著者
佐藤 浩昭 中村 清香
出版者
公益社団法人 日本分析化学会
雑誌
分析化学 (ISSN:05251931)
巻号頁・発行日
vol.67, no.5, pp.281-291, 2018-05-05 (Released:2018-06-07)
参考文献数
14
被引用文献数
4

MALDI-TOF-MSは高分子材料の化学構造解析に有力な手法であるが,ポリエチレンオキシド(PEO)系界面活性剤などのイオン化効率が高い成分が共存していると目的成分のピークが観測されにくくなるという課題があった.そこで水に難溶のトリヒドロキシアセトフェノンをマトリックスに用いて試料/マトリックス混合結晶を調製し,その上に水/メタノール混合液を滴下して速やかに吸引することにより,PEO系成分を選択的に除去できる簡便な前処理法を開発した.この方法を洗髪剤の成分分析に応用し,妨害成分であるPEO系アニオン性界面活性剤(ラウレス硫酸ナトリウム)を除去して,配合成分のピークが観測できるようになった.得られたマススペクトルをKendrick mass defect(KMD)プロットに変換して成分分布を二次元展開したところ,様々なPEO系非イオン性界面活性剤の組成分布やPEO-水添ヒマシ油の共重合組成分布を明らかにすることができた.また,紫外線硬化塗料に含まれるPEO系界面活性剤を除去して,ウレタンアクリル系成分の化学構造情報を得ることができた.本法は,工業製品の配合情報を簡便かつ詳細に得ることができるスクリーニング手法として有効であると思われる.
著者
村上 和雄 掛本 道子 原田 敏勝 山田 約瑟 小川 裕康
出版者
The Japan Society for Analytical Chemistry
雑誌
分析化学 = Japan analyst (ISSN:05251931)
巻号頁・発行日
vol.41, no.7, pp.343-348, 1992-07-05
参考文献数
7
被引用文献数
1 1

球状シリカビーズ表面にグルコースオキシダーゼ(GOD)とグルコアミラーゼ(GAM)を共有結合で固定化し,ミニカラムに充てんしてミクロなバイオリアクターをつくり,高速液体クロマトグラフの分離カラムの後に接続した.グルコースはGODの触媒作用により過酸化水素とグルコノラクトンを,マルトースはGAMによりグルコースを生じ,更にこのグルコースがGODにより過酸化水素を生じる.生成した過酸化水素を電気化学検出器でアンペロメトリックに測定し,グルコースとマルトースの間接定量を試みた.本方法の検出感度は,GOD固定化カラムを用いた化学発光-FIA法やGOD・GAM固定化カラムを用いた化学発光-FIA法とほぼ同等であり,示差屈折率検出器を用いるHPLC法よりも約500倍高かった.最小検出量は絶対量でグルコースが10ng,マルトースが15ng(いずれも<I>S</I>/<I>N</I>=3)であった.本法は酵素の触媒作用,電気化学検出器の選択的で高感度な検出を利用しているため,前処理が極めて簡略化でき,試料を希釈するだけでよかった.市販の麦芽飲料,麦芽入り豆乳,ノンアルコールビール中のグルコースとマルトースの定量に応用し,良好な結果が得られた.
著者
宮本 和英 砂川 真弓 齋藤 一樹
出版者
公益社団法人 日本分析化学会
雑誌
分析化学 (ISSN:05251931)
巻号頁・発行日
vol.66, no.6, pp.393-402, 2017-06-05 (Released:2017-07-12)
参考文献数
44

