著者
五味渕 泰造 小出 馨 旗手 敏
出版者
Japan Prosthodontic Society
雑誌
日本補綴歯科學會雜誌 = The journal of the Japan Prosthodontic Society (ISSN:03895386)
巻号頁・発行日
vol.44, no.2, pp.339-347, 2000-04-10
被引用文献数
12 1

The form of occlusion in denture wearers is an important factor for masticatory function in subjects with a denture. The masticatory performance was statistically compared between subjects by applying bilateral balanced lingualized occlusion (L.O.) and full balanced occlusion (F. B. O.) to study the effects on masticatory function. The subjects were 6 cases with an edentulous jaw (4 males and 2 females). Experimental foods were boiled fish-paste, peanut, and carrot. The trial was repeated 3 times for each of the 3 foods, with chewing at 10, 20, and 30 times respectively. One unit was determined as a 10 mesh screen. The results were as follows:<BR>1. For boiled fish-paste (soft or elastic food), F. B. O. showed a significantly higher masticatory performance at all chewing frequencies compared to L. O.<BR>2. For peanut (hard or crushable food), there was no significant difference in masticatory performance at all chewing frequencies and the form of occlusion.<BR>3. For carrot (hard or cut food), L. O. showed a significantly higher masticatory performance at 10 and 20 times chewing frequencies compared to F. B. O.<BR>It was suggested that L.O. is effective in masticating hard or cut food, and is the form of occlusion having a high cutting potential compared to F. B. O.
著者
一和多 寿樹
出版者
社団法人日本補綴歯科学会
雑誌
日本補綴歯科學會雜誌 (ISSN:03895386)
巻号頁・発行日
vol.30, no.3, pp.652-664, 1986-06-01
被引用文献数
5 5

自然歯に調和した歯冠補綴物を調整するためには,自然歯そのものの色彩を解明することが必要と考え,それを明らかにすることを目的とし,近年開発された分光放射測定装置を応用し,10代後半から20代後半までの男女の上顎前歯について詳細に測定し,L^*a^*b^*表色系において検討したものである。
著者
浜田 泰三 二川 浩樹
出版者
Japan Prosthodontic Society
雑誌
日本補綴歯科學會雜誌 = The journal of the Japan Prosthodontic Society (ISSN:03895386)
巻号頁・発行日
vol.45, no.5, pp.561-581, 2001-10-10
被引用文献数
16 2

顎口腔が全身の一部として, 全身とのかかわりがあるにもかかわらず, 体の一部分として取り扱われてきた傾向があるが, 高齢社会のなかで寝たきり患者などから否応なしに口腔が全身の健康と深い関係がある実態をみせつけられた. 欧米ではすでに100年以上も前から義歯の汚れを微生物学的視点からとらえていたが, わが国では20年くらいの歴史しかない. 本稿ではまず (1) デンチャープラークの微生物について解説した. 次いで (2) デンチャープラークの病原性について口腔への影響と全身への影響について言及した. さらに (3) オーラルヘルスケアの具体的方法として機械的な清掃法, 義歯洗浄剤さらには抗真菌剤や銀系無機抗菌剤の応用を紹介した.<BR>オーラルヘルスケアにあたり, いかに口腔内の汚染レベルを把握するかはとても重要であり, 現在応用できるカリエスリスク検査と歯肉溝滲出液検査について解説し, 特にカンジダ検査について詳しく述べた. 局所ならびに全身状態の把握や高齢者に対して特に配慮すべき事柄についても言及した.
著者
鈴木 卓哉
出版者
社団法人日本補綴歯科学会
雑誌
日本補綴歯科學會雜誌 (ISSN:03895386)
巻号頁・発行日
vol.40, no.6, pp.1102-1110, 1996-12-01
被引用文献数
22

咀嚼筋や顎関節に異常があると種々の運動障害が生じるが,その1つに下顎の側方偏位がある.そのため,開閉口時の下顎切歯路は重要な診査事項となっているが,これだけでは十分な診断根拠とはなりえない.この現象を理解するためには,関節円板の動態と顆頭運動を組み合わせて追究することが求められる. 本論文は,関節円板前方転位症例における開閉口時の顆頭運動を解析したものである.開口量は顆頭移動量に依存しており,開口量が45mm以上の場合には関節円板前方転位の影響がほとんどみられないことを示している.
著者
黒崎 俊一
出版者
社団法人日本補綴歯科学会
雑誌
日本補綴歯科學會雜誌 (ISSN:03895386)
巻号頁・発行日
vol.36, no.3, pp.588-601, 1992-06-01
被引用文献数
15

