著者
山本 淳 橋本 清澄 畑中 久勝 金田 吉男 大路 正雄 日笠 譲
出版者
公益社団法人日本分析化学会
雑誌
分析化学 (ISSN:05251931)
巻号頁・発行日
vol.28, no.2, pp.T5-T9, 1979-02-05
被引用文献数
1

銅化カドミウムカラム還元法を用いて,水道水及び原水中の硝酸塩の日常分析を行うには,まず還元操作の迅速化が要求される.エチレンジアミン四酢酸二ナトリウム(EDTA,0.08%)及び塩酸(試薬特級の0.125mlを水でうすめて1lとしたもの)を含む溶液50mlで1日1回活性化すれば,繰り返し5回の試行で(96〜110)%の還元効率が得られた.この条件での硝酸態窒素(以後NO_3-Nと略記)の4及び20μgの添加回収率は(88〜105)%と良好であり,又定量精度のよいサリチル酸ナトリウム法に匹敵する精度を示した.この改良で,10本のカラムを用いると,1日50件の検査が可能となった.一方,カドミウム及び銅のみを含む実験排水の処理は,硫酸第一鉄七水和物30g/l1を用いて鉄共沈法でよい結果を得た.EDTA-重金属キレート含有排水処理には,硫化ナトリウム法及び過マンガン酸カリウム酸化-鉄共沈法を工夫して適用してみたところ,後者はより簡便であるうえ,カドミウム,銅,マンガン及び鉄の残存濃度が排水基準をはるかに下回る濃度にまで処理できた.
著者
平野 愛弓
出版者
公益社団法人 日本分析化学会
雑誌
分析化学 = Japan analyst (ISSN:05251931)
巻号頁・発行日
vol.55, no.8, pp.535-545, 2006-08-05
参考文献数
69

脳内の神経伝達において重要な役割を担っている細胞外情報伝達物質の<small>L</small>-グルタミン酸及びアラキドン酸に対するセンシング法の開発と,急性脳スライス内でのその場検出への応用について,著者らの最近の研究を中心に総説として著した.ガラスキャピラリーの毛管現象を利用した<small>L</small>-グルタミン酸微小センサーでは,急性スライスにも適用可能な小さいサンプリング体積と高感度検出との両立を示した.グルタミン酸オキシダーゼと西洋わさびペルオキシダーゼから成る酵素膜に基づくイメージングでは,差分解析と組み合わせることにより,<small>L</small>-グルタミン酸の海馬内領野間分布を時間依存的にイメージングすることに成功した.また,アラキドン酸-細胞膜相互作用を利用することにより,アラキドン酸に対するその場センサーを構築した.これらのセンサーについて,原理,感度,ダイナミックレンジ,選択性,急性スライスに応用する際の問題の点から考察し,急性脳スライス内の細胞外情報伝達物質のその場検出法として有用であることを示した.<br>
著者
小汲 佳祐 藤巻 康人 中川 貴文 松尾 豊
出版者
公益社団法人 日本分析化学会
雑誌
分析化学 (ISSN:05251931)
巻号頁・発行日
vol.67, no.11, pp.647-651, 2018-11-05 (Released:2018-12-07)
参考文献数
17

In organic semiconductor materials, investigating the energy levels is very important. For example, the combination of the donor’s and acceptor’s energy levels affects the performance of organic solar cells (OSCs). The HOMO and LUMO levels are generally determined by cyclic voltammetry or differential plus voltammetry, which require the solution state. However, these methods are influenced by the purity, solvent, solubility, vibration, and temperature. In this work, we employed photoemission yield spectroscopy and UV-vis-NIR spectroscopy in the thin-film state to measure the energy levels of magnesium porphyrin derivatives for OSCs. The results explained that the energy levels were correlated with a substituent introduced in the porphyrin core. In the case of electron-withdrawing substituent porphyrin, the HOMO and LUMO levels were lowest and the HOMO-LUMO gap was narrowest. On the other hand, electron-donating substituent porphyrin showed high-energy levels and a wide energy band gap. It is noteworthy that the energy levels were lower and the band gaps were narrower in the thin-film state compared with the solution state. This result explains that strong π-stacking derived from intermolecular interaction in thin films. We concluded that measurements of the energy levels in thin film state by PYS and UV-vis-NIR spectroscopy are beneficial for investigating organic semiconductor materials.
著者
平野 四蔵 貴家 恕夫 田淵 清
出版者
公益社団法人 日本分析化学会
雑誌
分析化学 (ISSN:05251931)
巻号頁・発行日
vol.10, no.13, pp.1361-1367, 1961-12-05 (Released:2010-02-16)
参考文献数
8
被引用文献数
1 1

