著者
木村 晴
出版者
日本教育心理学会
雑誌
教育心理学研究 (ISSN:00215015)
巻号頁・発行日
vol.52, no.2, pp.115-126, 2004-06-30

不快な思考の抑制を試みるとかえって関連する思考の侵入が増加し,不快感情が高まる抑制の逆説的効果が報告されている。本研究では,日常的な事象の抑制が侵入思考,感情,認知評価に及ぼす影響を検討した。また,このような逆説的効果を低減するために,抑制時に他に注意を集める代替思考方略の有用性を検討した。研究1では,過去の苛立った出来事を抑制する際に,代替思考を持たない単純抑制群は,かえって関連する思考を増加させていたが,代替思考を持つ他3つの群では,そのような思考の増加は見られなかった。研究2では,落ち込んだ出来事の抑制において,異なる内容の代替思考による効果の違いと,抑制後の思考増加(リバウンド効果)の有無について検討した。ポジティブな代替思考を与えられた群では,単純抑制群に比べて,抑制中の思考数や主観的侵入思考頻度が低減していた。しかし,ネガティブな代替思考を与えられた群では,低減が見られなかった。また,ネガティブな代替思考を与えられた群では,単純抑制群と同程度に高い不快感情を報告していた。代替思考を用いた全ての群において,抑制後のリバウンド効果は示されず,代替思考の使用に伴う弊害は見られなかった。よって,代替思考は逆説的効果を防ぎ効果的な抑制を促すが,その思考内容に注意を払う必要があると考えられた。
著者
荒井 龍弥 宇野 忍 工藤 与志文 白井 秀明
出版者
一般社団法人 日本教育心理学会
雑誌
教育心理学研究 (ISSN:00215015)
巻号頁・発行日
vol.49, no.2, pp.230-239, 2001-06-30 (Released:2013-02-19)
参考文献数
13

本研究では, 縮小過剰型の誤概念として小学生の動物概念を取り上げ, この誤概念を科学的な概念に修正するための境界的事例群を用いた教授法の効果を検討した。本研究の中心的仮説は, 境界的事例群を用いた教授により縮小過剰型誤概念が修正されるであろうというものであり, この仮説を検証するために, 3つの実験が行われた。実験はいずれも, 小学校5年生を対象とした理科の授業として行われ, 事前テスト, 自作のビデオ教材の視聴と視聴後の話し合いによる教授, 事後テストという3つのセッションで構成された。境界的事例群として水中のプランクトン事例群及び貝事例群を単独で用い, 食べる, 動く, 排泄するシーンを示すビデオ教材の視聴を行った第1, 第3実験では, 概念の組みかえを示す結果は得られなかった。境界的事例としてプランクトン事例と貝事例群を用いたビデオ教材の視聴を行った第2実験では, すべての課題の正答率が大幅に増加し, 仮説を支持する結果を得た。これらの結果から, 縮小過剰型誤概念の修正には, 2種の境界的事例群の対提示が有効であることが確認された。
著者
清道 亜都子
出版者
一般社団法人 日本教育心理学会
雑誌
教育心理学研究 (ISSN:00215015)
巻号頁・発行日
vol.58, no.3, pp.361-371, 2010 (Released:2012-03-07)
参考文献数
28
被引用文献数
8 4

本研究の目的は, 高校生に対する意見文作成指導において, 意見文の「型」(文章の構成及び要素)を提示することの効果を検討することである。高校2年生59名(実験群29名, 対照群30名)が, 教科書教材を読んで意見文を書く際, 実験群には, 意見文の「型」や例文を示して, 書く練習をさせた。その結果, 事後テストでは, 実験群は対照群より文字数が多く, 意見文の要素を満たした文章を書き, 内容の評価も高まった。さらに, 介入1ヶ月後においても効果が確認できた。また, 対照群にも時期をずらして同一の介入指導を行ったところ, 同様の効果が現れた。これらの結果から, 意見文作成指導の際, 意見文の「型」を提示することにより, 高校生の書く文章は量的及び質的に充実したものになることが示された。
著者
本郷 一夫
出版者
一般社団法人 日本教育心理学会
雑誌
教育心理学研究 (ISSN:00215015)
巻号頁・発行日
vol.30, no.1, pp.46-53, 1982-03-30 (Released:2013-02-19)
参考文献数
17
被引用文献数
1

