著者
田中 稔彦 石井 香 鈴木 秀規 亀好 良一 秀 道広
出版者
一般社団法人 日本アレルギー学会
雑誌
アレルギー (ISSN:00214884)
巻号頁・発行日
vol.56, no.1, pp.54-57, 2007-01-30 (Released:2017-02-10)
参考文献数
6
被引用文献数
2

24歳,男性.初診1年半前から運動や精神的緊張によって多発する小円形膨疹を主訴に来院した.皮疹は激しい痒みをともなっていた.コリン性蕁麻疹と診断し,種々の抗ヒスタミン薬を投与したが皮疹は改善しなかった.サウナ浴によって同様の皮疹が誘発され,回収した本人の汗による皮内テストで陽性を示した.また健常人および本人の汗から精製した汗抗原で末梢血好塩基球からの著明なヒスタミン遊離が生じ,汗の中の抗原にIgE感作されていることが明らかとなった.本人の汗から回収した抗原による減感作療法を行ったところ皮疹の程度が軽減し,本人のQOLも徐々に改善した.末梢血好塩基球の汗抗原に対するヒスタミン遊離の反応性も経時的に低下し,汗抗原による減感作療法が奏効したと考えられた.
著者
榎本 雅夫 清水(肖) 金忠 島津 伸一郎
出版者
一般社団法人 日本アレルギー学会
雑誌
アレルギー (ISSN:00214884)
巻号頁・発行日
vol.55, no.11, pp.1394-1399, 2006-11-30 (Released:2017-02-10)
参考文献数
21
被引用文献数
3

【背景】最近,乳酸菌の抗アレルギー作用への興味が高まりつつある.しかし,日々のヨーグルトや乳酸菌飲料の摂取によるアレルギーの発症の抑制についての報告はほとんどない.【方法】和歌山県下の中学1年生を対象に,ヨーグルトや乳酸菌飲料,納豆の摂食習慣と血清総IgE値,特異的IgE抗体量,各種アレルギー疾患の有無について調査を実施し,得られた134人の回答について解析を行った.【結果】ヨーグルトや乳酸菌飲料の摂取歴のあるものでは,血清総IgE値が有意に低値で,アレルギー疾患の有病率も有意に少なかった.しかし,納豆の摂取の有無では,これらの関係は認められなかった.【結論】アレルギー疾患の発症に乳酸菌などの腸内細菌が深く関与していることを裏付ける疫学調査の興味ある結果であった.今後,症例を増やして検討する価値のある治験であろうと考えている.
著者
角谷 千恵子 荻野 敏 池田 浩己 榎本 雅夫
出版者
一般社団法人 日本アレルギー学会
雑誌
アレルギー (ISSN:00214884)
巻号頁・発行日
vol.54, no.7, pp.627-635, 2005
被引用文献数
9

【目的】スギ花粉症が労働生産性に与える影響についてpilot studyを行った.【方法】2003年のスギ花粉飛散期に, 大阪・和歌山地区の耳鼻咽喉科外来において労働生産性に関する質問紙調査を行い, 有効回答の得られた就労者512名を分析対象とした.【結果】損失労働時間は過去1週間の状況を調査したが, 約9割が0時間と回答した.生産性低下の程度はVASを用いて計測し, 通常期の3/4程度に低下していると回答した症例が約半数を占めた.労働生産性指標への寄与因子を多変量ロジスティック回帰にて検討したところ, 罹病期間が短期間の例, 眼の痒みが重症な例では, 労働時間の損失が生じるリスクが高くなることが判明した.また, 身体面または精神面でのQOLが低下している例, 花粉症対策用具を使用している例では, 生産性の低下を感じる可能性が高いことが明らかとなった.【結語】花粉症による労働損失を削減するためには, 鼻症状ばかりでなく眼症状の改善にも注意をはらい, QOLの早期改善をはかることが重要だと思われた.
著者
松下 祥
出版者
一般社団法人 日本アレルギー学会
雑誌
アレルギー (ISSN:00214884)
巻号頁・発行日
vol.64, no.5, pp.685-692, 2015 (Released:2015-09-30)
参考文献数
5