X線回折計の工業分析化学への応用の一つとして,黄銅を硝酸に溶解し蒸発乾固して硝酸塩としたのち,400~500℃で熱分解し,これを900℃前後の温度に加熱して,酸化銅,酸化亜鉛の完全な結晶体とした.X線回折計によって再現性よく定量する方法について検討した結果,900℃で加熱して作った酸化物をメノウ乳鉢で約30分間粉砕して,回折線の強度として回折ピークの面積(半価幅×高さ)を用いると精度よく定量でき,分析値の再現性は±2%位であった.黄銅の標準試料の値と本法による定量値とはよく一致した.
著者
浅見 覚 高村 まゆみ 木村 由美子 鈴木 孝 麦島 秀雄 内倉 和雄
出版者
公益社団法人 日本分析化学会
雑誌
分析化学 = Japan analyst (ISSN:05251931)
巻号頁・発行日
vol.46, no.12, pp.943-950, 1997-12-05
参考文献数
26

独自の流路系を持つカラムスイッチング高速液体クロマトグラフィー(HPLC)により,レチノイン酸(RA)異性体である13-<I>cis</I>-RA,all-<I>trans</I>-RAと9-<I>cis</I>RAの相互分離を確立した.カラムスイッチングを用いることにより,カラム中に残る生体成分の洗浄が不要となり,カラム洗浄に要する時間が短縮された.又,流路中に独自の流路を加えたことにより,注入した試料を損なうことなく検出できるようになり,より良い感度と再現性が得られた.そのため,1サイクルが25分で生体成分中のRAの連続測定が可能となった.ピーク面積及び高さを用いた絶対検量線法では,共に200ngまでの間で直線の関係を示し,血中濃度を測定するのに十分な結果が得られた.又,メタノール標準試料で0.5~1.9%(<I>n</I>=10,0.26~0.37μg/ml),標準添加血清試料で0.8~2.2%(<I>n</I>=5,0.32及び0.37μg/ml)の再現性が得られた.これらのことにより,従来のRA血中濃度測定の方法よりも簡便性,操作性,再現性の向上が見られ,本法のRA血中濃度測定の有用性が示唆された.
著者
石井 幹太 山田 正昭 鈴木 繁喬
出版者
公益社団法人日本分析化学会
雑誌
分析化学 (ISSN:05251931)
巻号頁・発行日
vol.35, no.4, pp.373-378, 1986-04-05
被引用文献数
17 17

化学発光法を利用する銅(II)のサブピコグラムレベルの超微量分析法を確立した.化学発光系には銅(II)に極めて特異性の高い1,10-フェナントロリン-過酸化水素-水酸化ナトリウム-ヘキサデシルエチルジメチルアンモニウムブロミドミセル系を選び,フローインジェクション系に組み込んだ.化学発光反応は陽イオン界面活性剤ミセル溶液中で著しく促進される.応答は20μl注入の場合8.0×10^<-14>〜2.0×10^<-9>g,キャリヤー液として連続的に試料を流す場合(導入速度5.0ml min^<-1>)1.6×10^<-13>〜1.0×10^<-9>Mの間で直線を示した.選択性は極めて高く,銅(II)の次に最も大きな化学発光応答を与えるのは鉛(II)であるが,銅(II)に対する相対モル応答は約3/10000で無視できるほど小さい.他成分の干渉も無視できた.繰り返し精度は良く,4.0×10^<-10>M銅(II)溶液連続10回注入の相対標準偏差は1.7%であった.試料処理速度は毎時180試料であった.
著者
高橋 富樹 大越 純雄 神力 就子 佐藤 俊夫
出版者
公益社団法人 日本分析化学会
雑誌
分析化学 (ISSN:05251931)
巻号頁・発行日
vol.33, no.2, pp.104-107, 1984-02-05 (Released:2009-06-30)
参考文献数
6

