著者
伊藤 伸泰
出版者
一般社団法人 日本物理学会
雑誌
日本物理学会誌 (ISSN:00290181)
巻号頁・発行日
vol.67, no.7, pp.478-487, 2012-07-05 (Released:2018-03-02)
参考文献数
61

物理学が無限大の代名詞として扱ってきたアボガドロ数に,計算機の発達により手が届きはじめている.1秒間に1京演算以上を実行するという10PFLOPS以上の性能を持つ計算機によってである.こうした「アボガドロ級」計算機を活用すれば,ナノスケールからマクロスケールまでをこれまで以上にしっかりとつなぐことができると期待される.比較的簡単な分子模型を多数集めた系の計算機シミュレーションによる研究の結果,熱平衡状態および線形非平衡現象の実現と解析は軌道にのり,さらに1,000^3個程度の系を念頭に非線形非平衡現象へと進んでいる.非線形非平衡状態を解明し飼い慣らした次に期待されているのは,生物のような自律的に機能するシステムをナノスケールの計算で得られた知見に基づいて解明し自在に作り出す技術を確立することである.そのためにはアボガドロ級の計算機で実現する10,000^3個程度の系のシミュレーションが強力な手段となる.この可能性を検討する「アボガドロ数への挑戦」が,現在,進行中である.
著者
江口 徹
出版者
一般社団法人 日本物理学会
雑誌
日本物理学会誌 (ISSN:00290181)
巻号頁・発行日
vol.56, no.10, pp.774-775, 2001-10-05 (Released:2019-04-12)
参考文献数
2
著者
菅本 晶夫
出版者
一般社団法人 日本物理学会
雑誌
日本物理学会誌 (ISSN:00290181)
巻号頁・発行日
vol.72, no.4, pp.236-239, 2017-04-05 (Released:2018-03-30)
参考文献数
18

南部の豊かな発想の源を求めて,2002年8月1日に筆者が南部と交わした議論を紹介する.その中に南部が最晩年に流体力学に取り組んだ芽がある.南部流体力学を説明しながら,次に南部は何をしようとしていたかを,浅薄を顧みず筆者なりに推察する.
著者
亀淵 迪
出版者
一般社団法人 日本物理学会
雑誌
日本物理学会誌 (ISSN:00290181)
巻号頁・発行日
vol.29, no.12, pp.984-988, 1974-12-05 (Released:2008-04-14)
参考文献数
27
被引用文献数
1
著者
霜田 光一
出版者
一般社団法人 日本物理学会
雑誌
日本物理学会誌 (ISSN:00290181)
巻号頁・発行日
vol.60, no.6, pp.418-421, 2005-06-05 (Released:2008-04-14)
参考文献数
13

今井先生はファラデー流の電場と磁場の概念から出発して, 電磁気の諸法則を運動量・角運動量およびエネルギーの保存則から導くという電磁気学を構成した.そこで, ローレンツ力のパラドックスの考察から, 電磁運動量とポインティング・ベクトルの意義と重要性を考える.そして電磁場の近接相互作用を基礎にすると, 電磁場は複素振幅で表され, 電場と磁場よりもベクトル・ポテンシャルが基本になると考える.
著者
渡利 泰山
出版者
一般社団法人 日本物理学会
雑誌
日本物理学会誌 (ISSN:00290181)
巻号頁・発行日
vol.71, no.6, pp.362-371, 2016-06-05 (Released:2016-08-10)
参考文献数
13

