著者
日本教育心理学協会編集
出版者
国土社
巻号頁・発行日
1953
著者
堀内 和美
出版者
一般社団法人 日本教育心理学会
雑誌
教育心理学研究 (ISSN:00215015)
巻号頁・発行日
vol.41, no.1, pp.11-21, 1993-03-30 (Released:2013-02-19)
参考文献数
27
被引用文献数
1 1

The purpose of this study was to clarify the psychological changes in middle-aged women based on three occupational groups (housewives, nurses and school teachers) from a viewpoint of the Erikson's concept of ego identity (1950). Semi-structured interviews were conducted with 59 women in their 40's: 17 housewives, 23 nurses and 19 teachers. The following results were found. First, ego identity changes were reported to occur in middle-age, and the nature of changes differed among the three groups: 1) housewives intended to get a new identity outside the home, because domestic roles were thought inappropriate as the bases of identity; 2) nurses tended to keep occupational identity built firmly in adolescence, and 3) identity changes among teachers were closely related to the quality of education in the school. Second, the four patterns of ego identity changes were suggested: a) stable home (occupational) identitypersonal identity: b) unstable home (occupational) identity personal identity ; c) stable home (occupational) identityreconfirmation and continuance ; and d) unstable home (occupational) identity unable to change.
著者
松田 文子 永瀬 美帆 小嶋 佳子 三宅 幹子 谷村 亮 森田 愛子
出版者
日本教育心理学会
雑誌
教育心理学研究 (ISSN:00215015)
巻号頁・発行日
vol.48, no.2, pp.109-119, 2000

本研究の主な目的は, 数と長さの関係概念としての「混みぐあい」概念の発達を調べることであった。実験には3種の混みぐあいの異なるチューリップの花壇, 3種の長さの異なるプランター3種の数の異なるチューリップの花束の絵が用いられた。参加者は5歳から10歳の子ども136名であった。主な結果は次のようであった。(a) 5, 6歳児では, 混んでいる・すいているという意味の理解が, かなり難しかった。(b) 数と長さの問の比例的関係は, 5歳児でも相当によく把握していた。しかし, この関係への固執が, 混みぐあい=数長さという1つの3者関係の形成を, かえって妨げているのではないか, と思われた。(c) 長さと混みぐあいの反比例的関係の把握が最も難しかったが, 8歳児は, 2つの比例的関係と 1つの反比例的関係のすべてを, かなりよく把握しているようであった。(d) これら3つの2者関係を1 つの3者関係に統合することは大変難しかった。8歳から10歳にかけて大きく進歩したが, 10歳でも約 25%の子どもしか統合を完了していないようであった。このような結果は, 小学校5年算数「単位量あたり」が子どもにとって難しい理由を示唆した。
著者
竹村 洋子
出版者
日本教育心理学会
雑誌
教育心理学研究 (ISSN:00215015)
巻号頁・発行日
vol.56, no.1, pp.44-56, 2008-03-30

本研究では,通常学級における「問題行動」をめぐる教師-児童間相互作用について,児童とのかかわりに対する教師の評価に焦点をあて,問題状況に関して検討を行った。研究1では問題性評価尺度及び対処行動評価尺度が調えられた。因子分析の結果,問題性評価尺度は影響性評価・対処可能性評価の2因子9項目,対処行動評価尺度は問題解決志向・支援希求志向・情動軽減志向の3因子16項目の構造として理解することが適当だと考えられた。研究2では2つの尺度の結果についてクラスタ分析を行った。その結果,児童とのかかわりにおいて生じる問題に対する教師の問題性評価は4類型,対処行動評価は5類型に分類可能であることが示された。研究3では,通常学級における「問題行動」をめぐる教師-児童間相互作用への介入を実施し,研究1で作成した尺度を用いて介入に伴う教師の評価の変化についてデータを得た。その結果,教師への介入後に対処行動評価の類型の変化が,フォローアップ期には教師の問題性評価の類型の変化が示された。教師の評価のうち,対処行動評価が教師-児童問相互作用を規定する要因である可能性が示された。
著者
石井 僚
出版者
The Japanese Association of Educational Psychology
雑誌
教育心理学研究 (ISSN:00215015)
巻号頁・発行日
vol.61, no.3, pp.229-238, 2013
被引用文献数
4

