著者
藤井 京子
出版者
日本教育心理学会
雑誌
教育心理学研究 (ISSN:00215015)
巻号頁・発行日
vol.33, no.2, pp.106-114, 1985-06-30

415 mothers were asked whether their children had specially beloved objects or not, its description and in what circumstances they would use the objects, and so on. 90 mothers answered that their children had some kind of "transitional objects"(Winnicott, 1953). Hayashi II's method was used in order to examine whether there was any difference between "primary and secondary transitional objects"(Stevenson, 1954). The results showed that "secondary transitional objects". were used more as play objects than "primary transitional objects". The second part of this study was to investigate whether children's possessing or not possessing the objects had relations to their mothers' attitude toward them. 43 mothers whose children possessed the objects and 97 mothers with children without objects were chosen and questioned on their attitude to their children. By ANOVA, it was shown that children's possessing or not the objects was related to their mothers' attitude toward them.
著者
小泉 令三
出版者
日本教育心理学会
雑誌
教育心理学研究 (ISSN:00215015)
巻号頁・発行日
vol.35, no.3, pp.197-203, 1987-09-30

The present study aimed at examining the effects of class rearrangement of host classes on peer relationship of transferred children, and the validity of the use of the psychological distance map (PDM) for assessing the interpersonal psychological distances among elementary school children. Subjects were 40 third- to sixth-grade children and their classmates. Assessments were made four times over a three-month period after transference in April by the PDM. Psychological distances on the PDM in the two sampled classes significantly correlated each with choice in the sociometric test, frequencies in interaction observed during free play time, and the order on the rating scales for intimacy. Transferred children in fifth-and sixth-grade non-rearranged classes had lower status indexes assessed by PDM than host members in April.No such differences were found in rearranged fifth- and sixth-grade classes and in all third-and fourth-grade classes. Effects of class rearrangement on peer relationship of transferred children were discussed from a developmental point of view.
著者
麻柄 啓一 伏見 陽児
出版者
日本教育心理学会
雑誌
教育心理学研究 (ISSN:00215015)
巻号頁・発行日
vol.28, no.3, pp.212-218, 1980-09-30

本研究は,幼児の法則学習における「劇化」教材の効果を検討したものである。 われわれは,Brunerの提案する劇化装置(dramatizing devices)にさらに厳密な概念規定を与え,学習されるべき事実や法則が一連のストーリーの中で提示されるだけではなく,さらに,それらの事実や法則がストーリーの筋や結末を左右するようになっているとき,これを「劇化」教材と呼ぶことにした。このような「劇化」教材が幼児の法則学習を有効に援助し得ることを調べるのが,本実験の目的であった。 対象児は,平均年齢6歳3か月の幼児48名であり,事前テストの結果から等質な2グループに分けた。一方にはわれわれの作成した「劇化」教材を,他方には非「劇化」教材を与えて,重さの保存の法則を教授した。結果は以下のとおりである。 (1)「劇化」教材で学習したグループ(dt群)は,非「劇化」教材で学習したグループ(nd群)より,事後テストで有意に高い得点をあげた。 (2)再生課題,転移課題とも,dt群がnd群にまさった。 (3)事前テストの成績から対象児を高成績群と低成績群に分けた場合,dt・高成績群とnd・高成績群の間には,事後テストの得点に有意な差はなかったが,dt・低成績群はnd・低成績群より事後テストで有意に高い得点を示した。 (4)教材提示の回数(1回or2回)は,事後テストの成績に影響を与えなかった。 (5)事後テストで,実物を用いて質問する方が,同一事態を絵カードを用いて質問するより,高い得点をあげる傾向があった。
著者
田口 則良
出版者
日本教育心理学会
雑誌
教育心理学研究 (ISSN:00215015)
巻号頁・発行日
vol.26, no.1, pp.12-22, 1978-03-30

