著者
初田 香成
出版者
公益社団法人 日本都市計画学会
雑誌
都市計画論文集 (ISSN:09160647)
巻号頁・発行日
vol.42.3, pp.415-420, 2007-10-25 (Released:2017-02-01)
参考文献数
41

本研究は戦後期における都市不燃化同盟を中心とした都市不燃化運動の理念の変容を探り、その歴史的意義を探るものである。まず運動の主体であった都市不燃化同盟の誕生の過程と背景を明らかにし、その誕生の意義を考察する。続いて特に1950年の前後で、都市不燃化に関する構想が大幅に縮小されたことを明らかにし、その背景としてGHQによるドッジラインの影響を指摘する。そしてそれがもたらしたその後の不燃化運動、再開発への影響を学識者、建設省の官僚、商工会議所、ディベロッパー、損害保険会社と言ったそそれぞれの運動主体の観点から考察する。
著者
石川 幹子
出版者
公益社団法人 日本都市計画学会
雑誌
都市計画論文集 (ISSN:09160647)
巻号頁・発行日
vol.29, pp.331-336, 1994
被引用文献数
5 1

<p>THE PURPOSE OF THIS STUDY IS TO ANALYSE THE HISTORICAL EVOLUTION OF THE PLANNING THOUGHT ON THE GREEN BELT IN LONDON FROM 1900-1938. AT THE BEGINNING OF THE 20TH CENTURY, THE THOUGHT OF THE GREEN GIRDLE WAS DEVELOPED INFLUENCED BY THE AMERICAN PARK SYSTEM. IN 1920'S, THE REGIONAL PLANNING WAS DEVELOPED AS THE METHOD TO SOLVE THE ENLARGEMENT PROBLEM OF BIG CITIES. THE GREEN GIRDLE PROPOSED BY RAYMOND ANWIN REFRECTED THIS REGIONAL PLANNING THEORY, AND THE CHARACTERISTICS OF THE GREEN GIRDLE CHANGED TO SECURE A BREAK IN THE OUTWARD SPORADIC SPREADING OF LONDON.</p>
著者
リア ロサリア ウィカンタリ 鳴海 邦碩
出版者
公益社団法人 日本都市計画学会
雑誌
都市計画論文集 (ISSN:09160647)
巻号頁・発行日
vol.34, pp.325-330, 1999
被引用文献数
2

この研究は、伝統的な木造家屋に対する重要性および現代的なライフスタイルに対する適応性の居住者自らの評価と将来性の改造に関する意向、さらには木造家屋での生活の不便さや将来の保存に関する意向を分析することを通じて、伝統的木造家屋の持続可能性とその方策を論じたものであり、以下の点が明らかになった。(1)多くの住民(平均的には60%以上)が、伝統的木造家屋を、重要であり、適応性があり、好ましいもので、保存に値すると考えている。(2)しかし、基本的に遺産分割の理由によって丸ごとの売却や移築の傾向が増加するとともに、改造が不可避的・継続的に起こる傾向にある。(3)住民の将来の改造に関する姿勢は、木造家屋に住むことを好んでいるかどうかおよび年齢と関連している。以上の結果を踏まえ、伝統的な木造家屋の持続可能性を推進するための方策を示唆した。
著者
中野 茂夫
出版者
公益社団法人 日本都市計画学会
雑誌
都市計画論文集 (ISSN:09160647)
巻号頁・発行日
vol.47, no.3, pp.733-738, 2012-10-25 (Released:2012-10-25)
参考文献数
16

本論文は、島根県の歴代県庁舎周辺の官庁街について歴史的に明らかにしたものである。二代目県庁舎が建てられた明治10年代から、行政機構の確立とともに次第に官庁街が形成されてきたことが明らかとなった。その後、県庁の周辺では、広い運動場を持つ教育施設を郊外に移転するとともに、跡地を利用して官庁街の整備が進められた。一方で、戦前の財政が逼迫していたこととも関係していると考えられるが、官公署の転用を頻繁にくり返しながら、官庁街の再編が行われたのである。戦時中には、建物疎開が行われ、木造の主な官公署は、既存の鉄筋コンクリート造建築に移転させられていた。このことは、戦後の制度変更にともなう官公署の改組とともに、官庁街再編の契機となったことが示唆されよう。しかし、ここまでの松江の官庁街は、近代都市計画の大きな存在意義である全体計画あるいは長期計画に基づいた計画ではなかった。松江では、田部長右衛門という名望家が知事に就任したことで、県庁の周辺全体を視野に入れた計画が具体化され、県庁周辺整備計画が強力に推進された。そして県庁を中心にモダニズム建築の傑作が計画的に配置される官庁街が形成された。
著者
福本 佳世 長瀬 安弘 井爪 康夫 穐山 憲
出版者
公益社団法人 日本都市計画学会
雑誌
都市計画論文集 (ISSN:09160647)
巻号頁・発行日
vol.37, pp.889-894, 2002-10-25 (Released:2017-11-07)
参考文献数
34
被引用文献数
1

