著者
西川 晃豊 田口 清 樋口 豪紀 佐野 公洋 永幡 肇
出版者
公益社団法人 日本獣医師会
雑誌
日本獣医師会雑誌 (ISSN:04466454)
巻号頁・発行日
vol.59, no.1, pp.35-39, 2006-01-20 (Released:2011-06-17)
参考文献数
15

強電解酸性水 (電解水) に硫酸銅を溶解させた電解水硫酸銅液に6%まで有機物を混入させ, 大腸菌 (Escherichia coli ATCC 11775株) に対する殺菌効果を評価した.電解水硫酸銅液は有機物混入下で硫酸銅濃度2.5×10-2%まで大腸菌の発育を阻止し, 水道水や蒸留水を溶媒とした硫酸銅液より殺菌効果が高かった.次に趾皮膚炎 (DD) が蔓延していたフリーストール農場 (搾乳牛約130頭) において電解水のすすぎ槽と電解水2.5%硫酸銅液の薬液槽を用いた通過型蹄浴のDDによる跛行制御効果を検討した.全頭の通過により薬浴槽のpHは3.1から4.5に, CODは230から3, 890ppmに上昇した.この蹄浴による5カ月間の跛行を呈するDDの摘発率は毎月1.5~3.9%で, 過去4カ月間に実施した水道水5%硫酸銅液による蹄浴と差がなく, 硫酸銅使用量を従来よりも半減できることが示唆された.
著者
深瀬 徹 板垣 博
出版者
公益社団法人 日本獣医師会
雑誌
日本獣医師会雑誌 (ISSN:04466454)
巻号頁・発行日
vol.41, no.11, pp.783-787, 1988-11-20 (Released:2011-06-17)
参考文献数
24

カルバメート系の殺虫薬であるプロポクスル (propoxur) の1%(w/w) 散剤について, 犬へ強制経取投与した場合の安全性を検討した. 供試犬16頭を1群4頭の4群にわけ, それぞれ, 無投薬対照群, プロポクスル5mg/kg投与群, 10mg/kg投与群, 20mg/kg投与群とし, 薬剤投与1週間前から投与後3週間にわたって, 各犬の一般臨床所見の観察と種々の血液学的, 血液化学的検査を実施した. その結果, プロボクスルの投与に起因すると思われる所見として, 赤血球数, 白血球数, 血小板数の減少と, ヘマトクリット値の低下, および血清α-アミラーゼ活性の上昇と, 血清コリンエステラーゼ活性の低下が認められたが, これらの変化は一過性のものであり, 投薬後1週間以内にすべて投薬前のレベルに回復した. このことから, プロポクスルの1%散剤は, 通常行われる20mg/kg程度の用量での散布では, 散布後に犬が経口的に薬剤を摂取したとしても, 重篤な副作用を発現することはないと考えられた
著者
大津 奈央 倉持 好 佐々木 淳 落合 謙爾 御領 政信
出版者
公益社団法人 日本獣医師会
雑誌
日本獣医師会雑誌 (ISSN:04466454)
巻号頁・発行日
vol.70, no.6, pp.357-362, 2017-06-20 (Released:2017-07-20)
参考文献数
15

ブロイラーの浅胸筋変性症の発生要因及び病変形成プロセス解明のため,浅胸筋に肉眼的異常のある32日齢及び48〜50日齢のブロイラーの浅胸筋と深胸筋を病理学的に検索した.肉眼的に32日齢では浅胸筋は軽度の退色,筋線維の走行に一致する白色線条病変が観察され,組織学的には散在性の筋線維の硝子様変性,絮状変性,大小不同,マクロファージによる筋貪食像が認められた.48〜50日齢では,32日齢の病変より重度かつ広範で,肉眼的に浅胸筋の扁平化や,退色,水腫,白色線条病変が認められ,組織学的には筋線維の再生性変化や線維芽細胞の増殖を伴う膠原線維の増生が顕著であった.重症例では筋膜が肥厚し,膠原線維の増生及び血管新生が認められた.深胸筋ではどの日齢でも筋線維の硝子様変性がわずかに認められるのみであった.全症例で浅胸筋浅層の病変が最も重度で深部になるほど軽度であり,局所的な循環障害に起因することが示唆された.
著者
石川 義久 鮫島 都郷 野村 吉利 本橋 常正 織間 博正 田坂 邦安
出版者
公益社団法人 日本獣医師会
雑誌
日本獣医師会雑誌 (ISSN:04466454)
巻号頁・発行日
vol.42, no.10, pp.715-720, 1989-10-20 (Released:2011-06-17)
参考文献数
18
被引用文献数
6 6