総義歯調製において,作業模型は,床下組織に対する解剖学的および補綴学的考慮の払われた口腔粘膜面形態を表現する必要がある.本研究では,形態および被圧変位性が無歯顎者の上顎顎堤に近似した上顎無歯顎シミュレーションモデルを使用し,印象材,トレーの圧接速度および保持圧の変化が,作業模型の形態へ及ぼす影響を断面形状と変位量の変化で検討した.その結果,圧接速度の影響を受けず,保持圧を変化させることによってポストダム部の変位量を調節できるシリコーンラバー印象材が,上顎無歯顎作業模型の粘膜面形態を表現するのに有効な印象材であることが示唆された.
著者
山下 敦 近藤 康弘 藤田 元英
出版者
社団法人日本補綴歯科学会
雑誌
日本補綴歯科學會雜誌 (ISSN:03895386)
巻号頁・発行日
vol.28, no.6, pp.1023-1033, 1984-12-01
被引用文献数
35 25

歯科接着性レジンを用いて装着した接着ブリッジ等が, 長期間機能を営むためには, 従来のリン酸セメントによる装着法とは基本的に異なった被着歯面および金属の前処理が必要である. 著者らは先にNi-Cr 系合金と接着性レジンを強固に接着させる金属被着面前処理法を考案したが, 本法は貴金属合金に適していないため, 接着技法を補綴領域に広く発展させることを目的に, 貴金属合金に適した前処理法を種々検討した. その結果, 母合金表面にSn元素を析出させると強固な接着強さと耐求性の得られることがみい出させた. 本報告は, 歯科用金合金と歯科接着性レジンとの接着に関した基礎実験結果について述べたものである.
著者
松田 もと子 永井 成美 折笠 史明 多田 建造 辰巳 浩輝 藤原 麻紀 古川 良俊 石橋 寛二 井上 昌幸
出版者
社団法人日本補綴歯科学会
雑誌
日本補綴歯科學會雜誌 (ISSN:03895386)
巻号頁・発行日
vol.38, no.3, pp.588-595, 1994-06-01
被引用文献数
2 1

歯科用金属に起因すると考えられる金属アレルギーが注目されており,その診断にパッチテストが用いられている.しかし,判定は主観に頼り,皮膚の変化を的確,経時的に把握することは困難である.本論文はパッチテストにおける客観的な判定システムを開発することを目的として,パッチテスト後の皮膚色を分光測色し,色彩学的に分析したものである.その結果,皮膚の発赤反応に色彩学的に特徴のある変化が観察された.皮膚の発赤反応を判定する客観的指標を示したものとして興味深い.
著者
田中 美保子 三海 正人 中村 茂 小池 麻里 藤井 弘之
出版者
Japan Prosthodontic Society
雑誌
日本補綴歯科學會雜誌 = The journal of the Japan Prosthodontic Society (ISSN:03895386)
巻号頁・発行日
vol.42, no.6, pp.1037-1044, 1998-12-10
被引用文献数
2

The discoloration of the fixed metal prosthodontic appliances, which had been removed from the oral cavity, was observed to obtain epidemiological and clinical suggestions to select the dental alloy. This study was performed on 396 fixed metal prosthodontic appliances which were removed from the oral cavity.<BR>The findings were as follows:<BR>1. The appliances were composed of 7 kinds of dental alloy, Au-Pd-Ag-Cu-alloy (74.4%), Ag-alloy (9.8%), Ni-Cr-alloy (9.5%), Au-alloy (4.5%), Amalgam (0.5%), Co-Cr-alloy (0.3%), Titanium alloy (0.3%), and others (0.7%). The appliances observed were full cast crowns (33.1%), bridges (21.0%), fillings or partial veneer crowns (16.7%), resin faced cast crowns (13.1%), connected crowns (6.3%), root caps (2.5%), band crowns (2.3%), porcelain-fused-to-metal-crowns (1.8%), metal cores (1.8%), and attachments (1.5%).<BR>2. The proportionof the discoloration of appliances removed was 69%, and this was about 1.7 timeshigher than before removal (p > 0.01).<BR>3. The discoloration of appliances increased with the duration of use in the oral cavity (p > 0.01), and theappliances of Ag alloy were the most discolored (88.9%, p> 0.05) among 7 kinds of alloy.<BR>4. Discoloration was frequently observed at the soldered portions, inner margin, and basal surfaces of pontic or the lower parts of connectionat the proximal embrasure (p > 0.05).<BR>5. The proximal surfaces adjoiningdiscolored appliances were more discolored than those adjoining nondiscolored appliances (p > 0.01).<BR>6. In patients whose oral prophylaxis status were better, the appliances tended to be less discolored.
著者
友永 章雄 池田 雅彦 加藤 〓 大畑 昇
出版者
Japan Prosthodontic Society
雑誌
日本補綴歯科學會雜誌 = The journal of the Japan Prosthodontic Society (ISSN:03895386)
巻号頁・発行日
vol.49, no.2, pp.221-230, 2005-04-10
被引用文献数
7 6