本研究は、大正および昭和初期における大阪市の公営住宅(貸付住宅・月賦住宅)に関する供給内容と空間的特質を捉えたものである。分析の結果、以下の事柄が明らかとなった。1)貸付住宅・月賦住宅は共に、その住宅に種別を設け、供給対象に幅を持たせていたこと。2)配置計画については、住宅の型に対応しながら、住環境の質を確保を志向していたこと。3)各住宅地に共同福祉事業を導入することで住宅地環境の維持を図ったこと。
著者
小池 リリ子 瀬田 史彦 小泉 秀樹
出版者
公益社団法人 日本都市計画学会
雑誌
都市計画論文集 (ISSN:09160647)
巻号頁・発行日
vol.53, no.3, pp.1161-1168, 2018-10-25 (Released:2018-10-25)
参考文献数
10

シェアビレッジプロジェクトは個人では維持が困難になった地域で思い入れがある古民家を、会員制民宿ネットワークとして活用し、多くの人々によって維持していこうという取組で現在秋田県五城目町と香川県三豊市仁尾町に開設されている。本プロジェクトによって古民家が開かれた地域や首都圏に在住する会員の関わり方にどのような変化があったのかを知るため、各地域で合計66名に対しインタビュー調査を行い、その回答からコミュニティの構成員を属性別に分け、グループ対グループのグラフ解析を行った結果、プロジェクト開始前後の人々の関わり方について、地域と首都圏の会員の繋がり以外にも、コミュニティの各グループが関わる新たな結びつきが見られた。このプロジェクトの展開により、首都圏コミュニティが地域コミュニティと繋がりやすくなっただけでなく、地域コミュニティ間でも繋がりの変化を生んだ。
著者
加藤 由理 大西 隆
出版者
公益社団法人 日本都市計画学会
雑誌
都市計画論文集 (ISSN:09160647)
巻号頁・発行日
vol.39.3, pp.757-762, 2004-10-25 (Released:2017-08-02)
参考文献数
8
被引用文献数
1

秋葉原地域における集積持続のメカニズムは、周辺業種を多様化させることにある。これは、地域産業における「古い仕事」に「新しい仕事」を追加することで実現する。秋葉原地域では、時代にあわせた産業構造、集積エリアが形成され、地域全体の特徴が明確になることで、他地域に対する競争力を確保することができた。多様性を支えた地域の物理的環境は次の4点である。今後の発展のためにはこれらがより進化していくことが望まれる。1)限定された地域・機能・用途ではあるが「混用」が実現している。2)規模の小さな街区の存在。3)「古い建物」の存在と、建てられた年代の異なる建物の混在。4)一定の人口密度。
著者
寺島 駿 松川 寿也 丸岡 陽 中出 文平 樋口 秀
出版者
公益社団法人 日本都市計画学会
雑誌
都市計画論文集 (ISSN:09160647)
巻号頁・発行日
vol.53, no.1, pp.76-84, 2018-04-25 (Released:2018-04-25)
参考文献数
10
被引用文献数
6 3

本研究では、線引き地方都市を対象に居住誘導区域を設定する手法の提案し、先行自治体の事例と比較検討することで、今後の自治体による計画策定に示唆を与えることを目的としている。都市構造の分析から、市街化区域に対する面積が異なる3つの居住誘導区域を作成し、先行自治体の計画と比較した。公共交通の利便性が高い都市では、市街化区域に対して狭い居住誘導区域を設定している一方、公共交通の利便性が低い都市では、市街化区域に対して広い居住誘導区域を設定していることが明らかとなった。本研究で明らかとなった知見から、3指標を基にした居住誘導区域指定の特徴や課題を明確化した。
著者
今村 洋一
出版者
公益社団法人 日本都市計画学会
雑誌
都市計画論文集 (ISSN:09160647)
巻号頁・発行日
vol.47, no.3, pp.727-732, 2012-10-25 (Released:2012-10-25)
参考文献数
19

