著者
村山 恭朗
出版者
Japan Society of Personality Psychology
雑誌
パーソナリティ研究 (ISSN:13488406)
巻号頁・発行日
vol.22, no.1, pp.61-72, 2013
被引用文献数
1

不適応な感情制御方略である抑制と反すうは抑うつへの脆弱性を高める要因である。先行研究において,思考抑制と反すうとの縦断的関係が議論されており,どちらのモデルも報告されている。そこで本研究は,抑うつへの脆弱性が高い女子大学生(55名,18.98歳)を対象として,ストレッサーとの相互作用を通じて,日常的な思考抑制傾向が反すうの強さに影響を及ぼすプロセスを検討するために縦断的調査を行った。その結果,思考抑制傾向が強い女子大学生では,ストレッサーを経験するほど反すうが強まったが,思考抑制傾向が低い女子学生ではストレッサーを経験しても反すうの強さは変化しなかった。本研究結果から,思考抑制傾向は反すうを強める要因である可能性が示唆される。
著者
田中 圭介 杉浦 義典 竹林 由武
出版者
日本パーソナリティ心理学会
雑誌
パーソナリティ研究 (ISSN:13488406)
巻号頁・発行日
vol.22, no.2, pp.146-155, 2013-11-30 (Released:2013-12-04)
参考文献数
34
被引用文献数
1 2

マインドフルネスとは,“今ここでの経験に,評価や判断を加えることなく,能動的に注意を向けること”として定義される自己の体験に対する特殊な注意の向け方である。マインドフルネスの個人差を規定する要因として,注意機能の関連が指摘されている。しかし,注意機能のどの側面が,どのような交互作用でマインドフルネスに関連するのかについては,これまで明らかにされていない。本研究では,大学生を対象にAttention Network Test(Fan et al., 2002)とマインドフルネス傾向(Baer et al., 2006)を測定した。階層的重回帰分析の結果,注意の喚起機能が低い時には,注意の定位機能はマインドフルネスと正の関連を示す一方で,喚起機能が高い場合には,定位機能はマインドフルネスと負の関連を示した。これらの結果は,マインドフルネスの個人差の規定因として,注意機能を交互作用から捉える必要性を示唆する。
著者
梅本 貴豊
出版者
日本パーソナリティ心理学会
雑誌
パーソナリティ研究 (ISSN:13488406)
巻号頁・発行日
vol.23, no.1, pp.46-48, 2014-07-30 (Released:2014-08-26)
参考文献数
9
被引用文献数
1

This study examined the relationship between students' strategy profiles and learning performance. Participants (85 vocational school students) were divided using cluster analysis of their questionnaire data into three strategy profile groups (metacognitive and deep-processing profile, high all-strategy profile, and low all-strategy profile). The results of a one-way between subjects ANOVA indicated that the high all-strategy profile students took more notes during class than did the low all-strategy profile students, and had better test scores than the students with the other two profiles. These results indicate that for effective learning, it is important to use various learning strategies in accordance with study content.
著者
高比良 美詠子 安藤 玲子 坂元 章
出版者
日本パーソナリティ心理学会
雑誌
パーソナリティ研究 (ISSN:13488406)
巻号頁・発行日
vol.15, no.1, pp.87-102, 2006 (Released:2006-10-07)
参考文献数
44
被引用文献数
17 15

本稿は,パーソナリティの形成・発達研究において変数間の因果関係を推定したい場合に,縦断調査を利用する方法について概説したものである。まず,因果関係を推定するための研究方法として,実験,横断調査,縦断調査の3つを取り上げ,それぞれの特徴と限界について述べた。次に,縦断調査の一形態であり,変数間の因果関係を双方向的に検討できるパネル調査に焦点をあて,交差遅れ効果モデルによって因果関係の分析を行う方法を説明した。そして,変数間の因果関係について推定するためにパネル調査を行った実例として,インターネット使用と攻撃性の関係を検討した筆者らの研究について紹介した。なお,この研究では,インターネット使用から攻撃性への因果関係と,攻撃性からインターネット使用への因果関係が,双方向的に検討された。そして,最後に,より精度の高い因果関係の推定を行うために注意すべき点についてまとめた。
著者
古村 健太郎
出版者
Japan Society of Personality Psychology
雑誌
パーソナリティ研究 (ISSN:13488406)
巻号頁・発行日
vol.22, no.3, pp.199-212, 2014
被引用文献数
1