本研究では, 青年期において死について考えることが, 時間的態度にどのような影響を及ぼすのかについて実験的に検討した。実験参加者である大学生127名を, 死について考える群41名, 生きがいについて考える群43名, 死や生きがいとは無関係なものについて考える統制群43名に分け, それぞれ課題の前後に時間的態度を質問紙によって測定した。時期(課題前・課題後)×課題(死・生きがい・統制)の2要因分散分析を行った結果, 死について考える群においてのみ, 課題後に時間的態度が肯定的になることが示された。死について考えることには, 生きがいについて考えることによっては得られない, 時間的態度を肯定的にするという効果があることが示された。また, 課題に対する自由記述の分析からは, 死について考えることには, 人生の有限性を再認識させ, 時間の大切さについて考えさせるという特徴があることが明らかとなった。以上より, デス・エデュケーションの持つ心理的機能として, 人生の有限性を再認識させ, 現在を中心とした時間的態度を肯定的にするという一側面が明らかになったといえる。
著者
町 岳 中谷 素之
出版者
The Japanese Association of Educational Psychology
雑誌
教育心理学研究 (ISSN:00215015)
巻号頁・発行日
vol.62, no.4, pp.322-335, 2014
被引用文献数
5

本研究では, 小学校5年生の算数グループ学習における相互教授法(Palincsar & Brown, 1984)の介入効果を, 学習課題達成度(分析1)・グループ学習への肯定的認知(分析2)・発話プロセス(分析3)により検討した。相互教授法による教示を行った介入群と, 自由に話し合いをさせた対照群を比較したところ, 介入群では学習に関連する深い発話が多く非学習関連発話が少ないことや, 学習課題の達成度が高く, グループ学習への関与・理解に対する認知が向上するといった, 相互教授法の介入効果が示された。次に児童を向社会的目標の高・低によりH群・L群に分割し, 児童の個人的特性と相互教授法介入との交互作用効果について検討した。その結果, グループ学習開始前には低かったL群児童のグループ学習への関与・理解に対する認知が, 介入群において向上した。また発話プロセスの分析からは, 相互教授法による話し合いの構造化によって, 向社会的目標L群児童では, 非学習関連発話が抑制されることで, グループ学習への関与が促されるという結果が見られた。またH群児童においても, 学習に関連する深い発話が促されるなど, より能動的な関与を促進する可能性が示された。
出版者
日本教育心理学会
雑誌
教育心理学研究 (ISSN:00215015)
巻号頁・発行日
vol.62, no.4, pp.349-350, 2014-12
著者
阿部 晋吾 太田 仁
出版者
The Japanese Association of Educational Psychology
雑誌
教育心理学研究 (ISSN:00215015)
巻号頁・発行日
vol.62, no.4, pp.294-304, 2014
被引用文献数
1

本研究では中学生を対象に, 自己愛傾向の程度によって, 教師からの叱りの動機推測が援助要請態度に及ぼす影響に差異がみられるかどうかを検討する質問紙調査を行った。その結果, 教師からの叱りに対して向社会的動機を推測するほど, 援助適合性認知は高くなる一方, 自己中心的動機を推測するほど, 援助適合性認知は低くなることが示された。自己中心的動機の推測はスティグマ認知にも影響を及ぼしていた。また, 自己愛傾向の高い生徒は, 向社会的動機の推測の影響が弱く, 自己中心的動機の推測の影響が強いことも明らかとなった。
著者
小浜 駿
出版者
一般社団法人 日本教育心理学会
雑誌
教育心理学研究 (ISSN:00215015)
巻号頁・発行日
vol.62, no.4, pp.283-293, 2014
被引用文献数
2

本研究では, 先延ばしの際に生じやすい意識から先延ばしを3パターンに分け, 3パターンそれぞれの先延ばしを行いやすい者の学業遂行について検討することを目的とした。学業遂行に影響を与えると考えられる変数として, 3パターンの先延ばしを行いやすい者の仮想的有能感および達成目標についても検討が行われた。292名の4年制大学生を対象とした質問紙調査の結果, 以下の3点が明らかとなった。第1に, 否定的感情が一貫して生じる先延ばしは, 学業遂行に悪影響を与えないことが明らかとなった。ただし, 失敗を回避しようとする状況では学業遂行に悪影響が生じる可能性が示唆された。第2に, 状況の楽観視から生じる先延ばしは, 学業遂行に悪影響を与えることが明らかとなった。また, 低い学業遂行の帰結として生じる自己評価の低さを, 他者軽視に基づく仮想的有能感によって補償していることが推察された。第3に, 計画性をもって行われる先延ばしは, 学業成績に好影響を与えることが明らかとなった。計画性をもって行われる先延ばしは, 気晴らしの機能をもつ先延ばしによって課題遂行のための目標が明確化するために学業遂行に好影響を与えると推察された。
著者
曽山 いづみ
出版者
一般社団法人 日本教育心理学会
雑誌
教育心理学研究 (ISSN:00215015)
巻号頁・発行日
vol.62, no.4, pp.305-321, 2014
被引用文献数
1