目的: 本研究は夜間装着したオクルーザルスプリント上にできる咬合小面 (ファセット) を観察し, Sleep bruxism (以下SBと略す) の強さの評価指標とし, SBの強さと修復物脱落との関係を解明することを目的とした.<BR>方法: 1976年から2004年までにスプリントを装着した患者912名のうち422名を任意に選択し, その患者の修復物 (インレー, クラウン, 連結冠, ブリッジ) 3, 673個を調査対象とし, 脱落状態を調査した.SBの強さは評価用インクを塗布したスプリントを夜間装着させ, スプリント上のインクと咬合小面 (ファセット) の状態を観察する池田式分類で評価し, 経時的に修復物の残存率を調べた.B-0: ファセットなし, B-1: インクが剥げファセットが認められる状態, B-2: ファセットが削れている状態, B-3: ファセットが著しく深くえぐれている状態.<BR>結果: 修復物が脱落した人はB-1: 12.7%, B-2: 35.1%, B-3: 43.8%でSBが強いほど多く, 合着後早期に脱落し, B-1, B-2, B-3各群の15年後の脱落率は全修復物9%, 18%, 24%, インレー19%, 24%, 32%, クラウン5%, 12%, 13%であった.<BR>結論: 修復物脱落にはSBの強さが影響し, スプリントの咬合小面 (ファセット) 観察によるSB評価が修復物脱落の予後判定に有効であり, SBの力の抑制により脱落を減らせることが示唆された.
著者
横堀 正純 清水 公夫 渡辺 秀昭 小司 利昭 森田 修己
出版者
社団法人日本補綴歯科学会
雑誌
日本補綴歯科學會雜誌 (ISSN:03895386)
巻号頁・発行日
vol.40, no.2, pp.249-254, 1996-04-01
被引用文献数
4

補綴臨床やスポーツ歯学において全身運動時における咬合接触や咬合力についての研究はきわめて重要と考えられるが,いまだ十分に明らかにされていない.そこで本研究は,握力発揮時にかみしめを自覚している男性を選択し,デンタルプレスケールシステムを用いて握力発揮時と最大かみしめ時の咬合面積と咬合力を測定し,比較検討した.この結果,握力発揮時のかみしめは最大かみしめ時とほぼ同じかみしめを行っている人が多いが,一部の人はこれと異なったかみしめを行っており,個人差が大きいという知見が得られた.
著者
反町 晋康 佐藤 格夫 澤口 正俊 小司 利昭 森田 修己
出版者
Japan Prosthodontic Society
雑誌
日本補綴歯科學會雜誌 = The journal of the Japan Prosthodontic Society (ISSN:03895386)
巻号頁・発行日
vol.41, no.1, pp.112-116, 1997-02-01
被引用文献数
12 3

In order to clarify the reliability of measurement accuracy of the SDM apparatus, thickness of 9 palatine mucosal regions of 2 normo-dentulous subjects was determined and its correlation with the measured values for the same regions by puncturing was examined. Furthermore, thickness measurement was made of 10 palatine mucosal regions of 25 males and 11 females. The results were as follows:<BR>1. Intra-individual change in the measured value tended to be smaller by SDM method than by puncturing.<BR>2. A high correlation was noted between the measured values of palatine mucosal thickness diameter by puncturing and SDM method.<BR>3. As for the palatine mucosal thickness by SDM method:<BR>1) Palatine median region and retropalatine lateral region showed the smallest and the greatest thicknesses, respectively.<BR>2) Males tended to have greater thickness in all regions that were measured than females.
著者
金谷 貢 渡辺 孝一 宮川 修
出版者
Japan Prosthodontic Society
雑誌
日本補綴歯科學會雜誌 = The journal of the Japan Prosthodontic Society (ISSN:03895386)
巻号頁・発行日
vol.45, no.2, pp.227-237, 2001-04-10
被引用文献数
11 6

