著者
山森 徹雄 植原 典子 清野 和夫 谷 信幸 島崎 政人 高橋 秀美 中原 元 斉藤 彰久 浅井 政一 長山 克也
出版者
社団法人 日本補綴歯科学会
雑誌
日本補綴歯科学会雑誌 (ISSN:03895386)
巻号頁・発行日
vol.40, no.2, pp.245-248, 1996-04-01 (Released:2010-08-10)
参考文献数
11
被引用文献数
1 2

It was attempted to apply barrel finishing to improve the surface texture of the basal surface of the complete denture. The effect of barrel finishing on the denture base resin of rough surface should be confirmed to understand the alteration of the basal surface of complete denture after barrel finishing, because it is corrugated. The denture base resin samples with standardized corrugated surface were made using a metal mold, then each sample was divided into halves. One of the halves was barrel finished following the manufacturer's instruction after masking the datum plane, whereas the other one was used as a control without finishing. Both samples were observed under the reading microscope, and the distances between the base line and the top of each corrugation or the bottom of each corrugation were measured. Observation under the scanning electron microscope was also made. The results were as follows:1. The scanning electron microscopic observations showed that the top of the corrugation was obviously made round and smooth by barrel finishing, and that the bottom of the corrugation was also made smooth but it was less smooth than the top of the corrugation.2. The cutting depth of the denture base resin was 218.13μm at the top and 3.53μm at the bottom of the corrugation.These findings suggest that there is no problem after barrel finishing of the basal surface of complete dentures even if attention was paid to the height of the bead established for the posterior palatal seal.
著者
新倉 久市 谷 勅行 村上 亘 根本 信介 柳生 嘉博 高 徳松 石川 雅夫 山本 美朗 角田 豊作
出版者
社団法人 日本補綴歯科学会
雑誌
日本補綴歯科学会雑誌 (ISSN:03895386)
巻号頁・発行日
vol.23, no.2, pp.367-374, 1979 (Released:2010-08-10)
参考文献数
31

We have experienced the Epulis fissuratum in clinic. The most cases are caused by the continuous repeating mechanical stimuli due to the ill-fitting dentures.When we observed them, we have gained the following results.Especially about the dentures which brought the chronically mechanical irritation, we have measured the occlussal stress-concentration by means of “Prescale (FUJI FILM Co., Ltd)”.1. The average of the age was 61.6 S.D.±8.5 years old.2. In respect of sex, the female were 8 cases and the male was a case. The female caused more than the male.3. The position of the proliferation located the parts of the incisor and premolar. The maxilla were 6 cases and the mandible were 3 cases. The maxilla caused more than the mandible.4. About the growing form, the lobulated iype were 5 cases, the ridge type were 3 cases, and the mixed type was a case.5. About the chief complaint, there were many swelling, but few pain.6. All dentures were ill-fitting, and polished insufficiently.7. About the histologic features, we have observed the epithelial proliferation, the proliferation of the fibrous conective tissue, and the accessory salivary glands in a few cases.8. About the alveolar ridge and the dental arch, there were discrepancy between the maxilla and the mandible in the most cases. 9. About the occlusal stress-concentration, the result which used “Prescale (FUJI FILM Co., Ltd)” were distributed the press as the parts of the incisor as the molar.
著者
吉岡 慎郎 小河 弘枝 桑原 俊也 宮内 修平 丸山 剛郎
出版者
社団法人日本補綴歯科学会
雑誌
日本補綴歯科学会雑誌 (ISSN:03895386)
巻号頁・発行日
vol.36, no.4, pp.817-822, 1992
被引用文献数
3 1

