著者
中西 哲
出版者
日本生態学会
雑誌
日本生態学会誌 (ISSN:00215007)
巻号頁・発行日
vol.6, no.4, pp.165-170, 1957-03-15

An investigation was made in the precincts of Kasuga shrine in Nara City to ascertain the floristic composition in relation to the environment of the epipetric plant community growing on Ishidoro (the stone-lantern pillars) there. 1. The epipetric plant communities found within the area are integrated into Hypneto-Hedwigietum with the following characteristic species ; Hedwigia albicans (WEB.) LINDB., Hypnum plumaeforme WILS., H. plumaeforme var. minus BROTH. and Grimmia pilifera PALIS. This plant-union consists of the following seven societies ; Cladonia gracilis var. chordalis society, Parmelia tincto ; uma soc., Hedwigia albicans soc., Hypnum plumaeforme soc., H. plumaeforme var. minus soc., Chrysocladium retrorsum soc. and Meteorium helmintocladulum society. 2. It may be considered that Hedwigia albicans soc., Hypnum plumaeforme soc. and H. plumaeforme var. minus soc. exhibit the features of the genuine-facies of the epipetric plant communities found in the area. The community dominated by Hedwigia alticans (WEB.) LINDB. shows better development in fairly sunny habitats, while that of Hypnum plumaeforme var. minus soc. does so in the shady habitats overhung by the crown of evergreen trees close by. 3. Cladonia gracilis var, chordalis soc. and Parmelia tinctorum soc. may be considered as facies which occur mostly in an open and sunny hibitat. The occurrence of Chrysocladium retrorsum soc. and Meteorium helmintocladulum soc. is confined to the most shady habitats where the trees are overshadowing all the time. 4. The degree of overshadowing by the trees nearby and the changes of environmental factors, such as, air temperature, saturation deficit and illumination, at five stonelantern pillars which were occupied by different communities, were respectively recorded on March 15,1956. From the obtained data, considerable differences of microclimatic factors, i. e. saturation deficit and illumination, are clearly observed among respective habitats according to the degree of overshadowing of the trees close by. It may be considered that the degree of overshadowing by the trees plays an important role on the development and the distribution of the epipetric plant community.
著者
岸野 洋久
出版者
日本生態学会暫定事務局
雑誌
日本生態学会誌 (ISSN:00215007)
巻号頁・発行日
vol.65, no.2, pp.187-196, 2015

集団や群集の構造を調べるとき、まずは平均的な特徴や平均的な関係に光が投げかけられる。そこからのかい離は誤差項で、推定の際には最小化すべき厄介な存在として位置づけられる。ここでは集団や群集を構成する個体の間の多様性に等量の光を投げかけ、関係式のモデリングと誤差のモデリングを不可分のものとして位置づける。最尤法はデータの生成メカニズムを尤度の形でモデリングするため、自然に2つのモデリングを融合させることができる。尤度の対数をとった対数尤度は、統計モデルの真の生成メカニズムへの近さの度合いを、相対量の形で表現している。ただし、統計モデルをデータに当てはめて得られた最大対数尤度は、近さの度合いを過大評価している。これを補正して得られた不偏推定量である情報量規準AICは、種々の異質な統計モデルを比較することを可能にする。本論文は、殺虫剤の効用試験、苗木の成長試験の2つの古典的データを見つめなおし、実例を通して最尤法とAICによる統計的モデル分析の有効性を示すことを目的とする。前者はタバコスズメガ幼虫(<i>Phlegethontius quinquemaculata</i>)のカウントデータであるが、各処理でポアソン分布から期待される分散を超える過分散があること、さらにこの過分散がブロック間の不均質性で説明され、ブロック内は環境を均質に保たれていたことを見る。後者はベイトウヒ(Sitka spruce, <i>Picea sitchensis</i>)のサイズを継時的に測定したデータで、オゾンへの曝露の影響を調べたものである。初夏から秋にかけてのある年の成長をロジスティックモデル、およびパラメータに分布を導入した変量ロジスティックモデルで記述する。モデルを通して、成長開始前のサイズとその年の成長幅には大きな個体差があること、6月末が成長の最盛期であること、成長期間にはほとんど個体差はなく、2か月半であることを見る。モデル選択を通して分析対象とデータの持つ情報の量と質に関して理解を深めさせることが、AICのもたらす最大の効用であることを、これらの解析は示している。
著者
小野 清美 永野 聡一郎
出版者
日本生態学会
雑誌
日本生態学会誌 (ISSN:00215007)
巻号頁・発行日
vol.63, no.1, pp.49-57, 2013-03-30
被引用文献数
3

