著者
時実 象一 杉浦 友哉
出版者
情報知識学会
雑誌
情報知識学会誌 (ISSN:09171436)
巻号頁・発行日
vol.20, no.2, pp.86-92, 2010-05-15 (Released:2010-07-10)

Web 上のホームページを収集して保存・公開する Web アーカイブは最近注目を集めている。米国の Internet Archive の Wayback Machine はこの分野のパイオニアで、1996 年からわが国を含め世界の Web ページを収集して公開している。ここに収集されているわが国の数機関のホームページを経年的に比較調査し、それら機関の情報発信の状況を分析した。
著者
李 東真
出版者
情報知識学会
雑誌
情報知識学会誌 (ISSN:09171436)
巻号頁・発行日
vol.23, no.2, pp.241-246, 2013-05-25 (Released:2013-07-25)
参考文献数
15

フィルムアーカイブに限らず動的映像資料を製作, 収集, 保管する機関では, 過去の事象を記録した資料の組織化が課題となっている. 資料の活用を促すには, 文献の場合にそうであるように, 各々の組織が主体的に資料へのアクセスを改善するような仕組みを構築することが求められる. 本稿では主題アクセス, とりわけ動的映像用のシソーラスに着目し, 主に海外における取り組みについて考察し, その適用可能性を検討する.
著者
森本 貴之 淺川 直輝 後藤 智範 藤原 譲
出版者
情報知識学会
雑誌
情報知識学会誌 (ISSN:09171436)
巻号頁・発行日
vol.12, no.2, pp.80-87, 2002
参考文献数
11
被引用文献数
1 1

近年の計算機の高速化、大容量化と低価格化、さらにはインターネットの普及によって情報化が加速度的に進んでいる。今後も増加しつづけるであろう膨大な情報や知識を適切に利用するためには情報の内容に関する、より高度な処理機能が要求される。このような機能を実現するためには、情報や知識の意味を理解しなければならない。そして、そのためには意味関係が表現できる構造化およびその利用のためのアプリケーションあるいはシステムが必要である。このような要求に対して、専門用語を最小単位とした概念構造の生成とその利用のためのシステムの開発を進めている。本研究では、概念構造を生成するのためのシステムの一部である階層関係の自動抽出法における問題点の調査について報告する。
著者
工藤 彰 村井 源 徃住 彰文
出版者
情報知識学会
雑誌
情報知識学会誌 (ISSN:09171436)
巻号頁・発行日
vol.22, no.3, pp.187-202, 2012-10-10 (Released:2012-11-30)
参考文献数
21

本論文の目的は,物語の推移に伴った単語の布置と変化から,並行形式小説がどのような構造を持っているのかを明らかにすることである.対象としたデータは,村上春樹の小説『1Q84』とし,二人の主人公である青豆と天吾のそれぞれの章に対して,語彙頻度を測度とした因子分析と変化率分析を行った.その結果,因子分析からはお互いのBOOK2までの特徴がBOOK3で相手の側に現れ,未消化だった二人の再会の物語を完結させるためにBOOK3が書かれたことが明確になった.変化率分析からは,物語進行に従って対称的に登場する二人の人物が発見された.また文芸批評との比較も行い,本研究の分析手法が物語の理解に有効であることを確認した.
著者
原田 隆史
出版者
情報知識学会
雑誌
情報知識学会誌 (ISSN:09171436)
巻号頁・発行日
vol.15, no.2, pp.57-62, 2005
参考文献数
18
被引用文献数
2 1

Most of the cases, the novels are not given the subject headings. Consequently, the novels have been classified based only on periodizations, languages or authors, but done based rarely on the subjects. In recent years, some research has been done in which the classification of the novels using kansei keywords was tried, but these research were only experimental level since the classification using kansei keywords cannot apply to a large number of novels. The purpose of this research is to examine the methods of classification using the keywords in online bookreviews which are rapidly increasing on the Webs. The result of the classification done by this method gave good agreement with the one of the classification based on kansei keywords given manually.
著者
柏野 和佳子 中野 洋 石井 正彦
出版者
情報知識学会
雑誌
情報知識学会誌 (ISSN:09171436)
巻号頁・発行日
vol.9, no.4, pp.12-28,49, 2000
参考文献数
22

日本語の代表的シソーラスである国立国語研究所『分類語彙表』について, 情報処理研究とターミノロジーの観点から, その特徴を論じる。はじめに, 『分類語彙表』の体系について解説と分析とを行い, 『分類語彙表』を情報処理に利用する場合の利点を明らかにする(柏野・中野)。次いで, ターミノロジーの立場から, 『分類語彙表』における専門語の収載状況を調査し, 専門語を含むシソーラスとしての利用可能性を検討するための基礎的な資料を提示する(石井)。
著者
高久 雅生 寺井 仁 江草 由佳 齋藤 ひとみ 三輪 眞木子 神門 典子
出版者
情報知識学会
雑誌
情報知識学会誌 (ISSN:09171436)
巻号頁・発行日
vol.18, no.2, pp.181-188, 2008-05-23 (Released:2008-09-08)
参考文献数
9
被引用文献数
1 1