生体内のユビキチン化反応は,不要なタンパク質の分解,DNA修復,シグナル伝達など多くの機能を担っている.そのユビキチン化反応を構成しているE2(ユビキチン結合酵素)は,白血病,乳がん,大腸がん等,様々ながん疾患と深く関与していることが知られている.将来的に,E2活性を高感度・定量的に捉えることができれば,E2をバイオマーカとして活用できるはずである.これまでに著者らは,簡便にE2活性を検出するために,人工的なユビキチンリガーゼ(ARF)を分子設計・作製し,そのARFを活用する新しい検出システムを独自に研究してきた.ARFは,ユビキチン化反応に含まれるE3(ユビキチンリガーゼ)の活性部位(α-ヘリックス領域)を50残基程度のペプチドに移植して作製されるキメラ分子である.E3の活性部位のみを持つARFは,元のE3の分子サイズに比べ極めて小さくなっている.この分子設計法をα-ヘリックス領域置換法と名付けた.ARFは特異的なE2結合能を有し,また,それ自身が基質となってユビキチン化される機能を有する.したがって,ARFを用いることで,基質の同定を必要とせずに,E2活性を簡便に検出できる.本稿では,このARFの分子設計法,及びその立体構造,機能的な特徴について概説する.また,実践例として,抗がん剤ボルテゾミブを作用させたヒト急性前骨髄性白血病(NB4)において,ARFの検出システムを活用するE2活性の検出法についても紹介する.
著者
今坂 藤太郎
出版者
公益社団法人 日本分析化学会
雑誌
分析化学 (ISSN:05251931)
巻号頁・発行日
vol.50, no.1, pp.3-30, 2001-01-05 (Released:2008-12-12)
参考文献数
98
被引用文献数
3 4

超音速分子ジェット分光法は, 試料分子を気体状態で絶対零度付近に冷却して測定する方法である. 試料分子を冷却することにより, 鋭い構造の励起スペクトル, あるいは多光子イオン化スペクトルが得られる. 更に, 蛍光スペクトルあるいは光イオン化質量スペクトルを測定して, 試料分子を同定することもできる. したがって, スペクトル選択性が極めて高い. 必要な場合には, シンクロナススキャンルミネッセンス分光法や, クロマトグラフなどの分離手段と結合することにより, 更に選択性を向上させることも可能である. 一方, この手法は原理的には単一分子を検出できる分析感度を有している. したがって, 本法は極限の選択性と感度を同時に持っている. 最近, ダイオキシンを超微量分析するための手法が強く要望されているが, 超音速分子ジェット法は, そのための有力な分析法として注目されている. しかし, ダイオキシンは毒性の異なる多数の分子種の集まりであり, それらを区別して測定することが必要である. また, これらの化合物は極めて毒性が高く, 極微量分析も同時に要求される. 現在, ダイオキシン分析に適用できる超音速分子ジェット分光法の技術開発が進められており, ここではその現状についても言及する.
著者
山田 悦 沖田 秀之 山田 武 平野 宗克 成田 貞夫
出版者
公益社団法人 日本分析化学会
雑誌
分析化学 (ISSN:05251931)
巻号頁・発行日
vol.49, no.6, pp.419-422, 2000 (Released:2001-06-29)
参考文献数
18

銀はイオン状態のとき,大腸菌や細菌等を10μgl-1(10ppb)という極微量濃度で死滅させる効果があるため,プールや温泉では塩素系薬剤に代わって利用を拡大しつつあり,また銀系抗菌製品も開発されてきている。日本ではまだ銀の法規制はないが,適正な濃度での使用が必須であり,定量下限数ppbの銀の高感度簡易定量法が求められている。本研究では,ペルオキソ二硫酸カリウムによるMn(II)→Mn(VII)の酸化における銀の触媒作用を利用した高感度定量法を開発し,水道水,井戸水及び温泉水などの銀イオンの測定に適用した。本法の定量限界は1ppbと高感度で,銀80ng,5回測定の相対標準偏差が0.9%と再現性も良く,共存イオンの影響もなく銀の迅速で簡易な定量として有効な方法であることが明らかとなった。また,簡易法(目視)でも標準色表との比較により2ppbまでの分析が可能である。
著者
神森 大彦 山口 直治 佐藤 公隆
出版者
公益社団法人 日本分析化学会
雑誌
分析化学 (ISSN:05251931)
巻号頁・発行日
vol.16, no.10, pp.1050-1055, 1967 (Released:2010-02-16)
参考文献数
19
被引用文献数
8 16

