著者
岡崎 雄交 大槻 竜宏 宮阪 和世 並河 忠男
出版者
公益社団法人 日本分析化学会
雑誌
分析化学 (ISSN:05251931)
巻号頁・発行日
vol.17, no.10, pp.1228-1233, 1968 (Released:2009-06-30)
参考文献数
3
被引用文献数
3 3

荷電移動複合体形成により黄色を呈すると考えられる高濃度(0.05M)のニコチン酸アミド-アスコルビン酸(1:1)混合溶液について直流ポーラログラフの挙動を検討し,次のような結果を得た.i)黄色を呈する高濃度溶液ではピリジニウムイオンとアミド基に基づく還元波以外にピリジニウムイオンを形成せずに存在するアスコルビン酸の水素波を与える.ii)黄色を呈する高濃度におけるアスコルビン酸の酸化波高は黄色を呈する度合(ニコチン酸アミド>ピリジン)に比例して増大するが,呈色しないベンツアミドとの混合液ではほとんど変化しない.また黄色を呈しない濃度(0.005M)ではいずれの場合も波高は減少する.iii)高濃度におけるニコチン酸アミド-ヨウ化水素酸混合液の挙動もニコチン酸アミド-アスコルビン酸混合液の場合とよく類似している.
著者
下山 進 松井 英男 下山 裕子
出版者
公益社団法人 日本分析化学会
雑誌
分析化学 (ISSN:05251931)
巻号頁・発行日
vol.55, no.2, pp.121-126, 2006 (Released:2006-04-10)
参考文献数
5
被引用文献数
3 7

Dayflower, knotgrass (indigo) and Prussian blue are known to be blue colorants used in traditional ukiyo-e color prints. For the non-destructive determination of the three blue colorants, the visible near-infrared reflection spectrum of each standard color sample was measured with a portable spectrophotometer using fiber optics. The three spectra, corresponding to each colorant, showed different patterns in the range of 630∼900 nm, and the three colorants could be easily identified by each respective spectrum pattern. This analytical method was applied for the identification of blue colorant(s) used in 36 prints of "Thirty-six Views of Mt. Fuji", the key-blocks of which were printed with blue color by Katsusika Hokusai, published in ca. 1830∼33. It was identified that every key-block of the 36 prints was printed with indigo, which was hitherto assumed to be Prussian blue, while all color-blocks were printed with Prussian blue. This pattern of color usage, indigo for the key-block and Prussian blue for the color-blocks, was also observed in 5 prints of the "Shokoku Taki Meguri" series, the key-blocks of which were printed with blue color, by Katsusika Hokuai, published in ca. 1832∼33.
著者
西 末雄
出版者
公益社団法人 日本分析化学会
雑誌
分析化学 (ISSN:05251931)
巻号頁・発行日
vol.11, no.4, pp.415-420, 1962-04-05 (Released:2010-01-15)
参考文献数
5
被引用文献数
3 2

C2~C6カルボニル化合物の2,4-ジニトロフェニルヒドラゾンをジカルボン酸類と混合溶融すると,元のカルボニル化合物を再生することを認めた.この熱分解反応をガスクロマトグラフィーにおけるキャリヤーガス流路内で行ない,再生するカルボニル化合物を直ちにガスクロマトグラフィーにより分析した.使用したジカルボン酸中では,ο-フタル酸,α-ケトグルタル酸,グルタル酸などがカルボニルを再生させる能力が高かった.しかし,α-ケトグルタル酸,グルタル酸などは加熱によってみずから分解ガスを発生しクロマトグラムのベースラインを乱し分析上の障害となる場合があり,このような障害のないο-フタル酸が本分析法には最適であった.ο-フタル酸はヒドラゾンに対して10倍量以上用いるべきである.メチルエチルケトン,n-ブチルアルデヒドの場合,ヒドラゾンより理論量のカルボニルを再生した.アルデヒド,ケトンの水溶液(濃度1%以下)の分析を本法で行なったところ満足すべき結果をえた.
著者
赤坂 和昭
出版者
公益社団法人 日本分析化学会
雑誌
分析化学 (ISSN:05251931)
巻号頁・発行日
vol.44, no.9, pp.681-690, 1995-09-05 (Released:2009-06-19)
参考文献数
44
被引用文献数
2 2

