著者
新保 奈穂美 雨宮 護 横張 真
出版者
The City Planning Institute of Japan
雑誌
都市計画論文集 (ISSN:09160647)
巻号頁・発行日
vol.49, no.3, pp.219-224, 2014
被引用文献数
4

都市農地の環境保全機能を発現する方策として,都市住民が主導し,近隣由来の有機性廃棄物を農地に還元し,それを農作物生産のための堆肥として利用するシステムの構築が考えられる.本研究は,その際に課題となる,(1)有機性廃棄物の収集量の実態と調整方法,および,(2)有機性廃棄物の処理における都市住民の関与の実態と調整方法という2点から実在の事例の実態解明を行った.(1)に関しては,有機性廃棄物収集量の実測調査および収集の背景情報をインタビュー等で把握した結果,収集量の調整は科学的知見と経験的な知識をもとに,リーダーの判断で収集量が調整されていたことがわかった.これにより適正な量の有機性廃棄物の収集が可能となったといえる.(2)に関しては,有機性廃棄物の処理に携わった都市住民の作業時間・内容についてアンケート調査を行った結果,都市住民の関与の強さに応じて作業分担が行われていたことがわかった.これにより,広く都市住民を巻き込むことに成功していたといえる.今後,同様の事例研究が蓄積され,ノウハウが普遍化されることが,都市農地における住民主導の有機性廃棄物利用システムの取り組みを普及させるにあたり重要である.
著者
古山 周太郎 奈良 朋彦 木村 直紀
出版者
公益社団法人 日本都市計画学会
雑誌
都市計画論文集 (ISSN:09160647)
巻号頁・発行日
vol.47, no.3, pp.361-366, 2012-10-25 (Released:2012-10-25)
参考文献数
5
被引用文献数
2

本研究では、岩手県気仙郡住田町の3か所の応急仮設住宅団地を対象に、団地で実施されているコミュニティ支援活動の実態と、入居者のコミュニティ活動の状況や活動への評価を明らかにすることを目的とした。研究方法は、仮設支援協議会の各組織が実施している活動の日誌の分析と、入居者を対象としたアンケート調査分析である。研究の結論は次の通りである。まずコミュニティ支援活動は、多数の組織の連携により実施され、目的や支援組織のかかわりかたで9つに分類できた。その活動の傾向は時期によって変化している。活動に参加した程度は年齢によって差がみられた。仮設団地でのコミュニティ支援活動は住民から一定の評価を得ており、住民同士や支援者との交流機会の提供とともに、住民に気分転換等の精神的な効果を与えていた。
著者
内山 愉太 岡部 明子
出版者
公益社団法人 日本都市計画学会
雑誌
都市計画論文集 (ISSN:09160647)
巻号頁・発行日
vol.46, no.3, pp.883-888, 2011-10-25 (Released:2011-11-01)
参考文献数
13

一般にメガシティは人口規模によって定義されるが、人口規模は都市の一属性にすぎない。既往の研究において、人口規模が同規模のメガシティであっても、抱える問題は大きく異なることが示されている。それには、人口規模以外に多様な要因が考えられるが、都市が空間的な広がりを持っていることと関係があると思われる。メガシティの異なる空間特性を客観的に把握し、メガシティを空間特性により類型化することは、各都市の特性を把握し、その抱える問題や潜在的な可能性を考察する上で有用であると考えられる。本研究では、空間的な人口分布が都市の空間特性を一定程度示していると考え、人口分布特性によりメガシティの類型化を行った。その結果、対象35都市について、人口の特定の人口密度の地域への偏在傾向に関して四類型化でき、人口密度の異なる地域の空間的分布状況によっても四類型化できることがわかった。特に、最も複雑な人口分布特性を持つメガシティがアジアに集中していることが明らかとなった。各都市の空間特性を生かした将来に向けた再編を検討するにあたり、本研究の空間特性によるメガシティ類型を活用できると考えられる。
著者
加藤 勝敏
出版者
公益社団法人 日本都市計画学会
雑誌
都市計画論文集 (ISSN:09160647)
巻号頁・発行日
vol.46, no.3, pp.361-366, 2011-10-25 (Released:2011-11-01)
参考文献数
9

