著者
猪熊 友康 浅川 澄彦
出版者
一般社団法人日本森林学会
雑誌
日本林學會誌 (ISSN:0021485X)
巻号頁・発行日
vol.43, no.5, pp.166-168, 1961-05-25
被引用文献数
1

温度条件と光条件をくみあわせて, クロエゾマツとアカエゾマツのタネの発芽特性をしらべた。すでにしられていたように, これらのタネの発芽反応は, 温度条件によつていちじるしく影響されないが, クロエゾマツのほうがややひくい温度で発芽する。無処理のアカエゾマツのタネのおよそ半分は, 発芽するのに光を必要とするが, その性質は冷処理によって次第によわめられる。一方クロエゾマツのタネは, 暗黒条件でも光をあてた場合とほとんどおなじように発芽する。
著者
安藤 愛次
出版者
一般社団法人日本森林学会
雑誌
日本林學會誌 (ISSN:0021485X)
巻号頁・発行日
vol.42, no.7, pp.265-268, 1960-07-25

6月から8月にかけて, 5日ごとにニホンギリの伸びをはかり, そのときの気象条件との相関性をしらべた。くらべた気象の因子は日平均気温, 最高, 最低気温, 降水量および雲量とである。相関関係のみとめられた因子は気温, ことに平均, 最高気温であり, キリの伸びと降水量および雲量との相関性はみとめられなかつた。伸びの量と気温との回帰式から, この地方の台切りしたキリの上長生長において, 日平均の気温が1℃たかいときには13cmおおくのびて2.6mとなることが推定された。
著者
金沢 洋一 清野 嘉之 藤森 隆郎 加茂 皓一
出版者
一般社団法人日本森林学会
雑誌
日本林學會誌 (ISSN:0021485X)
巻号頁・発行日
vol.66, no.5, pp.167-173, 1984-05-25

苗畑で育てたケヤキ9年生林分を用い, ほぼ月1回の調査によってその地上部現存量の季節変化を追跡した。葉量は5月下旬に一度ピークに達したのちやや減少し, 8月下旬に再び増加した。二度目の増加は土用芽によるものと考えられる。葉面積は5月下旬の最大葉面積指数7.7をピークにあとは連続的に減少し, 8月に再びふえることはなかった。各時期別地上部全増加量は4〜5月を最大に7〜8月に一時増加したものの, しだいに減少の傾向をたどり, 9月以降マイナスとなった。同化産物の葉への分配がみられた時期は4〜5月, 6〜9月だったが, 5〜6月には認められなかった。地上部非同化器官への分配は5〜6月に最大となったのち減少し, 10月以降マイナスになった。年間純生産量について, 生育期間中の乾物の増加量から求めた値と生育終了後の樹幹解析によって求めた値は, 根を含めて100m^2あたりそれぞれ140kgと155kgになった。
著者
岸原 信義
出版者
一般社団法人日本森林学会
雑誌
日本林學會誌 (ISSN:0021485X)
巻号頁・発行日
vol.60, no.8, pp.298-307, 1978-08-25

気象庁統計課は確率日雨量について, 横軸に年最大日雨量, 縦軸にR.P.をプロットしてR.P.曲線を描き, そのタイプ分類をし検討した結果, 極値飛び出し型であるF型では, 小河原を除いて既応の推定法では実測値との間に大差が生じ, これらの推定法に重大な問題点があることを指摘した。本論ではこの検討をさらに進め, R.P.曲線の型の分布, 特性等を明らかにし, 既応の推定法が有効でないとの結論に達した。さらに夏期降水量と年最大日雨量の平均値, 標準偏差ならびに確率日雨量との関連を調べて, 夏期降水量と確率日雨量に関するモデルを作った。そのモデルに基づいて, 夏期降水量とR.P.曲線による確率日雨量の推定値を片対数方眼紙にプロットし, その包絡線で確率日雨量を推定する方法を提案した。
著者
久保 満佐子 島野 光司 崎尾 均 大野 啓一
出版者
一般社団法人日本森林学会
雑誌
日本林學會誌 (ISSN:0021485X)
巻号頁・発行日
vol.82, no.4, pp.349-354, 2000-11-16
参考文献数
19
被引用文献数
7

