著者
近江 郁子 中山 徹
出版者
公益社団法人 日本都市計画学会
雑誌
都市計画論文集 (ISSN:09160647)
巻号頁・発行日
vol.55, no.3, pp.330-337, 2020-10-25 (Released:2020-10-25)
参考文献数
5
被引用文献数
1

郊外では農家が減少しています。 一方、郊外住宅地の住民は農業に関心を持っている人がいます。これらの市民を農業に参加させる方法を検討する必要があります。 そのためには、初期投資、栽培訓練、農地の状況、販売状況など、さまざまな要素を考慮しなくてはいけません。市民が一人で農業を始めるのは難しいことです。 そこで私たちは市民農業団体を設立しました。 5年間の経験と検証によって、さまざまな条件がわかってきました。 また、町役場や地元の農家との関係の持ち方もわかりました。 この組織の運営が安定すると、メンバーは独自の農業技術を発展させ始めました。 各メンバーは農業に関連して様々な目的を持っています。 このように私たちは市民農業団体のさまざまな役割や問題が明らかになりました。 これは、組織の活動の記録と成果です。
著者
河野 泰明 大村 謙二郎 有田 智一 藤井 さやか
出版者
公益社団法人 日本都市計画学会
雑誌
都市計画論文集 (ISSN:09160647)
巻号頁・発行日
vol.44.3, pp.847-852, 2009-10-25 (Released:2017-01-01)
参考文献数
19
被引用文献数
2

本研究では、企業城下町における中核企業の公共的役割の変化と中核企業と行政の関係性およびそれに伴う企業城下町の市街地構造の変化を明らかにすることを目的とする。本研究では、宇部興産の社史や宇部市史の資料、宇部興産内部資料や宇部市議会録による文献調査および宇部興産等の関係機関へのヒアリング等で調査を進めた。その結果、中核企業が市街地形成に果たした役割は以下のようにまとめることが出来る。企業発足からバブル崩壊までは中核企業が市街地形成を主導してきたが、バブル崩壊後には企業経営の悪化から不動産資産処分により行政との矛盾が生じている。以上より、宇部市において宇部興産の公共的役割は徐々に低下してきているが市街地形成に与える影響は少なくない。そのため行政との新たなるパートナーシプが市街地形成の取り組みが必要とされている。
著者
小川 瑞貴 羽藤 英二 石井 健太
出版者
公益社団法人 日本都市計画学会
雑誌
都市計画論文集 (ISSN:09160647)
巻号頁・発行日
vol.56, no.3, pp.1351-1358, 2021-10-25 (Released:2021-10-25)
参考文献数
11

本論文では,歩行者行動に着目し,Origin-Destination交通分布と経路選択パラメータを同時に推定する手法の構築を試みる.目的関数に対しては,情報幾何学の観点から,収束解の一意性を保証する推定アルゴリズムを提案する.提案した手法に基づき,実測データを用いた推定を行った.また,旅行者の期待効用などの定量的な観点から,都市機能のネットワークデザイン問題を代理モデルによって高速化することを試みる.ネットワークデザイン問題は,解集合が離散的であり,割り当てが再帰的ロジットモデルによって計算されるため,膨大な計算コストがかかる.そこでネットワークと目的関数値の教師データを用いて、フィードフォワード・ニューラルネットワークを学習することで、高速化した枠組みを提案する。
著者
坪井 志朗 三村 康広 山崎 基浩 鈴木 雄 西堀 泰英
出版者
公益社団法人 日本都市計画学会
雑誌
都市計画論文集 (ISSN:09160647)
巻号頁・発行日
vol.56, no.3, pp.1405-1412, 2021-10-25 (Released:2021-10-25)
参考文献数
10
被引用文献数
2

