著者
原 武司 其田 三夫 高橋 清志 黒沢 隆 鈴木 隆秀
出版者
公益社団法人 日本獣医師会
雑誌
日本獣医師会雑誌 (ISSN:04466454)
巻号頁・発行日
vol.35, no.1, pp.11-16, 1982-12-20 (Released:2011-06-17)
参考文献数
13

臨床的に異常のないホルスタイン種の雌成牛を用い, 投与量を段階的に変更して塩化カリウム (KCI) の経口投与と静脈内注射およびL-アスパラギン酸カリウムの静脈内注射を行い, 牛に対するカリウム (K) 剤の安全な投与量について検討した.1) 8例の成牛に0.4-1.Og/kgのKClを水に溶かして経口投与したところ, 1.0g/kgのKCI投与の1例のみに発作的な全身筋肉の痙攣, 頻回の激しい下痢便の排泄および著明な流灘が認められた.心電図学的には, 0.9と1.0g/kg投与の2例でP波の消失とT波の増高が, また異常な臨床所見を示した1.09/kg投与の他の1例では, さらにQRS群とT波の持続時間の延長および心室粗動が認められた.2) 10例の成牛にKとして0.3-1.2mEq/kgのKCI液を輸液剤に混合し, 20分で静脈内に注射したところ, 1.2mEq/kgのK注射の1例のみに一過性の前肢の痙攣が認められた.心電図学的には, Kとして1.1-1.2mEq/kgのKc1注射の2例でP波の消失, T波とQRS群の増高およびQRS群とT波の持続時間の延長が認められた.3) 10例の成牛に, Kとして0.3-1.2mEq/kgのL-アスパラギン酸カリウム液を輸液剤に混合し, 20分で静脈内に注射したところ, 臨床症状を示すものは全くなかった.しかし心電図学的には, 1.2mEq/kgのK注射の1例でP波の消失, T波とQRS群の増高およびT波とQRS群の持続時間の延長が認められた.
著者
田賀 淳夫 中山 正成 田中 宏 田浦 保穂
出版者
公益社団法人 日本獣医師会
雑誌
日本獣医師会雑誌 (ISSN:04466454)
巻号頁・発行日
vol.51, no.2, pp.81-84, 1998-02-20 (Released:2011-06-17)
参考文献数
18

排便排尿失禁および後躯麻痺を呈し脊髄疾患が疑われた犬 (雌, 雑種, 7ヵ月齢, 体重7kg) が単純X線検査により二分脊椎症と診断された. 脊髄造影X線検査による造影ラインとMagnetic Resonance Imaging (MRI) 矢状断面脊髄像とは一致し, さらにMRIによって脊髄空洞症が認められたことから, この例は脊髄空洞症を併発した嚢腫性二分脊椎症 (開放性脊髄髄膜瘤) と診断された.
著者
豊満 義邦 長谷 学 溝下 和則 北野 良夫 福山 孝人
出版者
日本獸医師会
雑誌
日本獣医師会雑誌 (ISSN:04466454)
巻号頁・発行日
vol.43, no.6, pp.432-435, 1990
被引用文献数
1 1

1987年9月鹿児島県の其養豚農家で, 子豚が生後8日までに6頭急死する事例が発生した.検査した子豚3頭の臨床・病理・細菌学的所見では特記すべきものは得られず, 有意菌も分離されなかった.しかし, ウイルス学的検査では2頭の各実質臓器でESK細胞に細胞変性効果を示すウイルスが分離された.このウイルスは理化学的, 生物学的および血清学的性状からトガウイルス科のアルファウイルスに属するゲタウイルスと同定した.<BR>なお, 急死直前の子豚, 同腹豚, 母豚からの分離ウイルスに対する中和抗体価は全て<2であったことから, この疾病は分娩後, ゲタケウルスに感染したものと推測された.
著者
戸口 昌俊 茅根 士郎
出版者
日本獸医師会
雑誌
日本獣医師会雑誌 = Journal of the Japan Veterinary Medical Association (ISSN:04466454)
巻号頁・発行日
vol.58, no.4, pp.247-249, 2005-04-20
参考文献数
8