渓畔林においてカツラの発生サイトおよび実生の定着条件を, 共存種であるシオジ, サワグルミと比較して明らかにした。カツラは砂礫地やリターのあるところでは発生せず, 主に鉱質土壌が露出しているところで発生していた。この原因として, カツラは種子や実生のサイズが小さいため, 砂礫やリターに埋もれてしまうこと, 砂礫地では乾湿の差が土壌面に比べ大きいことが考えられた。一方, シオジ, サワグルミは砂礫地であっても, またリターがあっても発生したが, これは両種の種子サイズが大型なため, 砂礫地やリターの堆積した立地でも地上に子葉を展開できること, 十分な長さの根を伸ばせることが原因と考えられた。1年生以上の実生の定着サイトで相対照度を比較した結果, カツラはサワグルミと同様, 15〜20%程度の相対照度が必要なのに対し, シオジは5〜10%でも生存できた。ただし, 土の露出した明るいサイトに多く発生するカツラの実生は, 大雨のときなどに土ごと流されることが多いため, 共存種のシオジやサワグルミに比べ実生による更新が困難なことが予想された。
著者
上田 明良 小林 正秀
出版者
一般社団法人日本森林学会
雑誌
日本林學會誌 (ISSN:0021485X)
巻号頁・発行日
vol.83, no.2, pp.77-83, 2001-05-16
参考文献数
22
被引用文献数
3

生立木へのカシノナガキクイムシの飛来消長を樹幹に巻き付けた粘着紙による捕獲で調べたところ, 最初の穿孔が観察された直後に雌雄の飛来数がピークに達し, その後急速に減少した。衰弱または枯死した木に対してはこれ以後の飛来はほとんどなかったが, 健全木では飛来が継続し, 8月中・下旬から9月中旬にかけて再び増加した。飛来数の合計はコナラ健全木で多かった。しかし, 最初のピークにおける飛来数は, 同所で同時に穿孔を受け始め, その後生残したコナラと枯死したミズナラでは, 枯死したミズナラの方が多かった。飛来数は1.6m高よりも0.5m高の方がいずれの調査木でも多かった。ヨシブエナガキクイムシはカシノナガキクイムシよりも飛来が1〜2週間遅れた。捕獲数は全ての枯死木で多かったが, 健全木の中にも多いものがあった。捕獲された高さについては傾向がなかった。
著者
鈴木 雅一
出版者
一般社団法人日本森林学会
雑誌
日本林學會誌 (ISSN:0021485X)
巻号頁・発行日
vol.70, no.6, pp.261-268, 1988-06-01
被引用文献数
11

山地流域からの流出に与える森林の影響を評価するために, 流況曲線を用いて流況を定量的に比較する流況解析法を提案した。この解析法は, 安定した水利用の水準を示す指標として, 水不足量W_d, 水不足率W_d^*を流況曲線より定義し, 新たに導入された目標利水率α, 無次元貯水容量S_M^*に対する水不足率W_d^*のふるまいを調べるものである。桐生試験地, 竜の口山試験地, 油日の森林流域とゴルフ場芝地流域の流出記録にこの流況解析を適用し, 森林流域の流況安定と蒸発散量の関係について検討した。安定した水利用のために, 大容量貯水池と蒸発散抑制で対処する方策と, 降雨流出過程の出水遅延による流況の一様化で対処する方策がある。目標利水率αが大きく集約的な水利用をはかるとき前者の方策が, αが小さい領域では後者の方策が有効である。
著者
野村 一高 岸田 昭雄
出版者
一般社団法人日本森林学会
雑誌
日本林學會誌 (ISSN:0021485X)
巻号頁・発行日
vol.60, no.8, pp.273-280, 1978-08-25