本研究は新任小学校教師9名を対象に1年間計4回の継時的インタビューを行い, 新任教師の経験過程を明らかにした。1学期, 夏休み, 2学期, 3学期末以降のインタビュー時期別に, 1: 子どもへの理解とかかわり方, 2: 先生としての自分のあり方, 3: 1, 2を促進する要因, 阻害する要因, について分析を行った。新任教師は【わからなさ/難しさに直面する】【子どもの色々な姿を見る】ことを通して徐々に【自分なりの感覚をつかむ】ことができるようになっていた。一方で【先生としてのあり方に悩む】ことと【自分らしいあり方が明確になる】ことを揺れ動きながら, 教師としてのアイデンティティを模索, 形成していた。担任クラスでの困難が大きく, かつ周囲のサポートが得られにくいときには【担任としての責任の範囲】に深く悩むことが示唆された。発達過程を阻害する要因として, 1学期時はリアリティ・ショックや環境への適応が強くあったが, 徐々にその影響は小さくなっていた。同僚教師や保護者との関係は, 阻害/促進どちらの要因にもなり得, 状況文脈によってその影響は大きく変わること, 新任教師にとっては主体性の発揮が大きなテーマであることが示唆された。
著者
野村 亮太 丸野 俊一
出版者
一般社団法人 日本教育心理学会
雑誌
教育心理学研究 (ISSN:00215015)
巻号頁・発行日
vol.62, no.4, pp.257-272, 2014
被引用文献数
4

個人の認識論とは, 各人が暗黙に持っている"知識"や"知ること"の性質についての信念のことであり, 個々の信念は認識的信念と呼ばれている。本研究の目的は, 野村・丸野(2011)が想定した教授学習過程への影響のうち, 個人の認識論が授業観と授業中の振る舞いを規定するという想定を検討することであった。そのために, まず745名の学生を対象とした調査によって認識的信念尺度を作成し, その信頼性・妥当性を確かめた(研究1)。このうち, 159名(男性79名, 女性80名)の大学生に対して, 質問と回答を取り入れた講義を行った(研究2)。その結果, 同一の授業に対して, 認識的信念下位尺度のうち, 利用する知識についての性質(条件性および適用可能性)を高く見積もった群は, 授業に協同活動的な側面を見出しやすく, 授業中の質問と回答の意義を実感し活用していた。また, より議論中に自他の意見の調整を行ったと自己評価した。この結果は, 授業を協同的活動として捉えるための認識的信念という観点から議論された。
著者
三島 浩路
出版者
日本教育心理学会
雑誌
教育心理学研究 (ISSN:00215015)
巻号頁・発行日
vol.51, no.2, pp.121-129, 2003
被引用文献数
3

本研究は, 学級内における児童の呼ばれ方と, 学級内における児童の相対的な強さやインフォーマル集団との関係について検討したものである。学級内における児童の相対的な強さと呼ばれ方との関係を分析した結果, 男子児童の場合には, 「くん付け」で呼ばれる児童の方が, 他の呼び方で呼ばれる児童に比べて学級内における相対的な強さが一般的に強いという結果が得られた。また, 女子児童の場合には, 「ちゃん付け」や「あだ名」で呼ばれる児童に比べて, 「さん付け」で呼ばれる児童の方が, 学級内における相対的な強さが一般的に弱いという結果が得られた。次にインフォーマル集団内での児童の呼ばれ方と, 集団外の児童からの呼ばれ方について分析した。その結果, 男子児童に比べて女子児童の方が, 集団内での呼ばれ方と集団外からの呼ばれ方が異なる児童が多いという結果が得られた。さらに, インフォーマル集団の内外で呼ばれ方が異なる児童について, 呼ばれ方がどのように異なるのかを分析した。その結果, 女子児童の場合には, 集団外の児童からの呼ばれ方がより丁寧であるという結果が得られたが, 男子児童の場合には, インフォーマル集団内外からの呼ばれ方にこうしたちがいはみられなかった。
著者
植阪 友理 光嶋 昭善
出版者
一般社団法人 日本教育心理学会
雑誌
教育心理学研究 (ISSN:00215015)
巻号頁・発行日
vol.61, no.4, pp.398-411, 2013 (Released:2014-05-21)
参考文献数
12
被引用文献数
3 3

