著者
太田 岳史 福嶌 義宏 鈴木 雅一
出版者
一般社団法人日本森林学会
雑誌
日本林學會誌 (ISSN:0021485X)
巻号頁・発行日
vol.65, no.4, pp.125-134, 1983-04-25
被引用文献数
6

山腹斜面における雨水流出機構を明らかにするため, 琵琶湖南東部に位置する風化花崗岩山地内の山腹斜面に小ブロットを選定し, 人工降雨および自然降雨による雨水流出観測を行った。その結果, 以下の知見を得た。(1)雨水は, 基岩層まで浸透し, 基岩層上に形成される飽和層より流出する。実験範囲内で生じた表面流は, この飽和土層深が土層厚を越えたことによって生じた。(2)ハイドログラフが定常に達するまでに要する時間は, 降雨強度および初期流量の増加によって減少する傾向にある。(3)減水係数の最大値は, 降雨停止直後ではなく停止後10分から1時間の間に生じる。(4)降雨停止後30分間は実験に用いた降雨強度の増加につれて減水係数が増加する。しかし, その後はほぼ一定値をとりながら減少する。(5)雨水の流出過程を, 基岩までの浸透過程と飽和側方流過程の2過程に分け, 前者に一次元鉛直不飽和浸透, 後者に飽和ダルシー流を用いるモデルによってシミュレーションを行ったところ, 観測ハイドログラフならびに(2)から(4)の傾向を再現することができた。
著者
服部 重昭
出版者
一般社団法人日本森林学会
雑誌
日本林學會誌 (ISSN:0021485X)
巻号頁・発行日
vol.65, no.1, pp.9-16, 1983-01-25
被引用文献数
7

茨城県笠間営林署管内の閉鎖したヒノキ人工林で, 1980年1年間にわたり地面蒸発量の測定を行い, その動態を林地の水・熱環境から考察した。蒸発面を形成するA_0層の乾物重量は9.3ton/haで, その最大保持水量は2.1mmであった。A_0層は降雨後2日でほとんど乾燥し, 土壌層からの蒸発を早い時点から抑えることがわかった。林内純放射量は林外純放射量の約15%に相当し, 年総量では160.7mmに達した。一方, 林地面における熱の出入りは, 1〜3月と9〜12月が放熱期, 4〜8月が貯熱期となる周期変化を示し, 秋〜冬期には地中貯熱量が蒸発現象の熱源になりうることがわかった。年地面蒸発量は137.2mmで, これは年降雨量の8.9%, 年有効放射量の84%に相当した。また, その季節変化をみると, 1〜9月には地面蒸発量/有効放射量が1.0以下であるが, 10〜12月ではそれが1.0を上回り, 有効放射量より大きな地面蒸発量が観測された。これには, 地面蒸発計内外の水・熱環境の違いが影響していると考えられる。そして, 測定された地面蒸発量は実地面蒸発量より, いくぶん過大であると考察された。
著者
太田 猛彦 塚本 良則 比留間 雅紀
出版者
一般社団法人日本森林学会
雑誌
日本林學會誌 (ISSN:0021485X)
巻号頁・発行日
vol.67, no.8, pp.311-321, 1985-08-25
被引用文献数
6

自然斜面における雨水移動機構とそれに及ぼす基盤地質の影響を解明するため, 新第三紀以降の地層が水平に重なる多摩丘陵に試験斜面を設け, 土層中の水分変化を観測した。観測地点は斜面頂部から谷底まで密に配置され, 精度の高い系統的観測が行われた。各観測地点での水理水頭プロファイルの時間的変化と観測井戸内の水位変動を解析して, 丘陵性自然林地斜面での降雨の鉛直浸透特性に関して以下の知見を得た。1)多摩ローム層に覆われた頂部では土層が厚く地下水面の低い場合のローム層中で一般にみられる浸透特性を示した。2)中腹の急傾斜部ではぬれ前線の降下傾向, 飽和帯の形成位置, 井戸水位の変動速度等に基盤地質の影響が強く認められ, それらは単純な「表層土厚と基岩」の関係では説明しえない。3)斜面下部では崖すい性堆積物中の能率のよい排水機構の存在が示唆された。4)各部位は相互に関連しており, 側方浸透流を考慮した二次元的解析の必要性が指摘された。
著者
榊原 茂樹
出版者
一般社団法人日本森林学会
雑誌
日本林學會誌 (ISSN:0021485X)
巻号頁・発行日
vol.71, no.2, pp.41-49, 1989-02-01
被引用文献数
6