戦前の公園緑地計画における軍用地の位置づけを整理したうえで、戦災復興緑地計画において、旧軍用地にどのような位置づけが与えられたのかについて、戦前の公園緑地計画での位置づけとの関連も含めて考察するとともに、その後の見直し状況にも触れ、戦災復興期における東京の公園緑地計画に対する旧軍用地の影響を明らかにすることを目的とする。戦前は、使用中の軍用地も公園緑地系統の中に組み込もうとしていた点、戦災復興緑地計画では旧軍用地が積極的に緑地として決定されたが、戦前計画の影響が大きい点、1度の見直しを経てもなお、戦前計画を継承したものは大規模な公園としての位置づけが保持された点が指摘できる。
著者
伊東 孝
出版者
公益社団法人 日本都市計画学会
雑誌
都市計画論文集 (ISSN:09160647)
巻号頁・発行日
vol.26, pp.883-888, 1991-10-25 (Released:2020-05-01)
参考文献数
6

THE AUTHOR HAD MADE IT CLEAR THAT THE BRIDGE TYPE DISTRIBUTION IN TOKYO AFTER THE GREAT EARTHQUAKE OF 1923 WAS VERY SYSTEMATICALLY ARRANGED FROM TECHNOLOGICAL AND URBAN DESIGN POINTS OF VIEW. BY USING THE SAME METHOD,THE MAIN RESULTS ARE AS FOLLOWS: 1.THE SEINE AND THE ILE DE LA CITE IN PARIS WAS A MODEL. OF NAKANOSHIMA AREA. THE BRIDGE ARRANGEMENT IN OSAKA APPEARS TO HAVE THE DESIGN HIERARCHY CENTERING AT THE OSAKA CASTLE. 2.THE EMPHASIS AREA IN YOKOHAMA IS CLEAR BY THE DESIGN ANALYSIS OF A BRIDGE NEWEL. 3.THE THOUGHT OF DESIGN HIERARCHY SEEMS TO BE BETWEEN TOKYO AND YOKOHAMA BY THE ANALYSIS OF A BRIDGE TYPE.
著者
小林 雄次
出版者
公益社団法人 日本都市計画学会
雑誌
都市計画論文集 (ISSN:09160647)
巻号頁・発行日
vol.24, pp.637-642, 1989-10-25 (Released:2020-08-01)
参考文献数
18

The purpose of this paper is to present the comparative analysis of three contemporary theories--architectural, environmental, and spatial determinism. The measure to improve architectural determinism is also discussed. Three theories have serious defects: however, they should not be discarded as an useless tool in policy-making and conceptual organization of the field of environment-behavior research since they can become one of prominent forces contributing to the advancement of field of urban planning and architecture.
著者
中島 弘貴 森田 紘圭 名畑 恵 真鍋 陸太郎 村山 顕人
出版者
公益社団法人 日本都市計画学会
雑誌
都市計画論文集 (ISSN:09160647)
巻号頁・発行日
vol.55, no.2, pp.85-93, 2020-10-25 (Released:2020-10-25)
参考文献数
34
被引用文献数
1

本研究は、地域組織や社会的企業による任意のものも含む構想・計画とその実現手段である規制・誘導・事業という地域の制度的環境が創発する小規模事業を通じて既成市街地の再生の実態把握を行うものである。名古屋市中区錦二丁目を舞台とする”長者町まちづくり”プロジェクトの事例分析を通して、不動産・公共空間の暫定活用、改修・転用といった小規模事業と市街地再開発事業という大規模な面的開発の連携した既成市街地再生の過程を明らかにするとともに、その過程で制度的環境を通じて地域の共通の方向性を有したままテーマの異なる様々な小規模事業が展開されるエリアブランディングの仕組みが構築されたことを示した。そして、小規模事業と行政計画・事業のどちらが先行するかによって、地域の制度的環境の果たす役割が異なるという示唆を得た。
著者
柄澤 薫冬 窪田 亜矢
出版者
公益社団法人 日本都市計画学会
雑誌
都市計画論文集 (ISSN:09160647)
巻号頁・発行日
vol.50, no.3, pp.1114-1121, 2015-10-25 (Released:2015-11-05)
参考文献数
12
被引用文献数
3 2