説明文に比べると研究は少ないものの, 文学作品の指導が子どもの表象や認識に及ぼす影響を検討することは, 生涯にわたって文学を楽しむ大人を育成するためにも重要である。文学は読み手が体験を踏まえて再構成する自由度が大きく, 説明文よりも多様な状況モデルを許容する。中でも俳句は最も文字数が少なく, この特徴を強く有している。一方, 現在の俳句指導は解釈が定まっている名句の鑑賞が中心であり, 作句活動や相互の鑑賞活動はあまり行われていない。このため俳句本来の面白さに気づくことが難しい状態である。そこで名句の鑑賞のみならず, 作句活動や相互の鑑賞活動を取り入れた新たな単元構成を提案し, 子どもの認知に及ぼす効果を検討した。また, 鑑賞会では, (1)創作者を匿名とし, 創作者も鑑賞者と一体化して鑑賞させる, (2)鑑賞や創作の技法を明示的に教えるなどの工夫を加えた。ある児童の句に着目してやり取りを分析した結果, 異なる状況モデルを共有することで, 個々の児童の想定を超えたより豊かで新しい状況モデルが生み出されうること, 文学に対する興味が喚起されていることなどが示された。最後に, この指導から得られる新たな心理学研究の可能性を論じた。
著者
竹村 明子 前原 武子 小林 稔
出版者
一般社団法人 日本教育心理学会
雑誌
教育心理学研究 (ISSN:00215015)
巻号頁・発行日
vol.55, no.1, pp.1-10, 2007-03-30 (Released:2013-02-19)
参考文献数
25
被引用文献数
6

本研究の目的は, スポーツ系部活参加の効果を, Nicholls (1992) の目標理論の枠組みにより, 明らかにすることであった。そのため, スポーツ系部活に参加する高校生 (部活群) 231名と, 部活に参加しない高校生 (非部活群) 200名とを対象に, 学業の目標志向性および適応 (無気力感・授業満足感) を測定し, 比較検討を行った。その結果, 部活群は非部活群に比べて, 課題志向性 (個人の能力の発達を目標とする志向性) および協同性 (仲間と協力することを目標とする志向性) が高いことがわかった。そして部活群は非部活群に比べて, 無気力感3因子のうちの自己不明瞭感が低く, 授業満足感が高いことから, 適応が良好であることがわかった。さらに, 部活群・非部活群ともに, 課題志向性が高いことは低い無気力感を説明することが, 一方授業満足感については説明できないことが明らかとなった。従って, スポーツ系部活は高校生の目標志向性および適応に対して概ね肯定的効果があることが明らかとなった。しかし, その効果は目標志向性の内容および適応の指標により異なるメカニズムをもつことが示唆された。
著者
岡本 真彦
出版者
一般社団法人 日本教育心理学会
雑誌
教育心理学研究 (ISSN:00215015)
巻号頁・発行日
vol.40, no.1, pp.81-88, 1992-03-30 (Released:2013-02-19)
参考文献数
15
被引用文献数
6 10

The present study analysed metacognition in the process of solving arithmetic word problem. Sixty-three fifth graders were divided into high and low performer groups based on their achievement of an arithmetic criterion test. The arithmetic word problem used in this study was made of five sub-stages: prediction of result, problem comprehension, planning, executing and evaluation of result. Two procedures were used in the present study. First came the workseat measuring problem solving behavior and the second consisted of a stimulated-recall interview to measure awareness concerning problem solving (metacognition). Verbal response and behavior in the problem solving and interview were recorded by VTR and tape-recorder. The main findings were as follows: (1) High performer had significantly more metacognition scores than low performer; (2) High performer showed more self -monitoring activity than the low one.
著者
岡部 宏行
出版者
日本教育心理学会
雑誌
教育心理学研究 (ISSN:00215015)
巻号頁・発行日
vol.11, no.1, pp.27-32, 1963-03-30