3 0 0 0 OA IgG4抗体

著者
松岡 伴和
出版者
一般社団法人 日本アレルギー学会
雑誌
アレルギー (ISSN:00214884)
巻号頁・発行日
vol.69, no.5, pp.360-361, 2020 (Released:2020-07-17)
参考文献数
5
著者
田上 八朗
出版者
一般社団法人 日本アレルギー学会
雑誌
アレルギー (ISSN:00214884)
巻号頁・発行日
vol.54, no.5, pp.445-450, 2005-05-30 (Released:2017-02-10)
参考文献数
32
被引用文献数
11

乾燥した地上に暮らす動物では, 生体組織に必須の水分が失われ乾燥により生命活動ができなくなることを防ぐため, 身体の表面に水も通しにくい防御構造, すなわちバリアの存在が必要である. 実際には生きた皮膚組織にも約70%の水分がなくてはならず, その表面を厚さわずか10〜20μのポリエチレンのラップのような薄い膜状構造物のバリア, すなわち角層(stratum corneum)がくまなく覆うことで, 環境への水分喪失が防がれている. 角層は皮膚の表皮を構成するケラチノサイト(keratinocyte)が少なくとも2週間かけて, ゆっくりと分化して, 無構造な1μ程の厚さしかない平たい角層細胞(corneocyte)に変わり, 緊密に積み重なってできあがったバリア機能の十分備わった構造をしている. 表皮, 真皮, 皮下組織からなる皮膚の組織の中では, 一般的には動物の皮膚から剥いで造られた革製品を見慣れているため「皮膚は生体を防御する革袋」, すなわち, 身体内部の筋肉, 骨, 内臓を包む一方, 環境からの機械的外力への防御をするという点で, コラーゲン繊維主体の結合組織である真皮がもっとも重要であるかのように思われやすいが, 生命保持という生存への根本的な必須条件からは, 皮膚表面のバリア機能の優れた角層を造る, 薄くて脆い表皮こそが, 最重要な組織である1).

3 0 0 0 OA IL-1β

著者
玉利 真由美
出版者
一般社団法人 日本アレルギー学会
雑誌
アレルギー (ISSN:00214884)
巻号頁・発行日
vol.64, no.2, pp.158-159, 2015 (Released:2015-09-30)
参考文献数
3
著者
二村 昌樹 山本 貴和子 齋藤 麻耶子 Jonathan Batchelor 中原 真希子 中原 剛士 古江 増隆 大矢 幸弘
出版者
一般社団法人 日本アレルギー学会
雑誌
アレルギー (ISSN:00214884)
巻号頁・発行日
vol.65, no.1, pp.66-72, 2016 (Released:2016-02-29)
参考文献数
12

【目的】アトピー性皮膚炎患者が抱えるステロイド外用薬を使用することへの不安を評価する質問票として,12の設問で構成されるTOPICOP(TOPIcal COrticosteroid Phobia)がフランスで開発されている.本研究ではTOPICOP日本語版を作成し,その実行可能性を調査した.【方法】原文から翻訳,逆翻訳の工程を経て日本語版を作成した.次にアトピー性皮膚炎患者(小児患者の場合は養育者)を対象にして,TOPICOP日本語版とともにその回答時間と内容についての無記名自記式アンケート調査を実施した.【結果】回答者は287人(平均年齢38±7歳,女性83%)で,TOPICOPスコアは平均41±18点であった.半数以上の回答者が,ステロイド外用薬が血液に入る,皮膚にダメージがある,健康に悪いと考え,特定部位に使用する不安,塗りすぎの不安,漠然とした不安を感じ,安心感が必要としていた.TOPICOPは全体の68%が5分未満で回答できており,87%が記入に困難は感じず,79%が内容を理解しやすいと回答していた.【結語】TOPICOP日本語版は短時間に回答できるステロイド不安評価指標で,日常診療や臨床研究に今後広く活用できると考えられた.