先枯病抵抗性の差異とフェノール性成分の季節的変化との関連を明らかにするため, 抵抗性と罹病性各4クローンの当年生枝中のフェノール性成分を1976年6月17日から10月16日までガスクロマトグラフィーで分析した。抵抗性の2クローンは6月から9月までtaxifolin-3'-O-glucosideを, また抵抗性の1クローンは8月から10月までafzelechinを含んでいたが, これらの成分は他のクローンでは見られなかった。抵抗性4クローンのcatechin含有量は6月から9月まで罹病性4クローンより多く, 抵抗性3クローンのtaxifolinは7月から9月にかけて増加し, 9月には罹病性4クローンの7倍以上の含有量となった。抵抗性2クローンの全フェノール含有量は常に罹病性の2倍以上で, また他の1クローンは6〜7月は罹病性と同程度であったが, その後急激に増加し, 9月には罹病性の2倍程度となった。また抵抗性クローンと同程度の濃度のcatechin と taxifolinは, 培地上で本菌の生育に対し抑制作用を示した。
著者
浅川 澄彦
出版者
一般社団法人日本森林学会
雑誌
日本林學會誌 (ISSN:0021485X)
巻号頁・発行日
vol.38, no.4, pp.125-129, 1956-04-25

クミアワセ層積法によつて チヨウセンマツのタネの発芽をいちじるしく促進することができたが, このキキメの1つはタネの吸水力をおおきくすることであるようにおもわれた。おなじ五葉松の2,3の種のタネについて, 発芽遅延が種皮の性質と関係があることが報告されていたので, この点をたしかめるために チヨウセンマツのタネの吸水経過をしらべた。このタネの吸水経過は クロマツやアカマツなどとおなじように3段階にわけられる。すなわち(1)発芽床においてから2,3日間の急にオモサがふえる時期, (2)ゆつくりふえるか またはほとんどかわらない時期, および(3)ふたたび急にふえる時期である。たいていのタネは(2)の段階にかなりながいあいだとどまつているが, 適当な前処理をおこなえば(3)の段階にはやくうつることができる。(3)でのオモサの増加は(1)での増加にほとんどひとしい。外種皮をとりのぞくと, たいていのタネはおよそ2週間で発芽しおわるが, 内種皮ものぞけばもつとはやく発芽させることができる。種皮をのぞいたときすぐ発芽するタネの胚は 休眠していないとおもわれ, こういうタネが(2)から(3)にうつれない原因は おもに外種皮にあるものとおもわれる。
著者
田中 広樹 太田 岳史 檜山 哲哉 Maximov Trofim C.
出版者
一般社団法人日本森林学会
雑誌
日本林學會誌 (ISSN:0021485X)
巻号頁・発行日
vol.82, no.3, pp.259-267, 2000-08-16
被引用文献数
1

北方落葉樹林における光合成・蒸散特性を明らかにするために, シベリアタイガのカラマツ林樹冠上でのCO_2・H_2Oフラックス観測を行った。開葉前にはフラックスは検出されず, 夏期には正午または正午直前にピークを持つ日周変化が見られた。高温乾燥による光合成抑制は見られたが, 蒸散抑制は明らかではなかった。また, 光合成・蒸散活動は開葉の時期に急激に活性化し, 夏期の終りに向かって緩やかに減衰した。更に, 観測されたフラックスから気象環境の季節変化の効果を取り除き, その時点での光合成・蒸散特性を評価するために, 樹冠単層モデルを用いて光合成・蒸散特性を表現する最小群落抵抗, クロロフィル密度, 光量子捕捉率などのパラメータを抽出した。パラメータの変化から, 開葉期の特性の変化が明瞭に表現された。蒸散活性と光合成活性には開葉後も2週間程度の成熟期があることが示唆され, クロロフィル密度のような量的特性は比較的早く定常に達することが示唆された。
著者
蔵治 光一郎 田中 延亮
出版者
一般社団法人日本森林学会
雑誌
日本林學會誌 (ISSN:0021485X)
巻号頁・発行日
vol.85, no.1, pp.18-28, 2003-02-16
参考文献数
100
被引用文献数
2

日林誌85:18〜28,2003 これまで世界の熱帯林で行われてきた樹冠遮断量の観測事例を調査した。30の国と地域で73地点,106の観測事例を集め,その中から比較的精度のよい事例を抽出し,樹冠遮断率や樹冠遮断量の気候タイプ,植生タイプ,標高との関係,および蒸発散量と樹冠遮断量の関係について考察した。樹冠遮断率は,気候区分,植生区分,標高にかかわらず,おおむね10〜20%の範囲に入っていた。一方,観測精度に十分な注意が払われているにもかかわらず,この範囲から大きく外れ,非常に大きい樹冠遮断率が観測される事例や,非常に小さい樹冠遮新率が観測される事例が存在することがわかった。
著者
小見山 章 井上 昭二 石川 達芳
出版者
一般社団法人日本森林学会
雑誌
日本林學會誌 (ISSN:0021485X)
巻号頁・発行日
vol.69, no.10, pp.379-385, 1987-10-25
被引用文献数
3