Purpose : The purposes of this study are, first, to treat unbalanced diet of children by Image-association method, and secondly, to form experimentally unbalanced diet of adults who show aversion of the milk, remove it and investigate the effect of the Image-association method and Post hypnotic suggestion. Procedure : According to this purpose the following process is taken (1) The children who have unbalanced diet were selected by means of a check list for unbalanced diet of children and treatment was given only to ten children who wanted it, by Image inducing method, Amnesia method, Direct suggestion method, Motion picture method, Age regression method, Inducing dream method and so on. (2) a. Two boy and three girl students of a college, who liked milk and were not recognized to have unbalanced diet, were selected. Everyday they were led to hypnotism half an hour and by the Image-association method and Post hypnotic-suggestion the negative attitude against milk was formed. Only after examination it was removed. b. Two boy students of a college were selected who liked milk and were not recognized to have unbalanced diet. Their dislike of milk was formed through negative suggestion and they were left as they were in order to see the process of natural removement of the suggestion. Results : (1) During this investigation period, eight children out of ten received complete treatment. By investigation six months later one out of the ten returned to the former state. Therefore the treatment percentage reduced to 70%. The difference between the experimental group and the control group was significant. (2) a. After giving the students negative suggestion for the third time it became just impossible for them to drink the milk. Even after the third time by giving removing suggestion it became possible. b. Their negative attitude against milk was seen the third or fourth time. Then it was left as it was, and S 1 was restored to the former state on the 24th day and S 2 on the 5th.
著者
三宅 幹子
出版者
日本教育心理学会
雑誌
教育心理学研究 (ISSN:00215015)
巻号頁・発行日
vol.48, no.1, pp.42-51, 2000-03-30
被引用文献数
1

本研究では, 特性的自己効力感(GSE)が課題固有の自己効力感(SSE)の変容に及ぼす影響を検討した。実験1では, 72名の大学生をGSE尺度得点によってGSE高群とGSE低群とに分けた。さらに各群をポジティブFB条件, ネガティブFB条件, FBなし条件(統制条件)の3つの条件に割り当てた。ポジティブFB条件とネガティブFB条件では, それぞれボジティブまたはネガティブに操作されたフィードバックが与えられた。SSEの評定には3種の測度(予測される課題遂行量に基づき絶対的に評定されるSSE-A, 予測される偏差値に基づき相対的に評定されるSSE-R, 統合的に評定されるSSE-T)を使用したが, GSE群間に差が見られたのは, SSE-Aにおいてのみであった。SSE-Aの値は, ネガティブFB条件下でGSE高群の方がGSE低群よりも有意に高かった。他の2つのFB条件下ではGSE高群とGSE低群との間に有意な差はなかった。SSE-T, SSE-Rでは, いずれのFB条件下でも, GSE群間に有意な差はなかった。実験2では, 40名の大学生をGSE高群とGSE低群とに分け, さらに各群をネガティブFB条件, FBなし条件に割り当てた。やはり, ネガティブFB条件下でのみ, GSE高群の方がGSE低群よりもSSE-Aの値が高かった。SSE-T, SSE-Rでは, いずれのFB条件下でも, GSE群間に有意な差はなかった。さらに, 課題遂行量にも, ネガティブFB条件下でGSE高群の課題遂行量がGSE低群よりも多くなるという, SSE-Aと同様の変容パターンの傾向が見られた。これらの結果から, GSEの高さがSSE-Aの変容を通じて課題遂行に影響している可能性が示唆された。
著者
下仲 順子
出版者
一般社団法人 日本教育心理学会
雑誌
教育心理学研究 (ISSN:00215015)
巻号頁・発行日
vol.28, no.4, pp.303-309, 1980-12-30 (Released:2013-02-19)
参考文献数
14
被引用文献数
1