本研究の目的は,恋愛関係における接近コミットメントと回避コミットメントを測定する尺度を作成し,その信頼性と妥当性を検討することであった。接近コミットメントは"関係継続によって生じる報酬への接近目標"と定義され,回避コミットメントは"関係崩壊によって生じる罰からの回避目標"と定義された。サンプル1では133名,サンプル2では136名の恋人のいる調査参加者を対象に調査を行った。探索的因子分析では接近コミットメントと回避コミットメントの2因子が抽出され,十分な内的一貫性が確認された。確認的因子分析では,一因子構造よりも二因子構造の適合度が高かった。さらに,投資モデル尺度,BIS・BAS尺度,ECR-GO, IOSとの関連を検討した結果,接近・回避コミットメント尺度はそれぞれの尺度との間に理論的に予測される関連を示した。これらの結果から,接近・回避コミットメント尺度には一定の妥当性があることが確認された。
著者
山内 貴史 須藤 杏寿 丹野 義彦
出版者
日本パーソナリティ心理学会
雑誌
パーソナリティ研究 (ISSN:13488406)
巻号頁・発行日
vol.17, no.2, pp.182-193, 2009-03-01 (Released:2009-04-08)
参考文献数
36
被引用文献数
4 7

本研究の目的は,わが国の大学生にみられる被害妄想的観念を測定するため,Freeman et al. (2005) のParanoia Checklistの日本語版 (JPC) を作成し,その内的一貫性および妥当性を検証することであった。研究1では,大学生244名がJPCおよびパラノイア尺度からなる質問紙に回答した。その結果,JPCは1因子構造であること,およびJPCの十分な内的一貫性が確認された。また,パラノイア尺度はJPCの頻度,確信度,苦痛度得点と有意な相関がみられた。研究2では,大学生124名が,特性不安,自尊心,社会不安,特性怒り,ソーシャル・サポートおよびJPCからなる質問紙に回答した。JPC得点を基準変数とした重回帰分析の結果,不安,社会不安および怒りの強い者,およびソーシャル・サポートの少ない者は被害妄想的観念が強かった。以上の結果から,JPCの内的一貫性と妥当性の一部が確認された。また,不安,社会不安,怒り,ソーシャル・サポートは被害妄想的観念の形成や維持に重要な要因であることが示唆された。
著者
杉森 伸吉 安藤 寿康 安藤 典明 青柳 肇 黒沢 香 木島 伸彦 松岡 陽子 小堀 修
出版者
日本パーソナリティ心理学会
雑誌
パーソナリティ研究 (ISSN:13488406)
巻号頁・発行日
vol.12, no.2, pp.90-105, 2004-03-24
被引用文献数
1

心理学における研究者倫理への関心が高まる中,日本パーソナリティ心理学会では研究倫理ガイドライン検討特別小委員会を設け,性格心理学研究者倫理の問題を検討した.その中で,目本パーソナリティ心理学会員および他の関連諸学会員の合計262名と心理学専攻の学部生59名を対象に研究倫理観に関するアンケート調査を行った.研究倫理観は基本的に相対的なものであるという認識にもとづき,心理学研究者と学部学生を対象に52項目の倫理的問題に関する許容度判断を求め,その意見分布を示した.全体のうち半数近くの項目で研究者と学生の間に許容度判断の有意差が見られ,いずれも研究者のほうが寛容という傾向であった.また,主たる専門や研究法による倫理判断の相違,性差,研究年数による相違,ならびに基本的倫理観と個別の倫理判断の関連性分析,52の倫理問題に関する許容度判断の主成分分析と主成分ごとの許容度判断などについて検討した.基本的には,各人が研究を行う上で必要な事柄に関しては倫理的判断が寛容になり,研究を行う上で必要性が低い事柄については厳格になる傾向が見られた.本研究の結果は,日本パーソナリティ心理学会員をふくむ心理学者一般について,個別の倫理判断をする上でのひとつの判断基準を提供するものと考える.
著者
大友 和則 上野 真弓 松嶋 隆二 丹野 義彦
出版者
日本パーソナリティ心理学会
雑誌
パーソナリティ研究 (ISSN:13488406)
巻号頁・発行日
vol.16, no.2, pp.253-255, 2008