脂質の酸化により生成する過酸化脂質の高感度,高選択的な蛍光分析試薬として,ホスフィン試薬の設計・開発を行った.トリフェニルホスフィンによる脂質ヒドロペルオキシドの還元反応に着目し,過酸化脂質分析試薬としてトリフェニルホスフィンのフェニル基を蛍光発色基で置換した化合物を設計・合成した.この化合物は,それ自体には蛍光性がなく,過酸化物等によりホスフィンオキシドに酸化されることにより初めて強い蛍光性を示した.反応は,脂質過酸化反応の第一次生成物であるヒドロペルオキシドに高い選択性を示し,反応の前後の蛍光強度の変化より脂質ヒドロペルオキシドを定量することが可能であった.合成したホスフィン試薬の中で蛍光分析に最適な性質を示したジフェニル-1-ピレニルホスフィン(DPPP)は液相法,及びHPLCポストカラム法への適応が可能で,これらの方法によりそれぞれsub-nmol,及び数 pmol レベルでの脂質ヒドロペルオキシドの検出・定量が可能であった.特に, HPLC ポストカラム法ではリン脂質やトリアシルグリセロール,コレステロールエステル等の脂質クラス,あるいは分子種レベルでの分析が可能となった.本稿では,過酸化脂質分析試薬の開発の経緯を含めたホスフィン試薬の設計・合成,特性,及び食品試料や血しょう等の生体試料中の脂質ヒドロペルオキシドの分析への応用について紹介する.
著者
市川 貴紀 安井 孝志 高田 主岳 湯地 昭夫
出版者
日本分析化学会
雑誌
分析化学 = Japan analyst (ISSN:05251931)
巻号頁・発行日
vol.58, no.8, pp.749-752, 2009

Three solid-state ISEs (Cd, Pb, Cu) were evaluated for direct potentiometry of polyacrylate. Cd-ISE had a lower pH response but an appreciably high response to PA, while Cu-ISE had a remarkably high pH response but a rather low response to PA. Pb-ISE showed intermediate behaviors. These results suggest direct potentiometry of PA by simultaneous measurements of pH and the Cd-ISE response. Anions of foreign salts may cause positive errors by the interactions with Cd2+, whereas cations of salts may cause negative errors by the interactions with PA. The extent of such errors is, however, negligible in the detection of PA in the circulating water of cooling systems.
著者
椿 勇
出版者
公益社団法人 日本分析化学会
雑誌
分析化学 (ISSN:05251931)
巻号頁・発行日
vol.19, no.4, pp.458-462, 1970-04-05 (Released:2009-05-29)
参考文献数
5

元素周期律の同族元素では原子番号の増加による酸化力の変化は従来ほとんど考察されていない.もっとも各原子のイオン化電圧,標準酸化還元電位および標準生成自由エネルギーの値は原子番号の増加につれて酸化力が強くなる傾向を示唆するものではあるが,しかし実際に反応によって果たして酸化力の差が現われるものかいなかを検討した.その結果は大部分の同族元素についてはやはり原子番号の増加により酸化力は増大することがわかったが,IV B族, Ti, Zr, Hf, V B族V, Nb, TaおよびVI B族 Cr, Mo, Wにおいては逆であった.またVII B族では Tc>Mn>Re, VI A族では Se>Te>S のように原子番号の傾向とは無関係であることがわかった。
著者
森重 清利 岡部 道明 西川 泰治
出版者
公益社団法人 日本分析化学会
雑誌
分析化学 (ISSN:05251931)
巻号頁・発行日
vol.46, no.4, pp.265-270, 1997-04-05 (Released:2009-06-30)
参考文献数
10