本研究は, 文章完成テストに投映された老年群と青年の自己認知概念を中心にした心理特徴面を比較することにより, 老年期の自己概念の諸特徴を世代差, 性差の観点から追求することを目的として行われた。対象者は, 青年群は私立大学生男112, 女112, 計224 名である (年齢範囲18~25才)。老年群は居宅老人男110, 女89, 計199名である (年齢範囲69~71才)。社会経済条件は両群共平均かそれ以上に属している。結果: 家庭イメージでは, 両群共約半数の者は肯定的表現をしているが否定的反応では青年群の方が多く, 中立的客観的反応では老年群の方が多い。友人イメージにおいて, 肯定的反応は青年群女に多い。老年群では肯定反応とほぼ同率で客観的反応がなされておりそれは老人女に多い。体イメージでは, 青年女子が健康等の肯定反応が多く, 老年群では否定的な表明は老人女性に多い。加齢イメージにおいては性差, 世代差は示されなかった。過去および現在の自己イメージでは青年群に否定的自己記述が多く示された。だが未来の自己イメージでは, 老年群は肯定および否定反応に集中しているが, 青年群は過半数の者が肯定的な未来志向を示していた。生と死イメージは, 老年群のみに性差が示され, とくに女性老人の否定的表明が特徴的であった。次に生きる喜びを老年群は家族との交流や自己の健康面に求めているが青年群は物事の達成による充実感覚に喜びを求めている。また青年群は自分の人生に対して肯定的表明を示しているのに比し老年群は客観的記述が多い。以上の両群の諸特徴は世代差, 性差の観点から考察された。すなわち世代的差違として青年群に示された心理特徴面は, 成人として自我を確立してゆく過程の中で, 種々の観点からの自己省察の機制が反映していると解釈された。これに対し老年群の肯定した自己の受け入れ等の特徴は, 自我の統合性の段階を反映していると推定される反面, 自己の未来に対して冷静, 否定的であるといった面や家族という縮少した世界の中で安定しているという面は日本の老年期特有の心的特性が表明されていると考察された。
著者
加藤 厚
出版者
一般社団法人 日本教育心理学会
雑誌
教育心理学研究 (ISSN:00215015)
巻号頁・発行日
vol.31, no.4, pp.292-302, 1983-12-30 (Released:2013-02-19)
参考文献数
16
被引用文献数
3 9

Marcia, J. E. による同一性地位概念を客観的な測度によって測定し, その成立における11の心理社会的領域 (家族との関係, 将来の仕事, 生き方や価値等) および 3つの時期 (現在, 大学に入ったころ, 高校2年生のころ) の重要性を検討し, あわせて各同一性地位の特徴を明らかにすることが本研究の目的である。概念的検討整理をふまえて, 「現在の自己投入」, 「過去の危機」, 「将来の自己投入の希求」の3変数の組合わせによって, 6つの同一性地位を定義する同一性地位判定尺度を作成した。大学生310名 (男子170名, 女子140名) のデータを分析した結果, 以下の諸点が示された。(1) 同一性拡散地位および権威受容地位は, それぞれ全体の約4%を占めるにすぎず, 同一性拡散-積極的モラトリアム中間地位が, 全体の約50%を占める。(2) 男子においては, 「将来の仕事」および「生き方や価値」の領域における危機と自己投入, 「勉強」の領域における自己投入が, 同一性地位と密接に関連している。(3) 女子においては, 「大学に入ったころ」の危機の水準, および大学入学以降の「同性の友人との関係」, 「勉強」, 「将来の仕事」, 「生き方や価値の追求」の各領域における自己投入の水準が, 同一性地位と密接に関連している。(4) 「政治」や「宗教」は, 大学生における同一性地位の形成において, 重要な領域であるとは言い難い。各同一性地位の特徴およびその性差も, 特に「大学に入ったころ」の危機および自己投入の水準に関して, 詳しく検討された。
著者
浅野 良輔 吉田 俊和
出版者
The Japanese Association of Educational Psychology
雑誌
教育心理学研究 (ISSN:00215015)
巻号頁・発行日
vol.62, no.3, pp.240-252, 2014
被引用文献数
1

知覚された情緒的サポートには, 個人のストレスを低減したり健康を維持したりするだけでなく, 個人の目標追求をうながす効果もある。本論文では, 知覚された目標サポート尺度(Molden, Lucas, Finkel, Kumashiro, & Rusbult, 2009)の日本語版を作成し, その構成概念妥当性を検討した。大学生の異性友人関係(<i>n</i>=173)と同性友人関係(<i>n</i>=211)を対象とした質問紙調査を行った。多母集団確認的因子分析を行った結果, 予測通り, 日本語版知覚された目標サポート尺度は, 促進焦点目標サポートと予防焦点目標サポートの2因子からなることが明らかとなった。これら2つの下位尺度の内的整合性は, 十分に高いことが確認された。下位尺度得点についてはいずれも, 異性友人関係よりも同性友人関係において高く, 男性よりも女性において高かった。情緒的サポートや道具的サポート, 相互作用多様性, 親密性, 対人ストレッサー, 主観的幸福感といった同時に測定した外的基準との関連が, おおむね確かめられた。また, 2つの下位尺度の2週間を通じた安定性や, 2週間後に測定した親密性や主観的幸福感の尺度との関連についても確認することができた。知覚された目標サポートをめぐる心理学的研究や実践的応用について議論した。