大井競馬場内厩舎(東京都)および小林分厩舎(千葉県)で飼養されている現役競走馬の寄生虫感染状況を調査するため、1988年6月から9月の期間に149頭の糞便検査を実施した。その結果、寄生虫卵の検出率はきわめて高く、調査した馬の94.0%に蠕虫類の虫卵陽性が認められた。その内訳は円虫類91.9%、葉状条虫31.5%、馬回虫は7.4%であった。しかし、馬蟯虫については73頭について行ったが、その寄生は認められなかった。円虫類のEPG値がきわめて高い値(1001-4000)を示した馬は円虫卵陽性馬の15.3%を占め、年齢別では2歳で28.9%、3歳で13.3%、4歳で9.1%、5歳で5.0%であり、EPG値は若齢馬ほど高い傾向がみられた。
著者
小池 新平 宇佐美 佳秀
出版者
公益社団法人 日本獣医師会
雑誌
日本獣医師会雑誌 (ISSN:04466454)
巻号頁・発行日
vol.64, no.1, pp.45-49, 2011-01-20 (Released:2017-05-26)
参考文献数
19
被引用文献数
2 3

牛呼吸器病由来Mycoplasma bovis(M. b)52株の薬剤感受性とマクロライド(ML)耐性機構にかかわる23S リボゾームRNA(rRNA)のドメインV領域を調べた.タイロシン(TS)耐性は,3株(5.8%)に認め,うち2株(3.8%)はリンコマイシン(LCM)耐性を示した.チルミコシンの最小発育阻止濃度(MIC)は≦0.1~>100μg/ml で,24株(46.2%)が高いMIC(>100μg/ml)を示した.エンロフロキサシンは2株(3.8%),カナマイシンは1株(1.9%)に耐性を認めた.オキシテトラサイクリン,チアンフェニコール,フロルフェニコールおよびチアムリンに耐性は認めなかった.TS-LCM耐性の2株のうちの1株で,23S rRNAのドメインV領域の2058位にアデニン(A)→グアニン(G)置換が確認された.いっぽう,残りのML耐性または低感受性株には当該領域の変異は認めなかった.したがって,M. bは23S rRNAのドメインV領域の変異に加えさらに他の耐性機構によりML耐性を獲得している可能性が示唆された.
著者
山田 明夫 佐藤 基佳 宮原 和郎 広瀬 恒夫
出版者
公益社団法人 日本獣医師会
雑誌
日本獣医師会雑誌 (ISSN:04466454)
巻号頁・発行日
vol.37, no.12, pp.783-787, 1984-12-20 (Released:2011-06-17)
参考文献数
15
被引用文献数
1 1

1981年1月から1982年11月までに, 北海道北部および東部で実施した大動物用X線診療車によって臨床的に一見健康な乳牛2,037頭の集団検診を行いその所見のうち, 第四胃が明視できた1,976頭における第四胃内異物の存在率とその性状について検索した.1) 第四胃内に全属異物が1,976頭中697頭 (35.3%), 砂粒状物が1,907頭 (96.5%), 磁石が9頭 (0.5%), 塊状陰影物が4頭 (0.2%) に認められた. この成績は, 一般酪農家に飼養されている乳牛の多くが, 金属異物や砂粒状物にもとつく胃粘膜への損傷ないし刺激が原因の一つと考えられている第四胃炎や第四胃潰瘍の危険に曝されていることが示唆された. また, 第四胃に金属異物が到達することはあっても, その可能性はきわめてまれであるという従来の見解を否定する成績であった.2) 第四胃内金属異物の存在率は, 第二胃内磁石存在群で25.7%, 第二胃内磁石非存在群で42.2%であり, そのうち5cm以上の金属異物は, 前者で2頭, 後者で43頭に認められた. したがって, 第二胃内の磁石は金属異物, とくに5cm以上の長い金属異物の前胃から第四胃への移動を阻止するのに効果のあることが示唆された.
著者
甲 厚大 前原 薫 中島 治
出版者
公益社団法人 日本獣医師会
雑誌
日本獣医師会雑誌 (ISSN:04466454)
巻号頁・発行日
vol.12, no.10, pp.437-440, 1959