重水素濃度5%以下の水素試料中のD2含量は実際上無視できる濃度であるので,D2とHDを分離する必要はない.そこで,常温下モレキュラシーブ13Xカラム(キャリヤーガス:水素)に試料ガスを通すことで,素通りするHDのみを迅速定量する方法を考案した.これによれば,窒素,酸素とも完全に分離され,又,試料ガス中の微量不純物,水蒸気,二酸化炭素の吸着によるモレキュラシーブの劣化にも影響されない.検出限界は0.01%であった.重水素濃度5%以上の試料については,水素をキャリヤーガス(流速:300ml/min)として,-195℃下活性アルミナカラムで,約1分以内でHDとD2を分離定量する方法を確立した.
著者
田中 恵理子 代 英杰 林 永波 古月 文志 田中 俊逸 神 和夫 平間 祐志
出版者
公益社団法人 日本分析化学会
雑誌
分析化学 = Japan analyst (ISSN:05251931)
巻号頁・発行日
vol.58, no.9, pp.807-813, 2009-09-05
参考文献数
18
被引用文献数
1 5

2005年11月中国吉林市にある吉林石油化学会社の工場で起こった爆発事故によって,ニトロベンゼンが中国東北部を流れる松花江に流入し,河川を汚染した.本研究では,汚染物質が通過したハルビン市内の松花江で採取された魚試料中のニトロベンゼンの測定を行った.また,ニトロベンゼンの代謝によって生成すると予想されるニトロフェノール類の定量を行った.ニトロベンゼンの抽出と濃縮には,精油定量装置を用い,魚試料の調製,魚試料の前処理,抽出条件等について検討した.その結果,2006年3月と10月に採取した魚試料からは比較的高い濃度のニトロベンゼンが検出された.また,魚試料からニトロベンゼンの代謝物と思われる<i>o</i>-,<i>m</i>-,<i>p</i>-ニトロフェノールが検出された.
著者
鈴木 啓介 後藤 真康 柏 司
出版者
公益社団法人 日本分析化学会
雑誌
分析化学 (ISSN:05251931)
巻号頁・発行日
vol.17, no.2, pp.187-191, 1968
被引用文献数
1

米粒にメチルパラチオン, スミチオンを1 : 1の割合で, 0.1, 0.5, 1.0, 2.0, 10ppmになるように添加し, メチルパラチオンをスミチオンから分離し, 定量する試験を行なった.ガラスフィルターを用い, 米粒からメチルパラチオンをエーテルで溶出, アルミナカラムで精製し, 濃縮したのち, 電子捕獲ガスクロマトグラフィーで分離定量した.カラム充てん剤, 10%高真空グリース (HVSG) /クロモソープW (40~60メッシュ);ガラスカラム, 外径1/8インチ, 長さ5フィート;分離管温度, 180℃;キャリヤーガス, 窒素;流速, 20m<I>l</I>/min, 本法の回収率は0.1~10ppmの範囲で70~101%でかなり良好な結果が得られた.
著者
奈良 明雄 大江 直子
出版者
公益社団法人 日本分析化学会
雑誌
分析化学 (ISSN:05251931)
巻号頁・発行日
vol.13, no.9, pp.847-852, 1964
被引用文献数
3

フラスコ燃焼法による有機元素分析法の一環として,有機化合物中のイオウの微量定量法を試みた.<BR>試料を焼却後生じる硫酸イオンを,導電率法により定量を行なう目的で滴定試薬の選択,被滴定液の液性,これに加えるイソプロピルアルコールの濃度,および滴定限界について検討した.最適条件は酢酸バリウムを滴定液とし,イソプロピルアルコールの濃度40~50%,液性pH6~7であった.<BR>また,試料中にごく一般に含まれる可能性のある二,三のイオンが共存する場合について実験し,妨害イオンであるCa<SUP>2+</SUP>,PO<SUB>4</SUB><SUP>3-</SUP>の除去方法について検討した.ハロゲンイオン,Na<SUP>+</SUP>,K<SUP>+</SUP>は妨害しない.滴定操作は自動滴定装置を用いて時間を短縮し,分析に要する時間は約20分である.
著者
守安 正恭 市丸 百代 西山 由美 加藤 篤
出版者
公益社団法人 日本分析化学会
雑誌
分析化学 (ISSN:05251931)
巻号頁・発行日
vol.42, no.11, pp.659-665, 1993-11-05 (Released:2009-06-30)
参考文献数
10
被引用文献数
6 11

