著者
佐藤 至 辻本 恒徳 山下 竹治
出版者
日本獸医師会
巻号頁・発行日
vol.60, no.10, pp.733-737, 2007 (Released:2011-12-19)

野生動物の鉛中毒は古くから知られていたが、近年はカドミウムやタリウムなどによる汚染も報告されている。このため本研究では、ツキノワグマ、ホンシュウジカ、ニホンカモシカ、トウホクノウサギおよびカワウの肝臓および腎臓のPIXE分析を行い、これらの重金属による汚染状況を調査した。カドミウム濃度はツキノワグマとトウホクノウサギの腎臓で高く、ツキノワグマで74頭中27頭、トウホクノウサギで16羽中5羽が10mg/kgを超えていた。鉛はツキノワグマとカワウで高く、5頭のツキノワグマが鉛汚染の目安となる肝臓鉛濃度の2mg/kgを超えていたが、カワウではこれを超えるものはなかった。タリウムはすべての試料で検出されなかった。これらの結果は、ツキノワグマとトウホクノウサギは比較的高度のカドミウム暴露を受けており、さらにツキノワグマでは鉛汚染が散発的に発生している可能性を示唆している。
著者
小川 高 新家 俊樹 三島 浩享
出版者
公益社団法人 日本獣医師会
雑誌
日本獣医師会雑誌 (ISSN:04466454)
巻号頁・発行日
vol.62, no.6, pp.469-472, 2009-06-20 (Released:2016-09-03)
参考文献数
10
被引用文献数
1

17歳4カ月齢の猫の扁平上皮癌が疑われた口腔内および下顎骨の腫瘤に対して,活性炭吸着カルボプラチンを局所注射する治療を行った. 治療後,口腔内腫瘤は縮小し,下顎骨の腫瘤の増大傾向もみられていない. 標的化学療法の選択肢の一つとして本治療法の有用性が示唆された.
著者
宇野 雄博 湯本 哲夫 片桐 麻紀子 金刺 祐一朗 藤田 桂一 山村 穂積 佐藤 常男 酒井 健夫
出版者
公益社団法人 日本獣医師会
雑誌
日本獣医師会雑誌 (ISSN:04466454)
巻号頁・発行日
vol.58, no.6, pp.401-404, 2005-06-20 (Released:2011-06-17)
参考文献数
13

市販フードを主食とする平均年齢10.5カ月齢 (6カ月~1歳4カ月齢) の猫4例に, 黄色脂肪症を認めたので, 給与食餌との関連について検討した.発症猫2例に給与されていた2種類の市販フードの分析では, 推奨量のビタミンEが含有されていたが, 療法食メーカーの成猫用フードに比べて, リノール酸の含有率が低く, ドコサヘキサエン酸の含有率が高く, ω3系の比率はω6系に比べて高かった.次に, 健康な成猫2頭に, 発症猫に給与していたフードを70日間給与したところ, 血中のアラキドン酸, エイコサペンタエン酸, ドコサヘキサエン酸の濃度が著しく高く, ω3系の比率はω6系に比べて高くなった.以上, 推奨量のビタミンEが含有されていても, リノール酸含有率が低く, 高度不飽和脂肪酸含有率が高く, ω3系の比率がω6系に比べて高い飼料を継続給与すると, 黄色脂肪症を発症する可能性があると考えられた.
著者
大津 奈央 倉持 好 佐々木 淳 落合 謙爾 御領 政信
出版者
日本獸医師会
巻号頁・発行日
vol.70, no.6, pp.357-362, 2017 (Released:2018-01-15)