HmLu細胞培養に順化した狂犬病ウイルスRC・HL株の抗原性および注射法を検討した. 交差中和試験において, 抗RC・HL株, 抗CVS株および抗HF-TC株血清は, それぞれ対応ウイルス株を最高の抗体価で中和した. 他方, 抗RC・HL株血清はHF5TC株よりCVS株を高い抗体価で中和した. 試作ワクチン注射犬の感染防御試験によって測定された最小有効抗体価は, RC・HL株による測定で11.3倍, HF-TC株による測定で約4倍であった. モルモットに対する最小有効抗体価はイヌのそれよりやや高く測定された. この傾向はモルモットにおける受身免疫試験でも認あられた. 試作ワクチンをイヌあるいはネコに対して0.5ml, 1.0mlおよび2.0ml皮下注射した場合, ならびに原液, 2倍, 4倍および8倍希釈ワクチン1.0mlを皮下注射した場合, それぞれ注射後2週および4週の抗体価に有意差は認められなかった. 試作ワクチン1.0mlを1回皮下注射されたイヌのHF-TC株により測定された抗体価は, 1ヵ月後29.3倍, 12カ月後5.4倍であった. 1ヵ月, 6ヵ月および12カ月間隔で2回注射されたイヌのHF-TC株による測定の2回注射後の最高中和抗体価は, それぞれ313.3倍, 368.1倍および340.3倍であった. 24ヵ月間隔で2回注射後の中和抗体価は1回注射後のそれと同程度であった. これら血清の抗体価をRC・HL株で測定した場合には, HF-TC株によって得られた値より2.2~11.4倍高かった. RC・HL株不活化ワクチンは, 1.0ml注射により12カ月間免疫を持続し, 再注射によりさらに高い抗体応答を引き起こすことが示された.
著者
安田 博美 山中 盛正 江副 伸介 大森 崇司 草薙 公一 西條 加須江 瀧川 義康 天野 健一
出版者
公益社団法人 日本獣医師会
雑誌
日本獣医師会雑誌 (ISSN:04466454)
巻号頁・発行日
vol.61, no.4, pp.311-314, 2008-04-20 (Released:2011-06-17)
参考文献数
14
被引用文献数
1 1

不活化狂犬病ワクチン接種犬における抗体応答を中和試験によって検討した. 試験には2005年に東京都, 静岡県, 岐阜県, 京都府, 宮崎県および熊本県で飼育されていたワクチン接種犬100頭と未接種犬25頭の合計125頭のペァ血清を用いた. 過去1年間にワクチン接種歴のある犬100頭のうち90頭が有効抗体価25倍以上の中和抗体を保有しており, 8倍以上の抗体価を有する個体の幾何平均抗体価 (geometric mean titers; GMT) は251倍であった. このような犬にワクチンを追加接種すると, 1カ月後には全頭の抗体価が25倍以上に上昇し, GMTは750倍に達した. いっぽう, 今までに接種経験のない25頭にワクチンを接種すると, 23頭が中和抗体を産生したが, 2頭からは抗体が検出されなかった. ワクチン接種1カ月後の抗体価は8倍未満から256倍に分布し, GMTは43倍であった. これらの成績により, ワクチン接種により確実な免疫を付与し, それを維持するためには, 現行の接種プログラムである年1回の追加接種が重要であると考えられる.
著者
加藤 肇 中尾 茂 中田 悟史 佐藤 礼一郎 大西 守 田島 誉士
出版者
日本獸医師会
雑誌
日本獣医師会雑誌 (ISSN:04466454)
巻号頁・発行日
vol.68, no.6, pp.379-383, 2015

