著者
菅沼 麻理子 岸 俊行 野嶋 栄一郎
出版者
日本パーソナリティ心理学会
雑誌
パーソナリティ研究 (ISSN:13488406)
巻号頁・発行日
vol.16, no.2, pp.220-228, 2008-01-01 (Released:2008-03-30)
参考文献数
18

本研究の目的は,クラシックバレエにおける初心者の内的意識の変化を検討することであった。具体的には,練習後の内省報告を元に,3つのカテゴリーを作成し,練習時期による意識の変化を検討した。さらに,「わざ」の習得の認知構造の自己を客観視する段階である調査協力者の認知面に注目し,どのような特質を持つのかについても検討した。その結果,新しい意識が生じ,それまでの意識は対照的に減っていくことが明らかとなった。また,道具や動きのある技を離れた広い視野での認知や,元々認知していた全体的な身体部位からより具体的な部位に意識が生まれるというような細分化された認知が生じていることが示唆された。
著者
解良 優基
出版者
日本パーソナリティ心理学会
雑誌
パーソナリティ研究 (ISSN:13488406)
巻号頁・発行日
vol.32, no.1, pp.24-35, 2023-05-30 (Released:2023-05-30)
参考文献数
23

本研究は,親子間における知能観の伝達過程について,両親の間の知能観の一致度が調整する可能性について検討した。中学生の子をもつ父親と母親,そしてその子ども211世帯を対象に,両親および子どもの知能観を測定したほか,子どもには両親がどのような知能観をもつかという認知についても尋ねた。調整媒介分析の結果,父親では,両親の間で知能観が一致しているとき,父親の知能観は子どもが認知する父親の知能観を媒介し,子ども自身の知能観に影響を及ぼした。一方,両親の知能観の一致度が低いとき,父親がもつ知能観は,子どもが認知する父親の知能観を予測しなかった。母親においては,父親との知能観の一致度にかかわらず,母親の知能観は子どもが認知する母親の知能観を媒介し,子ども自身の知能観に影響した。なお,それぞれ親の知能観から子どもの知能観への直接効果は一致度にかかわらず有意であった。子どもの増大的知能観への支援のために,両親の知能観へと介入する必要性が示された。
著者
守谷 順 佐々木 淳 丹野 義彦
出版者
日本パーソナリティ心理学会
雑誌
パーソナリティ研究 (ISSN:13488406)
巻号頁・発行日
vol.15, no.2, pp.171-182, 2007 (Released:2007-04-10)
参考文献数
36
被引用文献数
4 3

本研究は,対人不安の維持要因として考えられている判断・解釈バイアスと自己注目との関連についての検討を行った。研究1では被調査者の大学生194名から対人不安高群53名,対人不安低群48名を対象に質問紙調査を行い,対人・非対人状況での判断バイアスと自己注目との関連について検討した。その結果,対人場面かつ自己注目時でのみ対人不安高群は対人不安低群に比べて否定的な判断バイアスが働くことを示した。研究2では,研究1と同様の被調査者を対象に肯定的とも否定的とも考えられる曖昧な対人・非対人状況での解釈バイアスについて質問紙調査を行った結果,判断バイアス同様,対人場面かつ自己注目時でのみ対人不安高群に顕著な否定的解釈バイアスが認められた。以上のことから,否定的な判断・解釈バイアスが対人不安高群に働くときは,対人場面であり,かつ自己注目状況であることが明らかにされた。
著者
齊藤 彩 松本 聡子 菅原 ますみ
出版者
日本パーソナリティ心理学会
雑誌
パーソナリティ研究 (ISSN:13488406)
巻号頁・発行日
vol.25, no.1, pp.74-85, 2016-07-01 (Released:2016-06-04)
参考文献数
48
被引用文献数
4 2