補綴処置の目的は,顎口腔機能の回復と維持である.そのためには,補綴処置の計画の立案や予後の判定において,顎口腔機能の診査が必要となってくるのはいうまでもない.しかしながら,日常臨床においては,患者の主観にたよっているのが現状であり,客観的な顎口腔機能の診査・診断法の確立が急務とされている.本研究は,顎口腔機能の1つである発語を生理的運動としてとらえるために,連続音を構成する単位である単音を対象とし,単音発語時の下顎位について分析,考察したものである.
著者
玉本 光弘 名原 行徳 矢谷 博文 小谷 博夫 浜田 泰三
出版者
社団法人日本補綴歯科学会
雑誌
日本補綴歯科学会雑誌 (ISSN:03895386)
巻号頁・発行日
vol.28, no.6, pp.1018-1022, 1984
被引用文献数
3

義歯性口内炎の原因の1つとして, デンチャー プラーク中の真菌が重要な役割を演じていると考えられている. したがって, 真菌を含んだプラークを除去する目的で, 義歯洗浄剤を使用することは, 義歯性口内炎の予防および治療にとって有効な手段と考えられる. しかし, 従来の義歯洗浄剤の洗浄効果の研究は, 肉眼的な義歯の汚れ除去効果のみに主眼を置いたものであった. そこで, 本研究では, 義歯性口内炎の治療および予防に主眼を置いた義歯洗浄剤の洗浄効果の評価のため, 従来の肉眼的な評価法と, 新たに義歯性口内炎の原因菌と考えられている真菌を検出する簡易培地であるストマスタットを用いた評価法の有効性を検討した.
著者
吉田 展也 竹内 操 菊池 利也 嶋倉 道郎
出版者
社団法人日本補綴歯科学会
雑誌
日本補綴歯科學會雜誌 = The journal of the Japan Prosthodontic Society (ISSN:03895386)
巻号頁・発行日
vol.40, no.2, pp.266-275, 1996-04-01
参考文献数
43
被引用文献数
11

チタンは軽くて生体親和性や耐腐食性に優れているため,従来の歯科用金属に代わるものとして補綴領域でも注目され,鋳造冠や金属床の分野においても実用化されつつある.このチタンの性質の1つとして,表面の酸化被膜を介して高分子材料と強固に接着するということもあげられる.この性質をうまく硬質レジン前装冠に応用すれば,従来の機械的維持装置をレジン前装部から除き,審美性を高めることも可能である.今回はそのための基礎的実験として,接着と密接に関係するといわれている濡れに着目し,種々の処理を行ったチタン表面に対する金属接着性プライマーおよび蒸留水の接触角を測定することにより,濡れを良くする表面処理方法を検討した.
著者
喜多 誠一 野首 孝祠 安井 栄 北森 喜美恵
出版者
社団法人日本補綴歯科学会
雑誌
日本補綴歯科學會雜誌 (ISSN:03895386)
巻号頁・発行日
vol.37, no.6, pp.1152-1161, 1993-12-01
被引用文献数
1

現在,義歯床の製作において,数多くの特長を備えている注入型レジン重合法が臨床的に広く用いられているが,これまでの埋没方法においては重合操作中の人工歯の移動や咬合高径の低下などの問題点も指摘されている.その対策として,本教室では人工歯の固定をより確実にする目的で,低膨張硬石膏をコアとする注入型レジン重合法を開発して,良好な臨床成績を得ている.本研究は,この低膨張硬石膏コア法の重合操作中における人工歯の垂直および水平変位量にっし)て,また義歯床の適合性について,レジン床との結合様式の異なる陶歯とレジン歯のそれぞれを部分床義歯に用いた場合を比較した結果,いずれの場合も良好な成績が得られたので報告する.
著者
河野 文昭
出版者
社団法人 日本補綴歯科学会
雑誌
日本補綴歯科学会雑誌 (ISSN:03895386)
巻号頁・発行日
vol.51, no.2, pp.231-240, 2007-04-10 (Released:2010-08-10)
参考文献数
6
被引用文献数
1 1

