著者
田村 和也 永原 美治
出版者
公益社団法人 日本獣医師会
雑誌
日本獣医師会雑誌 (ISSN:04466454)
巻号頁・発行日
vol.72, no.8, pp.491-494, 2019-08-20 (Released:2019-09-20)
参考文献数
8

飼育犬において歯周炎の有病率は高く,治療にあたる機会の多い疾患である.歯周基本治療後に深い歯周ポケットが残存する症例では,新付着の獲得を目的に歯周組織再生療法が選択される場合がある.人歯科医療において,2016年9月に新規歯周再生療法医薬品としてトラフェルミン(リグロス®,科研製薬㈱,東京)が製造販売承認された.本研究では,骨欠損を伴う自然発生的歯周炎に罹患した犬3頭に対するトラフェルミンの治療効果を検討した.同一患畜犬の口腔内で治療側と対照側を比較するスプリットマウスモデル法を用いた試験結果から,トラフェルミンの歯周組織再生における有効性を認めたので報告する.
著者
相馬 武久 安川 明男 甲斐 一成
出版者
公益社団法人 日本獣医師会
雑誌
日本獣医師会雑誌 (ISSN:04466454)
巻号頁・発行日
vol.55, no.2, pp.89-93, 2002-02-20 (Released:2011-06-17)
参考文献数
21
被引用文献数
2 1

本邦の家庭猫における猫免疫不全ウイルス (FIV) 抗体, 猫白血病ウイルス (FeLV) 抗原および猫コロナウイルス (FCoV) 抗体の陽性率を検討した. 胸・腹水貯留により猫伝染性腹膜炎 (FIP) が疑われた症例でのFIVとFeLVの陽性率はそれぞれ26.3%, 36.8%で, 健康猫 (FIV9.3%, FeLV8.1%) に比べ高い値を示した. 上部気道炎を呈する症例でのFIVとFeLVの陽性率はそれぞれ35.7%, 21.4%で, 健康猫に比べ高い値を示した. 以上の成績から, FIVやFeLVの感染がFIPや呼吸器感染症の顕性化の一因である可能性が示された. 一方, 健康猫におけるFCoVの陽性率は47.7%と, FIV, FeLVに比べ高く, FCoVの野外での伝播力の強さがうかがわれた. また, 貧血症例が66.7%ときわめて高いFeLV陽性率を示したことから, 貧血を伴う症例においてFeLV検査は不可欠な診断手段であることが示された.
著者
浜名 克己
出版者
公益社団法人 日本獣医師会
雑誌
日本獣医師会雑誌 (ISSN:04466454)
巻号頁・発行日
vol.42, no.1, pp.29-38, 1989-01-20 (Released:2011-06-17)
参考文献数
151
被引用文献数
2 3
著者
高島 利幸 早野 剛 金山 保夫 岡崎 留美 片岡 辰雄 秋山 陽 村田 光明 山本 力 岩谷 高行 保坂 敏行 野本 敏秀
出版者
Japan Veterinary Medical Association
雑誌
日本獣医師会雑誌 (ISSN:04466454)
巻号頁・発行日
vol.31, no.11, pp.647-650, 1978
被引用文献数
1

犬によるこう傷事故の発生原因を明らかにする目的で, 1975年4月1日から1976年3月31日までの366日間に都内で発生したこう傷事故2, 180件のうちの2, 164件と, 同期間内の主要な気象条件のうちの天気・日照時間・可照時間・気温・湿度との因果関係を追求したところつぎの結果を得た.<BR>1. 天気とこう傷事故発生との関係では, 雨あるいは雨模様の天気の日にはやや事故が減少する傾向がみられた. しかしほかの天気状況と比較して有意差は認められなかった.<BR>2. 日照時間ならびに湿度とこう傷事故との間には, 相関関係は認められなかった.<BR>3. 可照時間とこう傷事故との間には相関 (r=0.8638) が認められ, 両者がかなり密接な関係にあることが明らかとなった. また気温との間にも相関関係 (r=0.6514) が認められた.<BR>以上の結果から, 主要な気象条件のうちで可照時間および気温が犬を誘発して, こう傷事故の発生をもたらす要因となることがうかがえた.
著者
川崎 武志 滝沢 直樹
出版者
公益社団法人 日本獣医師会
雑誌
日本獣医師会雑誌 (ISSN:04466454)
巻号頁・発行日
vol.55, no.3, pp.159-162, 2002-03-20
参考文献数
12