サルモネラ・ティフィムリウム及び同ダブリンの不活化菌体抗原を主成分とし,エンドトキシン中和剤であるポリミキシンB硫酸塩を含む牛サルモネラ症不活化ワクチンを,健常なホルスタイン種育成牛8頭に接種した際の生体の反応を,臨床病理学的に観察した.ワクチン接種後に食欲の低下や一般状態の悪化は認められなかった.注射部位に一過性の腫脹及び硬結が認められた.血液検査所見では,ワクチン接種後24時間以内に,急性炎症の指標となるヘマトクリット値,血清総蛋白質濃度,アスパラギン酸アミノトランスフェラーゼ活性値,クレアチンキナーゼ活性値及びシアル酸濃度の有意な上昇が認められた.一方,ワクチン接種後にエンドトキシンショックや過敏症反応を疑わせる臨床症状は認められなかった.免疫学的な有効性が認められて市販されている本ワクチンは,接種部位の局所的な急性炎症を起こすが,重篤な副反応を引き起こす可能性は低いと考えられた.
著者
南 昌平 横山 真弓 石嶋 慧多 下田 宙 栗原 里緒 宇根 有美 森川 茂 前田 健
出版者
公益社団法人 日本獣医師会
雑誌
日本獣医師会雑誌 (ISSN:04466454)
巻号頁・発行日
vol.75, no.2, pp.e29-e35, 2022 (Released:2022-02-15)
参考文献数
50

2016年,近畿地方で2頭の死亡したアライグマが発見された.これらアライグマからオーエスキー病ウイルス(PRV)が分離された.分離されたウイルスの全ゲノム配列を解析した結果,国内で使用されているワクチン株にはないgE遺伝子を保有しており,野外株であることが判明した.同地域のイノシシ111頭とアライグマ61頭の血清についてPRVに対するウイルス中和試験を実施した結果,13頭のイノシシが抗体陽性(11.7%)となり,アライグマはすべての個体で陰性であった.死亡したアライグマの発見地域は養豚場におけるPRVの清浄地域であり,イノシシからアライグマへのPRVの種間伝播が強く疑われた.以上より,本報告はアライグマにおける初のPRV自然感染例であり,イノシシから異種動物へ致死的な感染を引き起こす可能性が明らかとなった.
著者
内田 明彦 村田 義彦
出版者
公益社団法人 日本獣医師会
雑誌
日本獣医師会雑誌 (ISSN:04466454)
巻号頁・発行日
vol.52, no.6, pp.388-390, 1999-06-20 (Released:2011-06-17)
参考文献数
17
被引用文献数
1 1

1984年に山口市内で飼育されていた日本猫 (雑種, 雌, 6歳, 体重3.5kg) の瞬膜下に線虫7匹 (右瞬膜下3匹, 左瞬膜下4匹;体長9.0~18.0mm) が寄生し, すべてが雌で, 体長のクチクラには条線がみられ, 体辺縁は鋸歯状で, 尾部は短く, その先端は鈍円であった.口腔の発達は悪く, 食道は太くよく発達し, 神経輪は食道のほぼ中央に存在した.陰門は体前方1/3の位置に開口し, 子宮は未熟幼虫によって満たされていた.形態学的特徴からテラジア科Thelaziidaeの東洋眼虫Thelazia callipaedaと同定された.
著者
山田 明夫 佐藤 基佳 宮原 和郎 広瀬 恒夫
出版者
日本獸医師会
雑誌
日本獣医師会雑誌 (ISSN:04466454)
巻号頁・発行日
vol.37, no.12, pp.783-787, 1984
被引用文献数
1

1981年1月から1982年11月までに, 北海道北部および東部で実施した大動物用X線診療車によって臨床的に一見健康な乳牛2,037頭の集団検診を行いその所見のうち, 第四胃が明視できた1,976頭における第四胃内異物の存在率とその性状について検索した.<BR>1) 第四胃内に全属異物が1,976頭中697頭 (35.3%), 砂粒状物が1,907頭 (96.5%), 磁石が9頭 (0.5%), 塊状陰影物が4頭 (0.2%) に認められた. この成績は, 一般酪農家に飼養されている乳牛の多くが, 金属異物や砂粒状物にもとつく胃粘膜への損傷ないし刺激が原因の一つと考えられている第四胃炎や第四胃潰瘍の危険に曝されていることが示唆された. また, 第四胃に金属異物が到達することはあっても, その可能性はきわめてまれであるという従来の見解を否定する成績であった.<BR>2) 第四胃内金属異物の存在率は, 第二胃内磁石存在群で25.7%, 第二胃内磁石非存在群で42.2%であり, そのうち5cm以上の金属異物は, 前者で2頭, 後者で43頭に認められた. したがって, 第二胃内の磁石は金属異物, とくに5cm以上の長い金属異物の前胃から第四胃への移動を阻止するのに効果のあることが示唆された.
著者
小川 祐生 山木 誠也 八村 寿恵 鐘ヶ江 晋也 杉本 大輝 網本 宏和 岡本 芳晴 網本 昭輝
出版者
公益社団法人 日本獣医師会
雑誌
日本獣医師会雑誌 (ISSN:04466454)
巻号頁・発行日
vol.74, no.12, pp.810-817, 2021-12-20 (Released:2022-01-20)
参考文献数
9