目的: 本研究ではブリッジと有床義歯に関する教育, 研究および臨床の将来計画立案の-助とするために, 将来使用されるそれら補綴物数の推計を試みた.<BR>方法: 研究対象は65歳以上の高齢者および要援護高齢者とした. 将来における一人平均のブリツジ数と有床義歯数を歯科疾患実態調査報告をもとにした単純回帰分析より推定した. 回帰分析においては, 推定回帰線の交差および上限に対する補正を加えた. 推定された一人平均のブリッジ数, 有床義歯数, および将来推計人口から, 将来使用される補綴物数を予測した.<BR>結果: 高齢者が使用するブリッジと有床義歯の総数は, 今後20年間で2.0倍 (2.2~1.1倍, 95%信頼区間より算出) と1.5倍 (1.8~1.0倍) にそれぞれ増加し, その後10年間は両者ともにほぼ一定で推移すると推定された.ブリッジ数と有床義歯数の増加率はともに年齢階層が高くなるほど大きくなっていた. また, 要援護高齢者が必要とするブリッジと有床義歯の総数は, 今後25年間で2.7倍 (3.2~1.0倍) と1.8倍 (2.2~1.0倍) にそれぞれ増加すると推定された.<BR>結論: 以上より, 高齢者および要援護高齢者を対象としたブリッジあるいは有床義歯に関する教育, 研究および臨床はこれまで以上に必要性が増してくると考えられた.
著者
猪子 芳美 高橋 史 大沼 智之 森田 修己
出版者
社団法人 日本補綴歯科学会
雑誌
日本補綴歯科学会雑誌 (ISSN:03895386)
巻号頁・発行日
vol.47, no.3, pp.508-515, 2003-06-10 (Released:2010-08-10)
参考文献数
16
被引用文献数
1

目的: 閉塞型睡眠時無呼吸症候群の歯科的治療に用いられる口腔内装置 (Oral appliance: OA) の効果に関する報告は, 多く認められる. しかし, 下顎前方位型装置 (Mandibular advancement device: MAD) の装着が口腔咽頭領域の形態に及ぼす影響について, 画像的に十分明らかにされていない. 本研究の目的は, 側方頭部X線規格写真 (セファログラム) 撮影時の体位および呼吸変化が, 口腔咽頭領域の形態に及ぼす影響を健常者について検討することである.方法: 被験者は, 自覚的, 他覚的にいびきを認めない健常者12名 (男性10名, 女性2名, 平均年齢27.3歳, 肥満度21.9kg/m2) とした. 被験条件は, 立位時の吸息と呼息および仰臥位時での吸息と呼息において, セファログラム撮影を行った. 撮影されたX線写真から得られた透写図上にて, 咽頭腔前後径とその面積, ならびに舌骨の位置の計測を行い, 体位と呼吸状態を2要因とする反復測定分散分析を用いて検討した.結果: 吸息時と呼息時の間に有意な差は認められなかった. しかし, 体位を立位から仰臥位に変化させると, 咽頭腔面積および口蓋垂後方の前後径と舌根部後方の前後径, 舌骨から下顎までの距離が有意に減少した.結論: 以上の結果から, 呼吸による影響は認められなかったが, 体位を立位から仰臥位に変化させることで口腔咽頭領域の形態に影響を及ぼすことが示された.
著者
竹内 聡史 河野 正司 小林 博 桜井 直樹 細貝 暁子 金城 篤史 甲斐 朝子
出版者
社団法人 日本補綴歯科学会
雑誌
日本補綴歯科学会雑誌 (ISSN:03895386)
巻号頁・発行日
vol.52, no.4, pp.473-481, 2008-10-10 (Released:2009-02-20)
参考文献数
17
被引用文献数
1 1

目的 : 下顎タッピング運動に随伴する体幹動揺が, 座位において観察できるのか, また立位と座位でどのような差を示すか追求することを目的とした.方法 : 被験者は顎口腔系に異常を認めない男性6名 (25-29歳, 平均年齢27.0歳) で, 姿勢は立位, 座位の2種類として, 10秒間の咬頭嵌合位保持, 3Hzの20秒間タッピング, その後10秒間咬頭嵌合位保持を1測定単位として測定を行った. 下顎運動はTRIMETII (東京歯材社製) により上顎座標系にて下顎切歯点を, 頭部は大地座標系で上顎切歯点, 下顎頭点, 頭頂点, 後頭点を, また体幹動揺はProreflex (Qualisys社製) により大地座標系で胸骨点の矢状面内運動を分析した.結果 : 座位において, 下顎タッピング運動に随伴する体幹動揺が認められた. 開口量に対する体幹動揺量を立位と座位でWilcoxonの符号付検定をしたところ, 有意に立位の方が大きくなった. また体幹動揺の周波数分析におけるパワーの平均値を立位と座位でWilcoxonの符号付検定をしたところ, 有意に立位の方が大きくなった. しかし, 原波形解析による検出率をWilcoxonの符号付検定をしたところ, 立位と座位で有意差は認められなかった.結論 : 体幹動揺量は立位の方が大きいが, 原波形による検出率では差がなく, 咀嚼動作として自然な座位での分析も可能であることが明らかとなった.
著者
牧平 清超 二川 浩樹 西村 春樹 西村 正宏 村田 比呂司 貞森 紳丞 石田 和寛 山城 啓文 金 辰 江草 宏 福島 整 浜田 泰三
出版者
社団法人 日本補綴歯科学会
雑誌
日本補綴歯科学会雑誌 (ISSN:03895386)
巻号頁・発行日
vol.45, no.3, pp.403-411, 2001-06-10 (Released:2010-08-10)
参考文献数
22
被引用文献数
4 4