新型コロナウイルスの感染防止による新しい生活様式によって、テレワークやオンライン会議が普及し、職場と居住地が必ずしも近くにある必要はなくなる等、我々の暮らしを大きく変えている。地方都市や郊外地域の居住意向が向上し、職場にとらわれない居住選択ができるようになった一方、地方都市移住や田舎暮らしを適切な地域に誘導しなければ、単なる都市のスプロールとなり、都市の広域化が懸念される。本研究では、愛知県豊田市をケーススタディとして、コロナ禍における地方都市の人口動態の変化と居住地選択の意向変化を分析した。その結果、人口動態について転入者数の減少により人口減少へとなっていること、コロナ禍前後で居住地選択の考え方が変わっていることが指摘できた。
著者
小関 玲奈 羽藤 英二
出版者
公益社団法人 日本都市計画学会
雑誌
都市計画論文集 (ISSN:09160647)
巻号頁・発行日
vol.56, no.3, pp.595-602, 2021-10-25 (Released:2021-10-25)
参考文献数
25
被引用文献数
3

東日本大震災後には広域に及ぶ人口移動が発生した.人口減少下にある地方都市を襲う巨大災害の後に,人口移動がどのようなメカニズムで生じるのかを明らかにし,多様な支援と人口移動を前提として復興需要を予測する枠組みを検討する必要がある.そこで本研究は,災害後の人口移動予測に向け,不確実性下における,被災者の動的な意思決定を記述するため,DRLモデルを適用した動的居住地選択モデルを提案する.東日本大震災から10年間の居住履歴に関する実データによって提案モデルの実証分析を行い,復興事業等の政策的要因や都市構造といった環境要因の影響評価への応用可能性を確認した.復興事業等の政策的な効果を説明する変数の取り込みや居住地選択肢のサンプリングにおける時系列的な異質性を考慮したモデルに発展させることが,今後の展望である.
著者
星 祐希 松川 寿也 丸岡 陽 中出 文平
出版者
公益社団法人 日本都市計画学会
雑誌
都市計画論文集 (ISSN:09160647)
巻号頁・発行日
vol.55, no.3, pp.323-329, 2020-10-25 (Released:2020-10-25)
参考文献数
6

本研究は、残存農地を有する地方都市を対象に、残存農地集積地が存在してきた経緯や今後の土地利用方針から、人口減少都市が抱える残存農地集積地での土地利用制度設計のための知見を得ることを目的とする。その結果以下を明らかにした。 1)残存農地集積地は、人口増加を想定した当初線引きやそれ以前に指定された用途地域において、スプロールにより形成されてきた。 2)逆線引きが困難な残存農地集積地を抱えることは、市街化区域の人口密度維持や新たな市街地整備に支障となる。 3)この問題への地方自治体の措置は、居住誘導区域の指定による宅地化の促進である一方、田園住居地域の指定に対しては行政としてのメリットがない。 残存農地を田園住居地域に指定して、非可住地として扱うことで、人口密度維持と用途地域の拡大が可能と考えるが、農政側で田園住居地域内の農地の扱いを変える法改正が必要である。
著者
石塚 禎幸 李 鎔根 大月 敏雄 小泉 秀樹
出版者
公益社団法人 日本都市計画学会
雑誌
都市計画論文集 (ISSN:09160647)
巻号頁・発行日
vol.55, no.3, pp.317-322, 2020-10-25 (Released:2020-10-25)
参考文献数
5

市街化区域内農地はあるべきものとして施策が見直された。本研究においては、農地の転用を公共交通利便性、人口構造の視点で捉え評価することを特徴とする。公共交通利便性の劣る地域で生産緑地から集合住宅への転用比率が高いことが明らかになった。またケーススタディにより徒歩圏外の住宅系用途への農地転用より人口増加、子育て世代の増加がみられ、集合住宅への転用が多い地区は就学前児童の増加がみられた。ただし徒歩圏外のより広いエリアで見ると住宅系への農地転用が年代別人口に与える影響は限定的である。
著者
木村 達之 真鍋 陸太郎 村山 顕人
出版者
公益社団法人 日本都市計画学会
雑誌
都市計画論文集 (ISSN:09160647)
巻号頁・発行日
vol.55, no.3, pp.311-316, 2020-10-25 (Released:2020-10-25)
参考文献数
14