北海道大学苫小牧演習林において、動物によるイチイの種子散布機構を明らかにするため、種子の生産と消費について2本の調査木(I、II)を対象にして調査した。調査木Iでは36,628個の種子が、またIIでは2,785個の種子が生産された。生産された種子は、樹上では鳥類により(調査木Iで73%、IIで46%)、地上ではネズミ類により(Iでは14%、IIで34%)高い比率で消費されたが、全生産量の約5%はヤマガラの貯食行動により散布された。この5%のうち、37%は樹皮の裂目や針葉の間などの樹上に貯食され、63%が地上に貯食された。地上での貯蔵の多くは、樹木の根際や急斜面などの比較的特定の場所に集中して行われた。これらの貯食場所はイチイ稚樹の更新場所とほぼ一致していた。さらに、種子の散布距離の頻度と稚樹の分布との間には密接な関係がみられた。これらの結果から、ヤマガラによるイチイ種子の貯食散布がイチイの分散と更新にとって重要な意味をもつと考えられた。ヤマガラ以外の動物も含めて、イチイとその種子散布者の相互関係について論じた
著者
中根 周歩 山崎 裕実 根平 邦人 福岡 義隆
出版者
一般社団法人日本森林学会
雑誌
日本林學會誌 (ISSN:0021485X)
巻号頁・発行日
vol.70, no.3, pp.111-118, 1988-03-01
被引用文献数
3

最近2年以内に山火事が発生した, 広島県芸南地方の宮島等の5カ所で, 1986年4〜11月に, 焼止まり線(山火事の延焼が止まつている部分)の植生およびその構造を各層(I〜IV層)の植生とその被度(5段階)によってタイプ分けし, 全焼止まり線と地表火跡地の林分を類別化した。また, 焼止まり線の地形を調べるとともに, 出火時の気象も考察した。山火事の発生しやすい気象条件として実効湿度とともに土壌含水率を目安とするとよいことがわかった。一方, 全焼止まり線のうち, 85%が森林で, 残りの15%が川, 道路や農耕地であった。焼止まり線になっている林分の98%はシダ(コシダやウラジロ)の植被率(C_S)は25%以下, さらに同林分の94%はI〜III層の被度の合計(C_H)に占めるアカマツ・スギの被度の割合が30%以下であった。また, 地表火跡地でもC_Sが25%以下であったが, A_O層中のアカマツ葉の割合が高く, そのため地表を火が走ったものと思われた。地形的には焼止まり線は谷部が最も多い(56%)が, 尾根や斜面上部(合計24%)でも見られた。さらには, 焼止まり線はこれらどの地形でも常緑広葉樹が優先する林分の頻度が高かった。
著者
岩川 治
出版者
一般社団法人日本森林学会
雑誌
日本林學會誌 (ISSN:0021485X)
巻号頁・発行日
vol.47, no.8, pp.255-262, 1965-08-25