本研究は,児童期後期の子どもの不注意,多動性・衝動性を含む注意欠陥/多動傾向が,母親ならびに父親の養育要因,自尊感情を媒介して抑うつへと関連するかどうかを検討することを目的として実施された。210世帯の子ども(小学校5年生)とその母親,父親を対象に質問紙調査を行い,母親の評定により子どもの注意欠陥/多動傾向,両親の評定により養育のあたたかさと親子間の葛藤,子どもの自己評定により自尊感情,抑うつを測定した。母親については,注意欠陥/多動傾向と養育のあたたかさ,母子間の葛藤との関連が見られ,さらに養育のあたたかさは自尊感情を媒介して抑うつへと関連を示した。一方,父親については,注意欠陥/多動傾向と養育のあたたかさ,父子間の葛藤との関連は見られたものの,養育要因から自尊感情への関連は見られず,注意欠陥/多動傾向が直接自尊感情を媒介して抑うつへと関連することが示された。
著者
服部 陽介
出版者
日本パーソナリティ心理学会
雑誌
パーソナリティ研究 (ISSN:13488406)
巻号頁・発行日
vol.26, no.3, pp.244-252, 2018-03-01 (Released:2018-03-06)
参考文献数
25
被引用文献数
5 1

先行研究において,思考抑制傾向とストレスフルな出来事の経験の組み合わせが反すう傾向を促す可能性が指摘されており,その背景には即時的増強効果の影響があると考えられてきた。本研究では,反すう傾向を考え込みと反省的熟考という2側面に分割し,思考抑制傾向,ストレス経験,反すう傾向の関係について検討を行った。大学生212名に対し,約3カ月の間隔で2回の調査を実施した。その結果,思考抑制傾向とストレス経験が,それぞれ独立に,考え込みを強めることが示された。この結果は,即時的増強効果とは異なる要因が,思考抑制傾向と反すう傾向を関係づける働きを担っている可能性を示している。思考抑制傾向と反すう傾向の関係を検討するうえでの今後の方向性について議論した。
著者
石川 武 敷島 千鶴
出版者
日本パーソナリティ心理学会
雑誌
パーソナリティ研究 (ISSN:13488406)
巻号頁・発行日
vol.29, no.1, pp.14-16, 2020-04-27 (Released:2020-04-27)
参考文献数
9
被引用文献数
3 2

Dichotomous thinking relates to the propensity to think of things in terms of binary opposition. In this study, we examined the relationship between dichotomous thinking and response style to a questionnaire using different scoring methods. The following results were obtained. There is tendency for individuals with high dichotomous thinking to rate their responses to the items in the questionnaire at an extreme of 1 or 5 on a five-point scale. In other words, an individual with strong dichotomous thinking does not merely avoid the neutral response but has an extreme response style.
著者
向井 秀文 杉浦 義典
出版者
日本パーソナリティ心理学会
雑誌
パーソナリティ研究 (ISSN:13488406)
巻号頁・発行日
vol.31, no.3, pp.137-147, 2022-11-25 (Released:2022-11-25)
参考文献数
43

近年,不安や抑うつといった内在化問題の低減に有効な治療アプローチの一つとして,メタ認知療法が注目されている。本研究では,考え続ける義務感といった内在化問題に対して強い予測力を有するメタ認知的信念に着目して,考え続ける義務感の低減をターゲットとしたメタ認知療法の効果検証を行った。大学生34名を統制群と介入群に振り分けて,各群のプレからフォローにかけての指標得点の変化を検討した。対応のあるt検定を実施した結果,統制群のすべての指標得点間に有意な差は認められなかった。一方で,介入群においては,摂食症状以外のすべての指標得点間に有意な差が認められた。また,効果量を算出したところ,統制群よりも介入群において,大きな効果量が認められた。以上から,考え続ける義務感の低減をターゲットとしたメタ認知療法の有効性が示唆された。
著者
古賀 佳樹 川島 大輔
出版者
日本パーソナリティ心理学会
雑誌
パーソナリティ研究 (ISSN:13488406)
巻号頁・発行日
vol.27, no.2, pp.175-177, 2018-11-01 (Released:2018-11-08)
参考文献数
8
被引用文献数
5 6

The aim of this study was to develop a Japanese version of the Game Addiction Scale (GAS7-J) and investigate its validity and reliability. The GAS7-J was translated using back translation. In the study, 352 Japanese adolescents responded to a questionnaire which included the GAS7-J. Factor analysis revealed a factor structure similar to the original scale, with higher internal consistency. Additionally, the GAS7-J correlated with both time spent on games and loneliness to a similar degree as in a previous study. In conclusion, the GAS7-J has an acceptable level of validity and reliability.
著者
大西 将史
出版者
日本パーソナリティ心理学会
雑誌
パーソナリティ研究 (ISSN:13488406)
巻号頁・発行日
vol.16, no.2, pp.171-184, 2008-01-01 (Released:2008-03-30)
参考文献数
46
被引用文献数
13 8