ブロイラーの浅胸筋変性症の発生要因及び病変形成プロセス解明のため,浅胸筋に肉眼的異常のある32日齢及び48~50日齢のブロイラーの浅胸筋と深胸筋を病理学的に検索した。肉眼的に32日齢では浅胸筋は軽度の退色,筋線維の走行に一致する白色線条病変が観察され,組織学的には散在性の筋線維の硝子様変性,絮状変性,大小不同,マクロファージによる筋貪食像が認められた。48~50日齢では,32日齢の病変より重度かつ広範で,肉眼的に浅胸筋の扁平化や,退色,水腫,白色線条病変が認められ,組織学的には筋線維の再生性変化や線維芽細胞の増殖を伴う膠原線維の増生が顕著であった。重症例では筋膜が肥厚し,膠原線維の増生及び血管新生が認められた。深胸筋ではどの日齢でも筋線維の硝子様変性がわずかに認められるのみであった。全症例で浅胸筋浅層の病変が最も重度で深部になるほど軽度であり,局所的な循環障害に起因することが示唆された。
著者
黒田 聡史 佐々木 伸雄 伊藤 直之 村岡 登
出版者
公益社団法人 日本獣医師会
雑誌
日本獣医師会雑誌 (ISSN:04466454)
巻号頁・発行日
vol.67, no.12, pp.923-927, 2014-12-20 (Released:2015-01-20)
参考文献数
14

7カ月齢の日本猫が,左前肢の跛行と掌球部の石灰沈着に伴う白斑を主訴に来院した.血液検査では持続的な高リン血症がみられたが,血漿カルシウム値は正常範囲内であった.また,腎不全,甲状腺機能亢進症及び原発性上皮小体機能低下症は認められず,当初は血清中のビタミンD値が高値を示した.リン制限食給与並びにリン吸着剤の投与により,血漿無機リン(iP)値は有意に減少し,カルシウム・リン溶解度積も減少した.また,ビタミンD値は正常値に復した.しかし,血漿iP値は依然正常範囲より高値であった.跛行は改善したものの,掌球の石灰沈着症は初診から2年半以上にわたり観察された.本例の高リン血症の原因は明らかにできなかった.
著者
和田 枝実子 島田 章則 澤田 倍美 森田 剛仁 佐藤 加奈子 辻野 久美子 日笠 喜朗 天谷 友彦
出版者
日本獸医師会
雑誌
日本獣医師会雑誌 = Journal of the Japan Veterinary Medical Association (ISSN:04466454)
巻号頁・発行日
vol.59, no.2, pp.112-115, 2006-02-20
参考文献数
8
被引用文献数
1

24歳齢のサラブレッド種の馬に膿性鼻汁の排出が慢性的に見られ, 蓄膿症と診断された. 抗生剤投与による治療が行われたが, 膿汁の排出は続いた. 鼻腔内の触診により右鼻腔内前縁に親指大の腫瘤が触知され, さらに腫瘤は鼻孔より突出するまでに増生伸長し, 鼻汁の排出も継続してみられた.また, 前頭部の膨隆も現れた.病理解剖の結果, 肉眼的に右鼻腔内において背鼻甲介粘膜がその全域 (縦2.5cm, 横7cm, 全長25cm) にかけて高度に肥厚するとともに, 黄色ゼリー状を呈しており, 末端部の肥厚部位は腫瘤状の形態を示し, 外鼻孔より突出していた.組織学的に, 腫瘤は粘液様物質の蓄積を伴う肉芽組織であり, 鼻ポリープと診断された.
著者
内布 幸典 白川 ひとみ 野田 美治 永末 誠二 長野 正弘 大江 龍一
出版者
日本獸医師会
雑誌
日本獣医師会雑誌 = Journal of the Japan Veterinary Medical Association (ISSN:04466454)
巻号頁・発行日
vol.51, no.12, pp.713-717, 1998-12-20
参考文献数
12
被引用文献数
1

1995年4月, 一貫経営農家 (母豚60頭) の肥育豚 (60~70日齢) で呼吸器症状を示す死亡例が多発し, 発病豚3頭を剖検したところ, 全例に重度の肺炎が観察され, 組織学的には間質性肺炎と脳の囲管性細胞浸潤が顕著であった. 3頭の脳, 扁桃および肺からは, MARC-145培養細胞接種により豚繁殖. 呼吸障害症候群 (PRRS) ウイルスが分離され, CPKおよびHmLu-1培養細胞接種によりレオウイルス2型が分離された
著者
中本 裕也 溝口 倫生 中本 美和
出版者
公益社団法人 日本獣医師会
雑誌
日本獣医師会雑誌 (ISSN:04466454)
巻号頁・発行日
vol.74, no.6, pp.383-387, 2021-06-20 (Released:2021-07-20)
参考文献数
15