現在および将来の社会生活を過ごすために「学び方能力」の育成は必須である。この能力は,特にBrunerが提唱した「発見学習」によって獲得させることができる。発見学習とは基本的内容を観察-予想-実験(発見)・検証のプロセスで学習者自身に発見させる仕方である。 この授業スタイルは抽象能力や既有知識,先行経験の乏しい学習者には適用が難しいとされている。しかし,授業は指導内容,方法との相対的関係で成立するものであるから,能力に合った指導内容を設定して,学習者の自発性だけに頼らず,授業者が積極的に働きかけたり,援助したりするならば,これらの学習者にも必ずしも適用が不可能ではないと思われる。 本研究はこのような観点から構築された発見型授業が精神薄弱児に適用可能かどうかを検討するものである。対比される授業スタイルとして説明型授業を構成する。これは観察-示範-実験・確認のプロセスで進められる授業者主導型スタイルである。 被験者は小学校特殊学級27名で,I.QとL.Aが釣合わされた2グループに分けられ,発見型と説明型授業を受ける。授業者は2名で始めにひとりは1グループの半数に発見型授業を,もうひとりは他のグループの半数に説明型授業を次に残りの半数にもう1つの型の授業をそれぞれ行う。指導内容は理科教材で「磁石」を取扱い,第3時までを2授業スタイルにより,第4時は共通の授業スタイルによりおもちや作りの作業課題をする。評価に関しては4名が授業の事前,直後,事後(1か月後,6か月後)にわたって知識,転移テストを聴取,授業中の意欲,探究的思考スタイルを評定する。 結果は次のとおりである。 (1) 授業者の発言内容は両授業スタイルの特徴を示す方向で異なる。発見型に多いカテゴリーは,ヒントを与える,課題意識を持たせる質問,考え方を受容する,であり,説明型に多いカテゴリーは,知識を与える,確認する,である。 (2) 知識問題の習得率(直後テスト/事前テスト)では両授業スタイル間に差が見出されない。しかし,1か月後の把持率(1か月後の事前テスト/直後テスト)では発見型が顕著によい。その効果は6か月後では消失している。 (3) 転移問題の習得率(直後テスト/事前テスト)は両授業スタイル間に差はない。これは転移問題と知識問題が類似していたためである。 (4) 自発発言数は第1時より,第2,3時で発見型が増加している。 (5) 第4時の授業中に測定された探究的思考スタイルは種々の観点から分析されたが,どれも差は見出せない。 (6) 習得された知識と矛盾する事例を観察させてその反応から信念を分析したところ,両授業スタイル間に差は見出されない。
著者
三島 知剛
出版者
一般社団法人 日本教育心理学会
雑誌
教育心理学研究 (ISSN:00215015)
巻号頁・発行日
vol.61, no.3, pp.277-289, 2013 (Released:2014-03-03)
参考文献数
23
被引用文献数
2

本研究は, 教職志望学生の授業観察力の育成法として, 「グループディスカッション」「モデリング」の効果を学生の実習経験の有無に着目しながら検討することであった。そのため, 122名(2年生55名, 3年生67名)を対象にポスト調査での授業観察力が条件間でどのように異なるかを検討した。その結果, (1) 実習経験の有無にかかわらず, 「モデリング」を行うことが授業観察力の「問題指摘数」の側面を向上させること, (2) 実習経験の無い2年生において, 「基本的な教師の指導技術」に関する問題指摘数の向上に「グループディスカッション」「モデリング」の効果が部分的にあること, (3) 授業観察力の「代案生起数」の側面には「グループディスカッション」「モデリング」共に介入の効果が見られないこと, が主に明らかになった。
著者
塩谷 祥子
出版者
日本教育心理学会
雑誌
教育心理学研究 (ISSN:00215015)
巻号頁・発行日
vol.43, no.2, pp.125-133, 1995-06-30

The following study explored the cognitive appraisals as predictors of test anxiety and learning behavior, and the influence of test anxiety and learning behavior on school performance. 220 high school students completed questionnaires that assessed their(a)test anxiety (worries and the general tendency to experience cognitive interference in test situations), (b)cognitive appraisals of learning skills acquisition and learning behavior's costs on English and mathematics learning, and (c)amount of learning time per week, in English and mathematics learning respectively. Students' school performance were assessed by their score on English and mathematics tests. The results of a covariance structure analysis indicated that school performance was directly related to students' test anxiety and learning behavior. Students' cognitive appraisals of learning skills acquisition predicted test anxiety, whereas those of learning behavior's costs predicted the amount of learning time. Test anxiety was virtually uncorrelated with learning behavior. The implications of these findings for reducing test anxiety were discussed.
著者
神崎 奈奈 三輪 和久
出版者
一般社団法人 日本教育心理学会
雑誌
教育心理学研究 (ISSN:00215015)
巻号頁・発行日
vol.61, no.2, pp.121-132, 2013 (Released:2013-10-10)
参考文献数
27