林道路面の良否は一般に、(1)路面上のデコボコの多少、(2)車輌の乗心地の良否などを基にした直感判断で行なわれることが多い。したがって、林道のごとき悪路については、その良否にある基準を与える研究も、またその方法も現在確立されていない。筆者はこうした現状において、林道路面に対する研究の必要性とともに、まず路面の良否に(悪路の程度に)科学的な根拠を与えていくことの重要性を考え、林道路面の良否判定法の研究に着手した。これに対する具体的な方法および判定法の尺度として考えられる振動加速度の測定条件との関係について、これら一連の研究はReportNo.1〜8)で、すでに発表を重ねてきた。本論文は以下にのべるように、筆者の目的とする研究に実験的な根拠を与えるものとしてとりまとめたものであり、つぎの2つの仮定を出発点としている。すなわち、1)われわれがトラックで林道を走行する場合、、ばしば大きな振動を感じるが、同じ車輌でも舗装路面上ではきわめて振動が小さく、乗心地もまたよい。この相違は、両者の路面の質の相違によるものであると考えられる。換言すれば、路面の質(形状、状態)と車輌の振動には密接な関係がありそうである。2)デコボコ路面を走行する場合、振動に基因する衝撃荷重の大きさは路面の良否(とくにデコボコの大きさ)に関係がありそうである。このことは理論的に導きうる。以上の仮定にたって、筆者は、路面上のデコボコの大きさ(サイズの大きさ)および路面の各種の状態(Tables1〜3)と振動加速度(衝撃荷重)との関係を実験をもとにして考察し、つぎの結果をうることができた。(1)車輌の片車輪が路面上の1箇の穴を乗越えるとき、および左右両車輪が同時に2箇の穴を通過するとき、車輌に生ずる上下方向の振動加速度(g_v)は路面上の穴の大きさ、とくに穴の深さに比例して増大する(Table1)。(2)車輌が路面上のいくつかの穴を連続して乗越えるとき(前後の穴から影響をうけるとき)、単一の穴を乗越えるときよりもg_vの値は相対的に大きくなる。(3)同路面でも、デコボコの補修前と補修後(例えば凹部に土砂を入れる)では振動加速度値に大きな相違が生ずる(Table3、後者が小さくなる)。(4)ヌカルミ林道では、車輌通過により轍、穴を生じやすく、そのデコボコによる振動が非常に大きくなる。これは(1)と共通。(5)砕石のある路面では、砕石の大小が大いに関係を有し、木橋上轍部に板張を施した板張路面上での振動加速度はきわめて小さくなり、舗装的効果を期待できる(Table3)。以上の結果から、筆者は上記の2つの仮定が実験的に立証されることを示し、さらに、振動加速度を尺度として路面の良否を決めうること(ここでは路面の良否をつぎのように解する : 車輌に対して大きな振動衝撃荷重を生ぜしめる路上ほど悪路という評価をする、もちろん測定条件は一定)および、さきに述べた路面の良否に対する直感的判断に1つの科学的な根拠を与えうることを述べた。なお第5章では、振動加速度の測定にさいして、車輌の運転者、路線勾配などをいかに取扱うべきかについて論議し、これをつけ加えた。
著者
末田 達彦 纐纈 伸二
出版者
一般社団法人日本森林学会
雑誌
日本林學會誌 (ISSN:0021485X)
巻号頁・発行日
vol.66, no.10, pp.402-411, 1984-10-25

前報にひきつづき3種の理論的生長曲線, MITSCHERLICH式, Logistic式, GOMPERTZ式をバンクスマツ(Pinus banksiana LAMB.)349個体の胸高半径生長にあてはめ, 各曲線の理論的妥当性, あてはめの難易, あてはまりの良否を検討した。前報のシロトウヒの場合と同様, いずれの理論式も, あてはめによって得られる係数の値と理論から考えて妥当と思われる値の間に食違いを示したが, この矛盾はMITSCHERLICH式においてもっとも穏やかで, Logistic式においてもっとも顕著であった。あてはめの難易, あてはまりの良否についてもMITSCHERLICH式がもっとも優れており, ついでGOMPERTZ式, Logistic式の順となった。以上の結果は前報のシロトウヒの場合とほぼ同じであるが, これは各曲線の特性を反映しているものとみてよい。一部に曲線間の順位に逆転があるが, これは陽樹バンクスマツと陰樹シロトウヒの差異によるものと考えられる。本報および前報の結果を合わせ, 樹幹半径の生長を表わすには, 理論的にも現実的にもMITSCHERLICH式がもっとも優れているという暫定的結論を得た。
著者
橋本 良二 山口 礼子 佐藤 典生
出版者
一般社団法人日本森林学会
雑誌
日本林學會誌 (ISSN:0021485X)
巻号頁・発行日
vol.81, no.3, pp.169-177, 1999-08-16