The purpose of the present study was to test the predictions derived from Semantic Feature Hypothesis concerning the acquisition of spatial adjective pairs and to discuss the formational processes of semantic space.The subjects were 30 children attending a nursery school in Sendai. According to their ages, they were divided into three groups of 10 each. The mean age for each group was 4; 0, 5; 1, 6; 1, respectively.Two experiments were conducted. In experiment 1, the Ss were presented with 10 spatial adjectives and asked to give their opposites. The 10 adjectives used were big/small, long/short, tall/short, thick/ thin, and wide/narrow. In experiment 2, the Ss were shown a set of four wooden blocks and asked to choose the-one, where the blank was filled with one of the following 6 words: longest/shortest, tallest/shortest, thickest/thinnest.The main results were as follows.(1) The children were aware that a word belonged to a particular semantic space before they had learned the full meaning of the word.(2) “Big/small dimension” was acquired prior to other dimensions. When the children did not know well more restricted adjectives, they tended to substitute “big/small” for them.(3) Unmarked words were acquired no later than marked words.(4) The children of 4 years old tended to regard marked words as complementary sets of unmarked words and the children of 5 years old tended to regard them as being below the average in the relevant dimensions.
著者
落合 良行
出版者
一般社団法人 日本教育心理学会
雑誌
教育心理学研究 (ISSN:00215015)
巻号頁・発行日
vol.22, no.3, pp.162-170, 1974-09-30 (Released:2013-02-19)
参考文献数
23

青年期の基本的感情であるといわれている孤独感について, その構造をQ技法を用いて検討した。対象は, 高校生であった。まず, 青年が現実にいだいている孤独感の実態を知るために, オリジナルなSCTをつくり実施した。その結果をもとに, 孤独感の構造についての仮説をたて, Q技法による検証を行なった。その結果, 互いに独立な少なくとも2次元が, 孤独感の構造であることがわかった。その2次元とは,(1) 人間同士共感しあえると感じ (考え) ているか否か。(2) 人間 (自己) の個別性に気づいているか否か, である。次に, 孤独感の類型化の方法について検討を行なったところ, 以上の2次元の組合せによる類型化が, 適当であることがわかった。つまり, それにより孤独感を一応 4類型に分けることができた。更に, 類型からみられる現代青年の特徴を検討したところ, 一般にいわれている「現代青年は, 感傷的な孤独感をもつことはあっても自己の存在を自覚するという意味での孤独感を味わうことはごく少ない」ということには, 今後再吟味の余地があることが示された。
著者
水野 将樹
出版者
一般社団法人 日本教育心理学会
雑誌
教育心理学研究 (ISSN:00215015)
巻号頁・発行日
vol.52, no.2, pp.170-185, 2004-06-30 (Released:2013-02-19)
参考文献数
27
被引用文献数
11 2

青年の友人関係について扱った先行研究の多くはアイデンティティ理論などの視点に基づくトップダウン的なものであり, 主体としての青年の認識が扱われることはなかった。そこで, 本研究では既存の理論に基づく仮説検証型研究ではなく, あくまで主体である青年自身から得たデータに基づいて知見を得る質的研究, その中でも方法論が整っているグラウンデッド・セオリー・アプローチを採用して青年が信頼できる友人との関係をどのように捉えているかというリサーチクエスチョンの下, 調査・分析を行った。その際, 「信頼」を鍵概念に, 「友人」は親友などに限定し, 実情に合わせて「青年」の範囲を 18~30歳とするなどの工夫をした。学生, フリーター, 社会人の男女19名に対し半構造化面接を実施し, 得られた発話データをカテゴリーに分類することを通じて分析した。その結果, 友人との信頼関係の構造・形成・意味づけについて, 6つの仮説的知見を得て, それに基づいて青年の友人との信頼関係認識についての仮説モデルを生成した。研究全体としては, 青年は友人との信頼関係を「自分」という存在と不可分に捉えていること, その信頼関係は「安心」を中心とした関係であること, などの示唆が得られた。
著者
竹下 浩 藤田 紀勝
出版者
一般社団法人 日本教育心理学会
雑誌
教育心理学研究 (ISSN:00215015)
巻号頁・発行日
vol.67, no.4, pp.265-277, 2019-12-30 (Released:2020-01-24)
参考文献数
26
被引用文献数
1 4

近年の精神障害者の就労ニーズ急増に伴い,就労移行支援員の養成が課題となっている。しかし,医療・福祉の支援から職場での支援への「橋渡し期」特有の利用者に必要な就労スキルや,それらのスキル習得を支援する介入方略については未解明である。そこで本研究は,就労移行支援事業所の支援員(n=18)から得られたデータを質的に分析することで,利用者が就労スキルを習得していくプロセスと,支援員がそれを支援するプロセスとを統合的に明らかにする。分析の結果,55概念,4コアカテゴリー(「作業ギャップ発見→やり方を教える」「対人ギャップ発見→他者分析→付き添いながら経験させる」「認知ギャップ発見→自己分析→受けつつの技掛け」「自立発見→他者との連携」),19カテゴリー,2サブカテゴリーが生成された。「就労移行支援員による利用者のスキル発達支援過程」は,「就労スキルの熟練者が,就労に必要なスキルを順番に訓練していく」という上から下への一方向的な支援ではなく,「支援員と利用者が相互作用を続ける結果,利用者は就労スキル,支援員は支援スキルが発達していく」という互恵・循環的なプロセスを示していた。利用者の異なるスキル発達のためには,異なる支援方略が必要である。支援員の心理的要因が支援スキル発達に影響している。
著者
江川 亮
出版者
一般社団法人 日本教育心理学会
雑誌
教育心理学研究 (ISSN:00215015)
巻号頁・発行日
vol.6, no.1, pp.28-40,63, 1969-10-15 (Released:2013-02-19)
参考文献数
13