本研究の目的は,第1に従来の罪悪感尺度を取り上げ,それらの測定している概念を整理することである。その上で第2に,特性罪悪感を測定する多次元からなる尺度 (TGS) を作成し,その信頼性および妥当性を確認することである。精神分析理論に依拠し,特性罪悪感の下位概念として「精神内的罪悪感」,「利得過剰の罪悪感」,「屈折的甘えによる罪悪感」,「関係維持のための罪悪感」の4つを設定し項目を収集した。合計793名の大学生に質問紙調査を行った。探索的因子分析および確認的因子分析の結果から,仮定した4因子モデルの妥当性が確認された。α係数,再検査信頼性係数は十分な値を示し,信頼性が確認された。また,PFQ-2-guilt scaleとの関連から併存的妥当性が確認され,PFQ-2-shame scale,心理的負債感尺度,自己評価式抑うつ性尺度との関連から収束的妥当性が,罪悪感喚起状況尺度との関連から弁別的妥当性が確認された。
著者
天谷 祐子
出版者
日本パーソナリティ心理学会
雑誌
パーソナリティ研究 (ISSN:13488406)
巻号頁・発行日
vol.13, no.2, pp.197-207, 2005 (Released:2005-06-15)
参考文献数
31
被引用文献数
1 1

公的・私的自己意識と自我体験――「私」への「なぜ」という問い――の関連を検討した.自我体験とは,「私はなぜ私なのか」,「私はどこから来たのだろう」といった水準の「私」への問いである.この点について,中学生239名・大学生228名を対象に,質問紙調査を行った.その結果,中学生においては,公的・私的自己意識の分化はあまり見られなかった.しかし,自我体験を報告した群の方が未体験群よりも公的・私的自己意識間の相関が低く,より分化が見られた.そして,公的・私的自己意識双方と自我体験の間に関連が見られ,中学生においては,公的・私的自己意識と自我体験の間に密接な関連があることが示された.一方大学生では,私的自己意識だけに自我体験との間に関連が見られた.また自我体験については,118名の中学生と108名の大学生から自我体験が報告され,体験率は中学生が49.4%・大学生が47.4%であった.
著者
高田 琢弘
出版者
日本パーソナリティ心理学会
雑誌
パーソナリティ研究 (ISSN:13488406)
巻号頁・発行日
vol.31, no.3, pp.163-165, 2022-12-05 (Released:2022-12-05)
参考文献数
13
被引用文献数
1

This study investigated the relationship between problem gambling levels and mindfulness among Japanese adults. A web-based questionnaire was administered to 1505 Japanese adults to measure their problem gambling and mindfulness levels. The results indicated a negative relationship between problem gambling and mindfulness levels. Further, the possibility of using mindfulness for the prevention and treatment of problem gambling is discussed.
著者
稲垣 実果
出版者
日本パーソナリティ心理学会
雑誌
パーソナリティ研究 (ISSN:13488406)
巻号頁・発行日
vol.16, no.1, pp.13-24, 2007 (Released:2007-10-30)
参考文献数
28
被引用文献数
4

本研究の目的は,土居の「甘え」理論の観点から自己愛を捉え,自己愛的甘えの概念を整理し,自己愛的甘えを測定する尺度を作成することであった。自己愛的甘えは,「屈折的甘え」「配慮の要求」「許容への過度の期待」の3つの下位概念が設定された。32項目からなる自己愛的甘え尺度を大学生及び専門学校生515名に施行し,因子分析を行った結果,上記の3つの下位概念に相当する3因子が得られた。さらに確認的因子分析でも十分な適合度を示し,α係数においても高い信頼性が確認された。また,自己愛的甘え尺度は,Narcissistic Personality Inventory-S (NPI-S) で測定している自己愛とは弱い関連性を持ちながらも,「自己主張性」を含まない,別の構成概念を捉えているということ,そして多次元自我同一性尺度 (Multidimensional Ego Identity Scale: MEIS) とは各下位尺度間のいずれにおいても負の相関を示し,対人恐怖的心性尺度,被害観念尺度,疎外観念尺度とはいずれにおいても正の相関を示したことからも,構成概念的妥当性が確認された。
著者
相良 順子 伊藤 裕子
出版者
日本パーソナリティ心理学会
雑誌
パーソナリティ研究 (ISSN:13488406)
巻号頁・発行日
vol.26, no.1, pp.92-94, 2017-07-01 (Released:2017-04-15)
参考文献数
6
被引用文献数
5 4