この研究の目的は、農商工連携事業における産業支援機関の機能強化について明らかにすることである。この研究の結論は以下の通りである。地域振興のための農商工連携事業を進めていく上で、産業立地政策で設立された産業支援機関は重要な役割を持ち、企業を結びつけるコーディネート機能の重要性は益々高まっている。こうした中、事業の担い手である企業行動は、工業技術を核とした技術開発指向から、経営資源のネットワーク化指向に変化し、より広域的な支援が必要になっている。しかしながら、産業支援機関の活動圏域は殆どが同一都道府県内に留まっている。従って、企業行動に対応する形で、産業支援機関のコーディネート機能について、その活動圏域をより広域化していくことが重要である。
著者
奥村 誠 田中 大司
出版者
公益社団法人 日本都市計画学会
雑誌
都市計画論文集 (ISSN:09160647)
巻号頁・発行日
vol.46, no.3, pp.373-378, 2011-10-25 (Released:2011-11-01)
参考文献数
11

本研究では、ネットワーク系インフラに立脚した公共サービスの代表例である水道事業を取り上げ、人口の空間分布や施設の老朽度が事業コストに与える影響を分析し、合わせて事業体ごとの効率性の差異を考察することを目的とする。具体的には、事業体の経営効率の分析にこれまで多く用いられてきている確率的フロンティア分析法を用い、東北地方の市町村が単独で運営している97の事業体の「配水費」に関する分析を行う。その際、配水に関わる物理的な仕組みを考慮して独自の説明変数を定義し、人口の空間分布に関する情報を地理情報システム(GIS)上で整理してその値を用意したところに大きな特徴がある。
著者
有留 健太朗 有田 智一 藤井 さやか 大村 謙二郎
出版者
公益社団法人 日本都市計画学会
雑誌
都市計画. 別冊, 都市計画論文集 = City planning review. Special issue, Papers on city planning (ISSN:09160647)
巻号頁・発行日
vol.45, no.3, pp.709-714, 2010-10-25

本研究では、「用途」に係る紛争に関して議会等への請願・陳情に至った事例の全国データを対象として、用途に係る問題の発生構造を把握し、用途がもたらす負の外部性の解決に向けた調整の実態について明らかにすることを目的とする。本研究で得られた知見は以下の通りである。まず、用途に関する負の外部性の評価項目として、(1)交通、(2)安全、(3)防火、(4)衛生、(5)時間、(6)上位計画との不適合、(7)既存施設・活動との親和性、(8)地域環境特性の変容、の8分野が見出された。用途地域制との関係性については、(1)現行用途規制で規定がない(墓地等)、(2)現行用途規制下での用途の定義が曖昧あるいは時代に適合していない(スーパー銭湯等)、(3)現行用途規制で対応できない詳細項目による問題の発生(営業時間、施設管理等)、(4)用途規制上許容されているが問題が発生(ワンルームマンション)、の4類型が主に見出された。ケーススタディより、負の外部性の解決に向けた調整は、基本的に民民間の任意交渉で行われる場合が多く、建築主の利益に関わる事項は変更等が困難である実態が明らかになった。
著者
照本 清峰
出版者
The City Planning Institute of Japan
雑誌
都市計画論文集 = Papers on city planning (ISSN:09160647)
巻号頁・発行日
vol.47, no.3, pp.871-876, 2012-10-25
参考文献数
13
被引用文献数
3

本研究では、防災教育と防災まちづくりの連携による実践的津波避難訓練の実施体制を示すとともに、実施結果に基づく効果と課題を検討することを目的とする。従来、個別になされていた活動について、相互の取り組みを連携させるモデルを構築するとともに、それらを実践することによって検討することに本研究の特徴がある。調査対象地域は、和歌山県海南市黒江船尾地区である。同地区は、南海地震による地震動とともに、その後の津波の来襲によって被害が生じることが予測される地域である。訓練時には、道路の一部は損壊によって通行できない、避難場所の一部は土砂崩れなどによって使用できない、負傷している(役割の)住民がいる、高齢者等の避難に対して支援を必要とする(役割の)住民がいる、という状況を想定して実施された。実践的な訓練の取り組みの結果より、避難に関する仕組みと空間整備上の課題を導出できること、避難に関する様々な課題があるという認識がより高まることを示した。また、実践的訓練を媒介として連携することによる意義と相互の活動の効果を高められる可能性について言及した。