佐賀県東松浦郡肥前町産の木村石[CaY2(CO3)4・6H2O]は紫外線照射により赤紅色の蛍光を発する.この発光は鉱物中に含まれるEu(III), Tb(III), Gd(III)及びDy(III)イオンの輝線スペクトルに起因することを明らかにした.これら発光性希土類金属(III)化合物の蛍光スペクトルの帰属とその分光特性を詳細に検討した結果,木村石の蛍光スペク.トルはそれぞれEu(III):Ex.395(7F6→5Le)/Em.615nm(5D0→7F2);Tb(III):Ex.380(7F6→5D3)/Em.545nm(5D4→7F5);Gd(III):Ex.275(8S7/2→6D3/2)/Em.312nm(6P7/2→8S7/2);Dy(III):Ex.352/Em.575 nm(4F9/2→6H13/2);の4f電子の許容遷移に基づく発光であることを明らかにした.
著者
古山 彰一 藤島 政樹 竹内 克輝 永井 孝 奥村 浩
出版者
公益社団法人 日本分析化学会
雑誌
分析化学 (ISSN:05251931)
巻号頁・発行日
vol.68, no.7, pp.491-496, 2019-07-05 (Released:2019-08-03)
参考文献数
7

比色法を用いた水質調査をより簡便にするために,スマートフォンなどのスマートデバイスのアプリケーションを含めた人工知能による濃度判定を行うシステム開発を行った.色の同定,濃度算出に人工知能技術を利用することで,外光などを遮断するための冶具と色彩—濃度検量線の作成を不要とした.また,個々のスマートデバイス上で濃度測定を行うのではなく,ネットワーク上に構築した人工知能サーバによって濃度判定を行うこととした.このことで個々のデバイスにインストールされるアプリケーションの機能を最小限とし機種依存性を極力排除することを試みた.さらに観測位置情報も同時に取得・保存することで,広域環境調査に有効な水質測定システムになりうる可能性を示した.
著者
松岡 育弘 内藤 哲義 山田 碩道
出版者
公益社団法人 日本分析化学会
雑誌
分析化学 (ISSN:05251931)
巻号頁・発行日
vol.51, no.9, pp.759-765, 2002-09-05 (Released:2009-03-13)
参考文献数
14
被引用文献数
4 7

数多くの溶媒について水を飽和した状態で, 溶媒のアクセプタ性を示すET値と水の溶解度を測定した. 水の溶解度は, カールフィッシャー法により電量滴定で測定した. 用いた溶媒は, 7種類のアルカン, 3種類の芳香族溶媒, 3種類の塩素化炭化水素, 4種類のエステル, 6種類のケトンと5種類のアルコールである. 各溶媒のET値は1,2-ジクロロエタンを除いて対応する水の溶解度とかなりよい直線関係が成立することが分かった. これらの溶媒の中でデカン酸による銅 (II) イオンの抽出に関して研究してきた溶媒に対して, 水の溶解度とこれらの抽出系に含まれる種々の平衡定数との間にかなりよい直線関係があることを示した. このことは, これらの抽出平衡が水和の影響を受けていることを示唆している. 本研究で用いた溶媒への水の溶解度は2.36×10-3から4.74mol dm-3であり, ET値と比べて広い範囲にわたっている. このことは, 有機溶媒への水の溶解度は, 溶媒抽出における溶媒効果を研究する際, 有機溶媒の性質を示す高感度な尺度として有用となることを期待させる.
著者
坂本 政臣 小浦 由紀夫 畑中 憲児 石森 富太郎
出版者
公益社団法人 日本分析化学会
雑誌
分析化学 (ISSN:05251931)
巻号頁・発行日
vol.39, no.1, pp.7-11, 1990-01-05 (Released:2009-06-19)
参考文献数
4