過塩素酸ナトリウムをイオン対試薬としイオン対抽出法とイオン対HPLCを結合して植物からアルカロイド(植物塩基)を迅速に取得する方法を開発した.四級アルカロイドは過塩素酸イオンとイオン対を生成し,酸性条件下1,2-ジクロロエタンで定量的に抽出される.又,三級アルカロイドも定量的に抽出される場合が多いが,抽出率が低い場合もある.得られた塩基の粗過塩素酸塩分画は過塩素酸ナトリウムをイオン対試薬とするHPLCで良好に分離でき,この系は分取への応用が容易である.すなわち分取HPLC後,各ピークのフラクションから有機溶媒を留去し,残りの水相を1,2-ジクロロエタンで振り混ぜるとアルカロイドが抽出され,1,2-ジクロロエタンを留去すると純粋なアルカロイドの過塩素酸塩が得られた.ボウイ,エンゴサク,ナンテンジツの3種の生薬に対してこの方法を適用したところ,いずれの場合もアルカロイドが定量的に抽出されHPLC分離も良好であった.又ボウイについては分取HPLCも行い,シノメニン,マグノフロリンを迅速に取得できた.
著者
高木 友雄 柳田 勇
出版者
公益社団法人 日本分析化学会
雑誌
分析化学 (ISSN:05251931)
巻号頁・発行日
vol.9, no.1, pp.29-33, 1960-01-05 (Released:2009-06-30)
参考文献数
6
被引用文献数
1 1

強リン酸-ヨウ素酸分解法による窒素定量は従来水溶性無機物および普通の有機物について発表されたが,カルシウムシアナミドのように不純物としてアセチレンガスを発生する物質については従来の方法では測定できない.よって別個の操作法を研究した.すなわち試料を一定量の強リン酸と予備加熱して溶解し,試料より発生する不純物ガスと強リン酸中の空気を追放し,冷後ヨウ素酸カリウムを加えて加熱測定する.別に一定量の強リン酸をとり,これにヨウ素酸カリウムを加えて加熱し,強リン酸中にブランクとして含まれるアンモニァを炭酸ガスブランクとともに測定して差し引くこととした.ケルダール法で数時間を要するが本法では操作時間25分以内である.測定平均値はケルダール法にほとんど一致する.
著者
功刀 正行 阿部 幸子 鶴川 正寛 松村 千里 藤森 一男 中野 武
出版者
公益社団法人 日本分析化学会
雑誌
分析化学 = Japan analyst (ISSN:05251931)
巻号頁・発行日
vol.59, no.11, pp.967-984, 2010-11-05
参考文献数
25
被引用文献数
1 2

残留性有機汚染物質による地球規模の海洋汚染の時空間変動及び化学動態を把握するため,商船を篤志観測船として用い,この目的のために開発した海洋汚染観測システムを搭載し,太平洋及び南シナ海における広域観測を実施した.日本-オーストラリア間は鉱石運搬船を,南太平洋(含む南極近海)はクルーズ船を,北太平洋(東アジア-北米間)及び南シナ海はコンテナ船を,それぞれ篤志観測船として用いた.鉱石運搬船,クルーズ船には専用の海洋汚染観測システムを開発し搭載し,コンテナ船にはユニット化した小型の海洋汚染観測システムを開発して搭載し,試料採取及び観測を実施した.海水中の残留性有機汚染物質の捕集は,固相抽出法を用い,船上で100 Lの海水を濃縮捕集し,採取試料は直ちに船上で冷凍保存し,日本に持ち帰った.持ち帰った試料は冷凍庫で保存し,分析直前に前処理後HRGC/HRMS-SIM法で分析した.すべての試料から残留性有機汚染物質が検出された.低緯度海域では,HCHsの濃度は低く,かつその異性体のうちβ-HCHが最も高い,一方高緯度海域では中央から北米沿岸域ほどα-HCHが高い傾向にあるなどその濃度や異性体存在比などは極めて特徴的であり,発生源及び輸送過程を推定する上で貴重な情報を与えることが明らかとなった.
著者
辻 治雄 日下 譲
出版者
公益社団法人 日本分析化学会
雑誌
分析化学 (ISSN:05251931)
巻号頁・発行日
vol.17, no.7, pp.864-870, 1968-07-05 (Released:2009-06-30)
参考文献数
9
被引用文献数
3 3