超弦理論は重力子を含む量子論になっている(つまり重力の量子化をする理論である.その理論を我らが自然が択んでいるかどうかはまた独立な問題だが).そして,超弦理論では,時空が1+9次元になっていないといけないらしい.でも,9次元のうち6次元分が十分に小さければ,既存の実験事実とは矛盾しないからOK.さらに,超弦理論の低エネルギーでは,重力子のほかに,素粒子の標準模型っぽい代物も(おおざっぱに言えば)ついでに出てこないでもなさそう.だいたいうまくいっている感じ….一般向け科学啓蒙書によく書かれているこのお話は,ほぼ1980年代の半ばまでに専門家の間で成立してきた理解を基にしている(文献2).それから30年ほどが経った.その間,このお話はどのように深化してきたのだろう.超弦理論と現実世界との関わりという文脈でのお話の続きを紹介するのが,本稿の目標である.その他の文脈での弦理論の発展には立ち入らない.本稿ではお話の続きを三本立てという形で切り出して紹介する.1点目は,コンパクト化って何?という点で,80年代後半から90年代後半の進展にあたる.主なメッセージを抽出しておくと,空間の次元という概念自体が量子重力の理論たる超弦理論では自明なものでなくなること.そして,超弦理論の双対性の発見は,弦理論と現実世界との接点という問題を考えるうえで(も),革命的な変化をもたらした,ということである.2点目は,弦理論の解の全体像の理解の深化.別の表現では,冒頭の「だいたいうまくいっている感じ」を精密化しようという話でもある.現時点での超弦理論の理解に従うなら超弦理論には解がきわめてたくさんある,ということが知られている.それらの解の低エネルギーでのゲージ群や物質場の世代数は,個別の解ごとに種々様々であり,粒子の相互作用の結合定数の値も,様々である.ゆえに,冒頭に「素粒子の標準模型…出てこないでもなさそう」と記したのは,この種々雑多な解の中の一つとして,我々の宇宙を記述する解も多分存在するんじゃない…?という意味で理解することになる.学問分野としては,“多分”ではなしに“ちゃんと”存在を示せ,という話になる.これを示せれば,超弦理論という仮説を棄却する必要がなくなるからだ.そのためには,どうするか.コンパクト化という手法で得られる超弦理論の解の範囲内に話を限れば,まず,コンパクト化に用いる幾何と低エネルギーで実現される場の理論模型との間の翻訳関係を調べ,次に,幾何の選択肢の範囲内で素粒子の標準模型が実現できるかを調べることになる.超弦理論の双対性の発見から十数年が経った現在,ゲージ群,世代数,それにクォークやレプトンの質量,混合角のおおまかな特徴をどのように翻訳すべきか,理解が整理されてほぼ落ち着きつつある.3点目は,超弦理論が現実に矛盾しないという消極的達成だけでなく,何か素粒子物理に新たな知見をもたらす積極的達成はないの?という話.全くないわけでもないですよ,,,というのが現状である.紙幅の都合上,陽子崩壊の分岐比,右巻きニュートリノの質量,ゲージ結合定数の統一,の3つのテーマについて得られた弦理論ならではの知見を取り上げて,紹介する.
著者
宮下 精二
出版者
一般社団法人 日本物理学会
雑誌
日本物理学会誌 (ISSN:00290181)
巻号頁・発行日
vol.63, no.10, pp.748-754, 2008-10-05 (Released:2017-08-04)
参考文献数
102
被引用文献数
1

昨年は,久保理論1)の発表50周年であり,それを記念していくつかのシンポジウムなどが開かれた.久保理論の成立過程やその発展に関しては,久保先生の還暦記念事業として発行された「統計力学の進歩」2)や,日本物理学会誌1995年11月号の久保先生の追悼特集3)で詳しく論じられている.今回の特別企画で,私に与えられたこのようなタイトルは,全くの私の力の及ぶ物ではなく,これまでの名解説の不完全な模倣になることは否めない.この問題に取り組んでいる多くの専門家に対して誠に恐縮の至りではあるが「感想」に近い記述をご容赦願いたい.
著者
川合 敏雄
出版者
一般社団法人日本物理学会
雑誌
日本物理学会誌 (ISSN:00290181)
巻号頁・発行日
vol.41, no.3, pp.p227-235, 1986-03
被引用文献数
1

最近では工学者もしきりにハミルトニアンを口にします. それは物理学者の使い方と同じ場合もありますが, 制御工学者のいう〓はより広い意味をもっています. 最適制御の理論は最大原理という大きな枠で, これを特殊な対象に適用すると力学をはじめとする自然法則が出てきます. この文では最大原理を日常の言葉で理解しながら, 物理法則を制御の目で眺めなおしてみます.
著者
永弘 進一郎
出版者
一般社団法人 日本物理学会
雑誌
日本物理学会誌 (ISSN:00290181)
巻号頁・発行日
vol.64, no.10, pp.763-767, 2009-10-05 (Released:2021-07-03)
参考文献数
14