1都市と農村の児童群 (各群とも小学校4年から中学校3年まで各学年25名) に鈴木治太郎氏の「実際的個別的知能測定法」を実施しその両群の比較を学年別に得点でみると, いずれの学年も都市群が優れ, 農村群が劣るのを明らかに認めることができる。この得点という全体的な表示での比較差異は, いわば量的な差異といえる。2項目の通過・非通過を検討することによつて両群各々の心的な機能を明らかにすることから, この検査での上の量的な差異の妥当性を吟味しようとするのが本研究の目的である。量に対する質の検討ということができよう。手続きは両群から39点から57点の間に分布する得点者を抽出し, 得点間隔3点で7段階に区分し, 群別段階別に標本を集めた. 検討の結果, 各段階ともいずれの項目, あるいはいずれの項目類型にも両群間に明らかな差異が認められず, また両群の項目通過の相関もきわめて高い値を示した。なお通過率の上昇, 相関傾向等によつてこの検査の両群における内的整合度の高いことを知ることができた。最終通過項目が同一の標本で集めた場合も結果は同様であつた。3上の結果より各群の特定の心的な機能の差異は, a項目群, b項目群と名付けた二類型にやや見出されるといえるにすぎなく, 明確な差異傾向を示すことができなかつた。4したがつてこめ検査では, 得点をいわゆる知能の全体的な表示とするとき, その同一水準は心的な機能のそれをも規定できるということを推論でき, 得点の低位は, 量とともに質のそれをも記述しうることを明らかにすることができる。5以上から, この検査は問題とその方法の見本が都市に偏することなく抽出されていて環境条件の相異する両児童群の共有の尺度としての信頼性をもつといえる。この見本性についての不安は標準化が都市中心であることに帰せられ, 多くの検査と同様にこの検査について注意を要する点として指摘されていた。6都市農村の分類は, 二つの環境類型化であつて, それら各々を構成する特殊的因子を捨象したいわば平均的な類型化である。著者はその特殊的因子, すなわちそれぞれの地域社会における階層類型 (29類型) を見出し, それらに帰属する児童がいかなる精神発達の段階秩序をもつか, あるいはまたそれらの段階秩序が都市から農村への移行的連続の過渡形態としていかなる類型をその間に挿入しうるかという検討を通じ, それら知能の差を生ぜしめる環境的要因の考察を試みようとした。そして「生活の差を, その生産手段の所有状態, 労働力の存在形態の差異」 (6) でとらえ, それにGoodenough (2) の分類を加味した階層類型と, この検査で測定される知能はきわめて密接に (F0=6.72) 関係するのを見出すことができた。以上における分析の詳細は省略するが, この類型化も公式的形式的類型であるというそしりをまぬかれえない。量を規定する質, その質を制約している枠組すなわち環境的要因を見出すという一連の研究がなされなければ, なんら教育の実践に貢献するものになりえないと思う。その直接的実質的な環境要因を明らかにすること, そこに心理学における階層化の目的が存すると思うが, 隣接諸科学の知見の組識的な協力をえて心理学的に抽象される環境類型が把握されなければならないと思う。
著者
村山 航
出版者
一般社団法人 日本教育心理学会
雑誌
教育心理学研究 (ISSN:00215015)
巻号頁・発行日
vol.54, no.2, pp.265-279, 2006-06-30 (Released:2013-02-19)
参考文献数
127
被引用文献数
2 3

学習者は, テストを受ける中で,“テスト作成者はこういったことを評価したいのだ”とその評価基準・意図を推察し, それにあわせて自らの学習行動を変化させることがある。本稿では, そのような現象を“テストへの適応”と呼び, 関連領域を包括的に概観しながら,1) 実証的にどのような形で支持されているのか,2) どのような教育実践上の問題点を持っているのか,3) その問題を解決するための視点として何が考えられるか, の3点に関して検討を行った。実証的な支持に関しては, テスト期待効果研究と学習方略研究を取り上げ, それらを統合的に捉える仮説を提出した。問題点としては“学習行動の危機”と“妥当性の危機”という2点を指摘した。最後にこれらの問題を解決するために, テストワイズネス・テストスキルの個人差の排除, 新しい評価 (alternative assessment) の導入, インフォームドアセスメント (informed assessment), 妥当性概念の拡張, 表面的妥当性への意識, という5つの視点を提出した。
著者
三木 安正 波多野 誼余夫 久原 恵子 井上 早苗 江口 恵子
出版者
日本教育心理学会
雑誌
教育心理学研究 (ISSN:00215015)
巻号頁・発行日
vol.12, no.1, pp.1-11, 1964-03