3カ月齢の雄のラグドールが突然の四肢の起立困難を主訴に主治医を受診し,翌日に紹介来院した.麻酔下のX線検査では異常所見が認められなかったが,MRI検査にて環軸椎背側領域の脊髄実質における信号強度異常,脳脊髄液検査にて出血を示唆する所見が認められたことから,外傷性環軸椎不安定症が疑われた.頸部の外固定,運動制限,投薬,理学療法といった内科的治療により,経過は良好であった.経時的なMRI検査にて損傷の疑われた脊髄実質における病変部位が空洞化していたことから,神経症状の将来的な残存が示唆された.猫の環軸椎不安定症に対して継時的なMRI検査によって脊髄実質の評価を行うことは,予後判断に有用であると考えられた.
著者
高井 光 芝原 友幸 村上 俊明 林 みち子 門田 耕一
出版者
日本獸医師会
雑誌
日本獣医師会雑誌 = Journal of the Japan Veterinary Medical Association (ISSN:04466454)
巻号頁・発行日
vol.58, no.2, pp.105-108, 2005-02-20
参考文献数
21
被引用文献数
7

石川県内の乗馬クラブにおいて, 10歳のサラブレッド去勢馬が沈うつ, 発熱, 転倒を伴う運動失調を呈したため, 2003年6月, 安楽死処置が施された. 剖検時, 右側腎臓には, 2個 (おのおの約5×5×3cm) の硬固感を有する, 灰白色, 融合性肉芽腫性腫瘤が認められた. 病理組織学的に, <I>Halicephalobus gingivalis</I>による多発性肉芽腫性腎炎が認められ, 類似病変が脳, 浅頸リンパ節にもみられたことから, 本症例を国内3例目の<I>Halicephalobus</I>感染症と診断した. 当該乗馬クラブでは, 2000年3月に国内2例目の発生があったことから, 腎臓由来線虫の形態と環境土壌試料由来のものを比較した. 土壌試料には, 多様な形態を持つ多数の線虫が認められた. そのいくつかは腎臓由来線虫と一致した. 土壌中に多数の線虫が存在することより, 環境に存在する自由生活性の<I>Halicephalobus</I>が馬の感染源となる可能性が示唆された.
著者
三浦 春水 金本 東学 森田 達志 柵木 利明
出版者
日本獸医師会
雑誌
日本獣医師会雑誌 (ISSN:04466454)
巻号頁・発行日
vol.54, no.9, pp.701-705, 2001-09-20
参考文献数
9
被引用文献数
2

両後肢不全麻痺を呈する猫が来院後, 時間経過とともに後弓反張を呈し, 昏睡状態に陥った.血液検査, ウイルス検査, X線検査, CT検査などの各種検査および対症療法を実施したが, 原因不明のまま死亡した.剖検において, 脳底部に長さ13cmの虫体1隻, ならびに三尖弁の腱索に絡み付いた長さ9.5cmの虫体1隻が認められた.また, 病理組織検査において左側脳室から側頭葉を経て髄膜下にいたる虫道が確認された.検出された2隻の虫体は, ともに雄の犬糸状虫<I>Dirofilam immitis</I>であり, 総排泄腔より交接刺が突出していることから未成熟虫から成虫のステージの虫体であると同定された.以上ヒの所見より, 後弓反張を呈した神経症状は犬糸状虫の脳内迷入が原因であると考えられた.
著者
谷津 實 佐藤 光寛 一條 俊浩 佐藤 洋 佐藤 繁
出版者
公益社団法人 日本獣医師会
雑誌
日本獣医師会雑誌 (ISSN:04466454)
巻号頁・発行日
vol.71, no.10, pp.581-585, 2018-10-20 (Released:2018-11-20)
参考文献数
21