葉の老化は黄葉・紅葉現象に見られるように劇的な変化であり、古くから研究されてきた。また、葉は個体の成長を支える炭素獲得器官であり、窒素保持器官であることから、葉が老化することが個体の物質生産、子実の収量にどのような影響を与えるのか調べられてきた。ここでは葉の老化に影響を与える環境要因、およびそれらと個体レベルでの葉の老化の制御機構との関連について述べる。また、葉の老化の進行を実験的に操作することが個体の物質生産にどのような影響を与えたのかを明らかにした研究を紹介したい。
著者
斎藤 琢 永井 信 村岡 裕由
出版者
日本生態学会
雑誌
日本生態学会誌 (ISSN:00215007)
巻号頁・発行日
vol.64, no.3, pp.243-252, 2014-11-30

急速な気候変動が顕在化した現在において、陸域生態系の炭素収支の時空間変動(炭素動態)を地域から地球規模で広域的に高精度に評価することが「環境科学」に関連する様々な分野で期待されている。リモートセンシングは、様々な時間・空間スケールで陸域生態系の炭素動態に関わる物理量を推定可能であり、陸域生態系の炭素収支の現状診断と将来予測の高度化に貢献している。本稿では、陸域生態系の炭素収支の現状診断と将来予測におけるリモートセンシング観測の期待と課題について、特に、リモートセンシングによる光合成量・光合成能の推定と葉群フェノロジーの推定およびそれらの炭素動態研究への応用について概説した。いずれの研究の発展においても、多地点に展開する生態系サイトで得たリモートセンシング観測情報や関連する生態学的な物理量に関する知見の集積・統合(観測ネットワーク化やデータベース化)および研究者コミュニティの連携が必要不可欠であり、生態学者の更なる積極的な参加が強く望まれる。
著者
樋口 広芳
出版者
一般社団法人 日本生態学会
雑誌
日本生態学会誌 (ISSN:00215007)
巻号頁・発行日
vol.29, no.4, pp.353-358, 1979
被引用文献数
4

HIGUCHI, Hiroyoshi (Lab. For. Zool., Fac. Agr., Univ. Tokyo). 1979. Habitat segregation between the Jungle and Carrion Crows, Corvus macrorhynchos and C. corone, in Japan. Jap. J. Ecol., 29 : 353-358. Corvus macrorhynchos and C. corone use a wide variety of natural resources for food and habitat, and are typical ecological generalists. Because their food is already well known, the habitats of these generalists were investigated. A clear habitat segregation was recognized in this study, which was rather different from the general habitat description appearing in many bird books in Japan. The differences of habitats shown in this study were supported by the results of the examination of stomach contents. By comparison with the situations on the Asian continent, it was suggested that in Japan the habitat of C. macrorhynchos is constricted by sympatry with C. corone.
著者
中山 新一朗 阿部 真人 岡村 寛
出版者
日本生態学会
雑誌
日本生態学会誌 (ISSN:00215007)
巻号頁・発行日
vol.65, no.3, pp.241-253, 2015-11-30

生態学者はしばしば、複数の時系列データからそれらの間に存在する因果関係を推定する必要に迫られる。しかし、生物学的事象は決定論的かつ非線形で複雑な過程を背景に持つのが一般的であり、そのような応答から生じた時系列データ間の因果関係を推定するのは非常に困難である。本稿では、このような状況において有効である因果関係推定法であるConvergent cross mappingについて、その仕組み、使い方、将来の課題等を解説する。
著者
深澤 遊 九石 太樹 清和 研二
出版者
日本生態学会暫定事務局
雑誌
日本生態学会誌 (ISSN:00215007)
巻号頁・発行日
vol.63, no.2, pp.239-249, 2013
参考文献数
63
被引用文献数
1 3