目的: 本研究は, 市販義歯安定剤の細胞活性への影響および炎症性サイトカインであるインターロイキン1βの発現誘導に及ぼす影響を検討した.方法: 細胞活性への影響はaqueous soluble tetrazolium/formazan assay (MTS法) を用いて, またインターロイキン1βの発現誘導はEnzyme-linked immunosorbent assay (EUSA法) を用いて評価した.結果: クリームタイプを中心とした義歯安定剤は, 強い細胞活性の減少を示した. 特に新ポリグリップ無添加が最も低い細胞生存率を示した. 一方, ポリデントを除くクッションタイプでは, 細胞活性に対する影響をほとんど認めなかった. 粉末タイプおよびシールタイプでは, これらの中間の作用を示した. これらの細胞に対する作用は, pHの影響ではなくむしろ義歯安定剤の成分に大きく依存していることが示唆された.また, 細胞活性に影響を与えない6製品でインターロイキン1βの発現を検討した結果, すべての製品で誘導を示さなかった. しかしながら, 歯科で使用される材料由来の環境ホルモンによる人体への影響が懸念されているなか, 今後さらに分子レベルにまで踏み込んだ検討が必要と思われる.結論: 義歯安定剤にはこれまで報告されている機能面での為害性や細胞生物学的な為害性も有している製品もあることから, その使用にあたって歯科医師の十分な管理が必要と考えられる.
著者
高橋 英和
出版者
Japan Prosthodontic Society
雑誌
日本補綴歯科學會雜誌 = The journal of the Japan Prosthodontic Society (ISSN:03895386)
巻号頁・発行日
vol.47, no.3, pp.474-483, 2003-06-10
被引用文献数
2 8

義歯安定剤には, 義歯粘着材と呼ぶべき粘着性の強い製品群と, 義歯床と口腔粘膜の間隙を補填して, 適合性を改善することで吸着性を向上させる家庭用裏装材 (ホームリライナー) の製品群に分類できる. 義歯粘着材では, さらに製品形状により粉末タイプ, クリームタイプ, テープタイプに分類できる. 義歯粘着材の主要成分は, 天然ゴムもしくは水溶性高分子であり, 口腔内や義歯の水分を吸収して膨潤し, 粘着性の高い液体となり, 義歯の維持力を増加させる. それに対しホームリライナーの主成分はポリ酢酸ビニル樹脂であり, 義歯と粘膜面の間隙を閉鎖することで維持力を発揮させる. 使用時にゴム弾性を示すのでクッションタイプとも呼ばれる. 義歯安定剤の接合力を測定したところ, 義歯粘着材は被着材の種類にかかわらずある程度の接合力を発揮するが, ホームリライナーはアクリル板でのみで大きな接合力を発揮する. また, 義歯安定剤には厚みがあるため, 咬合関係を誤った位置に導くことが懸念される. 実際にこれらを口腔内で使用したところ, 義歯粘着材は義歯の吸着を改善するが, 粘膜面からの除去が難しく, 不潔になりやすい. ホームリライナーではあまり義歯の吸着を改善しなかった. このように, 義歯安定剤は義歯粘着材とホームリライナーで大きく性質が異なり, 区別して考える必要がある.
著者
田端 恒雄
出版者
社団法人日本補綴歯科学会
雑誌
日本補綴歯科學會雜誌 (ISSN:03895386)
巻号頁・発行日
vol.36, no.3, pp.461-470, 1992-06-01

昭和8年(1933年)に誕生した日本補綴歯科学会は,平成5年(1993年)に創立60周年を迎える.本学会は歯科の専門学会としては日本で最も長い歴史を有する学会であり,創立以来,補綴学研究と補綴臨床の中心として日本における補綴診療の進歩,発展に多大の貢献を果たしてきた.この機会に,創立以来今日に至る学会の60年の道のりを概観してみたい.