著者
前田 裕二 安枝 浩 秋山 一男 信太 隆夫 宮本 昭正
出版者
一般社団法人 日本アレルギー学会
雑誌
アレルギー (ISSN:00214884)
巻号頁・発行日
vol.43, no.2-1, pp.120-126, 1994-02-28 (Released:2017-02-10)

特殊カバー(ミクロガード)によるダニアレルゲン暴露からの防止効果を検討した. 敷布団(日本式マットレス)の右あるいは左半分の面から掃除機で吸塵した. 次いでその敷布団を新しい特殊カバーで被った後にもう一方の面から吸塵し1組のサンプルを得た. 約2週後に同様なことを同じ敷布団で旧いカバー(1年半使用)を用いて行った. 7枚の敷布団を用意し, 14組の塵の検体を得た. 塵を秤量し, 次いでコナヒョウヒダニおよびヤケヒョウヒダニに対するモノクロナール抗体を用いてアレルゲン量を測定した. 塵の量は新旧カバーそれぞれ対照(カバーの無い状態)の1.0%, 2.0%であった. Der I濃度は新旧カバーそれぞれ2.5, 3.3μg/g dustであった. Der II濃度は新旧カバーそれぞれ1.6, 2.3μg/g dustであった. Der I総量は新旧ミクロガードそれぞれ対照の0.1%, 0.5%の量であり, Der II総量はそれぞれ0.2%, 0.7%であった. 濃度の測定が可能であった塵についてDer p, f濃度を比較したところDer I, IIともに種類による有意な差はみられなかった. 以上よりミクロガードは濃度および塵総量の減少に伴いダニアレルゲン曝露からの回避に有効な手段であると結論した.
著者
猪又 直子 池澤 善郎 守田 亜希子 桐野 実緒 山崎 晴名 山口 絢子 山根 裕美子 立脇 聡子 広門 未知子 近藤 恵
出版者
一般社団法人 日本アレルギー学会
雑誌
アレルギー (ISSN:00214884)
巻号頁・発行日
vol.56, no.10, pp.1276-1284, 2007
参考文献数
13
被引用文献数
5

【背景・目的】本邦では多数の植物由来食物による口腔アレルギー症候群(oral allergy syndrome : OAS)を検討した報告は稀である.そこで,本研究では本疾患の臨床的特徴と花粉感作との関連性を明らかにするため,OAS診断例63例について検討した.【方法】6年間に植物由来食物摂取後の口腔症状を自覚した例に被疑食物と花粉のプリックテスト(SPT)や特異IgE測定(CAP-FEIA : CAP)を施行した.【結果】被疑食物のSPTが陽性となったOAS診断例63例(男 : 女=1 : 2,平均年齢 : 28.7歳)の原因食品はリンゴ13例,モモ12例,キウイ12例,メロン11例であった.モモは口腔以外の症状を高率に誘発し,モモとウメの各1例でアナフィラキシーショックに至った.上位4食物のSPT陽性率は55.0〜63.2%であった.リンゴではCAPとSPTと間に相関をみとめたが(r=0.39,p<0.05),メロン,モモ,キウイではみとめられなかった.花粉症の合併は66.1%と高率で,花粉のCAP陽性率はリンゴではハンノキで,メロンではカモガヤ,ヨモギ,ブタクサで高い傾向があった.【考察】SPTとCAPの陽性率は食物の種類によって大きく異なる傾向があり,また,全体として患者の訴えより低い.現時点では,植物由来食物によるOASを診断する際に皮膚テストを用いるほうがよいと考えた.
著者
田中 裕士 本間 伸一 今田 彰浩 菅谷 文子 阿部 庄作 西 基
出版者
一般社団法人 日本アレルギー学会
雑誌
アレルギー (ISSN:00214884)
巻号頁・発行日
vol.44, no.2, pp.64-69, 1995-02-28 (Released:2017-02-10)
参考文献数
25
被引用文献数
1