土壌中の菌根菌群集は地上部の植生に重要な影響を与える。森林を構成する各種植物の多くは外生菌根(ECM)菌かアーバスキュラー菌根(AM)菌と菌根を形成するが、これら2つの菌根タイプはおのおの宿主範囲が異なる。このため、樹種の異なる森林の境界あるいは森林と他の植生との境界では、土壌中の菌根菌群集も異なり、これが両植生間での実生更新の違いをもたらすことが予想される。本稿では、代表的な森林の境界として、森林と草地の境界、森林と森林の境界、森林と皆伐地の境界の3つを取り上げ、森林の境界で起こっている植生動態、特に樹木実生の更新において、地下の菌根菌群集が与える影響について、実証的な報告をレビューする。森林と草地の境界では、草本の大部分がAM性であるため、隣接する森林の樹種がECM性かAM性かによって、森林由来の樹木実生の定着に及ぼす菌根菌の影響は異なっていた。ECM性の樹種の場合、実生への菌根菌の定着率や多様性は森林に近いほど高く、実生の生存・生長も良かった。一方AM性の樹種の場合、森林から離れても実生の菌根菌定着率は低くならないが、菌根菌の種組成は変化し、それが実生の生長に与える影響は樹種により異なっていた。森林と森林の境界では、ECM性の樹種とAM性の樹種がそれぞれ優占する森林同士が隣接している場合、実生と異なる菌根タイプを持つ樹種が優占する森林で更新しにくいことが示唆された。森林と皆伐地の境界では、森林から離れても実生の菌根菌定着率は変わらず種組成が変化するが、皆伐地に適応した菌種が定着するため実生の生長はむしろ森林内よりも良いことが、主にECM性の樹種による研究から明らかになっている。全体的な傾向として、境界から10m前後離れると地下の菌根菌群集が急激に変化していた。これは樹木の根圏に樹種特異的な菌根タイプが保持され、実生への重要な感染源となることを示唆している。ただし、詳細な調査がなされた樹種は少なく、今後さらに多くの樹種で一般性を検証していく必要がある。特に、AM性の樹種で研究例が少ない。マツ科のECM性樹種を主要な造林樹種としている欧米と異なりAM性のスギ・ヒノキが主要な造林樹種である我が国の人工林の適切な管理のためには、AM性の樹種を対象とした更なる研究の進展が望まれる。
著者
川北 篤
出版者
一般社団法人 日本生態学会
雑誌
日本生態学会誌 (ISSN:00215007)
巻号頁・発行日
vol.62, no.3, pp.321-327, 2012
参考文献数
42
被引用文献数
1

イチジクとイチジクコバチの間に見られ絶対送粉共生や、アリとアリ植物の共生のように、植物と昆虫の間には、互いの存在なしには存続し得ないほど強く依存し合った共生系が多く存在する。これらの生物の地理的分布は、共生相手の存在に強く依存すると考えられ、実際、共生相手の移動分散能力が限られるために共生系自体の分布が制限されていると考えられる例がいくつも存在する。しかし、イチジクとイチジクコバチ、ならびにコミカンソウ科とハナホソガ属の絶対送粉共生は、島嶼域を含む世界各地の熱帯域に幅広い分布をもつ。さまざまな共生系の間で分布に大きな違いが生まれた背景には、共生系の成立年代や、それぞれの共生者の移動分散能力が関わっていると考えられるが、これらの要因がどのように共生系ごとの分布の違いを生み出したのかについてはほとんど研究されていない。コミカンソウ科植物(以下、コミカンソウ)は世界中に約1200種が存在し、そのうち約600種がそれぞれに特異的なホソガ科ハナホソガ属のガ(以下、ハナホソガ)によって送粉されている。ハナホソガは受粉済みの雌花に産卵し、孵化した幼虫が種子を食べて成熟するため、両者にとって互いの存在は不可欠である。分岐年代推定の結果から、絶対送粉共生は約2500万年前に起源したと考えられるが、この年代は白亜紀後期のゴンドワナ大陸の分裂や、熱帯林が極地方まで存在した暁新世〜始新世の温暖期から大幅に遅れており、陸伝いの分散で現在の世界的分布を説明することは困難である。また、マダガスカル、ニューカレドニア、太平洋諸島など、世界各地の島嶼域にもコミカンソウとハナホソガの共生が見られることから、両者が繰り返し海を渡ったことは確実である。分子系統解析の結果、コミカンソウとハナホソガは、それぞれ独立に海を渡り、到達した先で新たに共生関係を結んだ場合がほとんどであることが分かった。コミカンソウ、ハナホソガそれぞれが単独で海を渡ることができることは、共生を獲得していないコミカンソウ科植物やホソガ科ガ類が、世界各地の海洋島に到達していることからも分かる。コミカンソウとハナホソガの共生が現在のような分布を成し遂げた背景には、両者が1000kmを超える長距離を分散でき、かつ本来の共生相手ではない種とも新たに共生関係を築くことができたことが重要であったと考えられる。生物地理学に「共生系」という視点を取り入れることで、島の生物の由来を新しい視点で捉えられるかもしれない。
著者
道前 洋史 若原 正己
出版者
日本生態学会
雑誌
日本生態学会誌 (ISSN:00215007)
巻号頁・発行日
vol.57, no.1, pp.33-39, 2007-03-31