A survey was previously conducted of bacterial contamination and freshness of market ham and sausage in Hiroshima City. Furthermore, the same survey was carried out on these products during the manufacturing process in a plant. The results of the survey are as follows.<BR>1. The numbers of surviving bacteria per gram were 2, 500-&infin; in ham and 3, 600-86, 000 in sausage. No coliform bacteria, however, were found from either food. The amounts of volatile basic nitrogen per 100 grams were 5. 60-14. 56 mg in ham and sausage. The amounts of NO<SUB>2</SUB> were 2.99-13.80 ppm in ham and 1.64-5.91 ppm in sausage.<BR>2. From the results of examination of bacterial contamination during the manufacturing process, it is supposed that the number of coliform organisms increased as the process progressed, but was reduced to zero during the process of smoking and boiling. Although the organisms other than coliform bacteria showed the same tendency, a number of organisms survived after the process of smoking and boiling. The amount of volatile basic nitrogen increased as the process progressed (9.51-15.53 mg in ham and 8.68-16.10mg in sausage).
著者
小松 耕史 松本 純 上片野 一博
出版者
日本獸医師会
雑誌
日本獣医師会雑誌 (ISSN:04466454)
巻号頁・発行日
vol.67, no.9, pp.659-664, 2014

鹿児島県のタイストール式1酪農場において,<i>Chorioptes texanus</i>による皮膚病変及び掻痒症状が多発した.そこでエプリノメクチン製剤(0.5mg/kg)を62頭に投与し,牛群全体の掻痒症状,病変,カウコンフォート及び乳量への影響を評価した.さらに,病変及び乳量について掻痒の有無により群分けし比較した.群全体において,掻痒の指標である尾振り率及び病変部スコアは投与後有意に低下した.カウコンフォートの指標であるStanding idle(起立)の割合は投与後有意に低下し,305日補正乳量は増加した.また,掻痒を示す群では病変部スコアが高く投与後の乳量変化に乏しかったが,掻痒を示さない群では乳量増加が大きかった.群全体において本剤の治療効果が認められたが,罹患牛においてカウコンフォート及び生産性を適正に維持するためには,早期治療により病変を進行させないことが重要と考えられた.
著者
星野 有希 高木 哲 大崎 智弘 奥村 正裕 藤永 徹
出版者
公益社団法人 日本獣医師会
雑誌
日本獣医師会雑誌 (ISSN:04466454)
巻号頁・発行日
vol.62, no.5, pp.383-387, 2009-05-20 (Released:2016-09-03)
参考文献数
15

悪性腫瘍罹患犬10症例に対して活性化リンパ球療法を実施した.症例犬より採取した末梢血単核球を抗CD3抗体およびヒトリコンビナントIL-2を用いて14日間培養後,ヒトリコンビナントIFN-αを感作した細胞を活性化リンパ球とし,当該症例に複数回投与した.その結果,すべての症例で末梢血単核球細胞の構成細胞比が変化し,うち2症例で血清IFN-γ濃度の上昇が認められた.また活性化リンパ球の投与による副作用は認められず,症例の生活の質を十分維持することが可能であった.以上のことから,本治療法は腫瘍の発症およびその治療により生活の質が低下しがちな犬に対しても免疫応答を活性化することが可能であり,腫瘍の成長および転移に対する免疫学的防御能を活性化させる治療法として十分適用可能であると考えられた.
著者
入交 眞巳 中西 コスモ 渡辺 宏 松浦 晶央 山崎 淳 大西 良雄 甫立 孝一
出版者
日本獸医師会
雑誌
日本獣医師会雑誌 = Journal of the Japan Veterinary Medical Association (ISSN:04466454)
巻号頁・発行日
vol.64, no.9, pp.721-727, 2011-09-20
参考文献数
11

本研究はペットとして飼われている犬の飼育者に対して,犬飼育に関する意識調査をアンケート方式において行った.青森県内に住む犬飼育者を対象に29の設問のアンケート用紙を動物フェスティバルや動物病院で配布し,471名の犬飼育者から回答を得た.回答者の7割は女性で,年齢は30~40代が多く,家族とともに暮らしている人が9割を占めた.犬飼育の理由としては,自分か家族が動物好きだからが5割以上を占めた.不妊去勢手術に対し75%が賛成しているが,実際に処置している飼育者は4割弱であった.飼い犬に所有者明示をしている人は3割できわめて少なかった.獣医師会や環境省の啓発にもかかわらず,不妊去勢手術実施や所有者明示の割合が少なかったことから,獣医師は地域社会に対しこれまで以上に正しい犬飼育の教育と啓発を行っていくべきである.
著者
菊田 安至 大西 堂文
出版者
日本獸医師会
雑誌
日本獣医師会雑誌 (ISSN:04466454)
巻号頁・発行日
vol.40, no.1, pp.26-30, 1987
被引用文献数
5 4