グラフの表現の違いが情報理解に与える効果が確認されてきた。このことは, 説明の仕方によって, グラフの使い分けがなされる必要があることを示唆している。本研究では, 研究発表等で日常的にグラフを使用している研究者を日常的グラフユーザと定義し, 日常的グラフユーザ, および理系大学院生, 文系学部学生を対象として, 自らが生成した説明とグラフ表現の一貫性に関する検討を行った。具体的には, 生成された説明中の特定の変数の表現と, 作成されたグラフにおける変数の配置の一貫性という観点から, グラフ作成に関する実験を行った。実験1A, 1Bの結果から, 日常的グラフユーザ, および理系大学院生は, 自らが生成した説明と一貫した表現のグラフを作成していることが確認された。一方, 実験2の結果から, 文系学部学生に関しては, 説明に関連したグラフの使い分けは確認されなかった。ただし, 実験3の結果から, 文系学部学生に関しても, グラフの候補を提示することによって, 自らグラフを作成する状況に比して, 説明に関連したグラフの使い分けが促進されることが示唆された。
著者
田中 国夫 松山 安雄
出版者
日本教育心理学会
雑誌
教育心理学研究 (ISSN:00215015)
巻号頁・発行日
vol.4, no.3, pp.8-14, 1957-02-25

社会的態度を因子分析のQテクニックの方法を用いて,解明しようとするのが我々の主題である。本研究に.於ては,次の2つの点に問題をおいた。第1は,青年掌.生集団に於ける,天皇及び親二対する態度類型を見出すこと,第2は,被験者を家族という小集団に求めて,アメリカ及び新中国に対する態度の個人間の態度布置を見出すことである。第1の問題については、先づ141名の大学生に,天皇と親に対する態度尺度を与え,平均的傾向を算出した。その結果は,天皇に対しては中立的,親に対しては比較的好意的である。尚天皇に対する態度と,親に対する態.度との間の相関は,γ=0,086で,その関係は全くみられない。次に上記被験者より30名を選び,天皇及び親に対する態度尺度に含まれる各意見を,各自の好みに従い品等させ,個人間の相関を求めた。その結果を因子分析すると,次の如き類型を見出し得た。即ち,天皇に対する第1の類型は,家父長的信頼型因子であり,第2の類型は,天皇制否定型因子である。親に対する第1因子は,純敬愛型因子であり,第2の因子は,批判的愛情型と解釈された。叉天皇に対して第1類型に属する者が,親に対しては第2類型に属するという如く,天皇と親に対する態度が,同一個人内に於て統一した体系をなして居られぬ事が見られる。第1因子とも第2因子ともつかぬ,明確な判断を欠く者は女性に多かった。第2の問題については,被験者を2つの家族に選定した。大阪市在住と神戸市在住の家庭で,成員はいずれも5名である。各家族成員に,アメリカ及び新中国に対す一る態度尺度に含まれている意見を与え,品等させ,Qテクニックにもとづき因子分析したその結果碍た因子行列を直交座標上にプロットすると次の事が判った。両家とも,アメリカに対する類型は,アメリカの対目政策を批判し乍らも,世界の文化のリーダーとして敬愛する一類型と,徹底的に批判乃至非難する類型との2つの因子がある。中国に対する態度は,両家族ともに同一方向に群り,家族成員問に対立的布置が余りみられないで,皆同一類型に属している様子が見られる。今日の中国に対するマス・コミュニケーションのあり方の一端をも伺い得て興味深いものがある。
著者
古籏 安好
出版者
一般社団法人 日本教育心理学会
雑誌
教育心理学研究 (ISSN:00215015)
巻号頁・発行日
vol.13, no.4, pp.193-205,252, 1965-12-31 (Released:2013-02-19)
参考文献数
27