表現型可塑性は生物が環境の変化に対して示す適応的反応であり、理論的にも適応進化できることが報告されている。この場合、自然淘汰は、個々の表現型ではなく反応基準を標的としているのである。しかし、表現型可塑性を適応進化させる生態的・環境的条件の実証的研究結果が十分にそろっているとはいい難い。本稿では、この問題について、北海道に生息する有尾両生類エゾサンショウウオ幼生の可塑的形態「頭でっかち型」を題材に議論を進め、表現型可塑性について、分野横断的(生態学的・生理学・内分泌学的)なアプローチも紹介する。
著者
小泉 逸郎
出版者
一般社団法人 日本生態学会
雑誌
日本生態学会誌 (ISSN:00215007)
巻号頁・発行日
vol.57, no.2, pp.265-269, 2007

本稿は私がポスドク中に滞在した北欧フィンランドで感じた日本とフィンランドの研究スタイルの違いについて、文化的側面から考察します。海外の研究において役立つ実践的な話は、えころじすと@世界のバックナンバーでしっかりと紹介されているので、本稿では趣を変えてみました。これまでの寄稿では日本と海外の研究体制の違いが紹介されてきましたが、重要なのはこういった違いが生み出される文化的・歴史的背景を理解し、今後の日本の方向性を考えることだと思います。
著者
古本 大
出版者
日本生態学会
雑誌
日本生態学会誌 (ISSN:00215007)
巻号頁・発行日
vol.56, no.2, pp.149-157, 2006-08-31
被引用文献数
3

高校生物のカリキュラム的な制約と時間的な制約によって、野外調査を行うことはなかなかできないのが実状である。その中で、本校独自のカリキュラムとして高校生物の授業や宿題の中で、校内の樹木観察や磯採集などを行っている。これらの課題により、生徒たちは抽象的な生物というものではなく、個々の種を知ることの大切さを初めて認識するようになった。また生物部の短期的な活動として、生物の採集を合宿先や日帰りで行ける海、山、川などいろいろな場所で行い、持ち帰って飼育している。採集・飼育によって、生徒はその生物の分布や生活環境について考えるようになった。長期にわたる研究としてはセミの抜け殻調査や幼虫の羽化の研究、成虫の再捕獲調査など多岐にわたる調査を1995年以降、毎年夏に行ってきた。セミの研究については毎年、大阪府高等学校生徒生物研究発表会で発表させるとともに、数年分をまとめて学生科学賞に応募してきた。賞への応募は研究内容を深めることや、生徒の目的意識を高める効果があった。これらの実践により、生徒は種の多様性や自然環境の大切さを感じるようになっていったようだ。
著者
木元 新作
出版者
日本生態学会
雑誌
日本生態学会誌 (ISSN:00215007)
巻号頁・発行日
vol.22, no.1, pp.40-46, 1972-02-20
被引用文献数
2

The purpose of the paper is to analyse some regularities constituting the local insect fauna, based on the data of the geographical distributions of butterflies of the Japanese Archipelago including Ogasawara Is. and of leaf beetles of the Ryukyu Archipelago and the Island of Yakushima. 1) Relations of the total number of species (y) to areas (x). On the geographical distributions of butterflies of the Japanese Archipelago, the regression line and correlation coefficient are : log y=0.281 log x+0.971,r=+0.902,DF=68 On leafbeetles of the Ryukyu Archipelago and the Island of Yakushima, the formula is : log y=0.286 log x+1.083,r=+0.967,DF=4 2) Relations of average size of genera to the total number of species. The average number of species per genus increases in accordance with the increase of total number of species. However, in the case of butterflies the relations of the total number of genera (y) to the total number of species (x) can be given approximately by the following formula with correlation coefficient : y=0.652 x+5.141,r=+0.997,DF=68 In the case of leafbeetles, by : y=0.548 x+9.160,r=0.986,DF=4 3) Relations of index of diversity of genus to total number of species. Simpson's index of diversity (1949) is useful to examine the concentration or diversity of generic size in areas. The value increases in accordance with the increase of total number of species. The relations of index of diversity of genus (y) to total number of species (x) is given by : y=0.696 x+26.297,r=+0.866,DF=68 In the case of leafbeetles, by : y=0.614 x+27.769,r=+0.726,DF=4 (P (4,0.1)=0.729) In the case of leafbeetles the level of significance is only slightly larger than 10 per cent. Since there is little evidence available on this regularity, it is necessary to accumulate further evidence from other taxonomic groups.
著者
中条 広義
出版者
日本生態学会
雑誌
日本生態学会誌 (ISSN:00215007)
巻号頁・発行日
vol.33, no.4, pp.461-472, 1983-12-30
被引用文献数
4