岐阜県荘川村の落葉広葉樹林で, バンド型デンドロメータを25種の落葉広葉樹に装着して1985年度の肥大生長の季節的過程を樹種間で比較した。肥大生長の過程を単純ロジスチック曲線に当てはめたところ, 19樹種はこの関係をほぼ満足した。他の6樹種はいずれも小径木にデンドロメータを装着したために, 測定結果のばらつきが大きかった。同曲線のパラメータから肥大生長の開始時期と終了時期, 生長速度が極大となる時期, および生長の立上りの緩急の程度を求めた。その結果, 肥大生長の開始時期はキハダの4月16日が最も早くミズキの6月7日が最も遅かった。ミズナラ, コナラ, クリなどの環孔材樹種の開始時期は散孔材樹種のそれよりも早かった。生長速度が極大となる時期はキハダの6月8日が最も早かったが, 他の樹種のそれは7月の梅雨期に集中していた。生長期間はミズキの81日間が最も短くミズナラの171日間が最も長かった。当地の落葉広葉樹は生長期間が長くしかも緩生長を行う樹種群と, 生長期間が短く急生長を行う樹種群とに分けられた。
著者
中島 敦司 万木 豊 永田 洋
出版者
一般社団法人日本森林学会
雑誌
日本林學會誌 (ISSN:0021485X)
巻号頁・発行日
vol.76, no.6, pp.584-589, 1994-11-01
被引用文献数
5

サザンカの開花に及ぼす初夏以降の温度の影響を調べる目的で、3年生のサザンカを6月5日から25℃に0、15、30、ならびに45日間置き、その後18℃の条件へ移動させた。この結果、25℃の期間が長くなるほど開花率が高くなった。一方、同様の日程で18℃から25℃に移動させる実験を行ったところ、10月中旬にはすべての花芽が落下し、開花はみられなかった。そして、生殖にかかわる雄ずい、雌ずいの発達は8月中旬までの積算温度と正の相関関係にあった。また、野外において、6月5日から日長を8、20時間に調節し、自然日長と比較して、開花と日長の関連について検討したところ、短日区で開花が早くなったが開花率は日長の影響を受けなかった。
著者
山口 伊佐夫
出版者
一般社団法人日本森林学会
雑誌
日本林學會誌 (ISSN:0021485X)
巻号頁・発行日
vol.48, no.9, pp.351-357, 1966-09-25

昭和40年9月福井県真名川流域の豪雨は日雨量870mm以上を示し, この地帯としても, また我が国としてもまれにみる大雨量であった。幸い本流域の源流部附近に設置してある笹生川ダム, 雲川ダムにおいて雨量およびダム水位, 放流量等が観測されたのでダム流入量すなわち流域のHydrographを誘導し, 豪雨の特性と豪雨にもとづく山地帯Hydrographの特性について2,3の検討を加えた。
著者
箕輪 光博
出版者
一般社団法人日本森林学会
雑誌
日本林學會誌 (ISSN:0021485X)
巻号頁・発行日
vol.61, no.11, pp.410-412, 1979-11-25

A new sampling technique for deriving stand volume through the estimation of the sum of critical heights by STRAND'S method is proposed. This technique is characterized by double counting based on both KITAMURA'S critical height method and STRAND'S vertical line sampling, the latter of which is modified to something like point sampling in this paper. First, two parallel lines are selected in the stand, each of which has a random point as its center and is perpendicular to the segment formed by the two center-points. Next, double counting (horizontal counting followed by vertical counting) from each center-point is made for all surrounding trees, allowing an unbiased estimate of stand volume to be formed by the average tree count per point-line multiplied by a constant factor associated with a pair of given horizontal and vertical angles. It should be noted that the vertical angle used at each point is not constant but is a variable angle associated with the horizontal angle that is between the corresponding line and the line sighted from the point to the surrounding tree. This procedure, however, offers the possibility of reducing the difficulties encountered in the direct measurements of critical heights notwithstanding the above additional work.