霧の発生が気管支喘息患者に及ぼす影響について検討する目的で, 45歳, 女性の喘息患者のピークフロー値と, 霧などの気象条件との関係について検討した. 患者は以前より, 香水, 野焼き, 工場からの煤煙などの臭気で発作が誘発されていたが, 2年前に転居してから発作が頻発するようになり, 霧との関係が疑われた. 平成6年6月から71日間のピークフロー値 (n=251) の中で, 霧と臭気のない時間帯 (n=195) の値は403±40L/分 (平均±標準偏差) であった. 霧の発生時間帯 (n=40) では347±60L/分, 臭気のあった時間帯 (n=5) では333±60L/分, 霧および臭気が同時に発生した時間帯 (n=11) では340±53L/分であり, いずれも有意(p<0.01)に低下していた. また, 1日の平均気温, 最低気温, 平均相対湿度, 気圧, 風向きとは有意な関連性はなかった. 気管支喘息患者において, 霧の吸入によりピークフロー値は低下し, 発作誘因の一つとなりうることが示唆された.
著者
今野 哲
出版者
一般社団法人 日本アレルギー学会
雑誌
アレルギー (ISSN:00214884)
巻号頁・発行日
vol.66, no.7, pp.919-922, 2017 (Released:2017-08-18)
参考文献数
12
著者
杉山 晃子 岸川 禮子 西江 温子 竹内 聡 下田 照文 岩永 知秋 西間 三馨 古江 増隆
出版者
一般社団法人 日本アレルギー学会
雑誌
アレルギー (ISSN:00214884)
巻号頁・発行日
vol.60, no.11, pp.1532-1542, 2011-11-30 (Released:2017-02-10)
参考文献数
14

【背景と目的】最近,加水分解コムギを含有するお茶石鹸の使用により小麦アレルギーあるいは小麦依存性運動誘発アナフィラキシー(WDEIA)を発症することが社会問題となっている.当院を受診した症例から臨床的な特徴を考察した.【方法】2010年1月から10月にかけて当院を受診した加水分解コムギ含有石鹸の使用によって誘発されたと考えられる小麦アレルギーあるいはWDEIAの12例について検討した.【結果】平均年齢は36.0±9.9歳で,全て女性であった.全例,それまで小麦アレルギー症状の既往はなく,当該の石鹸を使用開始してから平均2年弱でWDEIAもしくは小麦アレルギーを発症していた.多くの症例が洗顔時に蕁麻疹や眼瞼腫脹,鼻汁などの症状を呈していた.従来のWDEIAに特異的なω-5グリアジンは12例中10例で陰性であった.【結語】石鹸の使用により加水分解コムギに経皮的に感作され,WDEIAもしくは小麦アレルギーを発症したと考えられた.当該の石鹸以外にも,香粧品により重篤なアナフィラキシーをきたす可能性があることを医療従事者が認識し,広く周知することが重要である.
著者
中川 俊二 勝田 満江
出版者
一般社団法人 日本アレルギー学会
雑誌
アレルギー (ISSN:00214884)
巻号頁・発行日
vol.24, no.7, pp.535-542,582-58, 1975-07-30 (Released:2017-02-10)

除虫菊はキク科の植物で, そのなかでもシロバナムシヨケギクがとくに強い殺虫力を持つものとして, わが国では瀬戸内海沿岸島嶼および和歌山県などで多量に栽培されている(戦前は世界最高).毎年5月の開花時期には栽培地周囲の人々の間で喘鳴, 呼吸困難, くしゃみ, 鼻漏, 流涙などの症状を訴えるものが増えてくる.この事実から, われわれは除虫菊花粉が特異的な抗原性を存するものと考え, 本年5月に因島で花粉を収集, これを鳥居薬品に依頼してアレルゲンエキスとして作製した.一方, 因島市役所の協力で栽培者のアンケート調査から, 過敏症と思われる人にたいする諸検査で次のことが明らかとなった.1)除虫菊花粉は35×35μの微粒で, 形態学的には幾瀬分類6B^b型に属する.飛散距離が栽培地を中心として1km以内におよび, 花粉症としての抗原性を有する.2)過敏症と思われる人に除虫菊花粉エキスの皮膚反応を行うことによって, 明らかに強陽性を示し, 他のアレルゲンと区別することができた.また誘発反応(鼻粘膜および気管支)でも特異的な症状の発生を認めることができた.つぎに, 除虫菊粉(蚊取線香原料で殺虫成分としてピレトリンI, IIを含有)の人体に対する影響も考えられるので, 鳥居薬品に依頼して粉および煙のアレルゲンエキスを作製, これの抗原性について除虫菊工場(瀬戸田)の職員(アレルギー様症状のもの)に行ったのであるが, 今回の検査では皮膚反応陰性で抗原性はみられなかった.
著者
中野 泰至 下条 直樹 森田 慶紀 有馬 孝恭 冨板 美奈子 河野 陽一
出版者
一般社団法人 日本アレルギー学会
雑誌
アレルギー (ISSN:00214884)
巻号頁・発行日
vol.59, no.2, pp.117-122, 2010-02-28 (Released:2017-02-10)
参考文献数
12
被引用文献数
1