To clarify the factors controlling the establishment of the alpine desert community, I investigated the periglacial stone movement and denudation of slope materials on the leeward slope where a Cardamine nipponica community is developed. As a result of the study, it was known that the rate of the periglacial downward movement and the amount of denudation on the studied slope averaged 14.8 cm and 0.9 cm per annum, respectively. It was deduced that the unstable conditions of the slope, such as denudation and deposition of slope materials, resulting from their periglacial movement continues to limit the invasion and establishment of general plants, and that the slope can support only specified plant species adapted to the alpine desert. Furthermore, the adaptation of the subterranean organ of plants to the slope instability was observed and divided into three types.
著者
橋口 大介 山岸 哲
出版者
一般社団法人 日本生態学会
雑誌
日本生態学会誌 (ISSN:00215007)
巻号頁・発行日
vol.31, no.2, pp.161-170, 1981

In winter, brown dippers are mainly solitary and exclusive in relationship with adjacent conspecific individuals. They drive other individuals out of their surrounding spaces along stream by threat (warning call, confronting) or aggressive behavior (chasing flight). The area along the stream, where a dipper can find others approaching is limited, and this area is defended as a territory. Some individuals are observed within narrow ranges (Sedentary type), and they held stable territorial ranges. On the other hand, others (Nomadic type) live within more extensive ranges, and change their territorial ranges day by day. Roosting individuals in upstream areas must be nomadic ones and they come downstream for feeding during the daytime.
著者
羽田 健三 市川 武彦
出版者
日本生態学会
雑誌
日本生態学会誌 (ISSN:00215007)
巻号頁・発行日
vol.17, no.5, pp.182-189, 1967-10
被引用文献数
1

Continued from the previous report, this one deals with the percentage of works shared between the male and female, territory, predator, family life and reproductive rate, based on the results of outdoor observations for the purpose of studying the life history of the birds in the Zenkoji basin (altitude about 400m) in the northern part of Nagano Prefecture from 1963 to 1964. The main part of the observations was done in the Nagano district in the center of the basin, and most of the life history during the breeding season of the bird was described based upon the observation of one nest in 1964.
著者
和田 直也
出版者
一般社団法人 日本生態学会
雑誌
日本生態学会誌 (ISSN:00215007)
巻号頁・発行日
vol.58, no.3, pp.205-212, 2008
参考文献数
51

北緯35°から北緯80°までの広い範囲に分布しているチョウノスケソウ(Dryas octopetala sensu lato)について、中緯度高山の立山個体群と極地ツンドラのニーオルスン個体群を比較しながら、生育環境、葉形質と花特性の変異や環境の変化に対する応答、集団内の遺伝的多様性について紹介し、諸変異の要因について論じた。夏季の積算温度は、立山の方がニーオルスンに比べ3.1倍高かったが、日射量はほぼ同じであった。但し、ニーオルスンにおける日射量は初夏に高く、夏至以降急激に減少していた。このような生育環境の違いに対応して葉形質に違いがみられ、立山を含む中緯度高山帯におけるチョウノスケソウの葉は、ニーオルスンを含む寒帯や亜寒帯の集団に比べてLMA (leaf mass per area)が小さく窒素濃度が高かった.また、雌蕊への投資比(雌蕊重量/雄蕊と雌蕊の重量)は花重量との間に正の相関を示したが、その変化率は立山個体群の方が低く、ニーオルスン個体群に比べて集団内における性表現の変異幅が小さい傾向にあった。さらに、立山個体群における遺伝的多様性は、これまで報告されている北極圏の個体群と比較して低かった。最後に、気候変動に対する本種の応答反応を予測する上で、いくつかの課題を指摘した。