展示飼育されている臨床的に健康な雌雄成熟アカキツネの非発情期におけるバイタルサインと,臨床検査値の基準範囲を調べた.採血は,無麻酔下で外側伏在静脈より行った.すべての項目で,雌雄差は認められなかった.犬の基準範囲に比べ,体温は高値,赤血球数と好酸球数,血清グルコース(Glu),アルブミン(Alb)及び尿素窒素濃度(UN)は高値,逆に血清ブチリルコリンエステラーゼ活性は低値を示した.これら所見は夏毛から冬毛への換毛期の影響(体温上昇),小球性赤血球(赤血球恒数MCVとMCHの低値を伴う赤血球数の高値),肉食中心の食餌(Glu,Alb及びUN濃度の高値)によると推測された.以上のアカキツネの基準範囲は,獣医療や研究現場において健康状態の把握,疾患の類症鑑別や治療あるいは予防に利用できると考えられた.
著者
伊藤 直之 青木 美樹子 板垣 匡
出版者
公益社団法人 日本獣医師会
雑誌
日本獣医師会雑誌 (ISSN:04466454)
巻号頁・発行日
vol.58, no.10, pp.683-686, 2005-10-20 (Released:2011-06-17)
参考文献数
20
被引用文献数
1 2

青森県八戸地域の一般家庭で飼育されている1カ月齢~16歳齢の猫460頭から採取した糞便を対象に, ホルマリン・酢酸エチル沈澱法で消化管内寄生虫を検査した. 検出された寄生虫とその検出率はネコ回虫13.9%, ネコ鉤虫2.4%, ネコ糞線虫0.2%, マンソン裂頭条虫3.0%, テニア属条虫2.2%, イソスポラ属原虫2.0%およびジァルジア3.3%であった. ネコ回虫の検出率は1~6カ月齢の猫で高く, いっぽう, ネコ鉤虫, マンソン裂頭条虫およびテニア属条虫の検出率は2~5歳齢で高かった. さらに, 検出された寄生虫の多くはその検出率が室外飼育猫で高く, 室内飼育猫で低かった.
著者
熱海 明 青柳 澄 小野 精美 鈴木 武 鈴木 肇 栗原 幸一 西塚 胞喜 岡 英彦 二戸 源治 梅沢 長一 木村 広 安孫子 淳一 高梨 勝広 山口 正志 丹羽 与英 中村 春夫 高槻 和雄 遠藤 厳 岡田 昌吉 佐藤 幸雄 東海林 喜助 斯波 八郎 奥山 繁雄 五十嵐 茂 斎藤 安司 菊地 正逸 槙 千秋
出版者
公益社団法人 日本獣医師会
雑誌
日本獣医師会雑誌 (ISSN:04466454)
巻号頁・発行日
vol.17, no.10, pp.521-526,539, 1964-10-20 (Released:2011-06-17)
参考文献数
22

A total of 244 persons were reported officially to be involved in an outbreak of food poisoning possibly attributed to whale-meat bacon in Yamagata and its neighboring areas in Yamagata Prefecture at the end of August. One fatal case occurred in the city of Yamagata.The period of incubation was 12 to 21 hours in most cases. The main symptoms consisted of fever, stomachache, vomiting, and diarrhea and were almost identical with those of food poisoning known to be caused by enteritis vibriones.The incriminated food was whale-meat bacon, which had been eaten without being cooked. The same food as this, in raw state, was given per os to mice and cats without any ill effect. Bacteriological examination failed to detect any known pathogenic organisms, except staphylococci, or such enteritis vibriones as identical with those of the known serotype.Enteritis vibrio O-2 (“E” by Agatsuma's classification) was detected from 19 (76%) of 25 fecal specimens collected from the patients involved. Staphylococcus and Proteus were also detected from these specimens. Most of the staphylococci isolated from the whale-meat bacon, and the fecal specimens were coagulase-positive.All the strains of enteritis vibriones isolated from the fecal specimens were pathogenic for mice. So were three strains of these organisms isolated from the whale-meat bacon.
著者
五十嵐 健二 矢冨 謙治
出版者
公益社団法人 日本獣医師会
雑誌
日本獣医師会雑誌 (ISSN:04466454)
巻号頁・発行日
vol.45, no.8, pp.597-599, 1992-08-20 (Released:2011-06-17)
参考文献数
6
被引用文献数
2 1

1989年6月~8月, 兵庫県東播磨地域の児童公園の砂場168カ所における犬と猫の回虫卵の汚染状況を調査した. 37カ所 (22.0%) の公園から犬と猫の回虫卵が検出され, そのうち人に感染力のある幼虫包蔵卵は12カ所 (7.1%) で認められた. 地域別にみると, 田園地域の公園は8.3%(6/72) と低率であったが, 市街地の公園は32.3%(31/96) と高率であった. 糞便の認められた砂場は47.1%(16/64) とさらに高率に汚染されていた.
著者
田原 鈴子 澤田 勝志
出版者
日本獸医師会
巻号頁・発行日
vol.68, no.10, pp.629-633, 2015 (Released:2016-05-30)