【目的・方法】今回小児牛乳アレルギー患者における主要アレルゲンを明らかにすることを目的として後方視的な解析を行った.牛乳特異IgE値陽性で牛乳摂取により何らかの即時型症状を呈した115名の患者を対象としてBLG,カゼインに対する感作率を解析した.特異IgEがクラス2以上を陽性とした.また牛乳アレルギーの主要抗原と他の食物アレルゲン,吸入抗原への感作の違い,寛解との関連についても解析を行った.【結果】牛乳特異IgE値がもっとも高値であった血清でのカゼイン特異IgE値は,BLG特異IgE値よりも有意に高値であった.カゼイン特異IgE陽性者は107人(97.3%),BLG特異IgE陽性者は51人(46.4%),両方とも陽性だった者は48人(43.6%)であり,カゼイン単独感作群(C群)とカゼイン,BLG両方感作群(C/B群)に大別された.C群とC/B群での鶏卵への感作率を比較すると,C群とC/B群では差がなかったが,特異IgE値はC/B群の方が有意に高かった.吸入抗原に関しては両群で感作率,特異IgE値ともに差は認められなかった.C群に比べてC/B群は,3歳の時点での牛乳アレルギーの寛解が有意に少なかった.【結語】今回の解析から,本邦の牛乳アレルギーにおいても主要アレルゲンはBLGよりもむしろカゼインであると考えられた.複数の牛乳アレルゲン感作は,経消化管感作の起こりやすさを反映する可能性が考えられた.また複数の牛乳アレルゲンへの感作は牛乳アレルギーの寛解のしづらさとも関与していると考えられた.
著者
伊藤 由紀子
出版者
一般社団法人 日本アレルギー学会
雑誌
アレルギー (ISSN:00214884)
巻号頁・発行日
vol.32, no.9, pp.985-995, 1983-09-30 (Released:2017-02-10)
被引用文献数
1

スギ花粉症患者治療群23例, 未治療群8例, 健常な林業従事者7例, 市街地在住の正常者7例を対象とし, 血清および鼻汁中のIgG, IgE抗体をそれぞれ protein A-Sepharose CL-4B を用いた radioimmunoassay とRAST法による測定した.血清IgG抗体は, 治療群>未治療群および林業従事者>正常者の順に高値を示した.減感作治療により血清IgG抗体は上昇したが, 鼻汁中IgG抗体/albumim が上昇する傾向はなかった.季節中の花粉暴露の多い林業従事者では, 季節前に比べ季節中に血清IgG抗体, 鼻汁中IgG抗体/albumin の上昇傾向を認めた.血清IgE抗体, 鼻汁中IgE抗体/albuminは治療開始後上昇する傾向はなく, 季節中には治療群, 未治療群ともに血清IgE抗体の上昇を認めた.スギ花粉に対する局所でのIgG抗体産生の可能性, 減感作治療の方法などについて考察し, 症状との相関性についても検討した.
著者
増田 佐和子 寺田 明彦 藤澤 隆夫 井口 光正
出版者
一般社団法人 日本アレルギー学会
雑誌
アレルギー (ISSN:00214884)
巻号頁・発行日
vol.49, no.12, pp.1138-1145, 2000-12-30 (Released:2017-02-10)
参考文献数
23
被引用文献数
4

近年小児スギ花粉症の増加が報告されているが, 幼児における実態は未だ明らかではない.そこで, 5歳以下の幼児のスギ花粉の感作状況と発症例の臨床的特徴について検討した.気管支喘息・アトピー性皮膚炎などで国立療養所三重病院小児科アレルギー外来を受診した幼児76名(男児51名, 女児25名, 2カ月〜5歳)のスギCAP-RAST陽性率は27.6%で0歳の陽性例はなく, 最年少陽性例は1歳8カ月男児であった.ヤケヒョウヒダニ陽性率は61.8%で, ダニ陽性児ではスギ陽性率が有意に高値であった.1999年および2000年春に同耳鼻咽喉科でスギ花粉症と診断された幼児は27名(男児20名, 女児7名, 2〜5歳)で, 最年少は2歳5カ月男児であった.症状は鼻汁, 目の症状が多く, 咳, いびき, 鼻出血を訴えるものもあった.重複抗原として約60%がダニ陽性であったが40%はスギのみ, またはスギとヒノキのみ陽性を示した.以上よりスギ花粉による感作は2シーズンの暴露で成立し得ること, 2歳で発症し得ることが明らかとなり, スギ花粉は幼児においても重要な抗原であることが示された.
著者
池本 信義
出版者
一般社団法人 日本アレルギー学会
雑誌
アレルギー (ISSN:00214884)
巻号頁・発行日
vol.19, no.3, pp.188-192,235, 1970-03-30 (Released:2017-02-10)

