著者
湯木 正史 鈴木 清美 杉本 典子 樋口 貴志 鈴木 秀典 石川 勝行
出版者
公益社団法人 日本獣医師会
雑誌
日本獣医師会雑誌 (ISSN:04466454)
巻号頁・発行日
vol.57, no.11, pp.721-724, 2004-11-20 (Released:2011-06-17)
参考文献数
11

免疫介在性溶血性貧血 (Immune-mediated hemolytic anemia: IMHA) と診断した犬2例に対し, プレドニゾロン, シクロスポリン, アザチオプリン, ヒト免疫グロブリン製剤, 輸血などによる治療を行ったが, 貧血の改善が得られなかった. そこでシクロスポリンの10~100倍の免疫抑制作用を持つとされるタクロリムス (FK506) を併用したところ, 1例では貧血の著明な改善が, 他の1例ではPCVの維持が認められた.
著者
松田 一哉 柳 充紘 秋山 義侑 才力 慎也 村田 亮 谷山 弘行
出版者
公益社団法人 日本獣医師会
雑誌
日本獣医師会雑誌 (ISSN:04466454)
巻号頁・発行日
vol.69, no.1, pp.47-51, 2016

北海道におけるエゾシカ検査モデルにおいて,獣医師による解体時検査の実施されたエゾシカ368例のうち8例の肺に異常が確認された.このうち7例では,肉眼的に孤在性から多発性の硬結感のある結節性病変が認められ,組織学的にはアスペルギルス様真菌を伴う乾酪化肉芽腫もしくは乾酪壊死巣が認められた.うち3例については分子生物学的に<i>Aspergillus fumigatus</i>と同定された.以上から,7例は肺アスペルギルス症と診断された.シカの肺病変に占める割合の高さと病変の重篤化の点から,アスペルギルス症はシカの肺における重要な疾患であると考えられた.容易に触知できる病変を形成するため,解体時検査における触診検査が重要であり,個体の健康状態の把握のためにも適切な内臓検査の実施が不可欠であると考えられる.
著者
野村 紘一 西 美智子 島田 保昭
出版者
Japan Veterinary Medical Association
雑誌
日本獣医師会雑誌 (ISSN:04466454)
巻号頁・発行日
vol.41, no.1, pp.54-57, 1988

われわれは最近, 6ヵ月齢チンチラ種雄猫において, 耳道対輪部内壁に多発性結節性肥厚を伴う慢性外耳炎の1例に遭遇した. 本症は耳道にカリフラワー様肥厚結節を多数形成するとともに耳奥から多量のチーズ様捏粉状分泌物を排出しており, 外耳口はほんんど閉塞していた. 肥厚結節は, 10数倍に増殖した上皮組織からなり, その表面は, 剥離角化細胞がたまねぎ状の集塊をなして堆積し, いわゆる真珠腫様構造を呈していた.<BR>本症の発生原因の詳細は不明であるが, 低脂肪食の給与とプロブコールの内服によって症状の緩解が見られたので, 高脂血症が疑われた. また, これが慢性外耳炎を契機とする耳腔内の角化亢進に拍車をかけたものと推察される.<BR>本症に関する報告はほとんどなく, きわめてまれな疾病と考えられるが, 人の耳道に発生する真珠腫 (Ohrcholesteatoma) の所見に酷似しているところから, 本症を猫耳道の真珠腫性肥厚症とした.
著者
蓮田 安信 石井 正人 桔梗 洋右
出版者
日本獸医師会
雑誌
日本獣医師会雑誌 (ISSN:04466454)
巻号頁・発行日
vol.55, no.6, pp.341-344, 2002-06-20
被引用文献数
4

茨城県西地域の6農場の乳牛200頭について顕微鏡凝集反応法により, レプトスピラの抗体調査を実施した.陽性反応とした陽性限界値は抗体価128倍以上とした.その結果, 4農場由来の30頭が陽性 (陽性率15%) であった.調査に用いた3血清型のうちで, 抗体陽性牛数は<I>L</I>. autumnalisが10頭, <I>L</I>. hebdomadisが22頭であったが<I>L</I>.icterohaemorrhagiaeは検出されなかった.茨城県西地域における乳牛のレプトスピラ抗体の陽性率は信頼度95%で15%と推定され, 区間推定で10~20%となった.すべての抗体陽性牛はレプトスピラ症の臨床症状を示していなかった.これらの結果から本地域において乳牛のレプトスピラ感染が広く浸潤している可能性が示唆された.
著者
鬼丸 利久
出版者
日本獣医師会
雑誌
日本獣医師会雑誌 (ISSN:04466454)
巻号頁・発行日
vol.53, no.12, pp.878-881, 2000-12
著者
三角 一浩 鳥居 哲太郎 青木 修 藤木 誠 三浦 直樹 柳田 宏一 坂本 紘
出版者
公益社団法人 日本獣医師会
雑誌
日本獣医師会雑誌 (ISSN:04466454)
巻号頁・発行日
vol.54, no.11, pp.829-836, 2001-11-20 (Released:2011-06-17)
参考文献数
19
被引用文献数
1 1