赤外線分光分析法を鋼中析出物介在物分析,腐食生成物あるいは鋼板表面処理などの研究に応用するため,さしあたりアルミニウム,カルシウム,セリウム,コバルト,クロム,銅,鉄,マグネシウム,マンガン,ニッケル,鉛,スカンジウム,ケイ素,スズ,チタン,バナジウム,イットリウム,亜鉛およびジルコニウムの酸化物あわせて25種の赤外吸収スペクトルを検討し,主としてこれらのスペクトルの傾向と結晶構造との関連性について考察した.方法として臭化カリウム錠剤法とNujol paste法を併用し,測定は1400~400cm-1(約7~25μ)の範囲で行なった.また一部の酸化物については400~60cm-1(25~約167μ)の遠赤外部のスペクトルについても検討した.その結果,これらの酸化物はそれぞれ測定領域内で特長ある吸収を示し,ベルトリド化合物,スピネル型化合物などのグループにより結晶構造と関連づけるとスペクトルをある程度系統的に分類できることがわかり,さらに今後の定性的かつ定量的応用研究への見通しを得た.
著者
相沢 省一 角田 欣一 赤塚 昌義 井上 定夫 赤岩 英夫
出版者
公益社団法人 日本分析化学会
雑誌
分析化学 (ISSN:05251931)
巻号頁・発行日
vol.43, no.11, pp.865-871, 1994-11-05 (Released:2009-05-29)
参考文献数
18
被引用文献数
2 4

河川に生息するトビケラの幼虫に含まれる重金属元素をAASで定量し,重金属汚染環境指標生物としての同水生昆虫の評価を行う目的で,試料分解法をはじめ個体間の元素含量差,体長と元素含量との関係,季節による元素含量の変動等を検討した.確立した分析法により北関東地方数河川に生息するトビケラ幼虫中の重金属元素を定量した結果,上流域に廃鉱山を持つ渡良瀬川や桐生川では他の河川に比較して銅やマンガン等がトビケラ幼虫に多量に含まれており,同昆虫が重金属汚染環境指標生物として有用であることが明らかとなった.
著者
影島 一己 武井 尊也 杉谷 嘉則
出版者
公益社団法人日本分析化学会
雑誌
分析化学 (ISSN:05251931)
巻号頁・発行日
vol.55, no.4, pp.237-243, 2006-04-05
参考文献数
18

高周波分光法を用いてエマルションの安定性評価を試みた.油/水(O/W)型エマルションに対する測定結果から,かくはん速度や保存温度が共振周波数の経時的な変化に影響を与えることが分かった.また共振周波数の高周波側へのシフトの挙動は,光学顕微鏡を用いた粒子径観察の結果とよい相関を示し,本法がエマルションの分離進行によって生じるクリーミングを鋭敏に検出していることが明らかになった.一方,W/O型エマルションや市販のエマルション製品に対する測定においても経時にともなう共振周波数の変化が観測された.このことから本法はO/W型エマルションだけではなく,W/O型エマルションや多成分系エマルションの安定性評価においても適用可能であることが明らかになった.

1 0 0 0 OA 放射化分析

著者
岡 好良
出版者
公益社団法人 日本分析化学会
雑誌
分析化学 (ISSN:05251931)
巻号頁・発行日
vol.16, no.12, pp.1381-1394, 1967-12-05 (Released:2009-06-30)
参考文献数
46
被引用文献数
1 3

1 0 0 0 OA 放射化分析

著者
斎藤 信房
出版者
公益社団法人 日本分析化学会
雑誌
分析化学 (ISSN:05251931)
巻号頁・発行日
vol.4, no.4, pp.254-262, 1955-06-05 (Released:2009-06-30)
参考文献数
45
被引用文献数
2 1
著者
西野 智昭 梅澤 喜夫
出版者
公益社団法人 日本分析化学会
雑誌
分析化学 (ISSN:05251931)
巻号頁・発行日
vol.54, no.6, pp.417-426, 2005 (Released:2005-08-31)
参考文献数
16