近年、都市における農住混在に対する評価が高まっており、農地が都市計画上に位置付けられるなど法制度の枠組みも大きく変化しつつある。しかし従来スプロール市街地として問題視されてきた農住混在を肯定的なものに転換するための具体的な空間像は不明瞭である。そこで本研究では様々な農住混在の実態に即した空間像を検討するため、東京都内の複数地区・自治体を対象にGIS分析・登記簿調査・聞き取り調査を行い、農住混在空間の実態と形成プロセスを敷地・地区スケールで分析する。分析にあたっては、日本において主要な農地所有主体である農家個々の土地運用の集積による市街地形成と、土地区画整理事業や都市計画道路整備などの都市基盤整備による面的な市街地整備の2つの観点を設定し、都市計画・まちづくりで農地を扱う上での要件について考察を行う。
著者
嘉名 光市
出版者
公益社団法人 日本都市計画学会
雑誌
都市計画論文集 (ISSN:09160647)
巻号頁・発行日
vol.40.3, pp.637-642, 2005-10-25 (Released:2017-07-01)
参考文献数
32

本研究では、我が国における駅前景観形成の草創期である戦前期大阪における大阪駅付近都市計画事業およびそれに関連する都市計画の立案の変遷から、駅前の整備にあたって目指した都市美観形成の方向性を明らかにすることを目的とする。戦前期大阪駅前周辺の美観形成の方向性は、当初は関係者の協議・調整によって大阪駅前整理計画協議会成案が検討され、大阪駅前や御堂筋などの大阪の玄関口をなす場所の美観形成には、街路整備に加え周辺の建築敷地造成が重要であるとの考え方が示された。さらに、大阪駅前整理工事に関する建議案などのように、美観形成の観点から大規模かつ整形の建築敷地造成が重要で、その実現手法として超過収用が期待されていた。一方、大阪市のシビックセンター計畫理想案懸賞により、欧米都市の美観形成に倣った一団街区の形成やビスタ、アイストップなどの街並美観が提案された。その後、大阪駅前付近都市計画事業変更、大阪駅前第2土地区画整理追加により、それまでの大阪駅頭、御堂筋沿道の美観形成と一団の街区の美観形成という考え方がみられ、美観地区追加指定では、詳細に区分した地区として位置づけ発展していった。
著者
尹 莊植
出版者
公益社団法人 日本都市計画学会
雑誌
都市計画論文集 (ISSN:09160647)
巻号頁・発行日
vol.55, no.3, pp.295-302, 2020-10-25 (Released:2020-10-25)
参考文献数
15

本研究は、ヨコハマ市民まち普請事業のケーススタディから低未利用地における地域主体の持続的な利活用及び活動の可能性を探ることを目的とする。ヨコハマ市民まち普請事業のこれまでの実績からは、既存地域組織からテーマ型団体への提案主体の変化、公園・広場等の整備から交流・活動拠点の整備への提案内容の変化、公有地から私有地への整備場所の変化とともに、低未利用地が継続的に多く利活用されたことが確認できた。また、地域主体は低未利用地のメリットとして、経済性より立地性を高く評価しており、利活用時の支援として、利活用のための関連制度・制限へのアドバイスと地域内の遊休公有地の情報提供を多く必要としていることが確認できた。さらに、維持管理における課題として担い手不足と財政的な負担が多く指摘されている中、地域主体との積極的な連携から協力者を増やすことや行政機関との連携事業から財源を獲得することで低未利用地における地域主体の持続的な利活用及び活動を可能としていることを明らかにした。
著者
中島 恵太 氏原 岳人 織田 恭平
出版者
公益社団法人 日本都市計画学会
雑誌
都市計画論文集 (ISSN:09160647)
巻号頁・発行日
vol.55, no.3, pp.288-294, 2020-10-25 (Released:2020-10-25)
参考文献数
21
被引用文献数
1