Many studies using dot-probe task revealed that high anxious individuals show selective attention to threatening information. A previous study using neutral stimulus trials found that the dot probe effect was at least partially due to a disengagement effect. The current study compared high anxious group with low group, in order to determine whether the difficulty to disengage attention was found only for the high group. The current study also manipulated SOAs (stimulus onset asynchrony) in order to determine whether the difficulty to disengage attention persisted or not. Results indicated that high anxious individuals showed difficulty to disengage attention only under 0 ms SOA condition.
著者
長谷川 晃 金築 優 根建 金男
出版者
Japan Society of Personality Psychology
雑誌
パーソナリティ研究 (ISSN:13488406)
巻号頁・発行日
vol.18, no.1, pp.21-34, 2009
被引用文献数
7

本研究は,本邦の大学生を対象に調査を実施し,抑うつ的反すうに関するポジティブな信念の確信度を測定する尺度を作成すると共に,どのような内容の信念が抑うつ的反すう傾向と関連しているのか検討することを目的とした。研究1では,"人生への悪影響の回避","問題解決能力の向上","感情制御の促進","現状の悪化の回避"の4下位尺度からなる「抑うつ的反すうに関するポジティブな信念尺度 (PBDRQ)」が作成された。研究2では,PBDRQの併存的妥当性と再検査信頼性が確認された。研究3では,"人生への悪影響の回避"と"現状の悪化の回避"という,反すうしないことで生じる不利益に関する信念が抑うつ的反すう傾向と関連していることが示された。結果より,抑うつ的反すうに関するポジティブな信念の中で,特に反すうしないことで生じる不利益に関する信念を変容することにより,抑うつ的反すう傾向を効果的に低減できる可能性が示唆された。
著者
速水 敏彦 小平 英志
出版者
日本パーソナリティ心理学会
雑誌
パーソナリティ研究 (ISSN:13488406)
巻号頁・発行日
vol.14, no.2, pp.171-180, 2006 (Released:2006-03-31)
参考文献数
25
被引用文献数
14 7

これまで,他者軽視に基づく仮想的有能感に関して,感情経験との関連を中心とした検討が行われてきた(速水ほか,2003).本研究では,低い自尊感情を補償しようと,他者軽視を行う典型的なタイプを抽出するために有能感の類型論的アプローチを用い,学習観と学習に対する動機づけとの関連を検討した.高校生395名に対して他者軽視,自尊感情,学習観(学習量,環境,方略志向),および自己決定理論に基づく動機づけ(外的,取り入れ的,同一化的,内発的動機づけ)の尺度が実施された.相関関係からは,他者軽視に基づく仮想的有能感は学習量志向と負の関連にあることが示された.また各類型の特徴を整理した結果,仮想型では,自尊型と比べて,外的動機づけおよび取り入れ的動機づけが高く,同一化的動機づけと内発的動機づけが低い傾向にあった.萎縮型では,いずれの動機づけも低い傾向にあった.
著者
下島 裕美 佐藤 浩一 越智 啓太
出版者
日本パーソナリティ心理学会
雑誌
パーソナリティ研究 (ISSN:13488406)
巻号頁・発行日
vol.21, no.1, pp.74-83, 2012
被引用文献数
16

「ある一定の時点における個人の心理的過去および心理的未来についての見解の総体」を時間的展望という(Levin, 1951 猪股訳 1979)。本研究は,時間的展望の個人差を測定する尺度であるZimbardo Time Perspective Inventory(ZTPI)を日本語に翻訳し,原版と同様の5因子構造が得られるかどうか確認することを目的とした。大学生748名を対象に調査を行い,探索的因子分析の結果,未来・現在快楽・現在運命・過去肯定・過去否定の5因子計43項目が見出された。回転前の5因子で全分散を説明する割合は37%であった。確証的因子分析の結果,CFI=.681, GFI=.829, AGFI=.810, RMSEA=.057, AIC=3125.726であった。&alpha;係数は.65から.76,再検査信頼性(<i>n</i>=110)は.63から.78(<i>p</i><.05)の範囲であり,原版に劣らない信頼性が確認された。原版と日本版の項目を比較したところ,日本版の現在快楽は「刺激希求性」の意味合いが強いことと,未来とのつながりがあることが示唆された。妥当性を検討した上で日本版尺度を完成させ,現在進行中である国際比較研究への参加が期待される。
著者
小西 瑞穂 大川 匡子 橋本 宰
出版者
日本パーソナリティ心理学会
雑誌
パーソナリティ研究 (ISSN:13488406)
巻号頁・発行日
vol.14, no.2, pp.214-226, 2006
被引用文献数
5