分子探針を用いた走査型トンネル顕微鏡(STM)について,これまで行われた研究を概説した.分子探針を用いることにより,探針-試料間の水素結合,配位結合及び電荷移動相互作用の各々に基づき,化学選択的なSTM観察が可能となる.これは,上記3種の相互作用に伴う電子波動関数の重なりを通じてトンネル電流が促進されるためである.分子探針を用いることによって得られる化学選択性は,探針分子に含まれる官能基を設計することにより制御できる.また,多くの分子探針は自己組織化単分子膜により下地金探針を修飾することによって作製されたが,導電性ポリマー又はカーボンナノチューブを探針として用いても化学選択性が得られる.更に分子探針によって配座解析,単分子-単分子間の電子移動の測定も可能となる.
著者
田中 善正 田中 由紀子
出版者
公益社団法人 日本分析化学会
雑誌
分析化学 (ISSN:05251931)
巻号頁・発行日
vol.13, no.7, pp.623-627, 1964-07-05 (Released:2009-06-30)

陽イオン分析表の簡易化を目的として,新しい系統的分析法を考案した.すなわち,陽イオンを少数の分類試薬によって5個のグループに分類し,各グループ内のイオンはさらに細分することなしに,すべて試験紙を用いた各個反応によって検出した.試験紙は安定で長期間保存しても鋭敏度の低下しないものを用い,また試験紙が特異的に働く条件を工夫して検出反応に用いた.また検出反応の鋭敏度および試験紙の保存性を調べた.本分析法によれば,従来の系統分析表に比べて分析が非常に簡易化され,分析所要時間も短く,反応の鋭敏度も向上し,実用分析に用いてすぐれていることがわかった.
著者
西岡 利勝 寺前 紀夫
出版者
公益社団法人日本分析化学会
雑誌
分析化学 (ISSN:05251931)
巻号頁・発行日
vol.40, no.11, pp.723-726, 1991-11-05
被引用文献数
2 1

異種高分子同士による塗装界面付近におけるデプスプロフィルを顕微赤外分光法により観測する方法を開発し, 塗装界面の接着機構を明らかにした.この方法は, 塗装試料からウルトラミクロトームで厚さ10μmの切片を切り出し, 顕微赤外装置により塗装界面付近のデプスプロフィルを測定するものである.測定にはオートマップステージ付き顕微赤外装置を用い, 塗装界面付近を5×70μmのアパーチャーサイズで, 2μmステップにて測定を行った.本法により, ポリウレタンとポリプロピレン/エチレンプロピレンゴム(PP組成物)との塗装界面付近のデプスプロフィルを調べた.ポリウレタンとPP組成物との塗装界面付近で数十μmにわたる混合相が観測された.混合相の形成が塗膜の接着に寄与していると推定した.PP組成物表面の洗浄方法の違いにより, 混合相の厚さが異なることが分かった.
著者
荒川 隆一 川崎 英也
出版者
公益社団法人 日本分析化学会
雑誌
分析化学 (ISSN:05251931)
巻号頁・発行日
vol.60, no.3, pp.199-214, 2011 (Released:2011-05-02)
参考文献数
46
被引用文献数
2

マトリックス支援レーザー脱離イオン化質量分析法(MALDI-MS)や液体クロマトグラフィー大気圧化学イオン化質量分析法(LC-APCI-MS)を用いて,水系溶液におけるポリエチレンオキシド(PEO),ポリメタクリル酸メチル(PMMA),及びPEOとポリプロピレンオキシド(PPO)コポリマーの超音波分解の研究を行った.28 kHzホーン型の低周波超音波装置を用いてそれぞれの高分子を超音波分解し,その照射時間による分子量分布の変化及び分解物の末端構造を詳細に解析した.その結果,平均分子量が異なる2, 6, 20, 2000 kDaのEOに対して,最終的には末端基の異なる5種類のオリゴマー分解物(分子量約1000 Da)が生成し,それらの分解経路を推定した.単分散PMMAの超音波分解では,キャビテーションによるOH · やH · の生成によるラジカル(化学)反応に加えて,キャビテーションバブルの崩壊による力学(物理)的な切断が高分子鎖の中央付近で起こることが示唆された.PEO-block-PPOの超音波分解では,分解生成物の詳細な構造解析から結合の最初の切断は,PEOとPPO鎖の結合部付近の主鎖で起こることが分かった.更に,酸素が付加した分解物が検出され,ヘリウム中の熱分解生成物との比較からその酸素源は水又は溶存酸素の可能性が示唆された.PEO-block-PPOの超音波分解は,力学的な切断だけでなくラジカル反応も関与していることが示された.
著者
垣内 隆 山本 雅博
出版者
公益社団法人 日本分析化学会
雑誌
分析化学 (ISSN:05251931)
巻号頁・発行日
vol.65, no.4, pp.181-191, 2016-04-05 (Released:2016-05-10)
参考文献数
85
被引用文献数
4