岩手県鴬宿地方のミズナラ-ヒバ林におけるヒバ稚樹の伏条繁殖クランプの出現状態とその更新パターンについて, アイソザイム変異をもとに検討した。変異分析は5酵素種6遺伝子座によりなされ, 全サンプルを通じて66種類のMLG(multilocうs genotype)を得た。尾根部の稚樹のMLGグループでは, 同一MLGの稚樹がランダム分布するグループと集中分布するグループがあった。斜面部では, 同一MLGの稚樹が集中分布するグループがほとんどすべてであり, 伏条繁殖クランプが分布の単位になっていると考えた。斜面部の立木についても, 同一MLGの立木が数本ずつまとまって分布するグループが多かった。しかし, 同一MLGの立木と稚樹との間には, 明らかな分布重なり合いは認められなかった。これらの結果から, 斜面部林分でのヒバの更新には伏条繁殖クランプが大きく関与したことは明らかで, 更新過程ではクランプ内のごく小数の稚樹が立木へと成長し残りはすべて枯死するパターンが多かったと考えた。
著者
徳地 直子 黒田 幸夫 岩坪 五郎
出版者
一般社団法人日本森林学会
雑誌
日本林學會誌 (ISSN:0021485X)
巻号頁・発行日
vol.73, no.2, pp.135-144, 1991-03-01
被引用文献数
6

スギ人工林を主とする小集水域試験地において, 鉛直方向の水の流れに沿って降水・林内雨水・土壌水・湧水・渓流水の質的・量的な変動を測定した。森林土壌に7種類の長さをもつパイプを垂直に挿入して低部からの流出水を土壌水として3年間継続的に採取した。冬期季節風の影響で, 降水・林内雨でCl-濃度が上昇した。スペクトル解析によりCl^-濃度の変動の土壌下層への移動が確かめられ, 各層における濃度変動の時間的ずれから求められたCl^-の移動速度は0.15〜0.39cm/dayであった。土壌下層ほどCl^-濃度のやまは低くなり, やまのすそは広がった。Cl^-の移動速度と濃度変動が移動する期間の流出土壌水量より求めた土壌水の平均移動速度は0,28〜1.06cm/dayでCl^-より速かった。Na^+はCl^-とともに林地に供給され, Na^+濃度も表層では季節変動を示したが, 下層では土壌コロイドヘの吸着や溶脱のため季節変動は不明瞭になった。渓流水では, 流出経路の異なる成分が混ざり合うため, 季節変動は不明瞭であった。
著者
丹下 健 金 坂基 佐々木 惠彦
出版者
一般社団法人日本森林学会
雑誌
日本林學會誌 (ISSN:0021485X)
巻号頁・発行日
vol.76, no.2, pp.138-143, 1994-03-01

マツ材線虫病の進展過程におけるアカマツ成木の幹木部組織活性の変化を明らかにするために、枯死木の肥大成長停止時期の推定と自然感染によって枯死に至った立木の幹木部呼吸速度の変化を調べた。マツ材線虫病による枯死が毎年発生しているアカマツ林を調査地とした。枯死木の年輪解析から、肥大成長の停止は春材形成から夏材形成へ移行する時期と推定された。8月下旬にすべての針葉が褐変し枯死した供試木の呼吸速度は、7月下旬から減少し始めた。それ以前は、枯死しなかった供試木の呼吸速度と違いがなく、傷害呼吸による呼吸速度の増加はみられなかった。年越し枯れを起こした供試木の呼吸速度は、枯死する約1ヵ月前の5月下旬の時点ですでに他の供試木の呼吸速度の約50%に低下し、その後も減少傾向にあった。マツ材線虫病で枯死した供試木および枝条中にマツノザイセンチュウの存在が確認された供試木では、葉色等に異常がなく、測定部位の幹木部呼吸速度も低下していない時点で、日中に気温の上昇にともなう幹木部呼吸速度の上昇がみられ、すでに樹冠部で通水阻害が生じ、樹液流速度の減少が起こっていると推定された。
著者
黒岩 菊郎 吉野 連一 高橋 五良
出版者
一般社団法人日本森林学会
雑誌
日本林學會誌 (ISSN:0021485X)
巻号頁・発行日
vol.40, no.4, pp.139-145, 1958-04-25
被引用文献数
1