本研究では,態度・行動変容研究分野の知見を応用し,戸建住宅を所有する世帯を対象とした空き家にさせないための手法を開発し,岡山市の住宅地を対象にその検証を行った.具体的には,戸建住宅の所有者に対して,空き家にさせないことのメリットを知らせるチラシを配布するとともに,住宅の将来について考えるきっかけを作るためのアンケート調査等を実施した.その結果,1)本研究のアプローチにより,10%の行動変容,及び44%の態度変容を促すことができた.2)行動変容の内容としては,エンディングノートや遺言書の作成,登記の確認,相続などの引き継ぎに関する情報収集等であった.3)態度・行動変容ともに高齢である方が変容しやすい。また,住宅の将来について身内の相続等の引継ぎに言及している方は行動変容につながりやすく,一人で考えた方は態度変容しても行動変容にはつながりにくい傾向にあった.
著者
長野 博一
出版者
公益社団法人 日本都市計画学会
雑誌
都市計画論文集 (ISSN:09160647)
巻号頁・発行日
vol.55, no.3, pp.282-287, 2020-10-25 (Released:2020-10-25)
参考文献数
13
被引用文献数
1

近年,我が国では,人口減少・少子高齢化に伴う空き家問題が大きく取りざたされている.平成26年度「空家等対策の推進に関する特別措置法」の施行により,都市計画やまちづくりの中で,行政やNPO,住民組織らがこの空き家問題に取り組んでいるが,計画的に除去・利活用が図られているとは言い難い状況がうかがえる.一方で,不動産登記を扱う士業として,司法書士らがこれらの課題に対し,土地に関する多くの知見を持っているものの,有者不明土地へのアプローチにおいて,単に事を進められない等の課題も山積している状況である.これらの状況を踏まえ,本稿では,司法書士のまちづくりや空き家対策への関心度,実践してみたいか否かに関する調査を基に状況を整理し,第三者的関わり方の可能性を探ると共に現状の課題を明らかにした.
著者
芳原 拓実 田中 貴宏
出版者
公益社団法人 日本都市計画学会
雑誌
都市計画論文集 (ISSN:09160647)
巻号頁・発行日
vol.55, no.3, pp.274-281, 2020-10-25 (Released:2020-10-25)
参考文献数
14
被引用文献数
2

わが国の密集市街地の多くは、防災上の問題を抱えているため、一部では、これらの問題の解消を主な目的とし、道路拡幅等が実施されている。一方で、密集市街地は、街路幅員が狭く建物が密集していることから、このような空間に対して人々が親近感や安心感などを持つことも指摘されている。そのため、密集市街地整備の計画に際しては、このような空間特性にも配慮した整備の方向性を示す必要があると思われる。そこで本研究では、密集市街地の整備方針作成に向けた基礎的検討として、全国の市街地を対象に、立地的、物理的特性の指標を用いた類型化を行い、類型ごとにその課題と特徴を明らかにすることで、整備の方向性を示すことを目的とした。その結果、立地的特性では、人口特性や用途等においてクラスター間に顕著な差が見られた。物理的特性では、建物・街区の規模や建物の密集度に差が見られ、密集市街地をその特性によって類型化し、各類型の課題や特徴を把握することができた。
著者
谷崎 竜也 猪八重 拓郎
出版者
公益社団法人 日本都市計画学会
雑誌
都市計画論文集 (ISSN:09160647)
巻号頁・発行日
vol.55, no.3, pp.266-273, 2020-10-25 (Released:2020-10-25)
参考文献数
14
被引用文献数
1