正常な一般家庭犬81頭の血清中のcreatine kinase (以下S-CK) 活性値を測定したところ, その平均値は27.31U/<I>l</I>, 正常範囲は8.0~72.0で, 正常ビーグル犬62頭では, 平均26.11U/<I>l</I>, 正常範囲は13.0~41.0であり, 一般に幼若犬で高い傾向が認められた. S-CKには3つのisoenzyme (以下IE) が認められ, 各IEの百分率の平均および正常範囲は, 一般家庭犬ではCK-MMが46.3%(9.6~83.0%), CK-MBが8.2%(3.5~16.7%), CK-BBが38.5%(3.8~73.3%) であった. ビーグル犬ではCK-MMが45.3%(20.0~70.3%), CK-MBが10.1%(4.6~14.7%), CK-BBが30.5%(14.7~46.4%) であった. なお, これら143頭中61頭でCK-MMの陰極または陽極側にサブバンドが認められた.<BR>また, creatine kinase (以下CK) 活性は, 調べたすべての臓器中に存在し, CK-MMは骨格筋や心筋に, CK-MBは平滑筋組織や心筋に, CK-BBは大脳や平滑筋組織に多い傾向が認められた.<BR>循環血液からのCKの各IEの半減期は, CK-MMが122.0分 (SD=23.9), CK-MBが125.7分 (SD=22.7), CK-BBが49.7分 (SD=11.0) であった.<BR>これらのことより, S-CKの測定は骨格筋や心筋, 平滑筋などの疾患の診断に有用であろうと考えられた.
著者
鮫島 正道 酒匂 猛
出版者
日本獸医師会
雑誌
日本獣医師会雑誌 (ISSN:04466454)
巻号頁・発行日
vol.31, no.5, pp.267-271, 1978

1.小型, 中型, 大型の鳥類各7例について, メトミデート平均投量20mg/kgによる体温・呼吸の経時的変化を観察した.<BR>2. 12目13科29種180羽, 体重12g~10kgの鳥類にメトミデートを投与し, その安全と思われる平均値の実験を行なった.<BR>3. 長崎県パーキングガーデンにおいて鳥類19例についてメトミデート麻酔により手術および各種処置を行なった.
著者
菅谷 博
出版者
公益社団法人 日本獣医師会
雑誌
日本獣医師会雑誌 (ISSN:04466454)
巻号頁・発行日
vol.57, no.8, pp.467-470, 2004-08-20 (Released:2011-06-17)
参考文献数
1
被引用文献数
1 2
著者
佐々木 卓士 鳥谷部 一成 渡辺 紀之 中野 克重 笹原 二郎
出版者
日本獸医師会
雑誌
日本獣医師会雑誌 (ISSN:04466454)
巻号頁・発行日
vol.39, no.6, pp.378-382, 1986
被引用文献数
1

北里大学獣医畜産学部附属八雲牧場において維持している, Specific Pathogen-Free (以下SPFと略) 鶏の血清学的ならびに微生物学的検査を行った.<BR>SPF鶏群は1979年に作出し, 6月に最初の血清学的検査を実施した. 1985年4月までに28回, 検査延べ羽数30, 445羽の検査結果は, 鶏伝染性気管支炎, 鶏脳脊髄炎, 鶏伝染性喉頭気管炎 (以下ILTと略), 鶏細網内皮症, マレック病, 伝染性ファブリキウス嚢病, 鶏ウイルス性腱鞘炎, 鶏アデノウイルス感染症 (以下AAVと略), 鶏白血病・肉腫 (A亜群, B亜群), ニューカッスル病, トリイソフルエソザ, トリパライソフルエソザ, 産卵低下症候群-1976, 伝染性コリーザ, ひな白痢 (以下SPと略) ならびにマイコプラズマ症 (<I>M.gallisepticum</I>; MG<I>M.synoviae</I>; MS) の病原体に対する抗体がいずれも検出されなかった. しかし, 20例でILT, AAV, SPあるいはMGの検査において非特異反応が認められた.<BR>微生物学的検査ではマイコプラズマおよびウイルスの分離成績はすべて陰性であった. 細菌検査では<I>Escherichia coli</I>, Proteus spp., Staphylococcus spp. 等が常在菌として主に腸管より分離された.<BR>以上のことから, これらのSPF鶏群は特定の病原体に汚染されていないことが確認された.
著者
佐藤 れえ子 山岸 浩之 内藤 善久 村上 大蔵 大島 寛一 高木 久 藤田 茂 佐々木 重荘
出版者
公益社団法人 日本獣医師会
雑誌
日本獣医師会雑誌 (ISSN:04466454)
巻号頁・発行日
vol.46, no.7, pp.577-581, 1993-07-20 (Released:2011-06-17)
参考文献数
14
被引用文献数
6 11