われわれは東京農工大学農学部校庭(東京都府中市)にある2本のキリの半径の日変化を, 前報に示した鏡成長計によつてはかり, 4月から11月までの成長期間中28回の観測を行つた。拡大の倍率は約14,000倍であつた。1. 2本の木はほとんど平行的にその半径を常に変えている。2. 夜間の曲線はなめらかであるが, 昼間はでこぼこが多い。3. 日の出の頃肥大はおとろえ, 午前中に極大に達し, 急に縮小しはじめ, 極小になるのは午後3時前が多く, 上昇しはじめるのは午後3時ごろである。4. 曲線の形は温度曲線と似ている。5. 曲線の形は0時を基点とすれば, 晴天の日はN字形, 雨天は直線形, 曇りの日はこの中間で階段状をなすものといえる。6. 曲線のでこぼこはすべて水分の変動によるもので真の肥大成長は昼夜の別なく一様に進んでいると思われる。7. 昼間の細かい曲線のでこぼこは陽光の強さと密接な関係があり, 陽光があれば幹はちぢみ, 弱まると肥大しはじめる。この反応は10分以内にあらわれ, このための変動の量は約10 μ程度である。8. 成長期間中の日成長量はその日の平均気温(最高, 最低の平均)との間にかなり高い相関関係が認められた。雨量との間の関係は明らかでない。
著者
西本 哲昭 塩崎 正雄 山本 肇 石塚 和裕
出版者
一般社団法人日本森林学会
雑誌
日本林學會誌 (ISSN:0021485X)
巻号頁・発行日
vol.64, no.7, pp.257-265, 1982-07-25

1977〜1978年の有珠山噴火によって林地に堆積した噴出物と, それによって埋没した林地土壌が時間の経過とともにどのように変化していくかを, 5か所に固定調査地を設けて3年間にわたって調査した。1)一般に噴出物に含まれる水溶性成分は時間とともに減っていき, 埋没土壌では一度増加したあとで減少に向かう。すたわち, 上層から下層への流下が考えられる。その速さは陽イオンについてはNa>K・Mg>Caで, 陰イオンについてはCl>SO_4である。2)埋没土壌のECが一時的に増加したが, その値は1m mho/cmを越えることはなく, 森林への影響は考えられない。3)噴出物のpHは初め7〜8であったが, しだいに低下して4〜7になった。埋没土壌への影響は小さかった。4)噴出物のリン酸は, より難溶性へと変化した。5)噴出物層の細菌数は埋没土壌での値に近かったが, 放線菌と糸状菌数はきわめて少なかった。埋没土壌での微生物相の変化は初期にのみ認められた。6)噴出物の厚さに比例して土壌のガス拡散が抑制されており, 林木の根が呼吸障害を起こしている可能性がある。
著者
鈴木 雅一
出版者
一般社団法人日本森林学会
雑誌
日本林學會誌 (ISSN:0021485X)
巻号頁・発行日
vol.67, no.4, pp.115-125, 1985-04-25
被引用文献数
18

長期間にわたって水収支観測がなされている日本各地の森林流域の記録をもとに, 短期水収支法を用いて流域の蒸発散量とその季節変化を求めた。検討には桐生, 川向, 竜の口山, 釜淵, 去川の5試験地, 9流域のそれぞれ10年から40年間の日雨量, 日流出量記録が用いられた。短期水収支法では, 渇水による蒸発散低下は水収支期間内の最小流量に対応して生じ, 蒸発散低下をもたらす限界流量が流域ごとに定められた。渇水による蒸発低下の例を除外して求めた蒸発散量季節変化は, 植生が著しく変わらないとき集計期間が異なってもほぼ同様の結果となった。森林の伐採や山火事によって蒸発散量が減少する傾向は各流域とも同様であるが, その変化が通年にわたり生じた流域とおもに夏期に生じた流域があった。求められた蒸発散量とその季節変化は各流域の気象, 植生を反映する値として, 森林流域の蒸発散量推定式作成の基礎資料になるといえる。
著者
佐藤 清左衛門
出版者
一般社団法人日本森林学会
雑誌
日本林學會誌 (ISSN:0021485X)
巻号頁・発行日
vol.42, no.8, pp.298-304, 1960-08-25