著者は西日本一帯に広く分布しているキョウチクトウの花粉喘息について研究した.キョウチクトウの開花期は尼崎地区においては6月から10月までである.次ぎにその結果を示す.1.当アレルギー外来を本年秋季に訪れた喘息患者61例のうち皮内反応にてキョウチクトウ花粉喘息患者は16例であつた.2.この16例のキョウチクトウ花粉喘息のうち3例は他のアレルゲン皮内反応には陰性であつた.3.問診によりこの16例のキヨウチクトウ花粉喘息患者はキョウチクトウの開花期, とくに6, 7, 8, 9月に喘息症状増長をみた.4.キョウチクトウ花粉喘息のほとんどの症例はキョウチクトウの大部分が生育している尼崎市郊外の居住者である.5.このキョウチクトウ花粉喘息患者のうち2例にP-K反応をおこなつたところ, 1例が陽性で, その閾値は1:2^3であつた.
著者
豊國 賢治 山本 貴和子 吉田 明生 宮地 裕美子 樺島 重憲 福家 辰樹 野村 伊知郎 大矢 幸弘
出版者
一般社団法人 日本アレルギー学会
雑誌
アレルギー (ISSN:00214884)
巻号頁・発行日
vol.70, no.10, pp.1383-1390, 2021 (Released:2021-12-14)
参考文献数
18

【背景・目的】アトピー性皮膚炎(AD)は低蛋白血症を伴う重症AD;severe protein-loss in atopic dermatitis(SPLAD)がしばしば問題となる.本研究では,SPLADの急性期治療と予後を明らかにする.【方法】国立成育医療研究センターアレルギーセンターで入院加療を行ったSPLAD患者61人を対象に,入院中と治療開始3年後までの経過について診療録情報を用いて後方視的に検討した.【結果】全例が入院中に外用剤治療にて寛解導入を行い低蛋白血症や電解質異常が改善した.全身性ステロイド薬・免疫抑制剤,生物学的製剤を含む全身療法を行った児は認めなかった.寛解維持のためにステロイド外用薬(TCS)の間欠塗布によるプロアクティブ療法を行い,3年後に95%がTCS使用頻度を週2日以下へ減量して寛解を維持した.入院時に1歳未満の乳児で,3年後に卵,牛乳,小麦いずれか1つ以上の食物を除去していた児は29%であった.【結語】アトピー性皮膚炎の最重症型であるSPLAD患者は急性期に外用剤治療を行うことで寛解導入可能であり,多くの患者が長期間ADの寛解維持が可能である.
著者
橋本 修
出版者
一般社団法人 日本アレルギー学会
雑誌
アレルギー (ISSN:00214884)
巻号頁・発行日
vol.66, no.3, pp.168-172, 2017 (Released:2017-05-17)
参考文献数
9
被引用文献数
1
著者
遠藤 薫 吹角 隆之 足立 準 小嶋 益子 青木 敏之 吉田 政弘 森田 和矢 成 隆光 辻野 守典
出版者
一般社団法人 日本アレルギー学会
雑誌
アレルギー (ISSN:00214884)
巻号頁・発行日
vol.46, no.10, pp.1013-1024, 1997
被引用文献数
3

1. 3〜12歳のアトピー性皮膚炎患者30名を無作為に2群に分け, 1年間にわたって患者の部屋及び寝具を掃除することによって, ダニ数が減少し, 患者の症状と検査値の改善に寄与するかを, 二重盲検試験で検討した。2. 前後のダニ数は, モニター群とコントロール群の両群とも, 患者の部屋の床で有意に低下していた。終了時, モニター群の寝具でより大きいダニ数の低下の傾向が認められ, 特に掛け布団において有意なダニ数の差異が認められた。3. 終了時, 症状スコアはモニター群で有意に改善していたが, コントロール群ではそうではなかった。両群間で症状スコアの変動率を分析すると, モニター群においてより軽快傾向が見られたものの有意差は認められなかった。4. 血清IgE値は掃除前後で両群とも有意差はなかった。Dermatophagoides farinae (Df), D. pteronyssinus (Dp) に対するRAST値は, 有意差はなかったが, モニター群でより大きい低下がみられた。5. ダニ数の低下は, 臨床症状の改善とダニRAST値の低下に寄与する可能性が示唆された。