1990年5~7月. キャットフードによるビタミンD中毒が疑われた猫4頭について, 血中ビタミンD代謝産物濃度とキャットフード中のビタミンD含有量を測定し, 石灰沈着との因果関係を追究した. また, 4頭の実験猫を用いてそのキャットフードによる給与試験を実施した. 全症例は同一市販キャットフードを主体に飼育され, 症例1と2は尿毒症に陥っていた. 血漿Ca濃度は症例1の初診時を除き全症例で11mg/dl以上を, また25 (OH) D濃度は100ng/ml以上を呈した. 死亡例では全身性の石灰沈着が著明に認められ, 上皮小体の萎縮が観察された. いっぽう, キャットフード中のビタミンD含有量は5, 290IU/100gと異常な高値を示し, キャットフードの給与試験では給与開始後血漿25 (OH) D濃度は著しく上昇しCa濃度も増加した.
著者
加藤 敏英 矢田谷 健 石崎 孝久 伊藤 貢 小田 憲司 平山 紀夫
出版者
日本獸医師会
巻号頁・発行日
vol.61, no.2, pp.127-130, 2008 (Released:2011-01-19)

トルアジン誘導体であるトルトラズリルの牛コクシジウム病発症予防効果および安全性を調べることを目的に、168頭の子牛を用いて投与試験を実施した。その結果、有効性試験(n=134)では薬剤投与群(n=67)の発症率(0%)が無投与対照群(n=67)のそれ(38.8%)に比べ有意に低かった(P<0.01)。また、薬剤投与群のオーシスト排泄率およびOPG値は投与後4週までは無投与対照群に比べ有意に低く(P<0.01)、便性状や下痢便排泄率でも顕著な差が認められた。いっぽう、安全性試験(n=168)では薬剤投与群(n=84)と無投与対照群(n=84)でそれぞれ19.0%、26.2%の個体に呼吸器症状がみられたが、薬剤投与に起因する有害事象はみられなかった。以上のことから、トルトラズリル5%経口液は牛コクシジウム病発症を抑え、臨床的に有用性が高い薬剤であることがわかった。
著者
佐伯 潤 山本 精治 矢部 眞人 長崎 淳一 林 健一
出版者
日本獸医師会
雑誌
日本獣医師会雑誌 (ISSN:04466454)
巻号頁・発行日
vol.68, no.2, pp.135-140, 2015
被引用文献数
1

狂犬病予防法は91日齢未満の幼齢犬にワクチン接種義務を課していない.このようなワクチン未接種幼齢犬は,移行抗体による防御免疫を有する場合もあるが,その消失に伴い免疫を失うと考えられる.狂犬病発生時,幼齢犬が本病の拡大や人への伝播に関与する可能性もあるが,国内での抗体保有状況に関する報告は少なく,その実態は明らかではない.そのため,91日齢未満の幼齢犬における狂犬病中和抗体の保有状況を調査し,狂犬病発生時を考え,家庭で飼育されている幼齢犬の狂犬病ワクチン接種後の中和抗体価の推移を調査した.その結果,中和抗体価8倍以上の幼齢犬は,216頭中34頭と少なかった.幼齢犬への狂犬病ワクチン接種後の中和抗体価は,一時的な上昇にとどまるか,十分に上昇しなかった.しかし,その後の追加接種により感染防御が可能な有効抗体価が得られた.