セキセイインコの前胸部皮下に径約2cmの限界明瞭な腫瘤が認められた. 腫瘤は表皮ごと摘出され, 病理組織学的に検査された. 肉眼的には, 腫瘤の中心部は黄白色チーズ様で, それを薄い被膜組織が取り巻いていた. 組織学的に, 被膜組織の真皮層には多中心性の組織球性微小肉芽腫を認め, 皮下組織層には泡沫状の組織球, 類上皮細胞, 変性した結合組織が混在し, 脂肪様組織を形成していた. 脂肪様組織は, 中心に向かうに従って変性の程度を増し, 中心部は壊死に陥っていた. 真皮の微小肉芽腫と脂肪様組織に, チール・ネールゼン染色と免疫染色により, 抗酸菌が見いだされた.
著者
上原 修一 北野 良夫 恒吉 幸一 藤原 直躬 長谷 学 宮里 俊光
出版者
Japan Veterinary Medical Association
雑誌
日本獣医師会雑誌 (ISSN:04466454)
巻号頁・発行日
vol.41, no.11, pp.822-824, 1988

1985年2月から1986年2月にかけて, 鹿児島県串木野市の黒毛和牛一貫経営農場で旋回運動, 猪突猛進などの神経症状を主徴とする子牛の疾病が発生した. 病理組織学的検査により賢尿細管上皮細胞の核内に鉛中毒に特徴的な核内封入体が認められ, 生化学検査では血液, 腎臓, 肝臓から高値の鉛が検出されたために鉛中毒と診断された.
著者
黒崎 嘉子 天野 光彦 栗田 吾郎 桧山 充 岡田 重宣 渡辺 昭宣
出版者
公益社団法人 日本獣医師会
雑誌
日本獣医師会雑誌 (ISSN:04466454)
巻号頁・発行日
vol.40, no.2, pp.108-112, 1987-02-20 (Released:2011-06-17)
参考文献数
6

埼玉県内のK血液処理施設で処理された食用と畜血液 (豚) の衛生状態を調査し, 以下の成績を得た.1) K血液処理施設に搬入された原料血液からは, 平均で一般生菌数2.8×104/ml, 低温細菌数1.5×104/ml, 大腸菌群数4.2/ml, 黄色ブドウ球菌数4.6/ml, 耐熱性菌数1.9/mlが検出され, ウェルシュ菌およびサルモネラは検出されなかった.2) 豚の血液は, 4℃ で48時間保管した場合, 細菌数の増加はみられなかった.3) K血液処理施設で生産された製品の「豚プラズマ」からは, 平均で一般生菌数1.9×104/ml, 低温細菌数1.1×103/ml, 大腸菌群数3.2/ml, 黄色ブドウ球菌数2.1/ml, 耐熱性菌数1.11mlが検出され, ウェルシュ菌は検出されなかった. サルモネラは48例中1例から検出された. また, 抗菌性物質は検出されなかった.4) 製品「豚プラズマ」の汚染は, 夏季に高く冬季に低かった.5) 製品の製造工程における各細菌数は, 経時的に大差はなかった.6) 製品「豚プラズマ」は, -20℃ で保存すると, 経時的に細菌数の減少がみられた.
著者
黒田 晃平 東 和生 村端 悠介 大﨑 智弘 柄 武志 伊藤 典彦 今川 智敬 岡本 芳晴
出版者
公益社団法人 日本獣医師会
雑誌
日本獣医師会雑誌 (ISSN:04466454)
巻号頁・発行日
vol.71, no.6, pp.303-306, 2018-06-20 (Released:2018-07-20)
参考文献数
16