わが国では,自己愛人格傾向の測定について,Raskin & Hall (1979) やEmmons (1984) の自己愛人格尺度(Narcissistic Personality Inventory; NPI)が邦訳・検討されているが,回答方式や因子構造は研究者によって異なっている.そこで,本研究ではまだ邦訳されていないRaskin & Terry (1988) のNPIを邦訳し,新たな自己愛人格傾向尺度 (Narcissistic Personality Inventory-35; NPI-35) の作成を目的とした.調査1では探索的因子分析によって35項目5因子構造(注目欲求,誇大感,主導性,身体賞賛,自己確信)を見出した.次に調査2では,他集団のサンプルを対象に確認的因子分析を行い,十分な交叉妥当性を確認した.また,調査3においては,高い再検査信頼性が確認された.調査4ではNPI-35の構成概念妥当性を検討するために,自己愛人格目録短縮版,顕示尺度,賞賛獲得欲求尺度,自尊感情尺度との関連を検討した.その結果,NPI-35および各下位尺度と他尺度との相関関係が先行研究とある程度一致し,十分とは言えないが,構成概念妥当性が確認された.
著者
上田 光世 潮村 公弘
出版者
Japan Society of Personality Psychology
雑誌
パーソナリティ研究 (ISSN:13488406)
巻号頁・発行日
vol.21, no.2, pp.183-185, 2012

The present study investigated the relationship between forgiveness and the cultural values of the Japanese. Multiple regression analysis indicated that dispositional unforgiveness of self/situation was negatively related to independent self-construal and positively related to interdependent self-construal. The results show that the value of forgiveness of self/situation is low in the Japanese worldview. In the relationships between the religious faith scale and the sub-dimensions of dispositional forgiveness, forgiveness of others was positively related only to the item "religion has harmful effects". Discussion of the results reveals how cultural and religious beliefs about forgiveness are different in Japan compared to Western countries.
著者
伊藤 亮 村瀬 聡美 吉住 隆弘 村上 隆
出版者
日本パーソナリティ心理学会
雑誌
パーソナリティ研究 (ISSN:13488406)
巻号頁・発行日
vol.16, no.3, pp.396-405, 2008-03-31
被引用文献数
1

本研究の目的は現代青年のふれ合い恐怖的心性の精神的健康度について,抑うつと自我同一性の側面から検討することであった。大学生292名(男性125名,女性167名)を対象に質問紙調査を実施し,対人退却傾向,対人恐怖的心性,抑うつ,自我同一性の感覚を測定した。対人退却傾向と対人恐怖的心性の高低の組み合わせによって対象者をふれ合い恐怖的心性群,対人恐怖的心性群,退却・恐怖低群の3群に分類した。一元配置分散分析の結果,ふれ合い恐怖的心性群は対人恐怖的心性群より抑うつは低く,自我同一性の感覚は高いことが示された。一方,退却・恐怖低群と比較した場合,自己斉一性・連続性,対他的同一性の感覚は低いことが示された。これらの結果から,ふれ合い恐怖的心性群は対人恐怖的心性群よりも精神的には健康的な群ではあるが,個として他者と向き合う対人関係においては自我同一性の危機が生じやすい一群であることが示唆された。
著者
星野 貴俊 丹野 義彦
出版者
日本パーソナリティ心理学会
雑誌
パーソナリティ研究 (ISSN:13488406)
巻号頁・発行日
vol.17, no.2, pp.226-228, 2009-03-01 (Released:2009-04-08)
参考文献数
11
被引用文献数
2 2