義歯治療の目的は, 患者の機能の回復と審美性の改善残存組織の保全であり, 咬合採得は, これらを達成するための重要な診療ステップである. 部分歯牙欠損症例では, 残存歯に傾斜, 移動, 挺出, 動揺, 咬耗などが認められることが多く, 咬合平面の決定と上下顎顎間関係を記録する咬合採得の操作では, これら残存歯などの残存組織に対する配慮が必要となり, 無歯顎に比べて考慮すべき事項が多い.そのため, 誤りの少ない咬合採得を行うためには, 部分歯牙欠損症例の特徴を理解し, 義歯の印象, 義歯設計に対する知識だけでなく, 咬合に対する知識を整理し, 身につけておくことが重要である. また, 診療室では, いくつかの咬合採得の術式を併用しながら, 一つ一つのステップを確実に行い, チェックすることが大切である. 特に, 咬合が不安定な場合や採得した下顎位に自信がない場合には, 迷わずチェックバイト法やゴシックアーチ法によって確認することも大切である.そこで, 今回は咬合採得時に陥りやすい誤りを整理し, 咬合床の設計と咬合採得の基本的なスキルを中心に解説した.
著者
矢谷 博文
出版者
社団法人 日本補綴歯科学会
雑誌
日本補綴歯科学会雑誌 (ISSN:03895386)
巻号頁・発行日
vol.49, no.2, pp.190-198, 2005-04-10 (Released:2010-08-10)
参考文献数
32
被引用文献数
1

目的: 補綴臨床が8020運動にどのような臨床的インパクトを有しているかを知るため,(1) 歯質欠損あるいは少数歯欠損を補綴することで支台歯の寿命は延びるか,(2) 補綴治療は補綴をしていない残存歯の寿命を延ばすことに貢献するか, の2つの問いに対する答えを系統的文献レビューにより明らかにすること.方法: 歯冠補綴装置の生存率, クラウンブリッジの支台歯の運命, 部分床義歯装着およびインプラント治療が残存歯の生存に及ぼす影響, および欠損を放置した場合と補綴した場合の残存歯の喪失率について, 適切なMeSH (Medical Sublect Headings) の選択と包含基準の設定を行ったうえで, PubMed からコンピュータオンライン検索を行った. 検索された文献の抄録を精読してさらに文献を絞り込み, レビューを行った.結果: 得られた結果は以下のとおりである.(1) クラウンブリッジは, 装着後13年以上経過すると急速にトラブルが増加し, 15年で約1/3, 20年で約1/2が機能しなくなる,(2) 歯質欠損あるいは少数歯欠損をクラウンブリッジで補綴することで支台歯の寿命を延長することができる,(3) 少数歯欠損を放置した場合と比較して, インプラントあるいはブリッジによる欠損補綴は残存歯の寿命を延ばすことに貢献できる.結論: クラウンブリッジおよびインプラント治療は, 支台歯ならびに欠損隣在歯の寿命の延長に貢献できることから, 補綴臨床が8020運動に与える臨床的インパクトは大きい.
著者
吉岡 慎郎 小河 弘枝 桑原 俊也 宮内 修平 丸山 剛郎
出版者
社団法人 日本補綴歯科学会
雑誌
日本補綴歯科学会雑誌 (ISSN:03895386)
巻号頁・発行日
vol.36, no.4, pp.817-822, 1992-08-01 (Released:2010-08-10)
参考文献数
23
被引用文献数
1 1

In order to investigate the characteristics and reproducibility of the mandibular position during phonation of a Japanese syllabary single sound, intra- and inter-individual variations of the mandibular position were analyzed in 10 normal subjects using the Sirognathograph Analyzing System.Results were summerized as follows:1. With regard to the characteristics of the mandibular position during phonation of each vowel pronunciation, the order of the amount of the mandibular displacement in the vertical and anterior-posterior directions from maximum to minimum was IA/, /E/, /O/, /I/, and /U/ vowel pronunciation.2. With regard to the characteristics of the mandibular position during phonation of each consonant pronunciation, IS/ consonant pronunciation showed the smallest mandibular displacement in the vertical and anterior-posterior directions of all the consonant pronunciation.3. Phonation of each distinct single sound was performed at each characteristic mandibular position. However, high degree of reproducibility of the mandibular position during phonation was demonstrated in every subjects.4. The mandibular position during phonation of a Japanese syllabary has a little inter-individual variations in both antero-posterior and lateral direction. However, they showed a large inter -individual variation in superio-inferior direction.
著者
中居 伸行 貞森 紳丞 河村 誠 笹原 妃佐子 濱田 泰三
出版者
社団法人 日本補綴歯科学会
雑誌
日本補綴歯科学会雑誌 (ISSN:03895386)
巻号頁・発行日
vol.48, no.2, pp.163-172, 2004-04-10 (Released:2010-08-10)
参考文献数
18
被引用文献数
7 9