災害により甚大な被害が発生すると元から離れた位置で復興せざるを得ない。津波や土砂災害だけでなく、火災や建物倒壊であっても多くの人が移動を強いられる。しかし、移動は往々にしてコミュニティを寸断し、人間関係の希薄化を招く。本稿では阪神淡路大震災において復興のモデルケースと名高い芦屋市若宮町を取り上げ、復興プロセスの実態と20年経た現在における住民の認識を分析した。若宮町では、良い空間であると内外から評価されているものの、震災前後の物理的空間は全く変質しており、復興事業完了直後は住民は「良い」と感じていなかった。むしろその後の復興プロセスで、新たな人間関係を形成しながら「若宮町」とは何かの概念をお互いに集団の中で醸成していくことが帰属意識につながり、満足感を得る状況が明らかとなった。
著者
稲葉 佳子
出版者
公益社団法人 日本都市計画学会
雑誌
都市計画論文集 (ISSN:09160647)
巻号頁・発行日
vol.40, pp.63-70, 2005
被引用文献数
4 1

外国人が日本で住宅を借りようとするとき、多くの困難にぶつかる。外国人の民間賃貸住宅入居を支援するためには、 1)信頼できる保証人の確保、 2)入居後のトラブル防止、 3)トラブルに対応できる体制の整備、が重要である。近年、 1)、2)、3)に対応する支援策として、「川崎市居住支援制度」『外国人の居住安定のためのガイドライン』「かながわ外国人すまいサポートセンター」が整備された。しかしこれらにより、総ての問題が解決されたわけではない。今後は、公的な家賃保証制度の整備、不動産業者や家主への支援策の周知と普及、複合的な相談(ドメスティックバイオレンス等)に対応するための福祉など他分野との連携による取り組み、さらに、 1)、2)、3)のフルセット型で総合的に支援策を提供していくことが重要である。
著者
荒井 美紀 鈴木 優太 中野 恒明
出版者
公益社団法人 日本都市計画学会
雑誌
都市計画論文集 (ISSN:09160647)
巻号頁・発行日
vol.45.3, pp.391-396, 2010-10-25 (Released:2017-01-01)
参考文献数
7

本研究においては映画の舞台ともなった柴又帝釈天参道について街並みの現状と形成の変遷を調査し、その特徴と価値を明らかすることを目的とする。同時に現状より今後の保全整備の可能性を考察した。得られた知見は以下の通りである。1)地域住民の生活の場、帝釈天への信仰の街から映画の舞台となったことを契機に商店主等を中心として地元発意的に映画の観光地として街並みが創造されている。2)映画公開後には街並み整備事業が導入され映画の舞台としてだけでなく街並みの観光地化が目指されている。3)街並みは歴史的木造建築物が多くを占めるため、その防災対策が課題としてあり、また防火地域であるため仮に街並みが消失した際に復元は困難であることも課題としてある。
著者
野中 勝利
出版者
公益社団法人 日本都市計画学会
雑誌
都市計画論文集 (ISSN:09160647)
巻号頁・発行日
vol.50, no.1, pp.69-80, 2015-04-25 (Released:2015-04-25)
参考文献数
107
被引用文献数
2 2

本稿は徳島城址の公園化の背景と経過を明らかにすることが目的である。1905年に徳島県知事が日露戦争の戦捷記念事業として、徳島城址にある山頂への招魂碑の移転を提唱したことが、城址の公園化の発端である。招魂祭の式場を公園整備によって確保することが目的だった。徳島県と徳島市が協議し、徳島市が旧藩主蜂須賀家から城址を買収して公園を整備することになった。そして戦利紀念館や商品陳列館などの近代国家体制と結びついた施設を配置する公共空間が確保された。招魂碑の移転や施設整備は徳島県が事業主体になり、徳島市には整備費の補助金を拠出した。県知事は本多静六に公園の設計を依頼した。本多にとって日比谷公園に次ぐ設計だった。戦捷紀念事業としての公園の意義が自身の持論に合致することから設計を受諾した。1906年春の招魂祭の挙行に向けて、急ピッチで最小限の公園整備が進んだ。
著者
徳永 達己
出版者
公益社団法人 日本都市計画学会
雑誌
都市計画論文集 (ISSN:09160647)
巻号頁・発行日
vol.48, no.3, pp.621-626, 2013-10-25 (Released:2013-10-25)
参考文献数
7