1. ヨーロツパアカマツとヨーロツパトウヒの稚苗で1月30日から11月24日まで約10ヵ月間肥料3要素と長日処理の効果を検討した。2. 3要素試験は佐藤・武藤氏培養液で砂耕法によつて試験し, 長日処理は1月30日から4月8日まで室内で昼間補光を含めて約18時間処理し, 5月21日からはガラス室で自然日長より5時間日照時間を延長する方法をとつた。3. 3要素試験の結果, 窒素, 燐酸の欠亡は生育に悪影響を及ぼし, 無肥料とほとんど変りがなかつたが, 加里欠亡の影響はほとんど認められなかつた。そして要素欠亡の影響はヨーロツパアカマツで強く現われ, 窒素, 燐酸欠亡区の重量は, 完全区, 加里欠亡区の約1/7(自然日長区)〜1/10(長日区)であり, ヨーロツパトウヒの場合はそれほど強くなく, 約2/3(自然日長区)〜4/9(長日区)であつた。4. ヨーロツパアカマツ, ヨーロツパトウヒともに自然日長区の加里欠亡区が完全栄養区より重量の上回つている原因はよくわからない。5. 長日処理すれば両樹種とも完全栄養区の生長は促進するが他の要素欠亡区はほとんど促進しなかつた。促進効果はヨーロツパアカマツよりもヨーロツパトウヒの場合に著しく, アカマツの場合は茎の生長を73%促進し, トウヒでは茎を160%促進し, とくに根の生長を213%促進したのは注目される。6. 長日の効果に強く影響する肥料要素は窒素と加里で, 燐酸はややすくないようである。
著者
西村 正史
出版者
一般社団法人日本森林学会
雑誌
日本林學會誌 (ISSN:0021485X)
巻号頁・発行日
vol.55, no.3, pp.100-104, 1973-03-25
被引用文献数
4

1971,1972の両年, マツノマダラカミキリ成虫の行動の日周性を中心に連続観察したが, その結果はつぎのとおりである。1.後食, 交尾, 飛翔, 産卵, 歩行活動は照度が0である夜8時から明け方4時もしくは5時までに集中しており, 明らかに夜間活動型の昆虫である。ただし, 後食活動は昼間にもかなり観察された。2.羽化脱出後の経過日数に伴って, 歩行, 交尾活動および後食, 歩行活動している雌雄の割合が変化するが, 後食活動に関してはあまり変化しない。3.活動に影響を与える要因のうち, 温度は最も重要な要因の一つである。
著者
末田 達彦 梅村 武夫
出版者
一般社団法人日本森林学会
雑誌
日本林學會誌 (ISSN:0021485X)
巻号頁・発行日
vol.62, no.12, pp.459-464, 1980-12-25

2種類の理論的樹高曲線を誘導した。第1の樹高曲線は林木の樹高生長および直径生長がともに時間に関するミッチャーリッヒ式に従うと仮定したときに得られるもので, 異齢林の樹高曲線を与える。第2の樹高曲線は同齢林のそれを表わすもので, 単純同齢林を構成する個々の林木の樹高および直径の生長が, 各林木の生育環境条件に対し, 収量逓減の法則に従い反応するという仮説より導かれるものである。これら2種類の樹高曲線の数学的表現形式はまったく同じであるが, それぞれの式の意味, したがって係数の生物学的な意味は異なる。
著者
中島 敦司 永田 洋
出版者
一般社団法人日本森林学会
雑誌
日本林學會誌 (ISSN:0021485X)
巻号頁・発行日
vol.77, no.3, pp.254-259, 1995-05-01
被引用文献数
3