Self-leakage is defined as a subjective sense that one's inner state is leaking out for others to know without verbal expression, causing anticipation of negative outcomes. A similar phenomenon is egorrhea symptoms of “taijin kyofusho” (social phobia). The mechanism of self-leakage has not yet been hypothesized, and we aimed at proposing a causal model in the present study. Path analysis suggested that self-leakage was partly caused by the tendency to have delusional ideations and trait anxiety, i.e., interpretation bias. But, contrary to our prediction, social anxiety, fear of negative evaluation, and public self-consciousness did not have enough influence on self-leakage.
著者
光浪 睦美
出版者
日本パーソナリティ心理学会
雑誌
パーソナリティ研究 (ISSN:13488406)
巻号頁・発行日
vol.21, no.2, pp.124-137, 2012-11-30 (Released:2013-02-11)
参考文献数
37
被引用文献数
6 3

本研究の目的は,大学生401名を対象に,対人関係における動機や目標志向性および対人行動が,過去の認知と将来への期待の組み合わせによって設定された認知的方略のタイプ(方略的楽観主義(SO),防衛的悲観主義(DP),非現実的楽観主義(UO),真の悲観主義(RP))で異なるか検討することと,対人関係における動機,目標および行動の因果プロセスについて検討することであった。その結果,SO群とUO群は親和願望が高く,DP群とRP群は拒否不安が高いことが示された。また,SO群とUO群は経験・成長目標をもち,積極的・援助的な対人行動をとっていた。因果プロセスの検討から,4つの群すべてにおいて親和願望が経験・成長目標を介して積極的な対人行動に影響を及ぼすことが明らかになったが,UO群とRP群においては,自分の性格に対する良い評価を得るために一見ネガティブにもみえる行動をとる可能性が示唆された。
著者
小西 瑞穂 山田 尚登 佐藤 豪
出版者
日本パーソナリティ心理学会
雑誌
パーソナリティ研究 (ISSN:13488406)
巻号頁・発行日
vol.17, no.1, pp.29-38, 2008-09-30
被引用文献数
2 7

自己愛人格傾向がストレスに脆弱な素因であるかを検討するために,大学生174名(男性72名,女性102名)を対象として縦断的調査を行った。自己愛人格傾向の高い者は最近1ヶ月以内のストレッサー経験量が多いと精神的健康が低下するという仮説を立て,精神的健康のネガティブな側面をストレス反応,ポジティブな側面をハッピネスとして測定した。階層的重回帰分析の結果,自己愛人格傾向の高い者がストレスイベントを多く経験した場合,男性では抑うつ反応および自律神経系活動性亢進反応,女性では身体的疲労感が増加し,一方ストレスの少ない状況ではこれらのストレス反応が自己愛人格傾向の低い者や平均的な者に比べて最も少なかった。つまり,自己愛人格傾向には個人の精神的健康を部分的に支える働きがあるが,それはストレスの少ない状況に限定されたものであり,ストレスの多い状況ではストレス反応を生起しやすい,ストレスに脆弱な素因と考えられる。
著者
緒方 康介
出版者
日本パーソナリティ心理学会
雑誌
パーソナリティ研究 (ISSN:13488406)
巻号頁・発行日
vol.20, no.2, pp.118-126, 2011-11-30 (Released:2012-05-22)
参考文献数
15

本研究の目的は因子分析と多母集団同時分析を用いて,S-M社会生活能力検査における因子構造の不変性の確認と知的障がい児への適用に関して因子不変性を検証することである。児童相談所のケース記録から2歳から18歳までの知的障がいの有る/無い児童のデータ1,002名分(女児292名,男児710名)を抽出した。K式発達検査のDQを基に対象児童は,1)障がい無群,2)軽度群,3)中度群,4)重度群の4群に分類された。知的障がい児の場合,理論的な1因子モデルの因子構造の不変性は低くなった。一方,1因子モデルに替わるものとして2因子モデルの方が知的障がい児に対しての適合度が高かった。本研究知見により,S-M社会生活能力検査を知的障がい児に適用する場合には理論モデルとは異なったモデルを用いて社会生活能力を測定する必要があることが明らかとなった。