Labour Based Technology (LBT:労働力を主体とする施工技術)は、労働力が豊富で、インフラ整備が必要とされる農村などの地方において適用されている施工法である。特にインフラ整備のみならず、コミュニティ開発の側面からも有効な施工方法であることから、主に開発途上国において関心を集めている。しかし、これら既往研究ではプロジェクト管理者の立場から見た実施運用、および地域住民によるインフラ整備に対する需要の観点からLBTの適用可能性について深く検証した考察はない。本研究は、LBTのより効果的な導入を図るため、地方道路管理者および地域住民を対象として潜在的なLBTの需要を検証するとともにLBTを導入するうえで最も適切な時期(季節)について特定するものである。
著者
久保 夏樹 村山 顕人 真鍋 陸太郎
出版者
公益社団法人 日本都市計画学会
雑誌
都市計画論文集 (ISSN:09160647)
巻号頁・発行日
vol.55, no.3, pp.976-983, 2020-10-25 (Released:2020-10-25)
参考文献数
22

本研究は、米国ポートランド発祥のエコディストリクト認証制度を対象に、既成市街地において持続可能なまちづくりを展開する際に重視される点を明らかにすることを目的とする。地区スケールの持続性評価ツールの中で、エコディストリクト認証制度はパフォーマンス基準と市民参加を組み合わせて進化したプロセスベースツールとして分類された。エコディストリクトの枠組み開発の過程では、開発当初の環境面が重視されたサステナビリティ戦略から、地区の公正性やレジリエンスに視野が広がり、計画プロセスにおいて地区のリーダーシップが重要な要素として取り入れられた。エコディストリクトの枠組みと指標は地域の特性に合わせた目標設定が可能であり、枠組み自体が、地域で議論する際のコミュニケーションツールや教育ツールとして機能している。また、エコディストリクトが適用された15事例の分析より、枠組みは既存地区の再生における活用、コミュニティ再生における活用、開発プロセスにおける活用の3つの活用がみられた。
著者
佐藤 将 後藤 寛
出版者
公益社団法人 日本都市計画学会
雑誌
都市計画論文集 (ISSN:09160647)
巻号頁・発行日
vol.54, no.3, pp.1570-1575, 2019-10-25 (Released:2019-11-06)
参考文献数
14
被引用文献数
2 3

本研究では共働き世帯比率の高い世帯の集積エリアにおいて居住形態と送迎および通勤行動がどのような特徴が見られるのかを検証してきた。以下では低い集積エリアとの差異や都区部および郊外部で明確に見られた特徴を中心に考察する。居住形態から共働き世帯比率の高い集積エリアの特徴として都区部では駅前マンション居住、郊外部では徒歩圏内における戸建居住がメインであった。両者の特徴として利便性重視の居住地選択選好は共働き世帯が担っているといえるが、都区部では利便性重視だけでなく、価格面も考慮した居住地選択を行っていること、郊外部では利便性以上に依然として良好な住宅環境を重視した居住地選択を行っていることが明らかとなった。送迎および通勤行動からは都区部および郊外部どちらも自転車利用がメインな保育所環境を有するエリアにおいて共働き世帯比率の高い集積エリアがあることがわかった。またフルタイム勤務が可能でかつ短時間で通勤可能な制約のもと勤務形態を行う世帯が多く、このことは限られた条件下で子育てと仕事を両立していることが伺える。
著者
岡村 祐 中島 直人
出版者
公益社団法人 日本都市計画学会
雑誌
都市計画論文集 (ISSN:09160647)
巻号頁・発行日
vol.41.3, pp.941-946, 2006-10-25 (Released:2018-06-26)
参考文献数
22

我が国の国会議事堂は永田町の高台に位置し、遠くは桜田門外から正面の広幅員直線道路を介したヴィスタが形成されている。このヴィスタは、お雇い外国人ベックマンによって1886(明治19)年によって初めて見出されたものである。それ以後、1936(昭和11)年の議事堂という眺望対象の出現を経て、1964(昭和39)年の正面道路の整備をもって完成に至る。そこで、本研究はこの約80年間にわたるヴィスタの構想と形成の過程、そして構想・計画図に描かれたヴィスタの具体的デザインを明らかにすることを目的とする。その結果、以下のことが明らかになった。1)ヴィスタの構想と形成の過程は4つの時代に区分される。2)その背景には、国会議事堂の建設という一つの揺るぎない軸と、明治期や東京五輪直前期にみられる首都東京としての顔づくり、または震災や戦災からの復興都市づくりというものが存在した。3)現在のヴィスタに較べて、道路の概形や視点場としての広場など、はるかに壮大で華麗なヴィスタが構想されていた。