11歳のミニチュアダックスフントが全般発作を主訴に来院し,MRI検査で髄膜腫と診断された.抗がん剤等の治療を希望されなかったため,病変に対し温熱療法の1つであるラジオ波誘導温熱療法(オンコサーミア)を実施した.本症例は治療開始より1,065日で亡くなった.その間,てんかん様発作は認められたものの,一般状態は良好に維持されていた.今回の症例では,オンコサーミアによって長期間の生存が可能であった(33.1カ月).これは,手術及び放射線を併用した場合と同等の生存期間である.さらに,その期間は大きな副作用もなく,症例のQuality Of Lifeは良好に維持されていた.この結果から,オンコサーミアは犬の髄膜腫の進行を抑える効果がある可能性が示唆された.
著者
升 秀夫 熊坂 隆行
出版者
公益社団法人 日本獣医師会
雑誌
日本獣医師会雑誌 (ISSN:04466454)
巻号頁・発行日
vol.54, no.6, pp.485-488, 2001-06-20 (Released:2011-06-17)
参考文献数
13

老人ホーム72施設を対象に, 動物の飼育状況についてアンケート調査を行った.動物を飼育する老人ホームでは, 利用者のquality of lifeの向上を目的とする施設が多かった.動物の飼育を行わない老人ホームでは, 飼育の負担, 設備の未整備, 人獣共通感染症に留意している施設が多かった.動物介在活動ボランティアの受け入れを希望する老人ホームは, 調査した72施設のうち30施設であった.
著者
北村 憲彦 西村 紳 山本 亮平 青木 美香 田中 美有 桑村 充 嶋田 照雅 久保 喜平
出版者
Japan Veterinary Medical Association
雑誌
日本獣医師会雑誌 (ISSN:04466454)
巻号頁・発行日
vol.68, no.8, pp.519-522, 2015

1週間前より食欲絶廃を呈した6歳雌のミニブタが来院した.X線検査にて腹腔内腫瘤を認め,第7病日に開腹下で右背側の腫瘤を切除した.腫瘤は卵巣に近似した発生部位と病理組織学的所見より,顆粒膜細胞腫と診断した.術後症例はQOLが改善して身体状態良好に経過していたが,第223病日に突然神経症状を呈して死亡した.剖検では,下垂体に充実性腫瘤が脳実質を圧迫するように認められたが,腹腔内腫瘍の再発は認められなかった.下垂体腫瘤の病理組織学的所見は腹腔内腫瘍と同様であり,腹腔内腫瘍の細胞は<b>κ</b> light chain陽性であったことから,本症例の腫瘍をあらためて形質細胞腫と診断した.本症例は腹腔内腫瘍の外科的摘出により,QOLが改善して約7カ月間再発もなく良好に過ごせたことから,本症例において外科療法は有効な治療法であったと考えられた.
著者
佐藤 至 辻本 恒徳 山下 竹治 齋田 栄里奈 渡辺 元 田谷 一善 世良 耕一郎 津田 修治
出版者
日本獸医師会
雑誌
日本獣医師会雑誌 = Journal of the Japan Veterinary Medical Association (ISSN:04466454)
巻号頁・発行日
vol.60, no.10, pp.733-737, 2007-10-20
被引用文献数
2

野生動物の鉛中毒は古くから知られていたが、近年はカドミウムやタリウムなどによる汚染も報告されている。このため本研究では、ツキノワグマ、ホンシュウジカ、ニホンカモシカ、トウホクノウサギおよびカワウの肝臓および腎臓のPIXE分析を行い、これらの重金属による汚染状況を調査した。カドミウム濃度はツキノワグマとトウホクノウサギの腎臓で高く、ツキノワグマで74頭中27頭、トウホクノウサギで16羽中5羽が10mg/kgを超えていた。鉛はツキノワグマとカワウで高く、5頭のツキノワグマが鉛汚染の目安となる肝臓鉛濃度の2mg/kgを超えていたが、カワウではこれを超えるものはなかった。タリウムはすべての試料で検出されなかった。これらの結果は、ツキノワグマとトウホクノウサギは比較的高度のカドミウム暴露を受けており、さらにツキノワグマでは鉛汚染が散発的に発生している可能性を示唆している。
著者
小野 守 小関 茂樹 斉藤 康倫 泉 徳和 松井 基純 大澤 健司 三宅 陽一
出版者
日本獸医師会
雑誌
日本獣医師会雑誌 = Journal of the Japan Veterinary Medical Association (ISSN:04466454)
巻号頁・発行日
vol.61, no.10, pp.780-783, 2008-10-20