協同と競争の集団効果は, 教育社会心理学の観点から, 最も関心のある問題である。この集団効果を体系的に検討するためには, 「参加性」仮説の体系化が肝要な問題のひとつである。ここに集団参加性変数は'連帯性・勢力性および親和性の3次元に関するとして, これらの概念的および操作的定義を明らかにし, それらの測度を示した。従来かならずしも明確でなかつた参加性と凝集性を識別した。集団に関する凝集性の測度として集団への魅力と対人的魅力に関する2方法によつて, これらの関連をも検討した。以上の検討はすべて集団レベルでなされた。この実験の結論はTable15に要約される。すなわら,1) 協同集団は, 競争集団よりも連帯性・勢力性・親和性およびそれらの総合としての集団参加性の各得点で有意にまさる。特に勢力性は最も顕著な差を示す。2) 協同集団は, 競争集団よりも集団凝集性 (ATG) の得点が高くなる傾向がある。また一般的にいえば, 協同集団では競争集団におけるよりも集団内ソシオメトリックな選択数を増加する傾向がある。ソシオメトリック・テストによる対人的魅力と集団凝集性 (ATG) との間には, 有意の連関があるといえる (TabLe9, 10) 。3) 課題1とIIの得点によつて測定された集団生産性においても, 協同は競争に有意にまさる。4) 知能水準によつて構成された各類型A・B・C・D1およびD2の間に, 集団参加性とその3つの次元 (S・P・A), 集団凝集性および集団生産性の差があるかないかを, 分散分析の結果によつてみると, 競争条件下の勢力性のほかは, すべての測度の得点において有意の差がある。そして一般的にいつて, 集団としての知能水準の高い集団類型は, その低い類型よりも生産性のみならず参加性および凝集性の各変数でも有意に高い得点を持つている (Table5, 8, 14) 。
著者
石毛 みどり 無藤 隆
出版者
日本教育心理学会
雑誌
教育心理学研究 (ISSN:00215015)
巻号頁・発行日
vol.53, no.3, pp.356-367, 2005
被引用文献数
3

レジリエンスは, 困難な出来事を経験しても個人を精神的健康へと導く心理的特性である。本研究の目的は中学3年生の高校受験期の学業場面における精神的健康とレジリエンスおよびソーシャル・サポートの関連について検討することだった。精神的健康の指標はストレス反応と成長感を用いた。受験前は538名を対象に, レジリエンス尺度, ソーシャル・サポート尺度, 学業ストレッサー尺度そしてストレス反応尺度を用いて解析した。受験後は, 受験前と後の同一被験者263名を対象に, 上記の尺度に成長感尺度を加えて解析した。その結果, (1)レジリエンス尺度は「自己志向性」「楽観性」「関係志向性」の3因子構造だった。(2)ストレス反応の抑制には「自己志向性」, 「楽観性」, 母親, 友だち, 先生のサポートが寄与していた。(3)成長感には「自己志向性」が強く寄与していた。(4)女子のストレス反応の抑制にはレジリエンスよりソーシャル・サポートの方が大きな影響を及ぼしていた。(5)「関係志向性」および「自己志向性」には友だちサポートが最も高い相関を示した。最後にストレス状況下での精神的健康に対するレジリエンスとソーシャル・サポートの役割について討論した。
著者
岡安 孝弘 嶋田 洋徳 坂野 雄二
出版者
日本教育心理学協会
雑誌
教育心理学研究 (ISSN:00215015)
巻号頁・発行日
vol.41, no.3, pp.302-312, 1993
被引用文献数
13

The purpose of this study was to investigate the effects of the expectancy of social support in junior high school students on school stress. 917 boys and girls, from 1st to 3rd grade, completed the Scale of Expectancy for Social Support (SESS), the School Stressor Scale, and the Stress Response Scale. The results indicated that (a) the SESS had a single-factor structure, (b) social support alleviated school stress more effectively in girls than in boys, (c) the alleviation effects of social support were dependent on the differences of stressful events, support resources, or stress responses, and (d) father support, which was less expected than mother support, was the most effective in alleviating stress responses in girls, but not in boys, Finally, the implication of social support for school stress process was discussed.
著者
及川 晴 及川 昌典 青林 唯
出版者
日本教育心理学会
雑誌
教育心理学研究 (ISSN:00215015)
巻号頁・発行日
vol.57, no.2, pp.192-200, 2009-06-30
被引用文献数
1 5

