- 著者
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柿本 竜治
吉田 護
- 出版者
- 公益社団法人 日本都市計画学会
- 雑誌
- 都市計画論文集 (ISSN:09160647)
- 巻号頁・発行日
- vol.55, no.3, pp.843-850, 2020-10-25 (Released:2020-10-25)
- 参考文献数
- 13
「平成30年7月豪雨」では,西日本を中心に多くの地域で河川の氾濫や浸水害,土砂災害が発生し,死者・行方不明者232人の甚大な災害となった.気象庁から注意報や警報,市町村から避難勧告や避難指示など様々な情報が発信されたが,多くの避難遅れが発生した.豪雨時の避難遅れの一つの要因として,住民の災害対応に状況認識の失敗が推察される.災害時の状況認識の失敗には,人々の避難行動の意思決定のための災害情報や周辺環境に対する認知的な限界の存在があろう.そこで,本研究では2018年7月の西日本豪災害で被災した地域を対象に避難に関するアンケート調査を行い,気象情報,避難情報の取得から豪雨時の避難行動までの流れを「思考の負荷が低く,直観的,自動的ですばやく行動に結びつくシステム1」と「意識的思考を駆使し,負荷が高く,分析的で論理的なシステム2」を考慮したフレームに整理することを目的とする.具体的には,気象情報や避難情報の取得から避難まで流れを,防護動機理論に基づいて整理するとともに,そこにヒューリスティックな意思決定の一つである自然主義的意思決定の考え方,その中の状況認識理論を援用する.