流体表面と固体の衝突の問題は,古くから研究されている.「石の水切り」はその身近な例である.しかし,衝突時の流体の過渡的なダイナミクスや,表面の大変形を扱うことは難しく,水面へ投げ入れた小石が小さな波紋を作り反発する条件について,単純な現象論も見いだされていない.この水切りについて,最近の実験から,平らな石の面と水面のなす角度が約20°の時,もっとも反発が起こりやすくなる事実が見いだされた.本稿では,数値シミュレーションによる,石の反発条件の解析を行った結果を紹介する.また,最適角度の存在が,単純なモデルによって説明できることを示す.
著者
竹内 繁樹
出版者
一般社団法人 日本物理学会
雑誌
日本物理学会誌 (ISSN:00290181)
巻号頁・発行日
vol.54, no.4, pp.263-273, 1999-04-05 (Released:2008-04-14)
参考文献数
35

「量子計算」という言葉を耳にした方も多くなってきたのではないでしょうか. しかし, 「重ねあわせ状態を維持して計算を行う」という説明には「重ねあわせ状態なんてすぐに壊れてしまう」という常識から, あるいは「観測によって波束を収縮させ」という言葉には怪しげな雰囲気を感じて, 今一つ疑念や近寄りかたさを感じていらっしゃるかもしれません. でも, ここで紹介するように, それらの問題への真正面からの取り組みがすでに始まっています. この稿では, 現時点でどのような実現の方法が考えられており, 実際どのような実験が行われているのかを紹介いたします. 今急速に立ち上がりつつあるこの分野の魅力を感じていただければ幸いです.

37 0 0 0 重力波

著者
平川 浩正
出版者
一般社団法人日本物理学会
雑誌
日本物理学会誌 (ISSN:00290181)
巻号頁・発行日
vol.28, no.1, pp.10-17, 1973
被引用文献数
1

重力場が波動として伝播するとしても, おどろくべきことではない. この解説では, 重力波の方程式からはじめて, 波動の, 検出の方法について考え, 最近の観測結果をまとめて, 地球にきているらしい大量のエネルギーの放出がどこでじょうじているのか, その起源についてさぐってみる.
著者
和達 三樹
出版者
一般社団法人 日本物理学会
雑誌
日本物理学会誌 (ISSN:00290181)
巻号頁・発行日
vol.66, no.9, pp.688-691, 2011-09-05 (Released:2019-10-22)
参考文献数
13

戸田盛和教授(東京教育大学名誉教授)の業績を振り返る.特に,1次元非線形格子力学の研究において,どのように指数関数形ポテンシャルが導入されたか,を原論文に基づいて説明する.指数関数ポテンシャルで結ばれた1次元格子は,現在「戸田格子」とよばれている.戸田格子の発見はソリトン概念の確立に寄与し,また,ソリトン理論を発展させた.我国の基礎科学研究が世界に誇る大きな業績の一例である.
著者
大川 正典
出版者
一般社団法人 日本物理学会
雑誌
日本物理学会誌 (ISSN:00290181)
巻号頁・発行日
vol.75, no.5, pp.264-273, 2020-05-05 (Released:2020-10-14)
参考文献数
16