適度な疎水性を持つイオン液体を塩橋に使用すると,濃厚KCl水溶液からなる塩橋では不可能であった低イオン強度水溶液のpHを正確に測定することができる.また,試料水溶液が疎水性イオンを含まなければ,pH標準緩衝液より高いイオン強度を持つ試料のpH測定にも,イオン液体塩橋は有望である.イオン液体塩橋は,水素イオンのみならずその他のイオンの単独イオン活量測定を広いイオン強度範囲で測定することを可能にするので,pH測定の実用的な観点のみならず,長年にわたる濃厚KCl水溶液塩橋を用いるポテンショメトリーの枠組みを越えた電解質溶液の研究が展望できる.
著者
木村 優 山下 博美 駒田 順子
出版者
公益社団法人 日本分析化学会
雑誌
分析化学 (ISSN:05251931)
巻号頁・発行日
vol.35, no.4, pp.400-405, 1986-04-05 (Released:2010-02-16)
参考文献数
11
被引用文献数
24 30

水中に含まれる各種重金属類の捕集除去に対する緑茶の捕集除去剤としての利用法及びその有効性を検討した.緑茶(抹茶)を希硫酸溶液中でホルマリン処理した.ホルマリン処理を行った茶0.5gを,銀(1),カドミウム(II),ロバルト(II),銅(II),鉄(III),マンガン(II),ニッケル(II),鉛(II),及び亜鉛(II)の9種の金属元素を含む100mlの試料溶液に添加し,30分間かき混ぜた.次に,その溶液を瀕過又は遠心分離を行う.源液又は上澄み液中の金属イオン濃度を黒鉛炉原子吸光分析装置を用いて測定した.0.01moldm-3酢酸ナトリウム溶液(PH6)の条件において上記の鉄(III)イオンを除く8金属イオン(総濃度0.4~11ppm)について捕集除去率90%以上を示した。重金属類を吸着した茶からの金属類の脱離は0.1moldm-3塩酸により容易に行われ,少なくとも数回の再使用が可能であることが分かった.処理茶の水中からの重金属類の捕集除去率及び捕集容量について同一条件下で活性炭と比較した結果,銀(1),ヵドミウム(II)及び亜鉛(II)に対しては茶のほうが優れ,コバルト(II),銅(II),マンガン(II),ニッケル(II)及び鉛(II)に対しては同等であり,鉄(III)に対しては活性炭が優れていることが分かった.8-キノリノール又は1,10-フェナントロリンを溶液に添加すると,鉄(III)以外の元素の捕集除去率には変化がほとんど見られなかったが,鉄(III)のそれは約90%に向上した.他方,エチレンジアミン四酢酸イオン又はトランス-1,2-シクロヘキサンジアミン四酢酸イオンを添加すると,銀及びマンガン以外のどの元素についても捕集率が著しく悪化した.シュウ酸イオンを添加すると,銀以外のどの元素の捕集率も悪くなった.塩化物イオン,硫酸イオン又はレアスコルビン酸を添加すると,銅及び鉛以外の元素の捕集率は悪くなったが,鉄のそれは著しく向上した.
著者
善木 道雄 中北 吉彦 小松 愛可 横山 崇
出版者
公益社団法人日本分析化学会
雑誌
分析化学 (ISSN:05251931)
巻号頁・発行日
vol.49, no.2, pp.121-124, 2000-02-05
被引用文献数
8 9