カリウム,ルビジウム及びセシウムを含む混合溶液から,これら三者を分離することなく同時定量することを検討した.すなわち,テトラフェニルホウ酸ナトリウム(Na[TPB])及びテトラ(p-フルオロフェニル)ホウ酸ナトリウム(Na[F4TPB])を沈殿剤に用いて,M[TPB](M=K,Rb,Cs)及びM[F4TPB](M=Rb,Cs)として沈殿させ,それぞれの沈殿の648℃及び380℃での熱分解生成物の初期重量に対する重量パーセント(空気気流中,昇温速度:5.6℃min-1)と沈殿の総重量とから三者の定量を行った.その結果,溶液50cm3中に存在する各アルカリ金属が5mg以上のとき,10%以内の誤差で定量可能であった.
著者
若松 義信
出版者
公益社団法人 日本分析化学会
雑誌
分析化学 (ISSN:05251931)
巻号頁・発行日
vol.25, no.10, pp.671-674, 1976-10-10 (Released:2010-02-16)
参考文献数
8
被引用文献数
1 2

2-プロム4,5-ジヒドロキシアゾベンゼン-4'-スルホン酸ナトリウム(BDAS)は陽イオン界面活性剤の一つである塩化セチルトリメチルアンモニウム(CTMAC)の存在下で,中性領域で微量の銅(II)と反応して三元錯体を生成する.その錯体は530nmに吸収の極大を持ち,pH 6.4~8.3の間で最大の吸光度が得られる.更に,この三元錯体に過剰のホウ酸ナトリウムを共存させると試薬ブランクの吸光度が効果的に減少する.銅(II)が0~26μgまでBeerの法則に従う.三元錯体の見掛けのモル吸光係数は530nmで4.8×104cm-1mol-1lとなる.又,三元錯体の銅とBDASの結合比は1:2と推定される.銅(II)の定量に対して鉄(III),ガリウム,モリブデン(VI)などが微量存在しても妨害する.
著者
鈴木 義仁 小泉 均
出版者
公益社団法人 日本分析化学会
雑誌
分析化学 (ISSN:05251931)
巻号頁・発行日
vol.38, no.12, pp.718-723, 1989
被引用文献数
1 3

不飽和結合の定最に利用されるヨウ素価はウィイス試薬やハヌス試薬を用いて,オレフィン性二重結合へハロゲンを付加させ消費されたハロゲンをヨウ素等に換算して求めている.このような試薬を用いる反応では試料量,反応時間などによりヨウ素価は異なる値を示すことが知られている.本報ではウィイス試薬,ハヌス試薬,及び臭素溶液を用いて付加反応によって得られたハロゲン付加物をHPLCにより分離・定性分析し,これらの試薬との反応によって,どのような付加物が得られるかを明らかにした.スチレンへの付加反応では使用した試薬の違いによるハロゲン付加物はHPLCで分離できた.しかし長鎖不飽和脂肪酸の付加物ではハロゲン種の違いに基づく相互の分離は達成できなかった.保持の近接した付加物ピークについては分取後,酸素フラスコ燃焼法によりハロゲンイオンとしてイオンクロマトグラフィーにより付加したハロゲン種を同定し,そのHPLCによる分離挙動を明らかにした.
著者
瀬戸 康雄
出版者
公益社団法人 日本分析化学会
雑誌
分析化学 (ISSN:05251931)
巻号頁・発行日
vol.55, no.12, pp.891-906, 2006 (Released:2006-12-26)
参考文献数
82
被引用文献数
16 19