本研究では、コンパクト化政策の一つである立地適正化計画が策定されている都市である熊本市を対象とし、都市のコンパクト化のシナリオの違いが、どのようにアクセシビリティに影響を及ぼすのか明らかにすることで、都市のコンパクト化のより望ましい方向性をアクセシビリティの面で評価することを目的とする。基準年を2015年とした2040年までの人口を100m×100mのメッシュ単位で推計し、その後、現状、趨勢型、市街化区域集約型、居住誘導区域集約型、拠点集約型の計5つのシナリオを作成した。その結果、コンパクト化を行ったシナリオは徒歩、徒歩+電車、徒歩+バスにおいて、ACの面で良好な結果を示し、現状の水準を維持できることが明らかとなった。
著者
瀬良 敦希 三浦 詩乃 中村 文彦 田中 伸治 有吉 亮
出版者
公益社団法人 日本都市計画学会
雑誌
都市計画論文集 (ISSN:09160647)
巻号頁・発行日
vol.55, no.3, pp.258-265, 2020-10-25 (Released:2020-10-25)
参考文献数
39

近年米国では「公共交通の優先度が高い街路」を意味する「Transit Street」が提唱されている。公共交通と歩行者のみが通行可能なトランジットモールと違い、自家用車も通行可能であるが、様々な設備を導入し、自家用車の利便性を低下させることで公共交通や歩行者の有意性を保つものとされている。米国では既に整備ガイドラインの発行も見られる。一方日本にはTransit Streetやそれに近い概念は存在しないものの様々な整備が行われた結果、公共交通が優先されるような街づくり・街路づくりが行われた事例は存在する。そこで本研究は日米の事例を参照し、日本における今後の公共交通優先街路空間整備の指針を示すことを目的とする。このためにまずTransit Streetの歴史・定義・空間要素を示したあと、日本での類似事例として福岡市明治通りの整備経緯・内容を報告する。最後に日米の類似点・共通点を踏まえた日本での公共交通優先街路空間整備の指針を示す。
著者
櫻井 祥之 小川 宏樹
出版者
公益社団法人 日本都市計画学会
雑誌
都市計画論文集 (ISSN:09160647)
巻号頁・発行日
vol.55, no.3, pp.250-257, 2020-10-25 (Released:2020-10-25)
参考文献数
22
被引用文献数
1

地域コミュニティの衰退や住民の高齢化が進む住宅団地を再生するため, 2019年に地域住宅団地再生事業が創設された. 一方, 近年多くの自治体で立地適正化計画が策定され, 居住誘導区域が指定されてきた. しかし住宅団地が居住誘導区域から除外されているケースの存在が明らかにされ, 居住誘導区域に含まれるか否かは当該住宅団地の今後の方針を左右する判断になると考えられる. したがって本研究では, 立地適正化計画における住宅団地の取り扱いについて調査し, 居住誘導区域に含まれない住宅団地を抽出した. そしてこのような住宅団地の発生要因や今後の方針について明らかにし, 立地適正化計画により住宅団地の計画的管理を行う方策ついて知見を得ることを目的とした. その結果, 住宅団地が居住誘導区域から除外されている実態やその背景, また自治体独自の区域を活用した住宅団地の位置づけなどが明らかとなり, 住宅団地の計画的管理に関する結論を得た. さらに立地適正化計画と地域住宅団地再生事業との関連について言及した.
著者
松原 大樹 松川 寿也 中出 文平
出版者
公益社団法人 日本都市計画学会
雑誌
都市計画論文集 (ISSN:09160647)
巻号頁・発行日
vol.55, no.3, pp.243-249, 2020-10-25 (Released:2020-10-25)
参考文献数
6

本研究は、地方都市で中心市街地活性化に取り組む都市を対象に、時間貸し駐車場の実態を明らかにすること、中心市街地活性化を目標とした、自治体と駐車場利用者、双方にとって利用しやすい駐車場のあり方を提言することを目的とする。本研究は、自治体・駐車場利用者に対するアンケート調査、ヒアリング調査より、以下のことを明らかにした。 1.駐車場の位置と駐車可能台数の両方を把握する自治体は約2割に留まる。 2.使用用途により差があるが、各来街先から駐車場までの距離は300m以内、私的利用なら100m~200mに駐車場整備することが効果的である。 3.駐車場施策のみで来街者は増加せず、公共施設と併せた駐車場施策や、民間活力導入による複合商業施設と併せた駐車場整備等は、来街者増加が見込まれる機会に実施すべきである。
著者
曽我 龍宇一 秋田 典子
出版者
公益社団法人 日本都市計画学会
雑誌
都市計画論文集 (ISSN:09160647)
巻号頁・発行日
vol.55, no.3, pp.228-234, 2020-10-25 (Released:2020-10-25)
参考文献数
14
被引用文献数
1