肥育牛における蹄の生長, 蹄疾患の発生や生産性と削蹄との関係について検討した. 肥育期の黒毛和種16頭 (13.0±2.0カ月齢, 体重308.0±30.8kg, 去勢牛) を削蹄間隔により3, 6および12カ月削蹄群ならびに無削蹄群の4群に分け, 以後19カ月間, 蹄計測, 蹄形の変化を記録した. と殺後, 蹄病変を観察し, 枝肉成績を記録した. 削蹄間隔の延長に伴い, 蹄角度は小さく, 蹄壁・蹄踵長は長くなった. 12カ月削蹄群および無削蹄群では蹄の変形が進み, 伸びた蹄踵で負重するようになった. 白帯離解の発生頻度は無削蹄群で有意に高かった (P<0.05). 歩留基準値は, 6カ月削蹄群が12カ月および無削蹄群と比較して有意に高い値を示し (P<0.05), 産肉量が向上していた.本研究結果から, 削蹄間隔を6カ月とすることで, 標準蹄に近い蹄形が維持され, 蹄病変の発生抑制と産肉量向上に役立つことが明らかとなった.
著者
大野 秀樹 大脇 将夫 中島 尚志 吉岡 一機 武藤 顕一郎 小山田 敏文
出版者
公益社団法人 日本獣医師会
雑誌
日本獣医師会雑誌 (ISSN:04466454)
巻号頁・発行日
vol.65, no.12, pp.929-932, 2012-12-20 (Released:2017-05-26)
参考文献数
14

猫の膝関節に,大腿骨と膝関節の関節包の間に膝関節筋があることを確認した.膝関節筋は1歳までは発達するが,加齢に従い筋線維は退縮し脂肪組織に置換する傾向がみられた.また筋紡錘の分布密度が高く,退縮した筋を充塡する脂肪組織の間にも筋紡錘が残存していた.この理由から猫においては加齢に従い膝関節筋の肉眼的観察が困難になり,今までその存在が明らかにならなかった.また,膝関節筋が機能的には膝関節筋の動力学的モニターとして機能していることが示唆された.
著者
井隼 ミキ 山下 厚 溝本 朋子 香本 頴利 吉田 正明 佐野 文子
出版者
公益社団法人 日本獣医師会
雑誌
日本獣医師会雑誌 (ISSN:04466454)
巻号頁・発行日
vol.61, no.2, pp.136-138, 2008-02-20 (Released:2011-06-17)
参考文献数
7
被引用文献数
1 1

漢方生薬配合薬の抗真菌活性を検討したところ, 本剤は多くの真菌に対して発育を抑制した. 管内肥育牧場で発生した牛白癬3例に応用した結果, 本剤の1週間経口投与と漢方生薬10%煎じ液の4日間体表噴霧の併用治療は著効を示した.
著者
藤 将大 有田 汐紗 太田 貴子 冨永 博英 平川 篤 杉山 伸樹
出版者
公益社団法人 日本獣医師会
雑誌
日本獣医師会雑誌 (ISSN:04466454)
巻号頁・発行日
vol.76, no.11, pp.e304-e308, 2023 (Released:2023-11-14)
参考文献数
18

14歳10カ月齢,去勢済雄のイングリッシュ・コッカー・スパニエルが,嘔吐と四肢の振戦を主訴に夜間救急動物病院を受診した.来院時は起立不能及び意識は傾眠状態で,稟告及び吐物の内容によりイチョウ種子である銀杏による中毒を疑い,入院管理下での治療を開始した.ビタミンB6製剤の投与や対症療法を行い,治療開始9時間後には意識状態の改善並びに自力での歩行が可能になるまで回復した.治療開始11時間後に退院とし,受診11カ月後現在までに症状の再燃は認められず,良好に経過している.
著者
小嶋 大亮 小嶋 恭子 太田 和美 小嶋 佳彦
出版者
公益社団法人 日本獣医師会
雑誌
日本獣医師会雑誌 (ISSN:04466454)
巻号頁・発行日
vol.74, no.11, pp.733-737, 2021-11-20 (Released:2021-12-20)
参考文献数
10