炭疽菌等の生物剤やサリン等の化学剤が用いられる生物化学テロの事前・事後管理への対処において現場で実施されるモニタリングや検知は,テロ発生の抑止や被害の最小化のために必要である.この現場検知に要求される測定資機材の性能は,生物化学剤の致死濃度・最小感染量,及び毒性発現・発症時間に大きく影響される.本研究では,市販の現場検知資機材である検知紙,ガス検知管,炎光光度検知器,光イオン化検知器,イオンモビリティスペクトロメーター,表面弾性波検知器,フーリエ変換赤外吸収スペクトロメーター,質量分析計,アデノシン5'-三リン酸(ATP)生物発光測定キット,フローサイトメーター,免疫ストリップに関して,実剤又は擬剤を用いて検知性能を検証した.その結果,検知可能な生物化学剤の種類,検知感度,検知精度,応答時間,操作性等に関して要求される性能をすべて満たす検知資機材はなかった.ガス性化学剤の検知性能に優れるテープ光電光度法装置,揮発性及び難揮発性化学剤の高感度連続検知・特定が可能な逆流型大気圧化学イオン化質量分析装置,並びに糖鎖を分子認識素子とし生物毒素を特異的に検知するバイオセンサーなどを従来の検知資機材と組み合わせて活用することにより,現場で漏れなく一斉かつ迅速に生物化学剤の検知が可能になると思われる.
著者
樋口 慶郎 井上 亜希子 坪井 知則 本水 昌二
出版者
公益社団法人日本分析化学会
雑誌
分析化学 (ISSN:05251931)
巻号頁・発行日
vol.48, no.2, pp.253-259, 1999-02-05
参考文献数
15
被引用文献数
4 13

ガス透過分離におけるガス透過の長期間の安定性と高効率化, 更にガス透過効率の長期間の再現性を向上させた, 新しいオンラインガス透過システムを構築した. このシステムでは新しく設計・製作したガス透過ユニットを組み込み, ユニット中を溶液が下方から上方に流れるようにし, 気泡の発生を防ぐ工夫がほどこされ, 更に測定後にガス透過ユニット内に滞留する溶液を排除するために2個の六方切り替えバルブを内蔵させている. ガスの安定的透過のために温度制御できる小型恒温槽を装着した. この装置中にガス透過ユニット, アンモニウムイオン定量用の反応コイルなどを組み入れ, 精密測定の向上を目指した. ガス透過ユニットは, 多孔質ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)チューブとガラス管からなり, 接続には樹脂製フェラル及びO-リングを用い, 組み立てを容易にし, デッドボリュームも小さくした. ガス透過ユニット, 反応コイル及び試料注入器などを恒温槽の中で一定温度に保つことにより, 安定した再現性の良い測定が可能となった. ガス透過ユニット内に滞留する溶液を簡単かつ迅速に強制排除する機能も備えており, 測定後はガス透過ユニット中の溶液を除いておくことにより, 多孔質チューブの透過性能が長期間維持され, 再活性化の操作をすることなく, 高いガス透過効率を維持することができた. 本システムを用いると, 検量線は0〜10, 0〜1.0ppmの範囲で良好な直線性を示し, 1時間当たり80試料の分析が可能となった. 実際に, 河川水中のアンモニウムイオンの定量を行ったところ, インドフェノール誘導体/FIA/吸光光度法による定量値と良く一致し, 試料に対する相対標準偏差は0.51, 0.83%で, 回収率は97〜98%と良好であった.
著者
市田 昭人
出版者
公益社団法人 日本分析化学会
雑誌
分析化学 = Japan analyst (ISSN:05251931)
巻号頁・発行日
vol.46, no.8, pp.613-625, 1997-08-05
参考文献数
40
被引用文献数
1 1