ミニチュアダックスフント(以下MD)は上顎犬歯部の歯周病による口腔鼻腔瘻の好発犬種であるが,その進行パターンについては未だ不明である.今回,歯科処置時に上顎犬歯口蓋側の歯周ポケットが4mm以上ある症例,及び口腔鼻腔瘻が確認された症例を対象に回顧的研究を行い,MDと他犬種の歯科X線検査における上顎犬歯側面像の所見を比較した.その結果,歯周ポケット深度が同じ区分において,MDは他犬種よりも犬歯近位及び遠位の歯槽骨吸収像が少なく,吸収部位の吻尾方向への広がりが少ないと考えられた.また,MDは口蓋側方向の吸収程度を反映するホワイトラインの明瞭割合も高いことから,口蓋側方向への広がりも少ないと考えられた.以上より,MDの上顎犬歯部歯周病の進行は,水平吸収よりも口蓋側の垂直吸収が大きく進行する特徴を有すると考えられた.
著者
長屋 好昭 村上 瑞文 垂井 清治 高橋 周太郎 八木 里子 森田 直 高橋 智香子
出版者
公益社団法人 日本獣医師会
雑誌
日本獣医師会雑誌 (ISSN:04466454)
巻号頁・発行日
vol.56, no.1, pp.32-35, 2003-01-20 (Released:2011-06-17)
参考文献数
9

顔面腫脹を主訴とした4カ月齢, 雌ウェルシュ・コーギーが各種検査およびX線CT検査により, 頭蓋下顎骨症と診断された. ステロイド療法により臨床症状の改善がみられた. 本症は, ウエスト・ハイランド・ホワイト・テリアを含むテリア種に多いと言われているが, コーギー種における発症はきわめてまれであると思われた.
著者
冨田 忍 野尻 秀雄 大脇 正治 後藤 正和
出版者
公益社団法人 日本獣医師会
雑誌
日本獣医師会雑誌 (ISSN:04466454)
巻号頁・発行日
vol.23, no.10, pp.608-612, 1970-10-20 (Released:2011-06-17)
参考文献数
1
被引用文献数
2 2

Bacterial endcarditis caused by streptococci has frequently been seen among swine examined in slaughterhouses. The authors encountered 21 swine cases of streptococcal endocarditis over a period from Apil, 1968, to March, 1970. They isolated α-type streptococci from 10 cases, β-type ones from 5 cases, and γ-type ones from 4 cases. Two types, α and β, were isolated from 1 case. One case could not be assorted.Two cases of endocarditis were proved to have been caused by mixed infection with streptococci and other pus-forming organisms.
著者
内田 明彦 内田 紀久枝 川上 泰 村田 義彦
出版者
公益社団法人 日本獣医師会
雑誌
日本獣医師会雑誌 (ISSN:04466454)
巻号頁・発行日
vol.52, no.11, pp.715-721, 1999
被引用文献数
6

1990~1998年に神奈川県中央部と東京都西多摩郡日の出町に生息するタヌキ<I>Nyctereutes Procyonoides umerrinus</I>の内部寄生虫を調査した. 45頭中44頭 (97.8%) に蠕虫類の寄生が認められ, 線虫類11種 (タヌキ回虫<I>Toxocara tanuki</I>, クシマタヌキ鉤虫<I>Ancylostoma kuskimaense</I>, ミヤザキタヌキ鉤虫<I>Artkrostoma miyazakiense</I>, 猫糞線虫<I>Strongyloides Planiceps</I>, 犬鞭虫<I>Trichuris vulpis</I>, 犬糸状虫<I>Dirofilaria immitis, Capillaria felis-cati, C. putorii, Tetragompmms melis, Molineus lagerae, Trichuris sp.</I>), 吸虫類4種 (横川吸虫<I>Metagonimus yokogauai</I>, 浅田棘口吸虫<I>Eckinostoma hortense, Concinnum ten, Stepkanoprora sp.</I>), 条虫類2種 (マンソン裂頭条虫<I>Spirometra erinaceieuropaei</I>, 瓜実条虫<I>Dipylidium caninum</I>) の計17種で, 1頭あたりの寄生種は2~9種であった. ヒトに感染する可能性のある種は9種であった.