以上のべたように,われわれは双生児の対人関係の発達をさまざまな面から検討してきた。その主な結果は,以下の点に要約されよう。(1)親との関係双生児は,対の相手を持っているという特殊な条件のために,一般児と比較した時に,親との関係において差があるのではないか,すなわち,双生児は相手に対して依存的であるために,親からの独立は一般児におけるほど抵抗がなく,早くすすむのではないか,あるいは反対に,相互に依存的であることは親に対しても依存傾向が汎化し,一般児より親からの独立がおくれるのではないかという予想をもっていたのであるが,これらは,いずれも否定され,双生児と一般児の間に有意な差がほとんど認められなかった。これに対しては,母親に対する依存は対の相手に対するそれとは,質的に異なったものではないかという理由が考えられる。(2)友だちとの関係双生児の対の相手が,親友の役割りを果たしてしまうことから,双生児の友だち関係は一般児の場合に比べ発表しにくいのではないか,という予想をもっていた。結果は予想どおりで,双生児は友だちに依存することが少なく,かつまた友だちそのものを求めることが弱いようであった。相手に強く依存しているときにはとくにこの傾向が著しい。(3)双生児の自主的傾向.双生児の対の相手の存在が双生児の自主的僚向の発達を妨げてしまうことがあるのではないか,という予想も,ほぼ支持された。すたわち,一般児にくらべ双生児,しかも相手とのむすびつきが強い双生児ほど,自分で決める回数が少なく,他人の決定に従うことが多いことが見出された。第I報(三木安正ほか,1963)にも述べたように,われわれは対人関係の発達は,依存から自立へとすすむという従来の考え方に加えて,その過程として,依存性の発達をとおしての自立ということを考えてきたわけである。すなわち,人間は,赤ん坊時代の,まったく依存している状態から,成長するにつれて自立性を獲得していくのであるが,それは,依存傾向がしだいに禁止されるというのではなく,依存のしかたに変化がおきて依存の質が変っていくというプロセスをたどっていくものと考えているのである。従来,自立性は自分の意志を貫きとおせること,自分ひとりでものごとを処理できること,ひとりでいられること,などというその最終的な現象面が強調されてきた(たとえばHeathers,1955)。そのために,ひとりでおくことや依存を禁止することが自立性の確立のために有益である,と考えられていたようである。けれどもわれわれは,自立性とはいろいろなものに、じょうずに依存し,しっかりした依存構造のうえにたった自己の確立であるという見方が必要であり,かつまたこのような見方こそが,教育の場において有効であると考えている。すなわち,特定の対象への中心化から脱して,さまざまなものに依存しているという状態が自立性の発達する可能性を与えると考えているわけである。この点に関連して,今回の研究により示唆されたことを次に述べよう。
著者
安達 智子
出版者
一般社団法人 日本教育心理学会
雑誌
教育心理学研究 (ISSN:00215015)
巻号頁・発行日
vol.49, no.3, pp.326-336, 2001-09-30 (Released:2013-02-19)
参考文献数
35
被引用文献数
9 7

大学生を対象として社会・認知的進路理論 (Lent et al., 1994) で設定される進路発達プロセスについて検証した。同理論に従えば, 効力感が高く価値ある結果が得られると判断するとき, 進路活動に対する興味が内発し, 目標の設定や行動の具現化につながる。本研究では, 進路選択に対する自己効力感と結果期待が, 就業動機を媒介して進路探索意図と進路探索行動へ影響を及ぼす過程について, 重回帰分析を段階的に適用し検討した。また, 同過程に対して性別が及ぼす効果についても検討を加えた。その結果, 自己効力感と結果期待は, いずれも就業動機を媒介して探索意図に肯定的な影響を及ぼしていた。なかでも, 仕事そのものに対して内発的に喚起される自己向上志向動機が, このプロセスにおいて重要な役割を担うことが示された。進路探索行動に対しては, 自己効力感から直接の影響が認められ, 結果期待と就業動機は影響を及ぼしていなかった。また, 性別は結果期待と関連し, 男性は女性よりも望ましい結果期待を有することが明らかになった。
著者
秋田 喜代美
出版者
一般社団法人 日本教育心理学会
雑誌
教育心理学研究 (ISSN:00215015)
巻号頁・発行日
vol.44, no.2, pp.176-186, 1996-06-30 (Released:2013-02-19)
参考文献数
26
被引用文献数
20 4