目的: Oral Health Impact Profile (OHIP) はオーストラリアで開発された口腔QOLの評価法であり, 近年では, ほかの国々でも徐々に使用され始めている. 今回われわれは, OHIPの原版 (英語版) を日本語に翻訳し, 日本での使用の妥当性を確認した。方法: 本研究は2力国語に通じたもの (39名) を対象に, 原版と邦訳版の回答を比較・検討した. OHIPの翻訳の妥当性は項目ごとの一致率とλ係数 (対象性評価の指標) によって分析した.結果: 尺度ごとの平均一致率はそれぞれ, 「機能的な問題」75%, 「痛み」76%, 「不快感」69%, 「身体的困りごと」79%, 「心理的困りごと] 77%, 「社会的困りごと」90%, 「ハンディキャップ」85%であった. 全49項目中41項目は0.4以上のλ係数を有し, 高い一致性が認められた. 上記7尺度のα信頼性係数は, 原版では0.76-0.90, 翻訳版では0.77-0.89にあり, 日英両版の尺度の内的妥当性が変わらないことが示唆された. 日英両版における7尺度のSpearmanの順位相関係数は0.83-0.92 (p<0.001) で, 優位な相関性を示した.結論: 日本語版OHIPは, このように高い信頼性と翻訳の妥当性を有することから, 日英の2言語間で使用可能であることが示唆された.
著者
石上 恵一 星野 浩之 武田 友孝 月村 直樹 高山 和比古 青野 晃 大岩 陽太郎 濱田 久 島田 淳 片山 幸太郎 大木 一三
出版者
社団法人 日本補綴歯科学会
雑誌
日本補綴歯科学会雑誌 (ISSN:03895386)
巻号頁・発行日
vol.36, no.3, pp.481-487, 1992-06-01 (Released:2010-08-10)
参考文献数
17
被引用文献数
2 2

Recently, sports dentistry has attracted attention as a field of sportsmedicine. Since the stomatognathic system and the systemic condition closely affect with each other, we have studied both of them objectively, physiologically and scientifically.Archery is a sport requiring static concentration of thought, and it seems to be extremely important for this sport to control a basic posture at the time of aiming at a target.This study was carried out for the purpose of obtaining a fundamental data on how a bite raising for vertical position by a resin splint, which maintained stable occlusion, influenced gravity fluctuations in posture at the time of aiming at a target.
著者
石上 惠一 星野 浩之 武田 友孝 月村 直樹 高山 和比古 青野 晃 大岩 陽太郎 濱田 久 島田 淳 片山 幸太郎 大木 一三
出版者
社団法人日本補綴歯科学会
雑誌
日本補綴歯科學會雜誌 (ISSN:03895386)
巻号頁・発行日
vol.36, no.3, pp.481-487, 1992-06-01
被引用文献数
16 2

最近,スポーツ医学の一分野として,スポーツ歯学が注目されつつある.これは顎口腔系の状態と全身状態が,密接に影響しあっていることから当教室ではこれらを客観的,生理学的および科学的に探究することを目的とし,検討を行っている.本研究は,その1つとしてスポーツの中で,その種目により静的な基本姿勢,"゜構え"が要求されるアーチェリー競技において,レジンスプリントを装着し,そして咬合させることにより得られた状態とその挙上量の変化とが"的"′を捕らえるときの"構え"の安定性,すなわち重心動揺にどのような影響を与えるかを検討するため,まずその基礎的一資料を得る目的で行ったものである.
著者
星合 和基 金澤 毅 平沼 謙二 太田 功 福井 壽男 森 博史 長谷川 明
出版者
社団法人日本補綴歯科学会
雑誌
日本補綴歯科學會雜誌 = The journal of the Japan Prosthodontic Society (ISSN:03895386)
巻号頁・発行日
vol.39, no.3, pp.494-500, 1995-06-01
参考文献数
21
被引用文献数
9 2