溶解・再析出を経験した三酢酸セルロースを粉末化あいはシリカゲルにコーティングした固定相でも光学分割能を示す.その光学分割能は微結晶三酢酸セルロースで重要視された天然セルロースが持つ結晶構造には依存しない.酢酸セルロース分子鎖の立体構造の規則性が重要であり,シリカゲルに担持させる際に三酢酸セルロースを溶解させるために用いる溶媒に左右される.セルロース,アミロース誘導体を用いた固定相では多数の化合物が分割されるが,それぞれ分割される化合物には違いがある.多糖に導入する置換基の構造よりも,多糖主鎖の構造の違いのほうが光学分割能に大きな差異を示す.カラム法による光学活性体の生産規模での分離には,シングルカラムを用いるバッチ式よりも試料の注入と分離成分の抜き取りを連続的に行うSMB法が高い分離効率を示し,工業規模での生産プロセスへの応用研究が急ピッチで進められている.
著者
伊藤 真二 山口 仁志 小林 剛 長谷川 良佑
出版者
公益社団法人 日本分析化学会
雑誌
分析化学 = Japan analyst (ISSN:05251931)
巻号頁・発行日
vol.45, no.6, pp.529-536, 1996-06-05
参考文献数
12
被引用文献数
14 10

グロー放電質量分析法(GD-MS)により,ニッケル基耐熱合金中の合金元素(Al, Si, Ti, V, Cr, Mn, Fe, Co, Cu, Y, Nb, Mo, Ta及びW)並びに微量元素(B, C, Mg, P, S, Zn, Ga, As, Zr,Cd, Sn, Sb, Te, Pb及びBi)の定量法を検討した.スペクトル干渉などについて詳細に調べた結果, Se, Agを除いてその影響がないことを確認した.JAERI CRM, NIST SRM, Bs CRMs, BCS CRMs及び自家製Ni合金標準試料の16種を測定し,表示値とGD-MS測定値から得られた相対感度係数(RSF)を評価した.RSF値による補正を行ったGD-MS定量値の正確さ(σ<SUB>d</SUB>)をファンダメンタル・パラメータ法-蛍光X線分析法(FP-XRF)による値と比較した結果, Cr, Feではやや劣るものの,そのほかの合金元素はFP-XRFによる定量値の正確さとほぼ同等であった.繰り返し分析精度は, P, Sを除いて相対標準偏差(RSD)で2.5%以内と良好な値であった.実用ODS合金MA 6000の合金成分の定量値は,FP-XRF定量値とよく一致した.又,有害微量不純物元素などの定量結果は,黒鉛炉原子吸光法による値あるいは化学分析値と一致し,本法がNi基耐熱合金の合金成分から微量成分元素定量に適用できることを確認した.
著者
山崎 秀夫 吉川 周作 稲野 伸哉
出版者
公益社団法人 日本分析化学会
雑誌
分析化学 = Japan analyst (ISSN:05251931)
巻号頁・発行日
vol.53, no.12, pp.1419-1425, 2004-12-05
参考文献数
20
被引用文献数
2 3

隠岐諸島島後の男池から採取した柱状堆積物試料を用い,そこに記録された重金属汚染の歴史的変遷を解読した.隠岐は汚染の発生源から隔離されているので,男池堆積物には大気を経由して運ばれてきた汚染物質が沈降・集積していると考えられる.得られた長さ107 cmのコアの<sup>210</sup>Pb法による堆積年代は,最深部で1890年であった.また,<sup>137</sup>Csの鉛直分布はそのグローバルフォールアウトの時代変化とよく一致した.このことは,このコアが環境変遷の時系列変動の解析に使用できることを示している.男池堆積物に対する水銀の人為的負荷は1920年代から始まり,堆積物に対するフラックスは1960年代に最大値10~12 ng cm<sup>-2</sup> yr<sup>-1</sup>を示す.それ以降は現在までほぼ一定値で推移する.一方,鉛の人為的負荷は1930年代に始まり,その負荷量は現在にまで増加し続ける.堆積物表層での,そのフラックスは5000 ng cm<sup>-2</sup> yr<sup>-1</sup>に達する.また,水銀は1900~1910年,鉛は1925年ごろに特異的なピークを示すが,その起源については特定できない.このような汚染の歴史トレンドが元素によって異なるのは,その使用履歴や環境への負荷の形態が時代とともに変化していることが反映している.また,男池が朝鮮半島や中国大陸からの影響を受けている可能性も示唆された. <br>
著者
中村 栄子 石渡 孔実子 並木 博
出版者
公益社団法人日本分析化学会
雑誌
分析化学 (ISSN:05251931)
巻号頁・発行日
vol.39, no.12, pp.845-847, 1990-12-05
被引用文献数
4 5