サザンカの開花に及ぼす温度の影響を調べる目的で、4年生のサザンカをフラッシュ開始直後の5月10日から、25℃恒温(18時間日長)のグロースチャンバーに搬入し0、15、30、45、60、75、90、105、120ならびに135日間置き、その後18℃恒温(18時間日長)のチャンバーへ移動させたところ、いずれの処理区でも花芽は同じように形成されたが、25℃が90日間以上の処理区で開花率が高くなった。一方、供試植物を5月10日に18℃のチャンバーに搬入し、5月24日、6月9日、6月24日、7月9日から、25℃のチャンバーに、それぞれ15、30、45ならびに60日間ずつ置き、その後、再び18℃のチャンバーに戻す実験を行ったところ、7月初旬から8月初旬までの期間、25℃に置かれていないと開花率が低下した。そして、雄ずい、雌ずいの発達と開花率の間には正の相関関係が認められ、7月上句から8月下句の時期のなかで、15日間は25℃を経過しないと、これら生殖器官は発達しなかった。また、18℃と25℃におかれた供試植物については、花芽の形成時期などに違いが示されなかったが、5月10日から10℃恒温のチャンバーで育成したところ、花芽がまったく形成されなかった。さらに、10℃では、8月中旬に87.1%の頂芽が二次成長(土用芽)を示した。なお、土用芽は、他のいくつかの温度条件下でもみられたが、発生割合は低く(5%未満)、いずれも花芽の形成されなかった頂芽においてのみ認められた。
著者
野堀 嘉裕 永田 義明 法島 良治 戸巻 邦男 幸田 秀穂 千葉 茂
出版者
一般社団法人日本森林学会
雑誌
日本林學會誌 (ISSN:0021485X)
巻号頁・発行日
vol.73, no.5, pp.339-343, 1991-09-01
被引用文献数
2

アカエゾマツは北海道の主要造林樹種であるが, 材の性質に関する基礎的データは現時点ではわずかである。材の性質が明らかとなれば造林, 間伐など人工林施業の計画を有利に推進, 実行することができる。本研究では軟X線デンシトメトリーを用い, アカエゾマツ造林木の容積密度数に関する基礎的データを示した。その結果, アカエゾマツ樹幹の容積密度数の分布は均質であり, 容積密度数を高める要因は早材部の容積密度数と晩材率が同時に影響することがわかった。また, 早材部容積密度数は遺伝的要因に直接的に支配されるが, 晩材率は間接的に直径成長の影響を受けることがわかった。これらのことから, 早材部の容積密度数が高いクローンを造林すれば, 重い材が短期間に収穫できる可能性がある。
著者
古川 忠
出版者
一般社団法人日本森林学会
雑誌
日本林學會誌 (ISSN:0021485X)
巻号頁・発行日
vol.48, no.4, pp.158-162, 1966-04-25

昭和3年にカラマツの産地別試験地が長野営林局塩野苗畑に設定されたが, 昭和34年の伊勢湾台風でその一部が倒れた。そこで2,3種類のカラマツを試験材料にえらび各種類毎に大中小径木から最下部円板を取り, 樹皮側から5年輪おきに分割し, そこに含まれる無機養分濃度を測定した。(1)窒素の濃度 : 八ケ岳産カラマツの樹皮では大径木より小径木に窒素の濃度は高くなる傾向がみられるが, チョウセンカラマツおよび未詳種カラマツでははっきりした傾向はみられない。木部の辺材部では各樹種とも小径木に高くなる傾向がみられるが, 心材部では大小径木の間にほとんど差がみられない。またこれを樹種別に比較した場合, チョウセンカラマツおよび未詳種カラマツは八ケ岳産カラマツより高い傾向がみられる。(2)燐酸の濃度 : 八ケ岳産カラマツでは樹皮, 木部とも大小径木間に差はみられないが, チョウセンカラマツおよび未詳種カラヤツでは小径木にやや高い傾向がみられる。なお心材部における燐酸の濃度は非常に低い。(3)加里の濃度 : 各樹種とも樹皮および辺材部において大径木にやや高い傾向がみられるが, 心材部でははっきりした差はみられない。樹種別による差もわずか未詳種カラマツに高い程度で大きなちがいはないようである。(4)石灰の濃度 : 樹皮では大小径木間にはつきりした差はみられないが, 木部では明らかに小径木間にはつきりした差はみられないが, 木部では明らかに小径木に高い傾向がみられる。樹種別にみた場合, チョウセンカラマツおよび未詳種カラマツは八ケ岳産カラマツに比較して著しく高いことがわかる。カラマツの幹に含まれる無機養分について筆者はこれまでに1,2測定したことがあるが今回は長野営林局管内塩野苗畑にあるカラマツの産地別試験地から材料を取ることができたので, それらの幹に蓄積する無機養分濃度について報告する。木に高い傾向がみられる。樹種別にみた場合, チョウセンカラマツおよび未詳種カラマツは八ケ岳産カラマツに比較して著しく高いことがわかる。