14MeV中性子放射化法による花こう岩,粘土およびセメント試料中のケイ素およびアルミニウムの迅速非破壊分析を試みた.T-d反応により得られる速中性子により,3グラム量の試料を3分間照射後,ケイ素は28Alの,そしてアルミニウムは27Mgの光電ピークをシングルチャンネル波高分析器またはマルチチャンネル波高分析器で測定した.試料と同時に中性子照射した中性子モニター(石英ガラス)の放射能強度により,中性子束による測定値の変動を補正したのち,検量線法により定量を行なった.また共存元素,特にアルミニウムの定量を妨害する鉄の影響の除去法についても検討した.本法により,ケイ酸塩試料中のケイ素を約10分以内,そしてアルミニウムを約30分以内に定量することができ,その定量誤差は,ケイ素は約2%,アルミニウムは約4%であった.
著者
福田 直通 米光 美知子
出版者
公益社団法人 日本分析化学会
雑誌
分析化学 (ISSN:05251931)
巻号頁・発行日
vol.54, no.1, pp.79-82, 2005 (Released:2005-04-08)
参考文献数
3
被引用文献数
2 2

Berberine and palmatine are isoquinoline alkaloids contained in “oubaku”, Phellodendri Cortex, and their structures are similar. The Rf values of TLC and the retention times (HPLC) of these compounds are close. Their complete separation is difficult; a small quantity of palmatine chloride exists even in a commercial berberine chloride. Some crystals exist in the Student practice, from gel-type crystals (small needles) to big needles according to the volume of water. These phenomena suggest that a possibility exist to purify berberine chloride only by recrystallization. We recrystallized 3 times crude berberine (10 g, gained from the Student practice) from 140 ml of water per 1 g, and separated pure needles (neally 100%, 2.31 g) which were checked with HPLC.
著者
田村 文造
出版者
公益社団法人 日本分析化学会
雑誌
分析化学 (ISSN:05251931)
巻号頁・発行日
vol.16, no.3, pp.193-205, 1967-03-05 (Released:2010-02-16)
参考文献数
3
被引用文献数
1 2

従来終点が不明りょうなため水溶液中の滴定が困難であった物質を精度よく定量するために,吸光度比法を開発した.酸塩基滴定の場合,酸性色とアルカリ性色のスペクトルが著しく異なる,適当なpH指示薬を選び,それぞれの吸収極大の吸光度をAλ1,Aλ2とすると,吸光度比r=Aλ2/(Aλ1+Aλ2)は当量点付近のpHのわずかな変化に対応して大きく変化する.あらかじめ,中和度の逆数xとrとの検量線を作成しておけば,容易に正確な当量点を決定することができる.この方法によれば,一般に,ビュレットは不必要となり,全量ピペットで一度に標準液を加えることができ,精度も向上する.有機酸アルカリ塩の定量に適用した場合,従来法に比べ変動係数は0.2%から0.07%に減り,定量所要時間も1/6となった.この吸光度比法を公定書の原薬,試薬の定量に適した方法として提出する.
著者
今井 佐金吾
出版者
公益社団法人 日本分析化学会
雑誌
分析化学 (ISSN:05251931)
巻号頁・発行日
vol.27, no.10, pp.611-615, 1978 (Released:2010-02-16)
参考文献数
11
被引用文献数
3 4