この研究は色調の安定性を改善した常温重合レジンについて検討したもので,レジン中の触媒にバルビツール酸誘導体と4級アンモニウム塩を用いたものである.このレジンの色調,物性,適合度について現在市販されている各種の常温重合レジンと比較検討したものである.その結果をみると,1.色調は安定し,変色はみられない,2.機械的強さはほぼ同程度である,3.適合性は優れていることが示されたので,臨床上有用な新しい常温重合レジンといえよう.
著者
野村 修一 三浦 順市 金子 康弘 星野 寿幸 石岡 靖
出版者
社団法人 日本補綴歯科学会
雑誌
日本補綴歯科学会雑誌 (ISSN:03895386)
巻号頁・発行日
vol.35, no.4, pp.789-793, 1991-08-01 (Released:2010-08-10)
参考文献数
13

This study aims to applicate the Biometric impression trays for Japanese edentulous patients. A hundred (fifity males and fifity females) Japanese bucco-lingual breadth (BLB) s of the dentulous alveolar process were measured on maxillary study casts by the three dimensional coordinate measuring machine.Results:1. Average measurements (mm) and standard deviations (mm) were as follows. Central incisor; 5.7±1.15, canine 7.5±1.41, first premolar 10.7±1.07, second premolar 11.4±1.37, first molar 13.4±1.25 and second molar 12.3±1.33.2. Japanese average measurements were 0.5-1.0mm smaller in incisor and canine region, but 0.6-0.8 larger in premolar and molar region as compared with figures of Scottish that Watt had reported.3. Biometric tray of which design is based on the average BLB measurements will become a concrete guide to the breadth of the flange of complete upper dentures for Japanese.
著者
森川 理 大竹 貫洋 埴 英郎 松村 光明 三浦 宏之 高橋 英和 西村 文夫 本橋 孝志
出版者
社団法人 日本補綴歯科学会
雑誌
日本補綴歯科学会雑誌 (ISSN:03895386)
巻号頁・発行日
vol.46, no.2, pp.213-222, 2002-04-10 (Released:2010-08-10)
参考文献数
19

目的: 口腔内で使用する合金は生体適合性に優れ, 各種修復物に応用可能なものが望まれる. 最近, 耐食性に優れ, 生体適合性も良いとされる歯科用金チタン合金が市販された. そこで, この合金の機械的性質および陶材との焼付強さを測定し, その有用性を検討した.方法: 実験には市販の陶材焼付用金チタン合金を使用した. 各種鋳造試験片はメーカーの指示に従って鋳造, 熱処理を行い作製した. 機械的特性として引張特性, 硬さを, 熱的特性として熱膨張係数を測定した. 金チタン合金と従来型陶材, 超低溶陶材との焼付強さをDIN13927に準じて求めた. 対照として, 従来の陶材焼付用金合金と従来型陶材の焼付強さも求めた. 金チタン合金に従来型陶材を築盛し割断した試料をEPMA分析した.結果: 引張特性と硬さは熱処理により変化し, 軟化熱処理した値は有意に小さかった. 硬化熱処理ではタイプ4金合金に近い機械的性質を示した. 熱膨張係数は従来の陶材焼付用金合金よりも大きかった. 焼付強さはいずれの陶材を用いても40MPa以上を示し, 従来型陶材焼付用金合金の値とは有意な差を認めなかった. 剥離面を観察したところ金属側には陶材の成分が, 陶材側にはチタンが存在していた.割断面を観察したところ, 焼付界面直下に酸化チタンが認められた.結論: 今回検討した金チタン合金は, 単一合金で広範囲な修復が可能な機械的性質を有し, かつ十分な焼付強さを示したことからその有用性が示唆された.
著者
杉木 進 山縣 健佑 樋口 貴大 杉山 一朗 北川 昇
出版者
社団法人 日本補綴歯科学会
雑誌
日本補綴歯科學會雜誌 = The journal of the Japan Prosthodontic Society (ISSN:03895386)
巻号頁・発行日
vol.45, no.2, pp.257-270, 2001-04-10
参考文献数
21
被引用文献数
6 1