In order to investigate how images of teaching change in the course of expertise, experienced teachers, novice teachers, students who took teacher education courses at the university, and students who didn't take them were compared on metaphor-making tasks. They were asked to make metaphors on 3 topics: “Lesson, Teacher and Teaching”. Both teachers and students made almost the same amount of metaphors. In the contents of the metaphors, however, there were some differences between them. Many students had images of teaching as transmission and routine work, and of teacher as teller. On the contrary, many expert teachers had images of teaching as joint construction with pupils and managing unpredictable situations, and of teacher as helper and supporter. These results suggested that students had explicit preconceptions about teaching before becoming teachers and their images of teaching changed with expertise.
著者
内海 しょか
出版者
一般社団法人 日本教育心理学会
雑誌
教育心理学研究 (ISSN:00215015)
巻号頁・発行日
vol.58, no.1, pp.12-22, 2010 (Released:2012-03-27)
参考文献数
40
被引用文献数
14 9

本研究では, 青年期の子どもにおけるネットいじめの特徴を調べ, 親の統制に対する子どもの認知とネット行動との関連を示すモデルを検討した。中学生487名を対象にした質問紙調査を行い, パソコンと携帯電話によるネット使用時間, インターネットを通して攻撃を行った経験・受けた経験, 関係性攻撃, 表出性攻撃, 親のネット統制(実践, 把握, 接続自由)認知を測定した。その結果, ネットいじめ非経験者の割合は67%, いじめの経験のみ8%, いじめられの経験のみ7%, 両方経験は18%であった。両方の経験を持つ者は, どちらも経験していない者に比べ関係性攻撃や表出性攻撃が有意に高く, 携帯電話によるインターネット使用時間が有意に長かった。いずれの統制認知もネットいじめ・いじめられ経験を直接予測しなかったが, 実践認知は間接的に, 把握認知と接続自由の認知は直接的に子どものネット使用時間を予測した。ネット使用時間および, 関係性攻撃はネットいじめ・いじめられ経験の両方に直接関連することが明らかとなった。
著者
江上 園子
出版者
一般社団法人 日本教育心理学会
雑誌
教育心理学研究 (ISSN:00215015)
巻号頁・発行日
vol.61, no.2, pp.169-180, 2013 (Released:2013-10-10)
参考文献数
34
被引用文献数
5 3

本研究は, 幼児を持つ夫婦304組(合計608名)を対象にして, 父親と母親の「母性愛」信奉傾向が両者の抱く夫婦関係満足度と養育態度へ与える影響を家族システムの観点から検証したものである。分析の結果, 父親(夫)の場合, 自身と母親(妻)の「母性愛」信奉傾向は夫婦関係満足度に影響しないが, 母親の場合は父親と自身の「母性愛」信奉傾向の交互作用効果が見られ, 夫婦双方の「母性愛」信奉傾向が低い場合に夫婦関係満足度が高く, 父親の「母性愛」信奉傾向が高く自身の「母性愛」信奉傾向が低い場合に夫婦関係満足度が低いということがわかった。養育態度については, 父親の場合, 夫婦関係満足度が高いと子どもへの応答性も統制も強くなり, 積極的に子どもとかかわる姿勢が見られるということ, 自身の「母性愛」信奉傾向が2つの養育態度に異なる作用の仕方をしているということが認められた。母親の場合には父親と自身の「母性愛」信奉傾向の交互作用効果が認められ, 夫婦双方の「母性愛」信奉傾向が高い場合に応答的な養育態度が高く, 父親の「母性愛」信奉傾向が高く母親の「母性愛」信奉傾向が低い場合に応答性は低かった。父親と母親で, 「母性愛」信奉傾向の夫婦関係満足度と養育態度への作用の様相が異なることが議論された。
著者
麻柄 啓一
出版者
一般社団法人 日本教育心理学会
雑誌
教育心理学研究 (ISSN:00215015)
巻号頁・発行日
vol.40, no.1, pp.20-28, 1992-03-30 (Released:2013-02-19)
参考文献数
8
被引用文献数
1