素粒子の標準モデルは,その基礎をゲージ理論においている.実際,電磁相互作用を媒介する光子はU(1)ゲージ理論により記述されており,また強い相互作用を作り出すグルーオンはSU(3)ゲージ理論に支配されている.光子は電荷を持たないので自己相互作用をしないが,グルーオンは自分自身で電荷(色電荷と呼ばれる)を持ち自己相互作用をし,その結果として強い力が作り出される.両者の違いは数学的には,U(1)群が可換なのに対して,SU(3)群が非可換であることからくる.一般にSU(N)非可換ゲージ理論は非常に複雑な構造を持っているが,1974年,’t HooftはSU(N)群の次元Nを大きくした時,摂動論の各次数でプラナーダイアグラムと呼ばれる特定のダイアグラムからの寄与しかなく,理論が簡単になることを発見した.ただし強い力が作り出されるのは非摂動論的効果であり,相互作用の大きさのべき展開で定義される摂動論では解析できない.非摂動論的効果の研究をするには,時空を離散化し4次元格子上に理論を定義し,自由度を有限にして数値シミュレーションを行うのが常套手段である.しかしNが大きいとき,SU(N)ゲージ理論を格子上で調べるのは現実的ではない.その理由は以下の通りである.一辺がLの4次元正方格子を考える.各格子点には4つのSU(N)行列を置くので,全体の自由度は4(N 2-1)L4となる.スーパーコンピューターで計算可能な自由度の数には限界があり,例えばL=30とすると,Nが10を大きく超える計算はできない.1982年江口と川合は,Nを無限にしたとき格子上で定義されたSU(N)ゲージ理論は,4つのSU(N)行列のみを持つ行列模型(江口・川合モデル,EKモデル)と等価である可能性を示した.以下で,Nを大きくとる極限をラージN極限と呼ぶ.EKモデルの自由度は4(N 2-1)なので,数値シミュレーションでNは数千の値を持つことができ,実質的にラージN極限が取れてしまう.残念ながら,EK模型は非摂動論的研究に重要な中間結合領域で破綻してしまう.この欠点を解決するために種々の改良が試みられ,2010年最終的に,González-Arroyoと筆者は,理論にある種のツイスト境界条件を課すことにより,中間結合領域でも有効な行列模型(TEKモデル)を構築した.現在ではTEKモデルを用いて,SU(N)ゲージ理論のラージN極限でのクォーク間ポテンシャルや中間子質量が非摂動論的に計算されている.近年,アジョイント表現に属するスカラー場やフェルミオン場を伴ったSU(N)ゲージ理論が大きな関心を呼んでいる.その理由のひとつに,AdS/CFT対応がある.これによると,Anti de Sitter時空を背景に持つ超重力理論と,ラージN極限でのゲージ理論との間に対応がある.SU(N)群のアジョイント表現にあるスカラー場やフェルミオン場のラージN理論も,行列模型を用いて調べることができる.行列模型による非摂動論的効果の研究は始まったばかりであり,今後の発展が強く望まれる分野である.
著者
藤森 俊明 三角 樹弘 坂井 典佑
出版者
一般社団法人 日本物理学会
雑誌
日本物理学会誌 (ISSN:00290181)
巻号頁・発行日
vol.73, no.6, pp.352-360, 2018-06-05 (Released:2019-02-05)
参考文献数
31