著者らは,大学生11 名を対象として,Web 情報探索行動の理解のためのユーザ実験を行った.情報探索タスクとしてInformational 指向およびTransactional 指向の探索課題を2 つ与え,それぞれ15 分間の課題遂行を行う探索実験を設定した.本稿ではとりわけ,課題遂行中の眼球運動計測装置による視線データの分析手法および予備的な分析結果について述べる.分析手法として,検索結果一覧ページに着目したものと,全探索プロセスに対してのおおまかな注視領域を設定したものとの2 つの方式を採用し,それぞれでの分析結果を報告する.
著者
村井 源 川島 隆徳 工藤 彰
出版者
Japan Society of Information and Knowledge
雑誌
情報知識学会誌 (ISSN:09171436)
巻号頁・発行日
vol.22, no.1, pp.23-43, 2012-03-26
被引用文献数
1

評判分析などが自然言語処理技術によって進められているが,対象は主にWeb上のテキストであり,人文学的な批評文はその主たる対象となっていない.本研究では人文的な批評文の具体的批評対象を計量化することで,批評行為のより深い意味分析に向けての基礎固めを行う.総合的芸術作品である映画と演劇の批評文を対象として,抽出対象を人名と作品名に絞り分析を行った.結果として頻度分析とネットワーク分析で批評における人物の重要性やグループの傾向,他分野との関わりの相違が明らかとなった.またスタッフのデータベースの利用により,語られる固有名詞の批評文中での意味と機能の傾向が抽出された.
著者
秋元 良仁 亀山 渉
出版者
Japan Society of Information and Knowledge
雑誌
情報知識学会誌 (ISSN:09171436)
巻号頁・発行日
vol.22, no.1, pp.9-22, 2012

本論文は,博物館や美術館間において,収蔵品の属性情報(Museumメタデータ)を共有・交換可能にする新しい記述言語Fuzzy Schema(FS)を提案する. FS言語は,分散環境におけるスキーマ共有を促進するため,独自のデータモデルである「マッピング・パターン」と「あいまい度」の2つの機構を備えている. これらの機構は,分散環境におけるMuseumメタデータに対して,情報の相互互換性を提供することができる. 我々は,FS言語を用いてMuseumメタデータを記述することで,博物館・美術館間でMuseumメタデータの共有・交換が可能になることを示した.
著者
柊 和佑 阪口 哲男 杉本 重雄
出版者
情報知識学会
雑誌
情報知識学会誌 (ISSN:09171436)
巻号頁・発行日
vol.18, no.1, pp.47-57, 2008-02-19 (Released:2008-02-28)
参考文献数
14

毎日、膨大な数のWebページが発信者によって作成・更新され、それに伴って消えるWebページも多く、近年は様々な組織がWeb ページのアーカイブに取り組んでいる。既存のWeb アーカイブは独自に収集と提供を行うことが多く、発信者の意向を考慮した運用は困難である。そこで、先に我々は、発信者がWeb アーカイブと連携することで、収集と提供を効率よく行う組織内Web アーカイブを提案した。この組織内Webアーカイブの研究では、アーカイブの運営組織に改組が起きた場合の対応については未検討であった。そこで、本論文では改組の際に、複数のWebアーカイブが協調的に動作し、Web アーカイブを維持する方法を提案する。改組を分割、合併、消滅に分類、それらに共通した他のWeb アーカイブのデータを取り込む方法を確立し、これを統合と呼ぶ。統合では、各Web アーカイブで使われているメタデータのスキーマ変換と、データの分割を行う。本論文では統合を自動化するために、一連の処理を整理し、変換規則と分割条件を表現する記述を定義している。
著者
小濵 聖子 大槻 明
出版者
情報知識学会
雑誌
情報知識学会誌 (ISSN:09171436)
巻号頁・発行日
vol.22, no.2, pp.150-155, 2012-05-20 (Released:2012-07-31)
参考文献数
11

本研究では,近代日本人の教養をもちシベリア抑留経験をした石原吉郎(1915-1977)の現代詩を手がかりとして,言語表象にみられる作者の教養的知識と他者に伝達される作者の経験との関係について,思想史学的視点から考察する.方法には,計量テキスト分析を用いる.これは,詩の解釈において客観性を高める点で有益な新しい試みであると思われる.検証の結果,石原の詩には多くの語彙と,特に一人称代名詞の多用が見られた.これは思想史的には近代日本人の自我の探求を意味し,詩的には読み手の共感を促す重要な性質を意味する.結果として,計量テキスト分析の手法は石原の詩の解釈研究のために妥当な試みであることが提示でき,新しい解釈もできたと考える。
著者
杉本 めぐみ
出版者
Japan Society of Information and Knowledge
雑誌
情報知識学会誌 (ISSN:09171436)
巻号頁・発行日
vol.22, no.4, pp.355-364, 2012-11-04
被引用文献数
1