Whereas Piaget established conservation task to asess children's understanding of extensive quantity, this study aimed at establishing another kind of conservation task to asess children's understanding of intensive quantity, e.g. the concept of density. The following study examined children's misconception of density by using our conservation task. Subjects were sixth graders. A typical question was asked in the conservation task: Which density is greater, a big or a small aluminium lump? Although subjects were taught in advance that density of substance was given by its weight per unit volume (1 cm3), commonly explained in school education, half of the subjects failed to answer the question. They answered that the density was greater for the big lump, suggesting they did not understand the concept of density by a commonly given definition. Results were discussed from the viewpoint of the formation process of intensive quantity concept. A teaching method to lead children to a better understanding of the nature of intensive quantity was proposed.
著者
外山 美樹
出版者
一般社団法人 日本教育心理学会
雑誌
教育心理学研究 (ISSN:00215015)
巻号頁・発行日
vol.63, no.1, pp.1-12, 2015 (Released:2015-08-22)
参考文献数
34
被引用文献数
4 4

本研究の目的は, 熟考を“結果に対する熟考”と“計画に対する熟考”に分けて測定できる認知的方略尺度を新たに作成し, その信頼性と妥当性を検証することであった。研究1より, “失敗に対する予期・熟考”, “成功に対する熟考”, “計画に対する熟考”ならびに“過去のパフォーマンスの認知”の4つを下位尺度とする認知的方略尺度20項目が作成された。また, 研究2より, 認知的方略尺度の信頼性(内的一貫性と時間的安定性)と一部の妥当性が確認された。研究3より, 認知的方略尺度の下位尺度の組み合わせによって, 4つ(防衛的悲観主義群, 楽観主義群, 悲観主義群, メタ認知低群)の異なった認知的方略パターンが確認された。4つの群の存在ならびに各群における特徴は, 先行研究とほぼ同様であり, 本尺度を用いて4つの異なった認知的方略パターンを抽出することが可能になったと言える。
著者
松原 達哉
出版者
一般社団法人 日本教育心理学会
雑誌
教育心理学研究 (ISSN:00215015)
巻号頁・発行日
vol.14, no.1, pp.37-44, 1966-03-31 (Released:2013-02-19)
参考文献数
16
被引用文献数
1

子どもの就学は, おおまかに6才といわれるが, しかし, 誕生日の違いで, 実際に入学する年令は異なっている。ある子どもは6才0か月で, 他の子どもは6才11月で小学校1年生になる。そこで, 本研究では, 子どもを年少児群・中間児群・年長兜群の3群にわけ, 学力・体位・欠席日数「指導性について縦断的に比較検討した。年少児群は, 6才0~1か月, 中間児群は, 6才5~6か月, 年長児群は, 6才10~11か月で入学するものである。結果はつぎのようである。1. 国語, 社会, 算数, 理科などの知的教科は, 平均しで2~3年間年長児群の方が年少児群に比較してすぐ, れている。しかし, 3~4年ころからその差異はなくなっている。2. 音楽は1年間, 図工は5年まで, 特に, 体育は, 6年間年長児群が有意にすぐれていることがめだっている。3. 身長・体重・胸囲・座高などの体位は, 男女とも小学1年生から中学3年生まで, 年長児群が年少児群に比較してすぐれている (ただし, 女子の身長, 座高は中学2年生まで) 。中間児群は, 両群の中位を占めて発達している。4. 欠席日数は, 小学1~2年間は年少児群の方にやや多い傾向がある。5. 学校委員およびクラブ活動の委員の人数は, 4年生まで年長児群にやや多い傾向がある。
著者
小塩 真司 岡田 涼 茂垣 まどか 並川 努 脇田 貴文
出版者
一般社団法人 日本教育心理学会
雑誌
教育心理学研究 (ISSN:00215015)
巻号頁・発行日
vol.62, no.4, pp.273-282, 2014
被引用文献数
27

本研究では, 日本で測定されたRosenberg(1965)の自尊感情尺度の平均値に与える調査対象者の年齢段階や調査年の要因を検討するために, 時間横断的メタ分析を試みた。1980年から2013年までに日本で刊行された査読誌に掲載された論文のうち256研究を分析の対象とした。全サンプルサイズは48,927名であった。重回帰分析の結果, 調査対象者の年齢段階と調査年がともに, 自尊感情の平均値に影響を及ぼすことが明らかにされた。年齢段階に関しては, 大学生を基準として, 調査対象者が中高生であることが自尊感情の平均値を低下させ, 成人以降であることが自尊感情の平均値を上昇させていた。また調査年に関しては年齢層によって効果が異なっていた。中高生や成人においては最近の調査であるほど直線的に自尊感情の平均値が低下しており, 大学生では曲線的に変化し, 近年は低下していた。また件法が自尊感情得点の平均値に影響を及ぼすことも明らかにされた。
著者
三木 安正 波多野 誼余夫 久原 恵子 井上 早苗 江口 恵子
出版者
一般社団法人 日本教育心理学会
雑誌
教育心理学研究 (ISSN:00215015)
巻号頁・発行日
vol.12, no.1, pp.1-11,59, 1964-03-30 (Released:2013-02-19)
参考文献数
3
被引用文献数
1