本研究では、集約型都市構造を目指す自治体の大都市郊外の住宅団地に着目し、生活環境の実態を把握して定住意識を明らかにした上で、今後も住民が継続的に居住していくための方策の示唆を得ることを目的とする。対象地は立地適正化計画(案)において現状のまま街を維持していく方針が示されている八王子市高尾台地区である。現地踏査やヒアリング調査、住民意識調査を実施し、住宅団地の概況を踏まえながら住民が感じている「住宅団地の住みやすさ」と「転出意向」の背景を探り,住民の継続的な居住へ向けた方策を検討した。結果、利便性が低く都市計画において住環境の改善が見込まれない住宅団地においても、人々の繋がりや緑環境が良好であれば、住民は住みやすいと感じると言うことが示唆された。
著者
岡田 将範 氏原 岳人 牛尾 亜紀子 大畑 友紀
出版者
公益社団法人 日本都市計画学会
雑誌
都市計画論文集 (ISSN:09160647)
巻号頁・発行日
vol.55, no.3, pp.213-219, 2020-10-25 (Released:2020-10-25)
参考文献数
10

本研究では,岡山市居住者を対象としてマズローの欲求段階説に基づき中心市街地の訪問動機から来訪者の特性を明らかにした.分析の結果,1)中心市街地の訪問動機には,「非精神的欲求」,「精神・物質的欲求」等のタイプが存在することを確認できた.2)各欲求タイプは,年齢や性別に加えて交通手段選択も影響する.具体的には,「精神・物質的欲求」タイプは公共交通を,「非精神的欲求」タイプは非・公共交通の傾向にある.3)精神的欲求に関する訪問動機の中で,「人との交流」では,公共交通利用の傾向は相対的に弱く,「自己向上動機」や「精神的充足動機」で強い.さらに,各欲求タイプと「自由に使える自家用車があるかどうか」には関係性は見られず,自動車保有に依存しない傾向にある.4)自動車のアクセス性を高めるまちづくりは,高次の精神的欲求の充足にはつながりにくい可能性がある.
著者
加納 亮介 真野 洋介
出版者
公益社団法人 日本都市計画学会
雑誌
都市計画論文集 (ISSN:09160647)
巻号頁・発行日
vol.55, no.3, pp.220-227, 2020-10-25 (Released:2020-10-25)
参考文献数
9

本研究は、コンパクト・プラス・ネットワークの都市構造に基づいた持続可能な居住地を目指し、間口狭小地のスポンジ化が進む旧市街から住宅地開発が進む新市街までを含む富山県高岡市の中学校区を対象に、若年世代の居住動向と敷地活用の特徴を分析することで今後の居住誘導のあり方について考察を行った。その結果、中学校区という地縁を単位として学区外から流入する居住者と学区内で循環する居住者がおり、その割合は市街地の形成過程によって異なることが明らかになった。特に、学区内で循環する居住者が多い旧市街では、親世帯と同居や近居を求め、若年世代が主体的に複数敷地を活用することで、実家の居住継承や住み替えを行う住み継ぎの動きが見られた。こうした低未利用な複数敷地を活用することは土地利用方法や暮らし方の選択肢を広げ、若年世代が流入しやすく、次の世代への居住地の継承を促す役割を担っていることが明らかになった。高齢化や空洞化が進む今後、このような居住動向を活かしながら学区外から流入する居住者をどのように誘導するかが求められる。