4年間の糖尿病及び皮膚脆弱症候群の既往歴を持つ14歳齢,不妊済の日本猫が突然の食欲・元気の消失を主訴に来院した.対症療法を行ったが,初診から1カ月後に猫は死亡し,病理解剖を行った.解剖時,皮膚の萎縮に加え,体幹部の皮下脂肪組織に多数の乳白色結節を認めた.また膵臓と右副腎に腫瘤を認めた.病理組織検査において,皮膚では化膿性肉芽腫性脂肪織炎及び表皮の菲薄化,真皮の疎な膠原線維及び毛包・皮脂腺の萎縮による萎縮性皮膚症を認めた.膵臓と副腎では膵腺癌と副腎皮質腺腫を認めた.本例では,化膿性肉芽腫性脂肪織炎と萎縮性皮膚症がそれぞれ,膵腺癌と副腎皮質腺腫と関与していることが疑われた.
著者
山下 和人 安達 洋平 久代 季子 Mohammed Ahmed UMAR 都築 圭子 前原 誠也 瀬野 貴弘 泉澤 康晴
出版者
公益社団法人 日本獣医師会
雑誌
日本獣医師会雑誌 (ISSN:04466454)
巻号頁・発行日
vol.57, no.11, pp.715-720, 2004-11-20 (Released:2011-06-17)
参考文献数
22
被引用文献数
1 1

犬臨床例にプロポフォール (P) とフェンタニル (F) を併用した全静脈麻酔 (PF-TIVA) を応用した. 麻酔前投薬としてプロピオニールプロマジン0.05mg/kg, ドロペリドール0.25mg/kg, ミダゾラム0.3mg/kg, またはメデトミジン5μg/kgを静脈内投与 (IV) し, Pで麻酔導入した. Fを2μg/kgIV後に0.2μg/kg/分で持続IVし, PのIV投与速度を調節して外科麻酔を維持した. 麻酔維持に要したP投与速度はメデトミジンの麻酔前投薬で0.2~0.3mg/kg/分, その他で0.3~0.4mg/kg/分であった. PF-TIVAでは呼吸抑制が強く調節呼吸の必要性が高かったが, 循環抑制は少なく, 外科手術も円滑に進行し, 麻酔回復も穏やかであった. PF-TIVAは犬の全身麻酔法として有用と考えられた.
著者
藏前 哲郎 石川 真悟 林 淳 津曲 圭太 乙丸 孝之介 帆保 誠二
出版者
公益社団法人 日本獣医師会
雑誌
日本獣医師会雑誌 (ISSN:04466454)
巻号頁・発行日
vol.73, no.1, pp.31-36, 2020-01-20 (Released:2020-02-20)
参考文献数
15

本研究では,臨床的に重症慢性肺炎と診断された黒毛和種牛50頭から鼻咽頭スワブ(Swab)及び気管支肺胞洗浄液(BALF)を採取し,細菌分離とともに,その薬剤感受性を調査した.Swab及びBALFからはおもにMycoplasma bovis 及びPasteurella multocida が分離されたが,同一牛において両検体から同一細菌種が分離された割合は比較的低かった.また,BALFから分離されたM. bovis 及びP. multocida は,おもにフルオロキノロン系抗菌薬に感受性であったが,Swabから分離された同2菌種の同系抗菌薬に対する薬剤感受性は低かった.以上より,重症慢性肺炎罹患牛の鼻咽頭領域及び気管支肺胞領域からは,おもにM. bovis 及びP. multocida が分離されるが,同一供試牛から分離された同一菌種の細菌であっても,薬剤感受性が異なる可能性があることから,重症慢性肺炎罹患牛においてSwabによる肺炎原因菌の推定には慎重を要すると思われた.
著者
川手 憲俊
出版者
公益社団法人 日本獣医師会
雑誌
日本獣医師会雑誌 (ISSN:04466454)
巻号頁・発行日
vol.54, no.2, pp.79-84, 2001-02-20 (Released:2011-06-17)
参考文献数
49
被引用文献数
4 3
著者
西貝 正彦 田中 知己 加茂前 秀夫
出版者
公益社団法人 日本獣医師会
雑誌
日本獣医師会雑誌 (ISSN:04466454)
巻号頁・発行日
vol.64, no.9, pp.712-714, 2011-09-20 (Released:2017-05-26)
参考文献数
11
被引用文献数
1 1