The structure of a scale of generativity was examined and gender differences were investigated among 649 men and women in their forties and fifties in Japan. Results indicated that generativity consists of two factors: generative consciousness and the will to make social contributions. Gender difference was seen in both factors: men had higher generative consciousness while women had higher will to make social contributions. These results suggested that the difference in the social share due to gender influenced the state of generativity among middle-aged people in Japan.
著者
薊 理津子
出版者
日本パーソナリティ心理学会
雑誌
パーソナリティ研究 (ISSN:13488406)
巻号頁・発行日
vol.18, no.2, pp.85-95, 2010-01-31 (Released:2010-02-28)
参考文献数
26
被引用文献数
6 2

本研究は,調査参加者に他者から注意・叱責を受けた過去の経験を想起させ,その他者(叱責者)の特徴によって,屈辱感,羞恥感,罪悪感の各々の感情の喚起に影響があるかどうかについて検討を行った。その結果,嫌いな人間に叱責された場合に屈辱感が喚起された。また,機嫌を損ねたくない人間に叱責を受けた場合に羞恥感が喚起された。さらに,好かれたい人間に叱責された場合に罪悪感が喚起された。また,構造方程式モデリングの結果,叱責者の違いが直接関係修復反応に影響を与えるのではなく,それらの間に罪悪感と屈辱感の感情が媒介することが見いだされた。つまり,罪悪感が関係修復反応を促進し,対照的に,屈辱感が関係修復反応を抑制した。
著者
三枝 弘幸 内村 慶士 谷川 智洋 下山 晴彦
出版者
日本パーソナリティ心理学会
雑誌
パーソナリティ研究 (ISSN:13488406)
巻号頁・発行日
vol.30, no.3, pp.174-185, 2022-02-28 (Released:2022-02-28)
参考文献数
13

本研究では,アバター通信を用いたオンライン心理支援における,非言語コミュニケーションの豊富さと対面性の低さの役割を検討するために,比較実験を行った。実験参加者は,ほぼ全員が学生であった。実験1においては,22名のクライエント役が動くアバターと動かないアバターの2つの形式のアバター通信による心理面接を体験し,各面接を評価した。各面接の評価点の差をt検定で分析した結果,アバター通信を用いた心理支援における心理士の非言語コミュニケーションの豊富さの有効性が示唆された。実験2においては,24名のクライエント役がアバター通信とビデオ通話の2つの通信形式による心理面接を体験し,各面接を評価した。各面接の評価点の差をt検定で分析した結果,アバター通信を用いた心理支援における心理士の対面性の低さの有効性が示唆された。以上の実験結果から,オンライン心理支援におけるアバター通信の活用可能性が示唆された。
著者
樋口 収 新井田 恵美 田戸岡 好香
出版者
日本パーソナリティ心理学会
雑誌
パーソナリティ研究 (ISSN:13488406)
巻号頁・発行日
vol.30, no.3, pp.148-150, 2022-02-02 (Released:2022-02-02)
参考文献数
7
被引用文献数
2

With the spread of coronavirus disease (COVID-19), citizens have had to comply with the guidelines to prevent infection and the spread of COVID-19. However, not all citizens have been compliant with the guidelines. Based on Zitek and Schlund (2021), we hypothesized that people higher in psychological entitlement would report less compliance with the guidelines, and this relationship would be mediated by less concern for others. We conducted surveys in April 2021 whose results (n=250) supported these hypotheses.
著者
福井 晴那 青木 佐奈枝
出版者
日本パーソナリティ心理学会
雑誌
パーソナリティ研究 (ISSN:13488406)
巻号頁・発行日
vol.31, no.2, pp.87-99, 2022-09-22 (Released:2022-09-22)
参考文献数
36