人工授精(AI)後の陰唇刺激がホルスタイン種乳用牛の受胎率に及ぼす効果を評価するために、未経産牛295頭を用い、AI直後に手指による陰唇刺激を15秒間行って対照群と比較した。その結果、陰唇刺激群の受胎率は対照群よりも高かった(69.2% vs 64.7%)が、有意差はなかった。また、対照群において7月から8月に受胎率が低下する傾向が認められたが、陰唇刺激群では認められなかった。両群の受胎成績のTemperature-Humidity Index (THI)別の分析では、対照群において、暑熱ストレス条件下とされるTHIが72以上の場合の受胎率は、72以下の場合よりも有意に低かった(P<0.01)が、陰唇刺激群ではそのような差異は認められなかった。
著者
中間 実徳 松本 治康 蘭守 竜雄
出版者
Japan Veterinary Medical Association
雑誌
日本獣医師会雑誌 (ISSN:04466454)
巻号頁・発行日
vol.23, no.7, pp.433-441, 1970
被引用文献数
1

乳牛25頭, 30例の関節炎につき, 臨床的に観察し, 治療を行ない, さらに23例については起炎菌の検索を行なった. また, 分離菌を用いて, ウシの感染試験を行ない次のような結果を得た.<BR>1. 30例の発症部位は, 飛節 (足関節) が16例 (53%) でもっとも多く, 次いで腕関節 (手関節) が9例 (30%) あり, 球節ないし蹄冠部は5例 (17%) であった.<BR>2.25頭の症状については, 40℃前後の発熱を伴い, 食欲不振や泌乳量の低下などの全身症状を呈したものが15頭 (60%) あり, 局所症状に止まったものは10頭 (40%) であった.<BR>3.これらを治療の結果, 治癒したと判定されたものは30例中22例 (73%) あり, 再発したもの2例, 廃用6頭であった.<BR>4. 細菌学的検査の結果, <I>Cory.pyogenes</I>のみ分離されたものが11例 (48%), <I>Cory.pyogenes</I>とその他の菌 (Streptococcus, Staphylococcus, <I>E.coli</I>, Proteus) の混合感染を認めたものが3例 (13%), Streptococcusのみのものが2例 (9%), 菌の検出されなかったものが7例 (30%) あった.菌の検出された16例のなかで, <I>Cory.pyogenes</I>が関与していた例は14例 (87.5%) であった.<BR>5.今回分離した<I>Cory.pyogenes</I>を乳牛2頭を用いて関節に接種試験し, 2頭とも実験的に関節炎を発症させ得た.また, 接種した関節から接種菌と同じ菌を分離できた.
著者
田代 哲之 坂本 紘 高井 誠 渡辺 茂 上村 叶
出版者
Japan Veterinary Medical Association
雑誌
日本獣医師会雑誌 (ISSN:04466454)
巻号頁・発行日
vol.34, no.9, pp.433-436, 1981

粘膜の摘出手術を実施し, の味ある成績を得た.<BR>1. 喉頭側室粘膜の摘出は, 従来多く使用されてきた粘膜搦子を用いず, 指頭による鈍性剥離法を採用し粘膜の十分な除去を図った.<BR>2. 従来は異常側のみの粘膜を除去する場合が多いようであるが, 今回は両側粘膜の摘出を行なった。<BR>3. 全例 (16頭) 手術後の経過は概して良好で, すでに9頭は平均約5カ月で競馬に出走し, 内1頭 (症例3号) のみが軽い笛声音を残した.残り7頭は手術後日が浅いため現在静養中である.