有機物試料を低温灰化する際に,これに含まれる元素群の揮発損失について放射化分析法により検討した.メンブラン・フィルター又は天然セルロースろ紙上に 25種の元素を各々100μgずつ個別に添加し,更に灰分増量剤及び共存物質として硝酸マグネシウム又は塩化鉄(III)を2mg添加した試料, 更に高揮発性の塩化アンモニウム,又は低揮発性の塩化カドミムを 0.1 mmol程度共存させた試料を調製した.これらの試料はすべて2試料1組として調製し,その一つを低温灰化し,もう一方は対照用試料として,それぞれ中性子放射化分析した.その結果,硝酸マグネシウムを灰分増量剤とした場合にヒ素(III),セレン(IV),セレン(VI)が74%から89%の間の回収量を示し,又,塩化鉄(III)を灰分増量剤とした場合,又は,これに塩化カリウムを共存させた場合,ヒ素(III),ヒ素(V),カルシウム,セレン(IV),セレン(VI)が55%から94%であった.この他の元素群については95%以上の回収率が得られた.塩化鉄(III)に塩化アンモニウムが共存する場合は,一般に回収率が若干低下する傾向が認められた.炭素微粉末を主成分とし,比較的多量の鉄を含む大気浮遊じんの灰化を想定して,これに類似の系として塩化鉄(III)に黒鉛粉末を共存させた試料では塩化鉄(III)のみの場合と,その回収率に有意な差は認められなかった.
著者
河島 達郎 山本 俊夫 甲田 善生
出版者
公益社団法人 日本分析化学会
雑誌
分析化学 (ISSN:05251931)
巻号頁・発行日
vol.31, no.1, pp.T10-T15, 1982-01-05 (Released:2009-06-30)
参考文献数
18
被引用文献数
1 1

海洋生物試料の乾式灰化に伴う揮発損失を,放射化分析法を用い34元素について検討した.試料には褐藻類のアラメ及びヨレモク,顕花植物のアマモ,海産魚のニボシ,被子植物のハマユウの葉を用いた.これらの乾燥試料は凍結粉砕装置で粉末にした.低温灰化は100℃で,高温灰化は500℃で行った.乾燥試料と灰化試料は同時に原子炉の熱中性子によって放射化分析し,それぞれの元素の回収率を求めた.その結果,高温灰化による損失の大きい元素は,塩素,ヒ素,セレン,臭素,ヨウ素,金及び水銀などであった.又低温灰化はヒ素とセレンの損失を減少させるのに著しく有効であった.この中でハロゲンの揮発損失は,試料の種別によりかなり異なり,一律の損失は示さなかった.
著者
佐藤 幸一 郡 宗幸 大河内 春乃
出版者
公益社団法人 日本分析化学会
雑誌
分析化学 = Japan analyst (ISSN:05251931)
巻号頁・発行日
vol.44, no.7, pp.561-568, 1995-07-05
参考文献数
12
被引用文献数
6 6

形態別分離にミセル可溶化液体クロマトグラフィーを用い,検出器にICP-MSを適用する有機スズ化合物の高感度定量法について検討を行った.分離カラムとしてはYMC-Pack FL-C4(30×4.6mm i.d.)が最大保持時間20~30分と短時間で,かつ分離特性も良好であった.最適移動相は40mMラウリル硫酸トリス(ヒドロキシメチル)アミノメタン,75mM硝酸アンモニウム,3%v/v酢酸を含む20%v/vメタノールであった.サンプルループ容量を検討し,感度及び分離度から最適試料溶液注入量を100μlとした.分析精度(<I>n</I>=5)はトリブチルスズ(TBT),ジブチルスズ(DBT),トリフェニルスズ(TPT)及びジフェニルスズ(DPT)の各化合物を20ng含む混合標準溶液を注入し,RSDを求めたところ2%以下であった.絶対検出限界(3σ)はTBT:27,TPT:25,DBT:35,DPT:52及びMPT:97pgであった.ポリマー系抽出剤を用いた固相抽出法を併用することにより,信頼性の高い海水中有機スズ化合物(TBT及びTPT)のスペシエーションを可能にした.