目標はポジティブな感情を活性化させる行動表象であるという視点に基づき(Bargh,1990;Custers&Aarts,2005a,b),本研究では,感情誤帰属手続き(AMP,Affect Misattribution Procedure;Payne,Cheng,Govorun,&Stewart,2005)が潜在目標の測定に応用できる可能性を検討するために,日本人大学生62名を対象とした実験を行った。勉強目標や遊び目標に関連した画像をプライム刺激として用いたAMPは,高い信頼性と中程度の効果サイズを示した。また,潜在目標(AMP)と顕在目標(自己報告)は,勉強に関しては中程度の相関を示したが,遊びに関しては相関を示さなかった。さらに,冬休み中の遊び行動は潜在指標と相関を示したが,顕在指標とは相関を示さなかった。これらの結果は,1)潜在指標と顕在指標は社会的望ましさが影響する程度に応じて一致・不一致を示し,また2)潜在指標は顕在指標よりも未統制の行動をよりよく予測するという,潜在・顕在指標に関する一般的な仮説と整合していた。本研究では,潜在目標の個人差が顕在目標とは独立して日常行動を予測することが示唆され,また,AMPの潜在目標指標としての妥当性が確認された。
著者
伏見 陽児
出版者
日本教育心理学会
雑誌
教育心理学研究 (ISSN:00215015)
巻号頁・発行日
vol.40, no.1, pp.54-63, 1992-03-30
被引用文献数
2

Two experiments were designed to assess the effects of different order of presented instances on learning of scientific concepts. In Experiment I two kinds of reading materials described as common features of metal were constructed. The text given to Dk group explained those features by referring to instances in order of 'copper → calcium'. For Kd group the arrangement of 'calcium → copper'was used. As a result, Dk group showed better performance than Kd group in the recall-application test for common features. In Experiment II two kinds of reading materials describing a universal property of livestock were constructed. In the text given to Bk group, the property was explained by mentioning instances in order of 'swine → silkworm'. For Kb group the arrangement of ' silkworm → swine' chosen. As a result, Bk group showed higher score than Kb group in the recall-application test for a universal property. The obtained results from the two experiments were discussed on the basis of "heteroformulation theory" proposed by Fushimi, Y. (1990, 1991).
著者
柴橋 祐子
出版者
一般社団法人 日本教育心理学会
雑誌
教育心理学研究 (ISSN:00215015)
巻号頁・発行日
vol.52, no.1, pp.12-23, 2004-03-31 (Released:2013-02-19)
参考文献数
27
被引用文献数
1 4

本研究では中学, 高校生の友人関係における「自己表明」および「他者の表明を望む気持ち」の2側面に関わる心理的要因を発達的な観点から検討した。中学, 高校生721名を対象に質問紙調査を実施し, 因子分析により, 2側面に関わる心理的要因として「安心感」「配慮・熟慮」「率直さへの価値感」「スキル不安」「支配欲求」の5つが抽出された。これらの心理的要因が「自己表明」および「他者の表明を望む気持ち」に及ぼす影響を分析した結果,(1) 中学, 高校生の男女共にほぼすべての「自己表明」および「他者の表明を望む気持ち」に「率直さへの価値感」が深く関わる。(2) 全体を通して「意見の表明」および「不満・要求の表明」の低さの背景に「スキル不安」がある。(3) 高校生では, ほぼすべての「自己表明」に「安心感」の影響があり, 高校生の女子では「他者の表明を望む気持ち」にも関連している。 (4) 「不満・要求の表明」の背景に女子では「配慮・熟慮」, 男子では「支配欲求」があることが示された。これらの結果から, 自己肯定感, 自己信頼感が2側面を共に支える重要な要因であること, 2側面のあり方を支える心理面の発達的な違いが明らかになった。
著者
上瀬 由美子 堀野 緑
出版者
一般社団法人 日本教育心理学会
雑誌
教育心理学研究 (ISSN:00215015)
巻号頁・発行日
vol.43, no.1, pp.23-31, 1995-03-30 (Released:2013-02-19)
参考文献数
17

This study investigated psychological background for self-recognition need (Kamise, 1992) and actions of seeking information about the self. Two surveys were conducted and 960 young adults participated in total (655 participants for the first survey and 305 for the second). The results of the first survey showed that the confusion of ego-identity gave rise to the instability of self concept and invoked self -recognition need. The results of the second survey showed that the interdependent construal of self preceded the instability of self concept and was related to the arousal of self-recognition need. In addition, after their self-recognition need being raised, the participants initiated actions of seeking self-information. Moreover, both the interdependent construal of self and the tendency of dependence on others in decision making were related to the action of seeking information about self.
著者
内田 照久
出版者
一般社団法人 日本教育心理学会
雑誌
教育心理学研究 (ISSN:00215015)
巻号頁・発行日
vol.41, no.4, pp.414-423, 1993-12-30 (Released:2013-02-19)
参考文献数
21
被引用文献数
6