複数の感覚モダリティにおける心的イメージの鮮明性を測定する多感覚イメージ尺度として,従来QMI (Questionnaire upon Mental Imagery; Betts, 1909; Sheehan, 1967)が多く用いられてきたが,QMIには問題点が多く指摘されている。そうした問題点を解消するために,近年新たにPsi-Q (the Plymouth Sensory Imagery Questionnaire; Andrade, May, Deeprose, Baugh, & Ganis, 2014)が開発された。本研究では,日本語版Psi-Qを作成し,その因子的妥当性,構成概念妥当性,内的整合性,再検査信頼性を検討した。分析の結果,日本語版Psi-Qは原尺度と同様,視覚,聴覚,嗅覚,味覚,触覚,身体感覚,感情の7因子構造であることが示された。また,十分な構成概念妥当性,内的整合性,再検査信頼性も確認された。本研究で作成された日本語版Psi-Qは,従来慣習的に使用されてきたQMIに代わる多感覚イメージ尺度であると考えられる。
著者
松木 祐馬 向井 智哉 金 信遇 木村 真利子 近藤 文哉
出版者
日本パーソナリティ心理学会
雑誌
パーソナリティ研究 (ISSN:13488406)
巻号頁・発行日
vol.29, no.2, pp.71-74, 2020-08-19 (Released:2020-08-19)
参考文献数
11
被引用文献数
1

This study aimed to investigate differences in the common factor of community consciousness between Japan and Korea. The scale included four subscales: “solidarity,” “self-determination,” “attachment,” and “dependency on others.” Web surveys were conducted in 669 adults (330 Japanese, 339 Koreans). Results of the survey showed that configural invariance was confirmed only for “self-determination” and its latent mean was higher in Korean participants. In sum, the results suggest that Japan and Korea have similarities and differences regarding community consciousness, which may be attributed to various factors such as social mobility and attitudes toward civil rights.
著者
木村 大樹
出版者
日本パーソナリティ心理学会
雑誌
パーソナリティ研究 (ISSN:13488406)
巻号頁・発行日
pp.28.2.2, (Released:2019-07-11)
参考文献数
40
被引用文献数
2 2

自閉スペクトラム症(ASD)を抱える人やその傾向のある人の多くが,高い対人不安を体験している。本研究は,ASD傾向の高い青年の対人不安の特徴を自尊感情および公的自意識との関連から調べることを目的として,大学生395人に質問紙調査(自閉症スペクトラム指数AQ,対人恐怖心性尺度,自尊感情尺度,公的自意識尺度)を行った。その結果,ASD傾向群(AQ≧33, 32人)は対人不安が全般に高かった。また,ASD傾向群は〈集団に溶け込めない〉悩みの高さが特徴的であり,さらに〈集団に溶け込めない〉悩みに対して公的自意識は関連していなかった。一方で,ASD傾向の高低にかかわらず,〈自分や他人が気になる〉悩み,〈社会的場面で当惑する〉悩み,〈目が気になる〉悩みではやはり公的自意識がかかわっており,自尊感情の低さも対人不安全般にかかわっていた。また,ASD傾向は自尊感情を媒介して対人不安に関連していたが,ASD傾向自体も直接対人不安に関連していた。
著者
吉住 隆弘 村瀬 聡美
出版者
日本パーソナリティ心理学会
雑誌
パーソナリティ研究 (ISSN:13488406)
巻号頁・発行日
vol.16, no.2, pp.229-237, 2008-01-01 (Released:2008-03-30)
参考文献数
31
被引用文献数
4 1

本研究では,解離体験とどのような防衛機制およびコーピングが関連するのかを検討した。大学生449名(男子231名,女性218名)に対し,解離体験尺度 (DES),防衛機制測定尺度 (DSQ-40),およびコーピング測定尺度 (TAC-24) を実施し,各変数間の関連性を調べた。単相関分析の結果,「極端思考・他者攻撃」的な防衛機制,「感情抑制・代替満足」的な防衛機制,そして「問題回避」コーピングと解離が関連することが示された。さらに重回帰分析の結果からは,解離は防衛機制との関連が特に強いことが示された。