目的: 本研究の目的は, 被験音 [サ], [シ] を義歯装着時と無歯顎時にそれぞれ発音させ, 静的パラトグラフィーを利用して, 舌と口蓋ならびに歯槽部, あるいは舌と上顎義歯との接触パターンを比較することである.<BR>方法: 被験者は, 無歯顎者10名 (男性3名, 女性7名). 口蓋ならびに上顎歯槽部を覆う黒色ビニール製の人工口蓋板に白色アルジネートの粉末を散布し, 被験者の口腔内に装着した. 被験音の発音後に, 人工口蓋板の舌接触部位は湿って白色から黒色へと変化して判別できた. 新たに開発した画像解析システムを使用して, 各被験者の同一被験音5回のパラトグラムを平均化した. 各被験者のパラトグラムを平均化したパターンを標準歯列模式図上に変換した. 同一音を累積したパラトグラムについて接触面積と左右の接触部位間の最短距離を比較した.<BR>結果: 無歯顎時 (E) と義歯装着時 (D) のパターンを比較すると, [サ], [シ] 発音ともに接触面積は, EのほうがDより広く, また, 左右の接触部位間の最短距離も, EのほうがDより有意 (Student t-test, p<0.05) に短かった.<BR>結論: パラトグラムのパターンは, Dに比較してEでは口蓋前方部への舌接触範囲が広く, 口蓋ヒダ部での呼気流路を示す "せばめ" が狭まる傾向がみられた.
著者
井上 昌幸
出版者
社団法人日本補綴歯科学会
雑誌
日本補綴歯科學會雜誌 (ISSN:03895386)
巻号頁・発行日
vol.37, no.6, pp.1127-1138, 1993-12-01
被引用文献数
12 8

今年度から本誌に「依頼論文」欄を新設しました.そのために編集委員会の中に「企画小委員会」を設け,本学会で以前発表されたシンポジウムなどから特に1.トピック的なテーマ,2.総説的で系統的なテーマを決定し,代表執筆者に原稿のご執筆をお願いして本誌に順次掲載することになりました.したがって,本論文は,いわばこれらの企画の第一号であり,以前井上先生により報告された宿題講演の主旨をまとめられたものであります.金属アレルギー問題はタイムリーなテーマであり,本論文には日常の補綴臨床にたずさわるわれわれ臨床家にとってきわめて有意義な情報が提示されています.本研究の代表者である井上先生ならびに共同研究者の諸先生方のご努力に対して改めて敬意をします.
著者
小池 麻里 藤井 弘之
出版者
社団法人 日本補綴歯科学会
雑誌
日本補綴歯科学会雑誌 (ISSN:03895386)
巻号頁・発行日
vol.45, no.2, pp.315-321, 2001-04-10 (Released:2010-08-10)
参考文献数
29