Many learners have difficulty in recognizing long vowels (LVs) and double consonants (DCs) in Japanese language. The purposes of this study are to investigate the characteristics of auditory perception of LVs and DCs in Japanese natives and to compare them with those of Chinese students. In the experiment I, 52 Japanese subjects were asked to judge 712 stimuli (human voices processed by a time expansion technique) whether they included LVs or DCs. The results show the threshold values are proportional to the speech speed and their judgements are the stablest in the range of natural speed. In the experiment II, threshold values were measured by the method of limits for four Japanese natives, four Chinese experts in Japanese language, and four Chinese novices. Threshold values in ascending series are longer than those in descending series for Japanese natives and Chinese novices, while the reverse is true for Chinese experts. This result suggests that Chinese experts use the different strategy in perceiving LVs and DCs to attain the same level of performance as Japanese natives.
著者
池田 進一
出版者
日本教育心理学会
雑誌
教育心理学研究 (ISSN:00215015)
巻号頁・発行日
vol.29, no.3, pp.207-216, 1981-09-30

本研究は,多試行自由再生事態で材料文間の接続関係明示の多少と演緯的推理能力との関連を発達的に検討したものである。小学校5年生40名と中学校1年生35名の被験者は接多群(文問に6つの接続関係をあらわす語を含む7文を記銘する群)と接小群(文問に2つの接続関係をあらわす語を含む7文を記銘する群)とにそれぞれ分けられた。物語構造をもった7文は,ランダムな順序で5回提示され,毎回自由再生が求められた。その後,原文章を復元できるかどうかを調べるために文順序配列テストが実施された。ついで,石田(1978.1980)による推理能力テストが施行された。結果は以下のとおりであった。1)(a)文順序配列テストでは各群12名ずつ計48名が正解した。
著者
松沼 光泰
出版者
日本教育心理学会
雑誌
教育心理学研究 (ISSN:00215015)
巻号頁・発行日
vol.57, no.4, pp.454-465, 2009

受け身表現は, 日本語では動詞に助動詞「れる・られる」を付けて表すが, 英語では「主語+be動詞+過去分詞+by~」の形で表される。ここで注意しなければならないのは「英語の場合, 受動文の主語には能動文の目的語がなる」ということである(以下「受動態の前提」)。本研究では, 多くの学習者はこの受動態の前提を理解せず, 日本語の受け身表現(れる・られる)を単純に「be動詞+過去分詞」で表すことができると不十分な知識を持っているとの仮説を立て検証した。この仮説が支持されたことを受け, 学習者の不十分な知識を修正する教授方法を考案し, 一般的教授方法と比較することでこの効果を検討した。実験群の授業は「(1) 手持ちの知識が不十分なことを意識化させる」, 「(2)日本語と英語が構造的に異なる言語であることを意識化させる」, 「(3) 熟達者思考プロセス提示法を用いて学習内容を提示する」という点で統制群の授業と異なっていた。介入の結果, 実験群の成績は統制群を上回った。また, 実験群は, 統制群に比べ, 日本語と英語の違いに注意することや5文型の重要性を認識するようになり, 授業で用いた教材を有効であると認知し, 授業への興味も高かった。
著者
植木 理恵
出版者
日本教育心理学会
雑誌
教育心理学研究 (ISSN:00215015)
巻号頁・発行日
vol.52, no.3, pp.277-286, 2004-09-30
被引用文献数
4

本研究は, 「自己モニタリング方略」の重要性および児童生徒への定着の困難さを問題として掲げ, これを解決するための介入方法の提案を目指したものである。一連の実験の結果, (1)方略志向の学習観を促すだけでは自己モニタリング方略の使用には効果がないこと, (2)方略知識を教授することによって, 自己モニタリング方略は一時的に使用されるようにはなるが, 教授後3ヵ月以上経過すると使用されなくなること, そして, (3)方略知識と推論方略を併せて教授すれば, 7ヵ月後の時点においても自己モニタリング方略はよく記憶され使用され続けること, が明らかになった。