After removal of anionic surfactants by an ion-exchange technique, cationic surfactants were extracted as their chlorides into chloroform. Ion pairs of the cationic surfactants and Disulphine Blue formed in the chloroform phase were measured spectrophotometrically as follows : A 50 ml of a sample solution containing cationic surfactants (above 1μg as Zephiramine) is passed through an anion-exchange column (Amberlite IRA-401,15 ml) at a rate of 1 ml/ min and the column is washed with 50 ml of 50% methanol. Five milliliters of sodium chloride solution (10%) and l0 ml of chloroform are added to the eluate. The mixture is then shaken for 1 min to extract cationic surfactants into chloroform. The chloroform phase is shaken for 1 min with a mixture of 10 ml of citrate buffer solution (0.1 M, pH 5), 5 ml of sodium sulfate solution (0.4 M) and 1.5 ml of Disulphine Blue solution (1.17×10^<-4> M). The absorbance of the chloroform phase is measured at 628 nm. Cationlc surfactants in water above 20 μg/l could be determined by the proposed method.
著者
中村 利廣 貴家 恕夫
出版者
公益社団法人 日本分析化学会
雑誌
分析化学 (ISSN:05251931)
巻号頁・発行日
vol.29, no.12, pp.824-829, 1980-12-05 (Released:2010-02-16)
参考文献数
11
被引用文献数
1 3

粉末X線回折法を用いて,従来正確な定量法のなかった亜鉛末中の酸化亜鉛の定量方法を検討した.亜鉛末中の酸化亜鉛と同じ半値幅になるように加熱結晶化された標準酸化亜鉛を用いて検量線を作成することにより,結晶化度の差に原因する誤差を取り除いた.更に,加熱結晶化する方法と粉砕して結晶化度を低くする方法で調製した酸化亜鉛について,格子ひずみ量を比較して,加熱結晶化した酸化亜鉛のほうが,亜鉛末中の酸化亜鉛に近く,検量線作成用標準物質として適していることを見いだした.この標準酸化亜鉛を用いて,標準添加法で酸化亜鉛(1.9~5.9)%の試料を定量した.定量下限は0.27%,定量値3.9%のときの変動係数は5.8%であった.
著者
半戸 里江 安保 充 大久保 明
出版者
公益社団法人日本分析化学会
雑誌
分析化学 (ISSN:05251931)
巻号頁・発行日
vol.52, no.9, pp.695-699, 2003-09-05
被引用文献数
1 5

本研究では,最適かつ詳細な分析手法の確立に加え,環境化学的視点から実試料の測定を実施し,分析値を解析することで,更に新たな知見を得ることを目的とした.海水中内分泌撹乱化学物質の定量に関して,簡便な方法でより正確な測定値を算出するために,固相抽出剤のコンディショニング法や溶出法の改良を行った.コンディショニング法に関して,実験に用いる水に由来する汚染を防ぐ目的で,水を使用しないコンディショニング法を考案した.この方法と従来法(精製水を使用するコンディショニング法)の回収率の差は1%以内であった.溶出法に関して,従来法よりも回収率が良く,ばらつきも少ないアセトン,ジクロロメタン,ヘキサンを順に通液する溶出法を提案した.実試料として,東京湾と千葉県沖の黒潮流域の海面表層水を測定した.東京湾ではノニルフェノール(mix)とビスフェノールAが数十〜百数十ng/lで検出された.千葉県沖での測定の結果,幾つかの測定対象物質が検出されたが,東京湾と比較して10分の1以下の濃度であった.