防災上,2004年のスマトラ沖津波の教訓を生かすことが出来なかった2011年の東日本大震災を鑑みて,災害記録を次の災害に備えるためにはどのように生かしていくべきか.その記録は,今なお被災地や県外の避難場所で苦しんでいる被災者の気持ちからかけ離れてはいないのか.我々はどのように激甚災害に備えるべきか, 被災者とどう向き合うべきなのか.まだ回答は見つからない中で,これから我々が取り組むためのヒントを見つけるため,大規模災害経験の先を行くインドネシアのアチェではどうなっているのか,アチェでの7年間の防災教育を通じた取り組みを参考に紹介する.
著者
中嶋 英充 池田 貴儀 米澤 稔 板橋 慶造 桐山 恵理子 岩田 修一
出版者
情報知識学会
雑誌
情報知識学会誌 (ISSN:09171436)
巻号頁・発行日
vol.22, no.4, pp.344-353, 2012-11-04

日本原子力研究開発機構(JAEA)図書館では,福島第一原子力発電所事故に関する参考文献情報を収録したウェブサイトを構築し,2011年4月よりインターネットを通じて発信している.発信する情報は毎月更新され,その数は約1万5千件に達している.JAEA図書館では,国及び東京電力のホームページ上に公表された放射線モニタリングデータ,原子炉プラント状況等の情報を収集・整理し,福島原発事故アーカイブとして運用することを検討している.本稿では,JAEA図書館が発信している福島事故参考文献情報の内容を紹介し,併せて福島原発事故アーカイブ構築に関する課題を提起する.
著者
奥村 弘
出版者
情報知識学会
雑誌
情報知識学会誌 (ISSN:09171436)
巻号頁・発行日
vol.22, no.4, pp.336-343, 2012-11-04
著者
松島 茂
出版者
Japan Society of Information and Knowledge
雑誌
情報知識学会誌 (ISSN:09171436)
巻号頁・発行日
vol.22, no.4, pp.328-335, 2012-11-04

本稿では、最近、歴史学、政治学、社会学の分野において活用されるようになったオーラル・ヒストリーとはなにかについて説明するとともに、筆者がこれまでに実施してきた機械工業振興臨時措置法のオーラル・ヒストリー、トヨタ技術者のオーラル・ヒストリー及びラオス企業家のオーラル・ヒストリーを紹介した。その上でオーラル・ヒストリーの実践のためには、インタビューの対象となる事象の起こった時点とインタビューをする時点の時間的距離、インタビューをする側と語り手の心理的距離について考慮することが重要であると指摘した。さらにオーラル・ヒストリーの手法を震災の記憶・記録に活用する場合の留意点について考察を行った。
著者
岡本 真
出版者
Japan Society of Information and Knowledge
雑誌
情報知識学会誌 (ISSN:09171436)
巻号頁・発行日
vol.22, no.4, pp.308-315, 2012-11-04
被引用文献数
1

災害の記録を伝えるアーカイブズ(震災アーカイブズ)の現状と課題を主に東日本大震災を中心に論じる。さまざまなアーカイブズを記録主体(自治体、大学等、企業ほか)、記録対象(画像、動画、文章、ウェブほか)、記録方法(デジタル、アナログ、両方)等の観点で分類をおこなう。その上で、現在の日本における震災アーカイブズを巡る課題を指摘する。特にデジタルデータへの傾斜や法的課題、二次利用の壁等についての問題提起を図る。
著者
宮本 聖二
出版者
Japan Society of Information and Knowledge
雑誌
情報知識学会誌 (ISSN:09171436)
巻号頁・発行日
vol.22, no.4, pp.298-307, 2012-11-04

2011 年 3 月 11 日の地震発生と同時に、NHK は緊急報道に取り組み、その後は、地震や津波のメカニズムに科学的なアプローチで迫る、震災時の人々の行動心理を分析する、また、がれき処理や復興の課題を追求するなどから、地域の復興支援をねらいにした歌謡番組なども含めて、さまざまなテーマや視点で番組を作り、放送を出し続けている。<br/> 一方で、放送局として東日本大震災をインターネットで伝えることにも取り組んでいる。多くの人々がネットで動画コンテンツや情報を得ようとしているブロードバンド時代のいま、放送局としては放送を出すとともに、ネットにコンテンツを提供することはきわめて重要である。ここでは、筆者が編集責任者をつとめている「NHK東日本大震災アーカイブス」について、制作の経緯から、あの震災を伝えていくためにどのような試みを続けているのかを述べたい。