量子力学,場の量子論や古典力学で厳密に解ける問題は少ないため,小さな結合定数についてべき級数展開を行う摂動論は極めて有用である.たとえば量子電磁力学の摂動論の結果は驚くべき精度で実験と一致する.しかし,摂動級数は収束しないという問題が古くから指摘されてきた.一方,様々な量子系において,トンネル効果など摂動論でとらえられない「非摂動効果」も存在し,重要な役割を果たす.実際,場の量子論ではインスタントンなどを考慮することによって,非摂動効果が得られる.実は摂動級数の発散と非摂動効果が関係している可能性は古くから指摘されてきた.近年,リサージェンス(resurgence)理論によって,量子論における摂動論と非摂動効果との直接的な関係の理解が進展した.微分方程式や積分の漸近級数解析などの数学的研究で得られた厳密な知見を応用して,量子論におけるリサージェンス理論の理解が進み,新たな結果が次々と得られている.摂動論では,展開係数が次数nの階乗n!程度で発散する.そのような場合,ボレル総和法が有用である.発散する摂動級数からボレル変換という量が厳密に定義でき,これが摂動級数の情報を忠実にとらえる.たとえば,ボレル変換の特異点が摂動級数の発散の仕方を表す.一方,各々の特異点は非摂動効果と対応する.したがって,潜在的にどのような非摂動効果が生じ得るかは,摂動級数のボレル変換の中にすべて記録されている.一般に,摂動級数の発散の仕方に非摂動効果の情報が書き込まれていることをリサージェンス構造と呼ぶ.ボレル変換のラプラス変換をボレル和と呼び,これが摂動級数の総和を表す.ラプラス変換の積分経路は正実軸上だが,その上にボレル変換の特異点が生じると,積分路を変形する(結合定数に虚部を与える)必要があり,その結果ボレル和に不定性が生じる.一方,勾配流(gradient flow)の解析からバイオンと呼ばれるある種のソリトンが非摂動効果を与えることがわかる.バイオンの寄与にも結合定数の虚部の符号に応じて不定性が生じるが,摂動級数のボレル和と同じ符号をとると両者の和に不定性がなくなる.すなわち,両者の非自明な関係によって不定性の相殺が起こるため,物理量全体としての一意性が保たれる.つまり,摂動・非摂動部分はそれぞれ単独では不定で,両者を足し上げて初めて厳密な意味がある.この不定性の相殺から定まる「摂動論と非摂動効果の間の対応」により一方の寄与からもう一方を導き出すことも可能となる.常微分方程式ではリサージェンス構造は完全に理解されており,一般解はトランス級数と呼ばれる複数の形式的漸近級数解のボレル和の足し合わせで表される.パラメーターを変えていくと,個々のトランス級数の係数が不連続に変化するストークス現象が起こる.しかし,真の解は連続なので,ストークス現象によって漸近級数解の間に関係が付くことがわかる.このようにあるセクターの情報が別のセクターに再登場する機構がリサージェンス構造である.量子力学でもこの構造の理解が進展し,さらにQCDやヤン–ミルズ理論,赤外リノマロンなども議論されつつある.
著者
小柳 義夫
出版者
一般社団法人 日本物理学会
雑誌
日本物理学会誌 (ISSN:00290181)
巻号頁・発行日
vol.28, no.1, pp.18-24, 1973-01-05 (Released:2008-04-14)
参考文献数
12

計算機が発達したために, 今まではやらなくてもよかった計算まで必要になる. その一つがパラメーター・フィットである. 理論を実験と比べるとき, 昔なら定性的な特徴を説明するだけで十分だった場合でも, 今では定量的に合わせなければ認められない. データからパラメーターを決定する各種の方法を解説するとともに, 現在公開されているプログラムによる計算機の実例をも示す.
著者
笹井 理生
出版者
一般社団法人 日本物理学会
雑誌
日本物理学会誌 (ISSN:00290181)
巻号頁・発行日
vol.52, no.12, pp.901-908, 1997-12-05 (Released:2008-04-14)
参考文献数
22

蛋白質の立体構造のイメージは我々に驚きを与える. 自然はどうしてこのような美しい, 精妙な構造を作ったのだろうか? そして, それに劣らず不思議なことは, ランダムな鎖にほどけている蛋白質が条件さえ整えば, 生理活性を持つ構造へ自発的にフォールドする能力を持つことである. 最近, 統計物理学的な視点でこのフォールディング過程の問題が扱われ, エネルギー面の統計的性質がその中心概念であることが明らかにされてきた. この見方は実験にも影響を与え, 新しい実験方法の開拓を促した. フォールディングの物理はこれまでの物理の枠を拡げて, 情報, 形, 進化を問題にする複雑系の科学を産み出そうとしているのかもしれない.
著者
國仲 寛人 小林 奈央樹 松下 貢
出版者
一般社団法人 日本物理学会
雑誌
日本物理学会誌 (ISSN:00290181)
巻号頁・発行日
vol.66, no.9, pp.658-665, 2011-09-05 (Released:2019-10-22)
参考文献数
44
被引用文献数
1

正規分布は,数学や物理学において最も基本的で,重要な分布関数と考えられている.例えば,実験観測の測定誤差が正規分布に従うというのは,よく知られた事実である.だが実際には,自然界や人間社会に見られる「複雑系」とも称される系においては,べき分布や対数正規分布などの裾の長い分布関数が観測されることが多い.本稿では,対数正規分布が出現する数理的なメカニズムを紹介し,対数正規分布を基本としてべき分布や正規分布が出現し得るということを紹介する.また,自然現象や社会現象に見られる対数正規分布と,その出現メカニズムについて考察する.