目的: Ag, Sn, Znを主成分とする歯科鋳造用銀合金はしばしばコアあるいは一部被覆冠に使用され, それらの約89%は変色している. しかし, 現在まで乳酸以外の有機酸に対する銀合金の腐食反応を観察した報告は少ない. 本実験の目的は, 唾液やプラークに多く含まれる有機酸および人工唾液中における銀合金の化学的安定性を評価し, 腐食試験などで用いられることが多い生理食塩水中で得られた結果と比較検討することである.方法: 浸漬試験法を用いて, 成分元素の溶出, 重量変化, 表面色の変化および腐食生成物の組成を分析した.結果: 全浸漬液で, 銀合金から解離したZnとSnの溶出および不溶性の沈殿物を認めた. Agの溶出はほとんど認められなかった. また, 試料の重量減少と変色を確認した. さらに, 溶出や重量の減少が多い試料のなかに変色が少ない場合があることを観察した. 銀合金は生理食塩水に接触したときよりも乳酸, ギ酸および酢酸などの有機酸に接触したときのほうが腐食しやすいこと, 有機酸の種類によって溶出イオンの動態が異なることがわかった.結論: 本論文の結果は, 銀合金は口腔内環境のなかで腐食しうることを示している. この腐食の程度は変色だけでは評価すべきではない.
著者
河野 亘
出版者
社団法人 日本補綴歯科学会
雑誌
日本補綴歯科学会雑誌 (ISSN:03895386)
巻号頁・発行日
vol.35, no.1, pp.178-192, 1991-02-01 (Released:2010-08-10)
参考文献数
55

This study was made to investigate the influence of gum texture on the chewing motion. The textures of chewed gum (Green gum, LOTTE Co.), the hardness, the cohesiveness, the gumminess, the stickiness and the adhesiveness, were quantified by a texturometer (Zenken Co.), and also the weight measured for 10, 20, 30, 60, 90, 120, 180, 240, 300 and 600 sec in 8 normal subjects and 2 patients with craniomandibular disorders (CMD). Using a kinesiograph (Model K 6, Myo-tronics Co.), the jaw movement of mandible was recorded three-dimensionally during 10min. habitual gum chewing. Multiple regression analysis was applied for investigating the effects of the change of gum texture and weight on chewing motion (criterion variables: chewing movement parameters, explanatory variables: texture and weight factors).The results obtained were as follows:1. In normal subjects, the closing and the occluding phases were observed high correlations with the hardness and the cohesiveness. On the other hand, the opening phase and the cycle time were not observed correlations with any texture and weight factors.2. In CMD patients, all parameters of chewing movement were observed high correlations with texture and weight factors.In conclusion, a central pattern generator (CPG), somewhere in the brain stem, is suggested to be responsible for rhythmical jaw movement in normal subjects. In CMD patients, however, jaw movement was easy to be affected by peripheral factors such as gum texture and weight.
著者
三浦 英司 高山 慈子 細井 紀雄
出版者
社団法人 日本補綴歯科学会
雑誌
日本補綴歯科学会雑誌 (ISSN:03895386)
巻号頁・発行日
vol.48, no.2, pp.212-221, 2004-04-10 (Released:2010-08-10)
参考文献数
19

目的: 日常臨床において, 金銀パラジウム合金による鋳造鉤の変色がしばしば観察される. 本研究は, 溶体化処理後, 急冷あるいは空冷を行った金銀パラジウム合金製鋳造鉤を用いた部分床義歯を患者に装着し, 変色の経時変化を測定し, 溶体化処理の効果について明らかにすることを目的としたものである.方法: 装着中の義歯の鋳造鉤が, 高度の変色を示している10名を被験者として選択した. 12%金銀パラジウム合金を用いて, 1) 800℃1時間係留後水中で急冷, 2) 800℃1時間係留後, 室温で空冷, 3) 熱処理なし, の3条件の鋳造鉤を用いた部分床義歯を装着し, 装着時, 6ヵ月後, 1年後に鋳造鉤の輝度の測定を行った.結果: 義歯装着時の鋳造鉤の平均輝度は, 3種とも1, 000cd/m2以上の高い平均輝度を示した. 6ヵ月後の鋳造鉤は, 各条件とも装着時の約1/5-1/8と急激な輝度の低下が認められた. 1年後ではさらに輝度は低下し, 装着時の約1/7-1/12となった. 6ヵ月, 1年後ともに急冷を行ったほうが熱処理なし, 空冷に比べ輝度が高く有意差が認められた.結論: 熱処理の方法により鋳造鉤の輝度に有意差が認められたが, いずれも輝度は大幅に低下しており, 口腔内における金銀パラジウム合金の腐食性の高い患者では, 今回行った溶体化処理では耐変色性が十分でないことが示唆された.