99,400本/haに達した。林床の相対照度が低い2調査区では9月下旬までに全個体が死亡し, 相対照度が最も高い調査区では21%が冬期まで生存した。死亡要因はおもに動物害, 苗立枯病害, 乾燥害および被陰によるものであった。林内のアカマツ実生は被陰により発育を妨げられ, 発育初期段階で死亡する割合が大きく, 動物害と苗立枯病害は, 実生が初生葉を展開するまでに発生する重大な死亡要因であった。一方, 乾燥害によって死亡したとみなされた個体数は少なかった。
著者
柴草 良悦
出版者
一般社団法人日本森林学会
雑誌
日本林學會誌 (ISSN:0021485X)
巻号頁・発行日
vol.55, no.11, pp.341-345, 1973-11-25

生長休止期である1972年12月12日に採取した24年生トドマツ葉の生長抑制物質を調べた。その結果, アベナ伸長試験で強い抑制作用を有する生長抑制物質のひとつは, 薄層クロマトグラフィー, ガスクロマトグラフィーによって, アプサイシン酸であると試験的に同定された。
著者
古澤 仁美 宮西 裕美 金子 真司 日野 輝明
出版者
一般社団法人日本森林学会
雑誌
日本林學會誌 (ISSN:0021485X)
巻号頁・発行日
vol.85, no.4, pp.318-325, 2003-11-16
被引用文献数
20

ニホンジカによって林床のミヤコザサが強度の探食を受けている大台ヶ原の針広混交林において,シカ排除区とササ刈り区を設けてリターおよび土壌の移動量を測定した。移動した樹木葉と樹木枝は非ササ刈り区ではササ刈り区と比べて小さく,ミヤコザサにはこれらの移動を抑止する効果が認められた。ミヤコザサの地上部現存量とリターおよび土壌の移動量とは指数関数的な負の相関が認められた。シカ排除処理後3年間経過した区ではミヤコザサの地上部現存量は回復し,リターおよび土壌の移動量は他の広葉樹林で報告されている値と同程度であった。それに対してシカを排除しない対照区ではリターおよび土壌の移動量は他の広葉樹林の約1.2〜4.3倍であった。現在の大台ヶ原ではニホンジカによるミヤコザサの採食の影響でリターおよび土壌の移動量が増加していると示唆された。