ゼロエミッションを志向した分析法の開発の一環として, 使用した試薬溶液を再度繰り返し利用できる, 強酸, 強塩基を定量する循環式フローインジェクションシステムを構築した. メチルオレンジ(MO) (1.5×10^<-4> M)を含む酢酸-酢酸ナトリウム緩衝液 (濃度0.01, 0.1 あるいは 1 M, 容積 100 ml)をポンプでサンプルインジェクター, フローセルを通して循環させた. 注入された試料 (2 μl)は, 中和反応によりMOを変色 (530 nmの吸光度を検出記録) させるが, すぐに拡散, 緩衝され試薬だめに戻る. 検量線は, 緩衝液の濃度の50倍の濃度まで酸・塩基とも直線となった. また, 緩衝液濃度の10倍の濃度の試料を用いて, 連続試料注入回数について調べたところ, ベースラインが徐々に増大するのでなんらかの補正が必要だが, 500回程度の連続定量は可能なことが分かった.
著者
松本 浩資 一瀬 光之尉 小島 次雄
出版者
日本分析化学会
雑誌
分析化学 (ISSN:05251931)
巻号頁・発行日
vol.37, no.4, pp.202-206, 1988

三角光路干渉計にイメージインテンシファイヤー(I.I.)を結合させて,フーリエ変換分光法の,パルス性光源と面光源への適応性を調べた.前者の特性は流動分析系のような高速測定のため,後者の特性は高速測定において励起密度の低減を図るため必要である.近接型I.I.は全く画像ひずみを生じなかったが,高ゲインの管型のI.I.では干渉じまが不等間隔にサンプリングされ,ひずんだスペクトルを与えることが分かった.He-Neレーザーの等厚干渉じまを基準にフーリエ変換を修正することによって解決した.検出系の空間周波数応答の影響を検討し,又面光源への適応性を確認した.347nm 10nsのたった一発のレーザーパルスで,アセトニトリルとメタノールのラマンスペクトルが得られることが分かった.蛍光・レイリー光除去に関する新しい可能性に言及した.
著者
酒井 昭四郎 大蔵 律子
出版者
公益社団法人 日本分析化学会
雑誌
分析化学 (ISSN:05251931)
巻号頁・発行日
vol.15, no.5, pp.507-509, 1966-05-05 (Released:2009-06-30)
参考文献数
3

Since condensed chain phosphoric acids have a titratable strong-acid hydrogen for each phosphorus atom and a titratable weak-acid hydrogen corresponding only to terminal phosphorus atoms, the average number of phosphorous atoms per chain (polymerization degree) can be calculated from titrant volume consumed for two inflexion points on pH titration curve.In the determination of polymerization degree of chain polyphosphates, pH titration was carried out after phosphates had been changed to acid type by ion exchange resin. The values obtained by this method showed a good agreement with those calculated from chemical analysis of Na/P.The method will be applicable to routine analysis for production control of chain polyphosphates.
著者
呉 尚謙 君島 哲也 増崎 宏 久世 宏明 竹内 延夫
出版者
公益社団法人日本分析化学会
雑誌
分析化学 (ISSN:05251931)
巻号頁・発行日
vol.49, no.2, pp.99-104, 2000-02-05
参考文献数
14
被引用文献数
1 1

近赤外波長域で発振するInGaAsP分布帰還型半導体レーザーを光源とし, 耐食性を有する多重反射サンプルセルを用いて窒素及び塩化水素ガス中微量水分の定量を試みた. 一般に, 可干渉距離が長い半導体レーザーと多重反射セルと組み合わせた場合, 多重反射により大きな干渉ノイズが生じ, 分析システムとしての測定感度を低下させる問題がある. 本研究では, 測定感度を高めるため, 半導体レーザーの特性や測定条件に合わせて多重反射セルの鏡間距離を調整した. これにより, 干渉ノイズの波長周期を吸収信号の線幅から分離させる. その上で, 多段移動平均処理によって光干渉ノイズの影響を除去し, 高感度な定量測定を実現した. 多重反射セルの吸収光路長を20mに設定した場合, 窒素ガス中の水分をppbオーダーまで実測することが可能となり, 検出下限は2.3 ppbであった.