岡山県では,2009年1月~2014年3月の間,牛ボツリヌス症(D型)が11農場で発生した。糞便からボツリヌス毒素が検出された11農場から採取した環境材料(飼料,水,牛舎スワブ,野生動物糞便)のうち,野生動物糞便からの検出率が8農場中4農場と最も高率であった。11農場中2農場で,D/Cモザイク型のC. botulinumが分離され,パルスフィールドゲル電気泳動解析の結果,これらの菌株は同一の泳動パターンを示した。発生農場のうち,9戸が直径20kmの範囲内に位置し,菌株が分離された2戸の農場は,疫学的関連がなかった。ボツリヌスワクチン導入農場において,ワクチン未接種牛で本症が発生し,環境材料から高率にボツリヌス毒素が検出された。以上のことから,C. botulinumの伝播には野生動物が関与していることが示唆された。ワクチン接種は本症の発症抑制に効果的であるが,C. botulinumの排菌は抑制しない。C. botulinumの拡散防止のためには,農場内の清掃及び消毒の徹底と,野生動物の侵入防止措置などの清浄化対策が最も重要である。
著者
樋笠 正晃 宇野 理恵 宇野 雄博 山田 茂夫 安澤 数史
出版者
日本獸医師会
雑誌
日本獣医師会雑誌 (ISSN:04466454)
巻号頁・発行日
vol.71, no.11, pp.649-653, 2018

<p>慢性鼻炎として長期治療していた猫が,進行性の瞬膜及び眼球突出を呈し,鼻腔や眼窩を中心として,壊死組織を伴う炎症性肉芽の浸潤性増殖を認めた.病理組織学的検査により真菌感染が原因と診断され,抗真菌剤などによる内科治療や,壊死組織及び肉芽組織のデブリードマン等の外科治療を実施した.しかし,真菌感染は浸潤性に進行し,死亡した.本症例の起因菌の培養形態と高温発育試験及びβチューブリンとカルモジュリン遺伝子の塩基配列は近年分類された<i>Aspergillus felis</i> と一致していた.また,分離株は多くの抗真菌薬に対して高い最少発育阻止濃度を示し,感受性が低いことが示唆された.</p>
著者
丸山 成和 丸山 典彦 伊藤 宏 田中 良和 植松 典昭
出版者
公益社団法人 日本獣医師会
雑誌
日本獣医師会雑誌 (ISSN:04466454)
巻号頁・発行日
vol.36, no.6, pp.330-333, 1983-06-20 (Released:2011-06-17)
参考文献数
12
被引用文献数
1

牛以外の動物, とくに人と豚のアカバネウィルスに対する抗体の保有状況を知る目的で, 両者の血清について, 赤血球凝集抑制 (HI) 反応, 中和 (NT) 試験による調査を実施した. なおHI価10以上, NT価4以上を反応陽性とした.調査期間は人では1977年6月~1979年4月, 豚では1978年9月~1979年2月であった. 調査地域は人では県内8市5町, 豚では9市4町であった. その結果以下の成績を得た.1) 人血清1, 348例のうち1.3%(17/1, 348) がHI陽性であった. これらの陽性例は県東部の隣接田園地区に集中してみられた. 陽性例のHI価は10~40, NT価は4~32であった. なお豚のHI陽性率の高い地域の養豚従事者19人では1例が陽性 (陽性率5.3%) で, そのHI価およびNT価はそれぞれ10および8であった.2) 豚血清1, 134例 (4~5ヵ月齢の肥育豚654頭, 繁殖豚480頭) についてHI価を測定したところ, 1.4%(16/1, 134) の陽性率であった. このうち肥育豚は0.8%(5/654), 繁殖豚は2.3%(11/480) の陽性率であった.陽性例のHI価は10~20, NT価は4~64であった.豚および人は, Vectorの動物嗜好性によることも考えられるが, 牛にくらべて本ウイルスの感染をうけにくいものと推測される.