以上のべたように, われわれは双生児の対人関係の発達をさまざまな面から検討してきた。その主な結果は, 以下の点に要約されよう。(1) 親との関係双生児は, 対の相手を持つているという特殊な条件のために, 一般児と比較した時に, 親との関係において差があるのではないか, すなわち, 双生児は相手に対して依存的であるために, 親からの独立は一般児におけるほど抵抗がなく, 早くすすむのではないか, あるいは反対に, 相互に依存的であることは親に対しても依存傾向が汎化し, 一般児より親からの独立がおくれるのではないか, という予想をもつていたのであるが, これらは, いずれも否定され, 双生児と一般児の間に有意な差がほとんど認められなかつた。これに対しては, 母親に対する依存は対の相手に対するそれとは, 質的に異なつたものではないかという理由が考えられる。(2) 友だちとの関係双生児の対の相手が, 親友の役割りを果たしてしまうことから, 双生児の友だち関係は一般児の場合に比べ発展しにくいのではないか, という予想をもつていた。結果は予想どおりで, 双生児は友だちに依存することが少なく, かつまた友だちそのものを求めることが弱いようであつた。相手に強く依存しているときにはとくにこの傾向が著しい。(3) 双生児の自主的傾向双生児の対の相手の存在が双生児の自主的傾向の発達を妨げてしまうごとがあるのではないか, という予想も, ほぼ支持された。すなわち, 一般児にくらべ双生児, しかも相手とのむすびつきが強い双生児ほど, 自分で決める回数が少なく, 他人の決定に従うことが多いことが見出された。第I報 (三木安正ほか, 1963) にも述べたように, われわれは対人関係の発達は, 依存から自立へとすすむという従来の考え方に加えて, その過程として, 依存性の発達をとおしての自立ということを考えてきたわけである。すなわち, 人間は, 赤ん坊時代の, まつたく依存している状態から, 成長するにつれて自文性を獲得していくのであるが, それは, 依存傾向がしだいに禁止されるというのではなく, 依存のしかたに変化がおきて依存の質が変つていくというプロセスをたどつていくものと考えているのである。従来, 自立性は自分の意志を貫きとおせること, 自分ひとりでものごとを処理できること, ひとりでいられること, などというその最終的な現象面が強調されてきた (たとえばHeathers, 1955)。そのために, ひとりでおくことや依存を禁止することが自立性の確立のために有益である, と考えられていたようである。けれどもわれわれは, 自立性とはいろいろなものにじようずに依存し, しつかりした依存構造のうえにたつた自己の確立であるという見方が必要であり, かつまたこのような見方こそが, 教育の場において有効であると考えている。すなわち, 特定の対象への中心化から脱して, さまざまなものに依存しているという状態が自立性の発達する可能性を与えると考えているわけである。この点に関連して, 今回の研究により示唆されたことを次に述べよう。(1) 依存の対象・位置 依存の対象となるものは, それぞれ独自の機能を果たしていると考えられる。IIIでみたように, 双生児も一般児も, 親との関係では差がみられなかつた。双生児は, 相互の結びつきの強い, 同性で同年令の相手を持つているにもかかわらず, そのことによつて親への依存は, ほとんど影響をうけてはいなかつた。親は年令も違うし役割りもちがい, とうてい対の相手ではかわることのできぬ存在なのであろう。3. 3. でも述べたように, 双生児はたしかに対の相手になんでも話し相談するが, 親に相談しなくてはならぬ領域 (たとえば, 進路の決定) も多いことからも, 親が果たしている機能は, 相手のそれとはまた別のものであることがうかがわれよう。もし, 依存構造というものを仮定するならば, その構造の中に親のしめる位置が分化してあり, 他のもの (この場合には, 双生児の対の相手) によつては代用されにくいということが考えられよう。これとは異なり, 依存の対象として比較的よく似た機能をはたしている者相互においては,“代用される”という現象が十分生じうるであろう。事実このことは3. 2., 3. 3. にも示されている。第1に双生児では, 友だちとのむすびつきが一般児よりも弱いということがそれである。そして, さらに3. 3. で分析したように双生児の相手へのむすびつきの強い場合は, 友だちに相談することが少なく, 反対にむすびつきの弱い場合には, 友だちとのむすびつきが強くなつている。みかたをかえれば, 友だちとのむすびつきが強まるにつれて, 相手へのむすびつきが弱まるということである。これは双生児の片方は, 他方に対して友だちの役割り, またはそれ以上のものを果たしてしまうということにもとつくものであろう。友だち-そのほとんどが同年令 (同学年) で同性と考えられる-の機能は, 同年令で同性である対の相手がいつも身近にいるということで, すでにお互いの間で果たされてしまつていて, あらためてわざわざ他に求める必要がおきないのだ, という解釈が妥当のように思われる。