GnRH投与が凍結胚移植の受胎率に及ぼす効果を明らかにする目的で黒毛和種受胚牛80頭を無作為にA,B群に区分し,発情後6日にGnRH群40頭にはGnRH類似体(酢酸フェルチレリン)100μg,対照群40頭には生理食塩液2ml を筋肉内に注射し,発情後7日に胚移植を行った.発情後14日に両群の各10頭について卵巣の状態と血液中プロジェステロン(P4)濃度を調べた.胚移植後40~50日に妊娠診断を行った.その結果,誘起黄体の形成がGnRH群の90%(9/10頭)にみられたが,対照群ではまったくみられなかった.血中P4濃度の平均±標準偏差はGnRH群が4.57 ±1.55,対照群が3.72±2.39ng/ml,受胎率はGnRH群が50.0%,対照群が40.0%であり,有意差は認められなかった.これらのことから,凍結胚移植前日にGnRH類似体を投与することにより新たに黄体が形成されることが認められたが,血中P4 濃度上昇効果及び受胎率向上効果はみられなかった.
著者
小沼 守 近藤 広孝 石川 愛 小野 貞治 上木 万里子 石田 智子 渋谷 久 佐藤 常男
出版者
公益社団法人 日本獣医師会
雑誌
日本獣医師会雑誌 (ISSN:04466454)
巻号頁・発行日
vol.62, no.9, pp.717-719, 2009-09-20 (Released:2016-09-03)
参考文献数
6

6歳齢,体重1.28kg,去勢雄の雑種ウサギ(Oryctolagus cuniculus)が,多飲多尿を主訴に来院した.飲水量は正常の約6倍の760ml/頭/日,尿量も正常の1.5倍の530ml/頭/日,尿比重は1.001と低比重尿が確認された.除外診断後,修正水制限試験により部分的中枢性尿崩症が疑われ,点鼻型合成バソプレシン誘導体による治療(1滴,24hr)を行ったところ,尿比重が中央値1.020,飲水量が中央値346ml/頭/日,尿量が中央値200ml/頭/日と改善した.よって本症例を部分的中枢性尿崩症と診断した.
著者
村田 大紀 三浦 直樹 松元 光春 三好 宣彰 藤木 誠 三角 一浩
出版者
公益社団法人 日本獣医師会
雑誌
日本獣医師会雑誌 (ISSN:04466454)
巻号頁・発行日
vol.64, no.9, pp.703-707, 2011-09-20 (Released:2017-05-26)
参考文献数
7

調教中に転倒し,後肢の腰フラ様蹌踉(よろめき)を伴う混跛を呈した馬の症例に対して画像検査を実施した.脊髄造影検査では,第6頸椎と第7 頸椎の間(C6-C7)において造影剤の拡散が背側方向から障害されている所見が得られた.剖検時に行った頸椎及び胸椎(T)のコンピューター断層撮影(CT)検査では,C6-T2におけるすべての左側前後関節突起間隙に開大の所見が確認された.また,第1胸椎(T1)の左側前関節突起の変形と骨折片も確認された.さらに,C6-C7 において背側から軟部組織と思われる領域が脊髄を圧迫している所見が得られた.脊髄の病理組織学的検査では,C6-C7 における左側の側索から背索にかけて脊髄症の所見が得られた.以上より本症例は,転倒による頸胸弯曲部の外傷性椎骨骨折及び骨変化による椎骨列の異常に伴い軟部組織が脊柱管へと押し出された結果,圧迫性脊髄症を呈したと考えられた.
著者
鈴木 輝康 深沢 平 山崎 峻 岩根 善郎 坪 幾男 高久 久
出版者
公益社団法人 日本獣医師会
雑誌
日本獣医師会雑誌 (ISSN:04466454)
巻号頁・発行日
vol.23, no.10, pp.612-616, 1970-10-20 (Released:2011-06-17)
参考文献数
3

Some of the pigs introduced into the Shibaura Abattoir, Tokyo, from Nagano Prefecture on July 17, 1969, presented many irregularly round nodules of miliary or egg size scattered on the surface of peritoneal organs, including diaphragm, liver, gallbladder, omentum, colon, prostate, and ureteral muscle. Histopathologically, these nodules were composed of tissue similar to the testicular one, but contained no spermatids. It was demonstrated that hormone had been secreted from them.The cause of formation of these nodules was studied and proved to be the transplantation of such free testicular tissue as appearing after the performance of non-sanguineous castration by the ball masher method of Miyazawa.