“代用される”という点については, 同じく3. 2., 3. 3. で明らかになつたもうひとつの証拠が注目される。それは, 双生児と他のきようだいとの関係は, 友だちの場合にくらべて, 一般児とそのきようだいとの関係にかなり近い, ということである。今回の研究では, 年令の隔たりについての資料がないので, はつきりはつかめないが, 双生児の相手以外のきようだいとの関係は, 年令の隔たりが大きければそれだけ一般児のきようだいとの関係に似てくると予想される。つまり, 依存構造のなかで, 同性で同年令である友人の場所には, 対の相手がおさまつているのだが, 年令のちがうきようだいの位置は, 友だちの場合とはちがつて, 相手では代用されにくい。依存構造の中には, それぞれ質のちがう対象が, おのおのの位置を占めているのだが, 双生児の場合には対の相手がいるため, 相手とよく似た質のものが, すなわち, 友だちや年令の近いきようだいの必要度が小さくなつているのではないだろうか。とくに相手との結びつきが強いときには, この傾向が著しくなるのであろう。(2) 依存の対象の数と距離依存の対象は, 成長するにつれて, 増えていく。親, 教師, きようだい, 友だち, 他人……という具合に増えていくことが知られている。そして, 対象は数が増えると同時に, 身近なものから, 遠い存在のものへと, あるいは現実的なものから抽象的なものへと, その範囲が拡がり, その距離が遠くなる。つまり, 依存の対象は, 徐々にその数と距離とを増したものまでを含めることができるようになつていく。このようなプロセスで, 依存性が発達していくにつれて自立性が獲得される。すなわち, 多くのものに依存している状態は, いいかえればある特定の対象に中心化することがない状態である。したがつて, ある対象によつて行動が左右されてしまう, ということは, 少なくなる。他人に左右されることの少ない, 行動の柔軟性と均衡とを持つことができるのである。このことが, 自立性の発達する前提条件だと考えているわけである。このように考えていくと, 成長のプロセスにおいて, 依存の対象として, 友だちを必要とすることの少ない双生児に, 問題がないとはいえないであろう。双生児は一般に結びつきが強い。われわれが, 幼児双生児について行なつた積木あそびの観察 (久原恵子ほか, 1963) では以心伝心型とよばざるをえないコミュニケーションが多かつたし, また今回の面接においては, 「相手に話していると, 自分に話している感じがする」(中1, 女子) と0いう発言があつたほど, 一体感を持つことが多いようである。双生児においては, ふたりでありながら, ひとりのような感じのする対の相手が, 全然ちがう個体であり, しかも, 全然ちがうものを持つているはずの友だちの役割りまで果たしてしまうことになる。このことは, 次の2点で重要である。ひとつには, このために特定の, 対象への中心化に伴なうマイナスがいつそう大きくなるであろう。中心化される対象が自分といろいろな点で異なつているであろう「親友」などの場合にくらべ, 双生児の中心化する相手は, ある意味では自分自身にほかならない。第2に, このためにこそ, 中心化していることの不都合さが意識されず, 相手に対する依存がいつまでも強いままで, 脱中心化が生じにくい。つまり, 対の相手に強く依存している双生児は, 依存の発達のステツプを踏みはずしてしまうことになりかねない。この点について, われわれは, さらに別の面から別の方法でアプローチするつもりであるが, 3. 2., 3. 3. に述べた, 双生児の自主的傾向の未発達は問題の一端を示しているのではないであろうか。
著者
長南 浩人
出版者
日本教育心理学会
雑誌
教育心理学研究 (ISSN:00215015)
巻号頁・発行日
vol.49, no.4, pp.417-426, 2001
被引用文献数
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本研究は, ろう学校高等部の生徒35人を被験者として日本手話・中間型手話・日本語対応手話の構造の違いが手話表現の理解に与える影響を, 被験者の手話能力と日本語能力という2つの要因から検討したものである。理解テストは, 被験者が, 日本手話, 中間型手話, 日本語対応手話を見て, それぞれと意味的に等価な絵をワークシートから選択するという方法で行われた。その結果, 手話能力と日本語能力が共に高いGG群は, 理解テストにおいて日本手話, 日本語対応手話のどちらでも高い得点を示し, 手話能力が高く日本語能力が低いGP群は, 日本手話でのみ高い得点を示し, 手話能力が低く日本語能力が高いPG群は, 日本語対応手話でのみ高い得点を示し, 手話能力と日本語能力が共に低いPP群は, いずれの手話表現でも低い得点を示したというものであった。このことから, ろう学校高等部の生徒が理解しやすい手話の種類には個人差があることが分かった。また, 中間型手話はどの被験者にとっても理解が難しい表現方法であることが分かった。